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動物愛護とは?考え方と動物愛護法、日本・海外の現状と問題点を解説

「動物愛護」と聞いて、あなたは何を一番に思いうかべますか?

  • 可愛いペットとの幸せな時間
  • 殺処分される猫や犬がいる現実
  • 動物園のはるか遠くの国から来た動物たち
  • ホームセンターのペットコーナー
  • 絶滅危惧種の保護

など、人によってさまざまです。それでは実際に動物愛護とは、どのような活動なのでしょうか?

博物館で働く筆者は動物も植物も大好きですが、一方で職業柄たくさんの標本(データのある死骸とも言えます)を扱っています。このような犠牲は私たちの知識の糧として感謝とともに大切に管理し、尊く思っています。

多数の動物の飼い主でもある筆者とともに、あらためて「動物愛護とは」どのようなものかを考えてみましょう!

動物愛護とは

出典:Spaceship Earth

動物愛護とは、動物の命の尊厳を守り、不必要に殺したり苦しめたりすることのないように扱い、その生態や習性を理解して適切な管理をすることです。しかし、動物に対する考え方は個人差があり、意見の合わない人同士でトラブルが起こってしまうこともあります。

私たちは、今後どのように動物たちと暮らしていけばいいのでしょうか?動物と人間社会の関わりを、人類学的歴史や現在の状況、将来的な展望と共に考えていきましょう!

私たちの生活を豊かにする存在としての動物

私たち人間は生物多様性の中で特殊な存在でありつつも、他の生き物と複雑に関わり合いながら生きています。都会に住んでいると実感する機会が少ないかもしれませんが、人間社会は他の生き物を含めた自然の恵みを受けて生きているのです。

【ラスコー洞窟の壁画】

私たち人類が登場して以来、動物は獲物・家畜(家畜は財産としても重要)などとして、また愛玩動物(ペット)としてかけがえのない存在でした。食料としての恩恵だけでなく、寄り添って暮らす存在として私たちの心にさまざまな影響を与え続けています。

このような感情は私たちの心に安らぎを与えたり、芸術的なインスピレーションを与えたりもします。

【子供の成長にも大切な動物の存在】

筆者撮影

このような人間社会と動物との関わりは、旧石器時代の洞窟壁画から現在の子どもたちの絵画に至るまで広く確認することができます。その中でも特に動物の飼育と愛玩動物(ペット)について、考えていきましょう。

人間と動物の共に暮らしてきた歴史

人間が動物と生活してきた歴史は、

  • 3万年前…石器時代の遺跡からホラアナグマの飼育跡(洞窟の中の檻)が発見される
  • 3万年〜1万5千年前…オオカミ(イヌ)の家畜化が各地で始まる

といったように古く、これ以降さまざまな動物が哺乳類・鳥類を中心に家畜として飼育されるようになり、中には珍重される動物も出てきました。

愛玩動物(ペット)として飼育された明確な最古の記録は、5千年ほど前の古代エジプトでピューマが飼われていたものです。また、南米の古代文明ではインコやサルが飼われていました。

【古代エジプトのネコのミイラ:大英博物館】

上の写真のネコのミイラの装飾からも、ネコが大切に扱われていたことがわかります。動物とともに歩んできた歴史が分かったところで、現在の日本におけるペット飼育の動向について確認しましょう。

日本のペット飼育の現状・考え方

一般財団法人ペットフード協会の調べでは、2021年の全国の犬と猫の飼育頭数は

  • 犬…710万6千頭
  • 猫…894万6千頭
    (猫の飼育頭数に外猫の数は含まれていません)

という結果でした。犬の飼育頭数は減少傾向にある一方、猫の飼育数は緩やかに増加傾向にあるようです。

ペットは家族といった考え方

出典:Spaceship Earth

先ほどのペットフード協会の調査で、興味深い結果が報告されています。ペットと飼い主の関係性の変化を調べたもので、特に猫飼育者にとっては「生活に喜びを与えてくれること」として順位づけするアンケートにおいて、1位「ペット(猫)」2位「家族(人間)」の順となったのです。

7.ペットと飼い主の関係性の変化 (P.50)

 生活に喜びを与えてくれることとして、犬飼育者にとって「家族」、「ペット」の順、猫飼育者 にとっては「ペット」、「家族」の順となりました。特に40~50代、単身、未婚親同居者に とってはその特徴が顕著となりました。

引用:一般財団法人ペットフード協会「2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査 結果』(2021年12月)

もちろん好きでネコを飼っている人を対象に行った調査ですから、猫の存在の重要性が大きくなりがちなのは当然です。しかし、多くの飼育者にとってペットの動物は、より重要な存在になっている傾向があります。*1)

続いての章では、法律の面から動物愛護への知識を深めていきましょう!

