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貸金業とは?業務内容や貸金業法、事業を始めるためのステップも

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「お金を借りる」と聞いて、何を思い浮かべますか?クレジットカード?消費者金融?それとも銀行でしょうか?実は、これらの多くは「貸金業」と呼ばれるビジネスに関わっています。この言葉、何となく知っているけれど、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、貸金業の基本的な仕組みから、私たちを保護する法律、そして意外と知られていない事業を始めるためのステップまでを徹底解説します。

普段何気なく利用しているお金の貸し借りが、どのように社会を支えているのか、そして注意すべき点は何かを明らかにします。知っておけば、いざという時にきっと役立つ、そんな情報をお届けします。

貸金業とは

貸金業とは、主に個人や会社にお金を貸すことを専門とする事業のことです。銀行や信用金庫のような金融機関とは異なり、消費者金融クレジットカード会社、信販会社などが貸金業にあたります*1)。

貸金業法とは

貸金業法とは、貸金業規制法を改正して作られた法律で、お金を貸す業者(貸金業者)を規制するものです。この法律の主な目的は、多重債務問題を解決し、消費者が安心して利用できる健全な貸金市場を作ることです。

具体的には、貸金業者の業務を適正化し、過剰な貸付を抑制することで、借りすぎを防ぎます。また、金利を適正な水準に保ち、違法なヤミ金融を取り締まることも重要な役割です。2006年12月に大きく改正され、2010年6月に完全に施行されました*2)。

多重債務問題

様々な金融業者からお金を借りることで借金が次々と膨らみ、返済の見通しが立たなくなってしまう状況を多重債務と呼ぶ。一つの借金の返済のために別の業者からさらにお金を借りる行為を繰り返すことで、利息の支払いも重なり、借金の総額が増え続けてしまう深刻な社会問題である*3)。

貸金業法の主なポイントは以下の通りです。

総量規制借入総額は年収の3分の1まで
上限金利年15~20%
収入証明の提出1社で50万円以上、複数社で100万円以上の借入をする場合に収入証明を提出する
信用情報機関借入の金額などの情報が信用情報機関に提供される

上記のような体制を整えることで、多重債務問題の発生を防ごうとしたのです。

銀行との違い

貸金業と銀行には、以下のような違いがあります。

貸金業銀行
適用法律貸金業法銀行法
預金業務なしあり
総量規制年収の3分の1まで適用せず
融資のスピード銀行より早め時間がかかることが多い
金利やや高め貸金業より低め
業務範囲融資に特化幅広いサービスを提供

貸金業と銀行の大きな違いは、まず適用される法律です。貸金業は貸金業法に、銀行は銀行法にそれぞれ基づき運営されます。預金業務の可否も重要な点で、貸金業は預金業務を行わず、融資に特化している一方、銀行は預金業務を主要な事業の一つとしています。

また、貸付に関しても違いがあり、貸金業は総量規制により年収の3分の1を超える貸付が原則禁止されているのに対し、銀行は総量規制の対象外です。

融資スピードや金利にも違いがあり、一般的に貸金業は即日融資が可能で金利は高め、銀行は審査に時間がかかり金利は低めです。このように、両者はそれぞれ異なる特性を持っています。

貸金業の歴史

貸金業は明治時代以前から存在していました。ここでは、近代以前の貸金業から戦後の団地金融、サラ金といった貸金業者の変化と貸金業規制法の制定と改正までの大まかな流れを紹介します。

近代以前の貸金業

江戸時代にも、現代の消費者金融のように、専門の業者が個人にお金を貸す事業が存在していました。例えば、一昼夜で返済が必要な「烏金(カラスガネ)」*4)や、目の不自由な人が行っていた「座頭金(ザトウガネ)」*5)などが有名です。また、物を担保にしてお金を借りる「質屋」も、一種の貸金業者として捉えることができます*6)。

消費者金融の登場

昭和に入ると、消費者の返済能力などの信用にもとづいて個人にお金を貸し付ける消費者金融が登場しました。

特に、高度経済成長期の1960年代になると、日本の社会は大きく変化しました。給料が上がり、豊かな生活を求める人が増え、家電製品や車など、さまざまな物がたくさん売れるようになりました*7)。

この大量消費の時代に、消費者金融は人々の「今すぐお金が欲しい」というニーズに応え、急速に発展していったのです。

サラリーマン金融(サラ金)の台頭

サラ金(サラリーマン金融)は、主にサラリーマンをターゲットにした消費者金融の一種です。手続きが簡単で即日融資が可能なため、急な出費や生活費の補填に利用されることが多いのが特徴です*8)。

一般的には健康保険証や運転免許証などの身分証明書があれば借入れが可能で、信用情報をもとに貸付額が決定されます。手軽に利用できる反面、金利が高めに設定されていることが多く、返済が滞ると借金が膨らむリスクもあります。

