古代ギリシャで生まれ、現代再び世界中で注目されるフィランソロフィー。あなたは、何のことか知っていますか？

今後、社会人なら必ず知っておきたいフィランソロフィーの本質と、それが個人や企業、さらには国家にどのように影響を与えるかなどを、わかりやすく解説します。また、混同されやすいメセナとの違いや、具体的な企業の取り組み事例も紹介します。フィランソロフィーの理解は、世界中の人々が進む方向を同じくするための助けとなります。

フィランソロフィーとは

フィランソロフィーとは、社会や人々のために貢献する精神や活動のことです。フィランソロフィーの語源は、ギリシャ語の「philos（愛）」と「anthropos（人）」から成る、philanthropia（フィランソロピア）という「人類への愛」を意味する言葉で、英語では「philanthropy」と表記されます。

日本語では、「フィランソロフィー」とも、英語の綴りに準じた「フィランソロピー」とも表記されます。どちらも表記が違うだけで、同じ意味の言葉です。

とても歴史の古い概念

フィランソロピーの概念は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスにまで遡ります。アリストテレスは、人間は社会的な動物であり、社会の中で他の人と協力して生きていくべきであると主張しました。そのため、社会や人々のために貢献することは、人間の本質的な営みであるとしています。

その後、このアリストテレスの思想が古代ギリシャの社会に広まり、さまざまな慈善活動や社会貢献活動が行われるようになりました。現代のギリシャ語でも、フィランソロピアは、社会や人々のために貢献する精神や活動を表す言葉として広く使用されています。

フィランソロフィーの目的

フィランソロフィーの目的は、社会課題の解決と人々のwell-being※の向上です。人類全体を愛し、全ての人の幸せが目的とも言えます。それぞれの内容を見ていきましょう。

社会課題の解決

フィランソロフィーは、社会的な課題の解決に貢献するために、さまざまな形で行われてきました。例えば、

などが挙げられます。これらの活動は、人間社会を維持するために重要な活動です。

人々のwell-beingの向上

フィランソロフィーは、人々のwell-beingの向上にも貢献しています。例えば、

などが代表的です。これらの活動は、人々の生きがいや幸福感を高め、社会の豊かさに貢献しています。

メセナとの違い

フィランソロフィーと似た言葉にメセナがあります。どちらも社会貢献の一種ですが、その目的や対象に違いがあります。

メセナは、芸術や文化の振興を目的とし、芸術家や文化団体に対して行われるものです。つまり、フィランソロフィーは、メセナよりも広い範囲の社会課題に対して行われ、より包括的な社会貢献を行うものと言えます。

この、メセナの語源は、古代ローマのマエケナス（Maecenas）という宮廷顧問官の名前に由来します。マエケナスは、文学や芸術を支援し、ローマの文化振興に貢献したことで知られています。

次の章では、フィランソロフィーは具体的にどのような場面で使われるのか確認しましょう。*1）

フィランソロフィーは具体的にどのような場面で使われる？

ここからは、フィランソロフィーが具体的にどのような場面で使われるのかを確認していきます。詳しい内容に入る前に、前提として押さえておきたいポイントについて見ていきましょう。

フィランソロフィーは一般的には「行動」や「活動」を指す言葉として使われますが、厳密に考えると、それらを起こす「考え方」「価値観」「概念」であるとも言えます。フィランソロフィーという言葉はまだ日本の社会に浸透しているとは言えません。また、そもそも、日本古来の単語には、ギリシャでは紀元前から存在したフィランソロフィーという言葉に相当するものは存在しません。

ではなぜ日本語には、フィランソロフィーに相当する言葉がないのでしょうか。

どうして日本語にフィランソロフィーに相当する言葉がないの？

古来の日本語にフィランソロフィーに相当する言葉がないのは、日本と西洋での歴史的背景や宗教の違いが関係していると考えられます。西洋ではアリストテレスの時代（紀元前384年〜紀元前322年ごろ）から、すでにこのような概念が存在し、さらにキリスト教の影響で良い行いをするのは「神に愛されるため」という価値観が広まりました。

しかし日本では、良い行いをすることを「徳を積む」とも言いますが、徳を積むのは「来世で幸福な生活を送るため」という、主に仏教やヒンドゥー教など東洋の宗教でみられる価値観です。これらの宗教には、個人の行為や徳によって、その人の来世での幸福や成就が影響されるという考え方があるのです。