動物愛護管理法

環境省は、動物の愛護と適切な管理のために1973年に「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)を制定し、以降4度にわたって法改正を行ってきました。その内容を簡単に確認しておきましょう。

基本原則や動物愛護週間について記載されている

この法律では、

  • 第一章:目的、基本原則、普及啓発、動物愛護週間
  • 第二章:基本指針、動物愛護管理推進計画
  • 第三章:動物の適正な取扱い(動物の所有者・販売業者の責務・周辺の生活環境の保全など)
  • 第四章:都道府県などの措置(都道府県の責任・役割など)
  • 第五章:動物の殺処分、獣医師の責任、表彰、情報提供
  • 第六章:罰則

という構成で、現代社会で人間と動物が共存して行くための指針や責任、罰則などが定められています。

令和元年6月に改正された動物愛護管理法

この法律は、国際的な風潮や新たに浮上した問題などに対応していくため、施行して5年が経つと見直すことが決まっている条項が規定されています。特に、

  • 子犬・子猫の販売などの制限(販売日齢の規則)
  • マイクロチップの装着の義務づけ

この2つに関しては必要な検討を行うことが規定されています。

2019年(令和元年)6月には、動物取扱業者のさらなる適正化と動物の不適切な取扱いへの対応の強化のために、

  1. 動物の所有者などが遵守すべき責務規定の明確化
  2. 第一種動物取扱業者※による適正飼育等の促進など
  3. 動物の適正飼育のための規則の強化
  4. 都道府県などの措置等の拡充
  5. マイクロチップの装着など

が、主に改正されました。

第一種動物取扱業者

取次・代理を含む動物の販売・保管・管理・貸し出し・訓練・展示・競り(せり)あっせん※、譲受飼育を業として行う法人・個人のこと。

※競りあっせん…オークションの運営者

動物愛護管理法の令和元年改正ポイント

この改正で注目すべきは、動物を飼育・管理・販売などに対して所有者・販売者が負うべき責任を明確にしたことです。現状でも、

  • 所有者のいない猫・放し飼い猫による排泄物や小動物への危害、鳴き声の被害
  • 珍しい動物の密猟・密輸・不法な取引・不法な飼育
  • 遺棄されたり逃げ出した動物の生態系への影響・農家や住民への被害
  • ペットの遺棄、虐待、殺処分、動物実験
  • 近隣住民へのマナー

など、動物の飼育・管理・販売などにまつわる問題は少なくありません。これらの解決のため規制や罰則の強化も行われました。

具体的には、

  • 出生後56日を経過しない犬・猫の販売などを制限する
  • 適正な飼育が困難な場合の繁殖防止の義務化
  • 特定動物(危険動物)に関する規制の強化
  • 動物虐待罪に対する罰則の引き上げ
  • 都道府県への動物愛護センター業務への規定
  • 犬・猫のブリーダーへのマイクロチップの装着・登録の義務化
  • 登録を受けた犬・猫を所有した者への変更届の義務付け
  • 獣医師による虐待の通報の義務化

などが挙げられます。「軽い気持ちで動物を飼い始めて捨てる」、「利益ばかりを追求した犬・猫の販売」、「動物の尊厳を尊重しない管理」などができないようにする社会を目指しているのです。*2)

日本政府の動物愛護の方針を確認したところで、次は私たちにできることを考えていきましょう。

私たちにできる動物愛護

それでは、私たちにできる動物愛護はどんなことでしょうか。動物を可愛いと思う心や好奇心で動物と関わると同時に、

  • その動物がそこにいる背景
  • 生態系での役割
  • 人間との歴史
  • 科学的な観点でのその動物の生態

など、まずはその動物のことを深く知ることから始め、正しい知識で動物愛護に取り組みましょう!

