合同会社クアッガ 中島さん インタビュー
中島
◆会社概要合同会社クアッガは食品ロスの削減と「人にも食べ物にも幸せな一生を」というビジョンを掲げ、パンのお取り寄せ・通販サイト「rebake(リベイク)」を運営しています。主にパン屋さんが大量に作ってしまい売れ残ったパンを全国の消費者に販売できるサービスです。2023年からは「rebakeお楽しみ便」のサブスクリプションサービスも始まるなど、日々進化を重ねています。rebakeには、全国のパン屋さんの15%以上に当たる約1,500店舗が登録しており、消費者のユーザー数は17万人にのぼります。2018年10⽉のサービス開始以降、5年間で800tものパンの食品ロスを削減してきました。また、売上の一部を知床財団や子ども食堂に寄付するなど、社会貢献にも力を入れている企業です。
introduction
近年、食品ロスに対する課題意識が高まっており、削減に向けて取り組む企業も増加しました。
パン屋さんでは当日の販売が予想より少ない場合、品質に問題がないにも関わらず廃棄される商品「ロスパン」が発生し、その量は全体の5〜10%になるといわれます。
クアッガが運営するパンの通販サイト「rebake」は、ロスパンを適正価格で全国に配送するサービスで、食品ロスの削減に貢献しています。
本記事では、rebakeのサービス内容や社会貢献活動の取り組み、私たちが考えるべき意識について詳しくお話を伺いました。
人にも食べ物にも幸せな一生を。廃棄される「ロスパン」の削減を目指す
–まずはクアッガ様の事業内容や経営理念について教えてください。
中島さん:
合同会社クアッガは、人にも食べ物にも幸せな一生を提供することをビジョンに、生産された食品が廃棄されることなく、一定の価値を保ったまま循環できるような経済の仕組みを目指して活動しています。
私たちは店頭で売り切れなかったという理由だけで、品質に問題がないのに廃棄に回ってしまうパンを「ロスパン」と呼んでいますが、それを扱う通信販売プラットフォーム「rebake(リベイク)」を運営しています。また、そこでの売上の一部を慈善団体に寄付することも行っています。
–詳細について伺う前に、クアッガ設立の経緯を教えてください。
中島さん:
弊社の2名いる代表のうち、1名が大学院で環境について学んでいました。学ぶ中で、環境をよく、社会をより良くしながら展開できるビジネスの形を探していたのが設立のきっかけです。また、そのタイミングで、代表の姉がパン屋さんをしていて、どうしても食品ロスが出てしまう仕組みとなっていることに気づき、ロスパンを減らす取り組みを始めました。
実際に私たちが調べたところ、パン屋さんでは平均して、製造した量の5〜10%が廃棄に回ってしまうことが多くなっています。パンはすぐに作れないため、早朝にその日の売れ行きを予測して製造する必要があります。しかし、例えば天気が悪かったり、近くでイベントがあったりして予測よりお客さんが少なくなってしまった場合、どうしてもロスパンが発生してしまうんです。
設立当初はパン屋さんに赴き、その場でロスパンを買い取って街で売り歩く活動をしていました。しかし、それは持続可能ではなく、もっと良いやり方を模索していくうちに、もう1名の代表がエンジニアでもあることで、通販サイトを立ち上げ、今の形になったという経緯です。
–中島さんがクアッガに参画されたきっかけは何ですか。
中島さん:
私はもともと飲食店で働いていました。昔、ビュッフェ形式のレストランでパンの製造を担当したこともありました。その際、ビュッフェで出たパンは再利用できず、余ったら捨てるという作業をしていました。最初は辛かったんですが、だんだん何も感じなくなってしまって…。それに気づいた時に「ちょっとおかしいな」と思うようになりました。その後もいくつか飲食店で働きましたが、食品ロス問題に取り組み、飲食業界をより良くしたいと思いクアッガに参画しました。
パンの通販サイト「rebake」で食品ロスの削減と地元のパン屋さんを支援
–rebakeはどのようなサービスですか?特徴やこだわりを教えてください。
中島さん:
rebakeの利用者はあらかじめパンを予約購入しておき、パン屋さんからロスパンが出たタイミングで消費者に送られる仕組みです。現在の利用者は約17万人、登録しているパン屋さんは1,500店舗を超えています。
パンは冷凍便で配送するため、品質を保ったままお客様の手元に届けることが可能です。とはいえ、生クリームが入ったパンや生のフルーツが使われているパンなどは衛生面の問題があるため、出品できないという基準も設けています。衛生管理は特に大事にしており、お客様に安心して利用していただけるよう努めています。
他にも、お客様からいただいたフィードバックをもとに生まれた「rebakeお楽しみ便」というサービスもあります。これは、私たちが厳選するパン屋さんのロスパンを消費者が受け取れるものです。
どこから届くかわからないワクワク感が楽しめる点がご好評をいただいていて、2021年のサービス開始以来、4万件以上の発送実績があります。
–お客様からどのようなフィードバックがあったのでしょうか?