つまり、フィランソロフィーの目的が「より良い社会と人々のwell-being」なのに対し、日本人に深く根付いている「徳を積む」目的は「自分の（来世の）ため」なのです。このため、フィランソロフィーという言葉と価値観に、日本人は歴史的に見ても馴染みがないと考えることができます。

しかし、現代の日本人にとって、フィランソロフィーは十分にその価値観の理解できる言葉です。なぜなら近年、持続可能な地球環境と人間社会のために、世界中の人々が協力することの重要性を、日本の大部分の人がしっかりと理解しているからです。

もう少し踏み込んで見ていきましょう。

社会や人々のために貢献する活動

フィランソロフィーは社会や人々のために貢献する活動全般を指す言葉です。そのため、教育、研究、医療、福祉、環境保全、芸術など、さまざまな分野の社会貢献活動について使われています。

より具体的には、

など、さまざまな社会貢献活動が、フィランソロフィーとして認識されています。

企業の社会的責任（CSR）

企業の社会的責任（CSR）とは、企業が社会の一員として、経済的利益だけでなく、社会的・環境的責任を果たすことを指します。そのため、世界的には、フィランソロフィーという言葉は、企業のCSR活動についても使われています。

ボランティア活動

社会貢献についてフィランソロフィーという言葉が使われることは先ほど触れましたが、日本では特に、慈善活動やボランティア活動について使われることが多い傾向があります。例えば、

などが、フィランソロフィーとして認識されています。世界的にはフィランソロフィーは「社会課題の解決と人々のwell-beingのための人類への愛」として使われる言葉ですが、このように日本では、特に「個人の慈善活動やボランティア活動に取り組む精神」を表していることがあるので、注意が必要です。

個人の慈善活動やボランティア活動に取り組む精神も、フィランソロフィーに含まれることなので、間違った解釈ではないのですが、そのように限定的に捉えて使われている場合もあるということです。しかし、グローバル化が進む現代において、世界ではどう捉えられているかを知っておくことは大切です。*2）

フィランソロフィーに注目が集まる背景

近年、フィランソロフィーはますます注目を集めています。その背景には、社会的な課題への関心の高まりや、企業の社会貢献活動への期待があります。特に、環境問題や貧困、教育格差など、解決が求められている課題は多く、それらに対する取り組みが、高く評価される傾向にあります。

【令和６年度地方税制改正（税負担軽減措置等）要望事項の一節】

日本政府もフィランソロフィーの重要性を認識し、法案など内容にも盛り込まれることが増えてきました。フィランソロフィーに則った活動は、世界的なトレンドとも言え、日本でもその流れが伺えます。

ここからは、より詳しく注目されている背景について迫ってみましょう。

社会課題の複雑化・多様化

世界の社会課題は複雑化・多様化しています。貧困や環境問題、教育問題など、解決が難しい課題が山積みです。これらの問題に対処するための活動としてフィランソロフィーへの注目が集まっています。

このような社会課題を解決するためには、政府や企業だけでなく、個人や民間団体など、さまざまな主体の協力が不可欠です。フィランソロフィーへの理解が広まることによって、その協力の輪が広がり、大きな力となることが期待されています。

SDGsの普及

日本でも一般常識となったSDGsは、貧困や飢餓、気候変動など、地球規模の課題を解決することを目的としています。政府や企業、個人がSDGsに基づいた慈善活動や社会貢献活動を行うことが増え、それによってフィランソロフィーへの注目が高まりました。

SDGsの目標達成には、世界中の人々が協力する必要があります。フィランソロフィーの概念は、世界中の人々が国や地域、人種、宗教などさまざまな違いを越え、地球環境のためや人間社会のために行動する重要な考え方であり、SDGsの目標達成に向けたグローバルな協力を促進する役割を果たしています。

企業の社会的責任の重視

先述したように近年、企業は社会的責任（CSR）を重視する傾向にあります。フィランソロピーは、CSRの重要な取り組みの一つとして、注目を集めています。さらに、消費者は商品やサービスの購入を通じて、社会貢献活動を支える企業を選ぶ傾向も見られるようになりました。その中で企業は、フィランソロフィーによる社会貢献を行い、その取り組みをアピールすることで、消費者からの信頼を得ることができます。