【動物の福祉】科学的な生態を尊重する

動物の福祉とは、科学的な根拠に基づいて、動物が幸せに過ごせる環境を整えたり、できるだけ動物のストレスにならない接し方をしたりすることです。誤った飼育や接し方は、動物にストレスを与えてしまい、結果的にトラブルの原因になることもあります。

【東山動植物園:ゾウのふるさとスリランカをイメージしたアジアゾウ舎】

動物園の例では、以前はレジャー施設としての役割が強かった一方、近年では

  • 希少動物の保護・繁殖
  • 生態や環境についての教育
  • 種の保存のための研究

など、レジャー以外のさまざまな役割が重視されています。このため日本各地の動物園で、動物の福祉に基づいた改修工事が進められています。例えば札幌市では、動物園条例として

  • 一部の触れ合う施設を除き餌やりなど直接接すること禁止
  • 人を模したような恰好・行動をさせること禁止

などを定めています。

動物によるショーも、「動物の能力を活かし動物自体が楽しんで取り組めるようなものであれば問題はない。しかし、不自然な動作を訓練して教え込むようなものは、動物の尊厳を大切にしているとは言えない。」という考え方があります。

飼う前に考える

ペットを飼い始めることは新しい家族をむかえることです。そのため飼う前に様々な観点から、ペットと一緒に生活するイメージを持つ必要があります。

具体的に、福岡市の犬猫の殺処分ゼロを目指す活動「ずっといっしょ」に示されている飼う前に考える10のチェックポイントを見てみましょう。

  • 毎日散歩に連れて行く時間や体力はありますか?
  • ペットを飼える家に住んでいますか?賃貸の場合、「ペット可」と規約に書いてありますか?
  • 家族みんなが動物が好きですか?ペットをむかえることに賛成していますか?
  • 家族の誰かに動物アレルギーはありませんか?
  • 転勤や引越しの可能性はありませんか?
  • 1日数回ごはんを食べさせたり、トイレの後始末を10年以上続ける自信はありますか?
  • 毎日のごはん代、毎年のワクチン、もしものときの治療費などにお金をかけられますか?
  • ご近所のみなさんにも愛されるよう、しつけができますか?
  • ペットが高齢になり寝たきりや認知機能障害になったとき、介護をする自信がありますか?
  • あなたにもしものことが起こった時に、代わりにペットの面倒をみてもらえる方はいますか?

結構多いと感じた人もいるかもしれません。しかし、ペットを新しくむかえるにあたって具体的にしっかりと考えるべきことが適切に挙げられています。

マイクロチップの存在を知る

【環境省:マイクロチップ義務化のパンフレット】

2022年6月1日から、ブリーダーやペットショップなどで販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されました。これ以降、ペットショップなどで販売される犬・猫にはマイクロチップが装着されています。そのため、飼い主になったら装着されているマイクロチップの情報を変更する必要があります。

【犬と猫のマイクロチップ装着・登録の全体像】

これにより災害時や迷子になったとき、マイクロチップに情報が登録されていれば、飼い主に連絡することができます。また、無責任な飼い主がペットを捨てる行為への抑止力にもなります。

災害などに備える

災害時にペットを守る方法を考え、いざという時にペットと家族が安全に避難できるように備えましょう。突然、災害が起きて避難生活をすることになっても過ごしていけるような心構えや、できる範囲でのトレーニングが必要です。

環境省の災害時にペットを守るための啓発では、

  • ケージを固定するなど住まいの防災対策
  • 家族や近所との災害に備えた話し合い
  • 避難所の場所など情報収集と避難訓練
  • 一緒に連れて逃げられる頭数しか飼わない
  • 猫は室内飼いを徹底(外にいると連れて行けない)
  • 迷子札やマイクロチップなど所有明示の徹底
  • 不妊去勢をしておく(ストレス軽減と繁殖の防止)
  • ワクチンなどの健康管理
  • ケージに入る、むやみに吠えないなどのしつけ
  • 人や他の動物に慣らしておく
  • (災害時に想定される)様々な音やものに慣らしておく

などを日ごろから備えとして呼びかけています。このような緊急時への備えも飼い主の責務として法律※で定められています。

※「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」という法律で、ペットの災害への備えが飼い主に義務付けられています。

地域猫活動について知る

【日本動物愛護協会:地域猫活動】

地域猫とは、飼い主のいない猫を放置するのではなく、猫が苦手な人にもある程度許容されるような「地域猫」として、地域の住民の手で一定の管理をしていこうという考え方です。放し飼いの猫・飼い主のいない猫は、排泄物の問題や鳴き声の問題、また家畜やペットとして飼われている小動物に被害を与える事故など、多くの問題を抱えています。

一方で、可愛いから餌をあげる人が存在します。この問題を解決するために、

  • 増やさない…捨てない、すでにいる飼い主のいない猫に不妊・去勢手術をする
  • 猫の外飼いをしない…飼い主の管理が届かない状況を作らない

など、迷惑を受けている人・餌やりを続けている人の双方が意見を交わしながら具体的な活動方針を決めて、飼い主のいない猫を管理します。

【地域猫活動のポスター:福岡市】

猫(イエネコ)はリビアヤマネコまたはヨーロッパヤマネコが起源と考えられている、人の手によって持ち込まれた外来の肉食獣です。その土地の生態系に影響を与えるだけでなく、猫自身も自動車や電車などの人間社会の脅威にさらされることになります。