1970年代後半、消費者金融は高金利でお金を貸し付け、厳しい取り立てを行っていました。また、返済能力を無視した過剰な融資も横行したため、返済に困って夜逃げしたり、一家離散や自殺に追い込まれる人が続出し、「サラ金地獄」と呼ばれる深刻な社会問題となりました*9)。

貸金業規制法の制定と貸金業法への改称

貸金業規制法は、お金を貸す業者を適切に管理し、借り手を守るために1983年に作られました。それまでは貸金業を始める際の届出だけで営業できましたが、この法律により正式な登録が必要となりました。

借り手の権利を守ることが重要な目的でしたが、利息制度に関して法律上の解釈が分かれる「グレーゾーン金利」という問題を含んでいたため、その後の改正につながることとなりました*10)。

グレーゾーン金利

利息制限法で定める上限金利(15〜20%)と、出資法で定める上限金利(29.2%)の間の金利のこと。貸金業者が一定の要件を満たせば、この金利帯での貸付けが有効とされていた*11)。

なお、貸金業規制法は何度か改正されており、2007年の改正の際に法律の名前が「貸金業法」と改められています

貸金業法の改正

2006年、最高裁判所が、「グレーゾーン金利」での貸し付けに対する過払い金の返還を貸金業者に命じました。同年1月、最高裁判所が貸金業者に返還を命じる判決を下したことを受け、12月に改正法が成立しました*10)。

改正点の一つは、グレーゾーン金利の撤廃です。2010年6月18日以降、出資法の上限金利は20%に引き下げられ、貸付金額に応じて15%から20%の範囲内という利息制限法の水準に統一されることになりました*10)。

この上限を超える金利での貸し付けは、民事上無効となるだけでなく、行政処分の対象にもなります。また、出資法で定められた上限金利を超える貸し付けは刑事罰の対象となるため、違法な高金利での貸し付けは厳しく取り締まられるようになりました*11)。

貸金業に該当する行為としない行為

貸金業とは、お金を貸すことをビジネスとして行う事業のことです。しかし、どのような行為が貸金業にあたり、そうでないのか、区別が難しい場合があります。そこで、ここでは貸金業とみなされる行為と、そうではない行為について解説します。

該当する行為

貸金業に該当する主な行為は以下の通りです。

  • 金銭を貸し付ける業務
  • 金銭の貸借を媒介する業務

*12)

お金を貸すだけではなく、契約の勧誘や条件交渉といった「媒介する業務」も貸金業に該当します。

該当しない行為

貸金業法では、以下の行為は貸金業に該当しないとしています。

  • 国や自治体が行うもの
  • 銀行が行う貸付
  • 事業者が従業員に行うもの
  • 住宅ローンや自動車ローンなど

*12)

生活福祉資金貸付制度(都道府県の社会福祉協議会が実施)、銀行のカードローン、会社が従業員向けに行う福利厚生としての貸付は、貸金業の対象外となります。

誰でも貸金業を営めるのか

貸金業は、誰でも営めるものなのでしょうか。ここでは、貸金業を営むためのステップを解説します。

貸金業を営むための条件

貸金業者として認められるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 貸金業務取扱主任者の設置
  • 総資産額5,000万円以上
  • 一定の条件を満たす貸付業務経験のある役員や従業員がいる
  • 指定紛争解決機関と契約を結ぶ
  • 指定信用情報機関に加入する

*13)

貸金業務取扱主任者とは、貸金業に関する国家資格です、従業員50名につき1名以上の貸金業務取扱主任者を設置しなければなりません。主な業務は貸金業の法令順守の指導や業務の助言・指導などです。

指定紛争解決機関は、金融トラブルを裁判外で解決するための専門機関として金融庁が指定する組織です。利用者と金融機関の間で発生した問題を、中立的な立場で迅速かつ公平に解決することを目指しています。

指定信用情報機関は、貸金業法に基づき、内閣総理大臣の指定を受けた信用情報機関です。貸金業者が融資判断をする際、顧客の借入状況を把握し、返済能力を超えた貸付を防ぐ役割を担います。これにより、多重債務問題の抑制に貢献しています。具体的には、日本信用情報機構(JICC)シー・アイ・シーが指定されています。

貸金業者として認められない条件

貸金業法第6条第1項には、「貸金業登録の拒否事由」が記載されています。主な内容は、以下の通りです。

  • 心身の故障が見られる人
  • 破産している人
  • 過去に登録を取り消されている人
  • 刑罰を受けて一定期間を経過していない人
  • 暴力団の関係者
  • 貸金業で不正や不誠実な行為をする恐れがある人
  • 純資産が規定を満たしていない人
  • 虚偽記載や記載漏れがある人

*12)