ソーシャルメディアの影響

ソーシャルメディアの普及により、フィランソロフィー活動が簡単に情報共有されるようになりました。個人や企業の慈善活動が広く知れ渡り、それによって社会全体でのフィランソロフィーへの関心がさらに高まっています。

このようにフィランソロフィーが注目されているのには、様々な背景があります。そして、企業や団体がフィランソロフィーに注目する大きな要因として、フィランソロフィーがもたらすメリットがあります。次の章では、企業がフィランソロフィーに取り組むメリットに焦点を当てていきましょう。*4）

企業がフィランソロフィーに取り組むメリット

フィランソロフィーは、企業が社会貢献を通じて価値を創出するための重要な手段となっています。そのメリットには、どのようなものがあるのでしょうか？ここでは、先述した社会的な評価や信頼性の向上以外の側面についてまとめています。

従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上

フィランソロフィーによる取り組みは、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めることができます。企業がフィランソロフィーに取り組むことで、従業員が企業の社会的責任を理解し、自分もその一員として貢献していることを実感できるためです。

フィランソロフィーは、企業の理念や価値観を体現する取り組みです。フィランソロフィーに取り組むことで、従業員は企業の理念や価値観に共感し、帰属意識を高めることができます。

さらに、フィランソロフィーに取り組むことで、従業員は仕事へのやりがいを感じられるようになると考えられます。

新たなビジネスチャンスの創出

フィランソロフィーに取り組むことで、新たなビジネスチャンスを創出することができます。フィランソロフィーを通じて、

など、これまでになかった機会を得る可能性があります。例えば、フィランソロフィーに取り組むことで、社会問題の解決や消費者のニーズを理解し、それに対処する製品やサービスを開発することができます。

また、フィランソロフィーによる活動は、従来のビジネスモデルを超えた新たなビジネスモデルを構築する契機となります。例えば、社会的課題に取り組むためのパートナーシップや新たな価値提供の仕組みを生み出すことができます。

このように、フィランソロフィーがもたらすメリットは、今後の持続可能な社会の構築において重要なものです。しかし、企業や個人がフィランソロフィーに取り組むにあたっては、まだ問題点や課題があります。

次の章では、フィランソロフィーの問題点や課題を確認していきましょう。*4）

フィランソロフィーの問題点や課題

ここでは、フィランソロフィーの問題点や課題について、具体的に解説していきます。

フィランソロフィーの効果測定の難しさ

フィランソロフィーの取り組みの効果を測定することは、大きな課題の１つです。社会貢献活動の成果は、直接的な利益として現れるものではなく、長期的な視点で評価する必要があります。

しかし、その効果を定量的に評価する指標はまだ確立されていないため、その価値を一定の基準で数値化したり、正確に把握したりすることは現状では困難です。

フィランソロフィーとビジネス目標との調和

フィランソロフィーの取り組みとビジネスの目標とを調和させることもまた、課題の１つです。企業は、社会貢献活動とビジネスの成果を両立させる必要があります。

しかし、これら２つの目標は必ずしも一致しないため、バランスを取ることが難しい場合もあります。

フィランソロフィーの持続可能性

フィランソロフィーは一時的な支援や対応にとどまる場合があり、持続的な社会変革や問題解決に、効果的につながらない可能性があります。

フィランソロフィーへの取り組みは、一時的なものではなく、長期的に続けることが求められます。しかし、その取り組みの持続可能性を確保することは、資源の確保や組織のコミットメントなど、多くの課題を伴います。

表面的な取り組みの疑い

企業がフィランソロフィー活動をPRやイメージアップのためだけに行っている場合があります。例えば、企業がフィランソロピーに取り組む、または取り組んでいるように見せかけることで、社会貢献をアピールし、企業イメージやブランド価値を向上させる目的で、表面的な取り組みに終始している場合もあるかもしれません。

この問題は、グリーンウォッシュ※の問題と似ています。表面的な取り組みの疑いは、フィランソロフィーの信頼性を損なうだけでなく、企業の社会的評価やブランド価値にも悪影響を及ぼす可能性があります。