中島さん:
「注文してからパンがなかなか届かない」という声です。確かに、ロスパンが出たタイミングでパンを発送するというrebakeの基本的な仕組みでは、消費者がロスパンをすぐに受け取れないという問題がありました。これに対応するため、rebakeではパン屋さんのロス情報を管理し、ロスパンが出たタイミングで利用者にすぐに発送できる仕組みを整えました。
2023年からはサブスクリプションモデルも導入し、定期的にパンを届けるサービスとしても拡大しています。
–rebakeはパンを購入したい人と街のパン屋さんにとって、それぞれどのようなメリットがありますか。
中島さん:
rebakeの利用者さんのメリットとしては、全国1,500店舗以上のパン屋さんのパンをお得に取り寄せることができることです。特に、普段行けない遠方のパン屋さんとコンタクトが取れることは、魅力だと思います。というのも、パンを購入すると、パン屋さんとメッセージのやり取りができたり、送られてくる商品の中に手書きの手紙が入っていることもあるんです。オンラインのやり取りだけでなく、人と人との繋がりを感じられるところがrebakeの良いところです。
実際に、「遠方のパン屋さんのパンを取り寄せられる」という声や、「運命のパン屋さんを見つけてリピートしている」という声をいただきます。引っ越して行けなくなったお店のパンが再び食べられることを喜んでいる方も多いですね。外出が難しい方からは、「rebakeでの注文が楽しみ」とお声をいただくこともあります。
パン屋さんにとっては、ロスパンを売ることで、廃棄してしまう分が少しでも収入になり、収益面でもプラスの効果があります。また、自分たちでパンを捨てるという辛い作業をしなくて済むようになる点がメリットですね。
–売上の一部を慈善団体に寄付されているとのことですが、こちらについても詳しく教えてください。
中島さん:
「食べ物も人も幸せな一生を」のビジョンに基づき、サービス開始初期から売上の一部を慈善活動に寄付しています。食を通じて幸せになれる人を増やしたいという想いが根底にあり、私たちの活動がただ利益を追求するだけでなく、社会に良い影響を与えることこそ重要だと考えています。
具体的な寄付先としては、児童福祉施設が挙げられます。特に、子供たちが「今まで食べたパンの中で一番おいしかった」という声を聞くと、私たちが少しでもその生活に良い影響を与えることができたんだと感じます。
また、知床の自然保護活動も支援しています。代表の出身地である北海道にゆかりのある知床財団に寄付を続けており、自然環境の保護にも貢献できることを誇りに思っています。
廃棄食品に対する認識とロスパンのイメージを変えたい
–サービス開始からこれまでに直面した課題を教えてください。
中島さん:
rebakeのサービスを開始した頃、消費者の方から「売れ残りなら無料で寄付すれば良いのではないか」という意見をいただくこともありました。しかし、それではビジネスとしての持続可能性が保てなくなります。私たちは、ただ食品ロスを減らすだけでなく、パン屋さんが適切な対価を得られる仕組みを作ることで、長期的に続けられるサービスを目指しています。
他にも、食品ロスに対する社会的なマイナスイメージが強く、ロスパンがあまりものや価値が低いものだと思われることが課題でした。特に、パン屋さん自身がロスパンを安売りしたり、恥ずかしく感じたりしていたりする場合が多いんです。
そこで、私たちクアッガはパン屋さんの代わりに「ロスパンの教科書」という冊子を作り、ロスパンの価値を伝える役割を果たしています。例えば、ロスパンが生まれる背景や、どうして廃棄されるのかを伝えることで、イメージを少しでも変えるよう努めています。
ロスパンは決して質の悪いものではなく、偶然売れ残ってしまったパンです。これを伝えることで、消費者が安心してロスパンを購入できるようにし、パン屋さんも堂々と販売できる環境を作りたいと考えています。
今後のrebakeの展望。さらなる事業拡大の方針はある?
–今後の展望について教えてください。
中島さん:
私たちの目標は、最終的にはロスパンがなくなる社会の実現ですので、より多くのパン屋さんに参加していただきたいですね。口コミやパン屋さん同士のつながりによって、rebakeの存在が広がり、さらに多くの店舗に参加していただけることを期待しています。そのためにも、店頭で受け取れるようにするなど、より身近で便利なサービスになるよう努力していきます。
また、現在は検討段階ですが、和菓子の分野にも興味を持っています。和菓子屋さんも全国に数多くあり、パン屋と同様に、日々の製造過程でロスが発生している可能性があります。もし和菓子の分野にもロスを減らす取り組みを広げることができれば、rebakeの仕組みをさらに多くの食文化に適用することができるのではないかと考えています。
–パンのお取り寄せ・通販サイトに関して、興味深いお話をいただきありがとうございました。
合同会社クアッガ公式サイト:https://quagga.life/
パンのお取り寄せ・通販サイト「rebake(リベイク)」:https://rebake.me/
PR Times「【rebake】サービス開始より5年間で累計800tのロスパンを削減」:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000076.000040167.html