上記に該当する場合、貸金業の登録を申請しても認められません。

貸金業を営むためのステップ

貸金業を営むには、次のステップを踏まなければなりません。

  1. 必要書類の準備
  2. 申請書の作成
  3. 申請書を都道府県や財務局に提出
  4. 審査
  5. 登録決定
  6. 貸金業務取扱主任者研修を受ける
  7. 営業開始

貸金業を始めるには、まず登録に必要な書類を揃えることから始まります。この際、申請書に添付する証明書の取得や、事業運営に関わる社内規則、業務方法などを専門家(行政書士や司法書士など)と相談しながら準備を進めることが重要です。

相談内容を踏まえ、申請書を作成し、都道府県知事または財務局長に提出して登録申請を行います。提出された書類は、都道府県や財務局で審査され、書類だけでなく、必要に応じて現地調査やヒアリングも実施されます。

無事登録が完了した後、新規登録の場合は、登録後6ヶ月以内に貸金業務取扱主任者研修を修了し、修了証書の写しを研修受講届出書とともに提出しなければなりません。営業開始は登録日の翌日から可能です。

貸金業に関してよくある疑問

ここからは、貸金業に関するよくある質問について説明します。

貸金業の一覧はどこからわかる?

登録している貸金業者については、金融庁が提供する「貸金業者登録一覧」で確認できます。さらに、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」を使えば、登録番号、所在地、会社名、代表者名、電話番号といった情報から、特定の貸金業者を検索できます。

登録貸金業者情報検索サービスと同じページには、各地方の事務局の連絡先や、都道府県知事登録の貸金業者に関する問い合わせ先も掲載されているため、電話で直接確認することも可能です。

貸金業に登録しないとどうなる?

貸金業を営むためには、法律に基づく登録が必要です。この登録なしで貸金業を行うことは違法であり、厳しい処罰の対象となります。個人の場合は10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金、法人の場合は10年以下の懲役または1億円以下の罰金が科せられます*12)。

さらに、懲役と罰金の両方が科せられる場合もあります。また、登録のない業者がチラシやダイレクトメール、電話、メールなどで広告や勧誘をすることも法律で固く禁じられています。これらは貸金業法第11条に定められた重要な規定です*12)。

正規ではない貸金業者もいる?

貸金業者には正規の登録業者と、違法な「闇金(ヤミ金)」があります。闇金は法律で定められた利息の上限を超える高金利で貸付を行う違法業者です。主に借金の返済に困っている人や経営困難な小規模事業者、破産者などを狙い、勝手に情報を入手して融資の勧誘をしてきます*14)。

闇金からの取立ては非常に厳しく、借りた本人だけでなく、家族や職場にまで迷惑をかけることがあります。もし闇金の被害に遭った場合は、すぐに警察に相談することが重要です*14)。

貸金業とSDGs

貸金業を含む金融業は、SDGs目標13と関連性をもっています。ここでは、貸金業とSDGs目標13の関わりを解説します。

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」との関わり

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」は、地球温暖化による気候変動の影響を小さくし、具体的な対策を実行することを目標としています。この目標を達成するためには、多くの資金が必要となります。金融機関の一部である貸金業も、その役割を担っています。

具体例として、消費者金融のSMBCコンシューマーファイナンスは、アプリローンによるカードレス化ペーパーレス化を進めることで資源の節約に取り組んでいます。さらに、地域の清掃活動に積極的に参加することで、環境美化にも貢献しています*15)。このように、貸金業もそれぞれの事業活動を通じて、気候変動対策に貢献しているのです。

まとめ

今回は貸金業について解説しました。貸金業とは、個人や会社にお金を貸すことを専門とする事業で、消費者金融やクレジットカード会社などが該当します。業務内容は主に融資に特化しており、即日融資が可能という特徴があります。

貸金業法では、総量規制や上限金利の設定など、様々な規制が設けられています。事業を始めるためには、5,000万円以上の総資産額や貸金業務取扱主任者の設置など、厳格な条件を満たす必要があります。また、都道府県や財務局への登録申請や審査を経て、初めて営業を開始することができます。

*1)デジタル大辞泉「貸金業
*2)デジタル大辞泉「貸金業法
*3)知るぽると「多重債務とは
*4)精選版 日本国語大辞典「烏金
*5)デジタル大辞泉「座頭金
*6)デジタル大辞泉「質屋
*7)改定新版 世界大百科事典「消費者金融
*8)改定新版 世界大百科事典「サラリーマン金融
*9)日本大百科全書(ニッポニカ)「サラリーマン金融
*10)百科事典マイペディア「貸金業法
*11)金融庁「貸金業法のキホン
*12)e-GOV「貸金業法
*13)日本貸金業協会「貸金業を始めるには
*14)知るぽると「ヤミ金とは
*15)SMBCコンシューマーファイナンス「事業を通じて取り組む重点課題(マテリアリティ)