【関連記事】グリーンウォッシュとは？具体例と日本企業でもできる対策・SDGsの関係

以上のように、フィランソロフィーへの取り組みには、まだいくつかの課題が存在します。これらの課題を理解し、それぞれに対する解決策を模索することで、フィランソロフィーはより効果を発揮するのです。*6）

世界の企業のフィランソロフィー活動事例

ここでは有名企業による、高く評価されているフィランソロフィーへの取り組み事例をいくつか紹介します。

Microsoft

【ITの力で社会問題の解決を目指すMicrosoft】

マイクロソフトのフィランソロフィー活動は、企業ミッションである「地球上のすべての人、すべての組織に関わる人たちが、より多くのことを達成する力になること」を実現するために、IT 社会で人々やビジネスが直面する多様な社会的課題の解決に焦点を当てて実施されています。

マイクロソフトは、ITの力でさまざまな社会課題を解決することを目指しており、その取り組みは世界中から注目されています。

教育支援

マイクロソフトは、世界中の教育機関に無償でソフトウェアやクラウドサービスを提供しています。また、教員向けのトレーニングや、学生向けのプログラミング教育などの支援も行っています。

環境保護

また、再生可能エネルギーの利用拡大や、二酸化炭素排出量の削減など、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。加えて、環境教育や、環境問題に関する研究支援なども行っています。

地域貢献

マイクロソフトは、地域の活性化や、社会課題の解決に取り組むNPOへの支援を行っています。また、災害時の支援や、地域の子どもたちへの支援なども行っています。

2016 年の熊本地震の際には、復興支援として、IT機器の提供や、ICT活用による支援活動の実施などを行いました。

Google

【Googleによる支援が届いていない小規模ビジネスを支援】

グーグルのフィランソロフィー活動は、人類が抱える大きな課題の解決に貢献することを目的としています。具体的には、

の分野において、グーグルの強みであるテクノロジーやリソースを活用し、社会課題の解決に貢献しています。

例えば、人種間の平等を目指す取り組みにおいては、データサイエンスやAIを活用した差別解消の支援を行っています。また、気候変動の分野では、再生可能エネルギーの普及や、二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいます。さらに、災害対応の分野では、早期警報システムの開発や、災害後の復興支援を行っています。

【関連記事】データサイエンスとは？身近な事例やデータサイエンティストになるための方法も

イノベーションへの貢献

グーグルは、テクノロジーやAIを活用した社会課題解決に取り組んでおり、その取り組みは世界中から注目されています。具体的には、

などが代表的です。

世界中の教育格差の解消への取り組みでは、2005年以来、２億5,000万ドルを拠出し、グーグル社員のボランティア活動も奨励しています。その一環として、世界的な教育支援サイトKhan Academyを支援しています。

Khan Academyは、数千もの動画、記事、対話形式の演習などで、さまざまなトピックについて学習できるオンラインライブラリです。グーグルの支援により、Khan Academyはさらに質の高い教材を開発できるようになり、現在では世界中の学生や教師に利用されるようになりました。

【Googleが支援するKhan Academyで学ぶ子どもたち】

透明性のある長期的な取り組み

そして短期的な効果ではなく、長期的な視点に立って社会課題の解決に取り組んでいます。また、フィランソロフィー活動の成果を積極的に公開しており、透明性の高い取り組みを行っています。

ユニクロ

【もう着なくなった服が、誰かの特別な一着になる】

ユニクロは、グローバルに事業を展開するアパレル企業です。ユニクロのフィランソロフィー活動は、

などに配慮し、その特性を活かした活動を行っています。

衣料支援

ユニクロは、不要になった服を回収し、リサイクルして再利用する「RE.UNIQLO」プロジェクトを実施しています。このプロジェクトを通じて、世界の難民や国内避難民、女性や若者、災害被災者など、社会的に弱い立場にある人々に衣料支援を行っています。

【ユニクロの衣料支援の実績：80の国や地域に5,050万点（2022年8月現在までの累計）】

人材育成支援

ユニクロは、次世代を担う若者や子どもたちへの支援にも力を入れています。ユニクロの従業員が講師となって子どもたちに教える出張授業や、職業体験、大学進学への奨学金プログラムなど、教育支援や社会進出支援を行っています。

文化芸術・スポーツ支援

ユニクロは、文化・芸術・スポーツの振興にも貢献しています。地域の人々がアートに触れる機会を創出する活動や、アスリートとの交流を通して、子どもたちが好きなスポーツに出会い、アクティブなライフスタイルを学べる活動を行っています。*6）

企業がフィランソロフィーを取り入れる際のポイント

現代社会において、企業活動は単に利益を追求するだけではなく、社会や環境への配慮が求められるようになっています。これからの時代、企業の規模を問わず、フィランソロフィーを意識した経営が重要になっていくでしょう。

このような活動は、企業の社会的責任（CSR）の一環として、国際的な機関や各国政府によっても推奨されており、持続可能な社会の構築に寄与すると評価されています。それでは、経営にフィランソロフィーを取り入れる際のポイントを紹介します。

真摯な姿勢と社会的課題への理解

企業がフィランソロフィーを取り入れる際には、まず社会的課題に対する深い理解と真摯な姿勢が必要です。SDGsなどを参考に、どのような問題が存在し、自社がどう関わるべきかを検討することが大切です。

長期的な視点と戦略の策定

フィランソロフィーは短期的な成果よりも、長期的な視点を持って取り組むべきです。そのためには、明確なビジョンと戦略を策定し、持続可能な活動を計画的に実施することが重要です。

ステークホルダーとの対話と協働

社会貢献活動を成功させるためには、関係者との対話を重視し、地域社会やNGO、他の企業と協働することが大切です。これにより、より効果的で幅広い影響を生むことができます。

透明性の確保と成果の測定

活動の透明性を保つためには、取り組みの過程と成果を定期的に公表し、外部からの評価を受け入れることが必要です。また、成果の測定を通じて、活動の改善点を見つけ出し、より良い結果を目指すべきです。

組織文化と従業員の関与

フィランソロフィーを企業文化の一部として根付かせ、従業員が積極的に関与できる環境を整えることが、活動の持続可能性を高めます。そのため、従業員の意識向上とモチベーションの維持が、成功への鍵となります。

これらのポイントを踏まえ、フィランソロフィーを意識した経営を実践することによって、企業は社会的な価値を生み出しつつ、自らの成長と発展を目指すことができます。フィランソロフィーを取り入れることは、企業が社会と共に成長し、自社の持続可能な経営基盤と、より良い未来を築くための重要なステップです。今後も、企業が社会にどのように貢献していくかが、その企業の価値を大きく左右するでしょう。

フィランソロフィーとSDGs

フィランソロフィーは、企業や個人が社会に対して持つ責任感を持ち、資金や技術、知識を提供し、社会的課題の解決に貢献することで、SDGsの目標達成に向けた鍵となります。特にフィランソロフィーと関連が深いSDGs目標をいくつか見ていきましょう。

SDGs目標1：貧困をなくそう

貧困の撲滅は、フィランソロフィーの活動によって大きな影響を受けます。企業や富裕層が資金を提供することで、教育や健康、雇用の機会を増やし、貧困層の自立を支援することができます。

SDGs目標4：質の高い教育をみんなに

教育は社会を変革する力を持っています。企業が学校建設や奨学金制度を設けることで、教育の機会が拡大し、より多くの人々が学ぶ権利を享受できるようになります。

SDGs目標8：働きがいも経済成長も

フィランソロフィーを通じて、企業は地域社会の経済発展に貢献することができます。例えば、地元の起業家を支援することで雇用を生み出し、地域の経済成長を促進することが期待されます。

国際的な機関や省庁の公表する情報によれば、企業の社会貢献活動はSDGsの進展に大きく貢献しており、特に教育や健康、ジェンダー平等などの分野で顕著な成果を上げています。企業や個人が自らのリソースを社会貢献に向けることで、より良い世界を築くための基盤が強化されるのです。

これからもフィランソロフィーの精神を持ち続け、SDGsの目標に向けて歩み続けることが、私たち個人にも求められています。

>>各目標の詳しい記事はこちらから

まとめ

近年、フィランソロフィーへの関心は世界中で高まっています。地球規模で深刻化する社会課題や、SDGs（持続可能な開発目標）の達成に向け、社会全体の意識を変える必要があるのです。

日本でも、政府がフィランソロフィーの重要性を認識しており、それに伴い企業のCSR活動や、個人の寄付やボランティア活動などの取り組みが活発化しています。

地球規模で深刻化する社会課題は、単一の国や企業、個人の力では解決が難しいものが多くあります。そのため、国際的に国や企業、個人が連携して、社会課題の解決に向けた取り組みを進めていくことが求められています。

このような協力の時、フィランソロフィーについての理解がどの国の人にもあれば、目標や理想をそろえて行動する絆の役割を果たすことが期待できます。人々が力を合わせる時、その目標への価値観があまりにも違っていては、足並みを揃えるのは困難だからです。

これを踏まえ、企業に求められる意識の変革や取り組みは、まず企業経営のあり方の変革です。企業は利益追求だけでなく、社会的責任を果たすことを経営理念に組み込む必要があります。

個人に求められる意識の変革や取り組みは、社会貢献活動への参加や環境に配慮した消費行動などです。個人の小さな行動が社会全体に影響を及ぼすことを意識し、積極的に参加しましょう。

あなたが新たな一歩を踏み出すことが、大きな変化を生みます。日常の小さな選択から始め、自分にできることから行動に移してください。

未来の地球と人間社会のために、あなたの貢献も必要なのです。フィランソロフィーへの理解は、私たちが進む方向を同じくするための助けとなります。

＜参考・引用文献＞
*1）フィランソロフィーとは
日本経済新聞『フィランソロフィーという新たなゴール』（2021年10月）
総務省『新たな情報通信政策の構築に向けて』（2023年2月）
総務省『今後の通信政策の在り方について』（2023年11月）
日本フィランソロピー協会『人と企業の社会貢献を応援する 公共社団法人日本フィランソロピー協会』
大西たまき『フィランソロピー概念の考察』（2017年10月）
厚生労働省『厚生白書 第1編  第1部  広がりゆく福祉の担い手たち 第6章  企業の社会貢献活動(フィランソロピー)』
*2）フィランソロフィーは具体的にどのような場面で使われる？
内閣官房『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画』（2022年6月）
経済産業省『文化資本経営促進に関する調査研究事業 成果報告書』（2022年3月）
*3）フィランソロフィーに注目が集まる背景
総務省『令和６年度地方税制改正（税負担軽減措置等）要望事項』
中小企業庁『「地域」を考える―自らの変化と特性に向き合う―』（2015年）
日本経済新聞『みずほ信託銀行とREADYFOR、フィランソロピー分野における業務提携契約を締結』（2023年5月）
日本経済新聞『楽しんでフィランソロピー　次世代教育』（2015年10月）
厚生労働省『令和５年夏策定の主な政府文書について（雇用環境・均等局関係）』（2023年6月）
*4）企業がフィランソロフィーに取り組むメリット
中法企業庁『第3部　「地域」を考える　―自らの変化と特性に向き合う― 第2節　地域課題の解決による地域活性化』
経済産業省『「SDGs 達成へ向けた企業が創出する『社会の価値』への期待」に関する調査研究報告書』（2020年3月）
岡本 大輔『企業目的としての “社会性” ー企業評価の観点から』
*5）フィランソロフィーの問題点や課題
グリーンウォッシュとは？具体例と日本企業でもできる対策・SDGsの関係
*6）世界の企業のフィランソロフィー活動事例
Microsoft『”Empower every person and every organization on the planet to achieve more”』
Microsoft『社会貢献 事例/ストーリー紹介』
Microsoft『Corporate Social Responsibility Our commitments』
Microsoft『教育/若者支援』
Google『支援が届いていない小規模ビジネスを支援する』
データサイエンスとは？身近な事例やデータサイエンティストになるための方法も
Google『教育格差の解消』
ユニクロ『衣料支援』
ユニクロ『衣料支援』
Google『Google が掲げる 10 の事実』
日経XTECH『グーグルが20億ドル以上をつぎ込むgoogle.org』（2007年12月）
Google『GOOGLE の使命』
Google『私たちの活動』
内閣府『我が国における先端的な取組や欧米の先進事例について（事例集）』
ユニクロ『社会貢献活動のグローバル推進』
ユニクロ『子どもたちのためにできること（次世代教育活動）』
ユニクロ『あらゆる人が平等に生きられる世界へ』
*7）フィランソロフィーとSDGs
経済産業省『SDGs』