猫は屋内で飼うことを徹底するのが飼い主のマナーと責任です。地域猫活動は、人為的な理由※でそこにいる「飼い主のいない猫たち」への倫理的な扱いと「飼い主のいない猫をこれ以上増やさない」方針の妥協点とも言えます。

人為的な理由

ここでは自らの意思とは関係なく、人の手によって他の場所から持ち込まれ、遺棄・放し飼いによる野外での繁殖などで生まれた猫のこと。猫のほかにもアライグマやアメリカザリガニなど多数の例がある。

犬・猫の里親募集サイトを利用する

飼い主のいない犬・猫の里親を募るサイトを開いたことはありますか?そこには応募可能な地域別に、写真と紹介付きでたくさんの犬や猫が掲載されています。

保護施設に何件も行かなくても、インターネットを利用して気になる犬・猫を見つけてから会いに行くこともできます。代表的なペットの里親サイトをいくつか紹介します。

【anifair(アニフェア)】

  • 扱っている動物:犬
  • 2022年11月時点での累積譲渡数:10,553頭

全国300以上の動物病院と提携する犬専門の里親募集サイト。それぞれの犬への愛情あふれるプロフィール作成も特徴的です。

【hugU(ハグー)】

  • 扱っている動物:犬・猫・ウサギ・その他の小動物・鳥・魚・爬虫類
  • 2022年11月時点で累積譲渡数:7,000件

猫・犬以外の動物も扱っています。犬・猫は種類別に検索もできます。

【ペットのおうち】

  • 扱っている動物:犬・猫・ウサギ・その他の小動物・鳥・魚・爬虫類
  • 2022年11月時点で累積譲渡数:213,253件

無料のペットプロフィール登録サービスがあり、災害時や迷子の時など万が一の時に保護者に伝えたい情報を登録しておくことができます。保護活動をサポートするプロジェクトや、動画付きの里親募集情報もあります。

【OMUSUBI(お結び)】

  • 扱っている動物:犬・猫
  • 2022年11月時点での累積譲渡数:記載なし

全国で200以上の保護団体が登録している犬と猫の里親募集サイト。種類別に探すこともでき、アプリで相性診断サービスなどもあります。

飼い主を探している動物は常にたくさんいるのが現状です。特に犬・猫の里親募集情報は多いので、ペットを迎える決心をしたら、ペットショップで購入するという選択の前に、一度このようなサイトを覗いてみましょう。

動物愛護センターから引き取る

各都道府県が運営する動物愛護センターからもペットを迎えることができます。基本的には犬と猫を取り扱っています。

近年では、犬や猫の殺処分を減らす取り組みも広がり、日本では犬・猫の里親が見つかる割合は年々増加しています。譲渡数全体の数は減少傾向にあり、犬・猫の繁殖数の適正化も進んでいることがわかります。*3)

【全国の犬・猫の返還・譲渡数の推移】

次の章では、この動物愛護センターについてもう少し踏み込んで解説します。

動物愛護センターとは

動物愛護センターとは、動物愛護管理法に基づいて、各都道府県に設置される機関です。どのような事業が行われているのか確認していきましょう。

動物愛護センターの事業内容

動物愛護センターの業務内容は、先ほど紹介した「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)の他に、

  • 狂犬病予防法
  • 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
  • 化製場※等に関する法律
  • 各都道府県の条例

などに基づく事業を行なっています。東京都の動物愛護相談センターの例では、

  1. 動物愛護と適正飼育の普及啓発
  2. 動物の保護と管理
  3. 動物取扱業、特定動物の監視・指導
  4. 人と動物との共通感染症の予防・調査等
  5. 畜舎等の監視指導

などが業務内容として挙げられています。

化製場

動物(主に牛・馬・豚・羊などの家畜)の肉・川・骨・臓器などを原料にして皮革・にかわ・肥料・飼料などを製造する施設。または死亡した動物を解体し、埋却・焼却する施設(死亡獣畜取扱場)。

【全国の犬・猫の引取り数の推移】

上のグラフからもわかるように、全国で動物愛護センターに引き取られる犬・猫の数は年々減少傾向で、迷子の犬・猫の飼い主へ変換される確率と譲渡(里親が見つかる確率)が上がっているので、その成果もあり殺処分される犬・猫の割合も減少傾向にあります。

動物愛護センターが目指す殺処分を減らすための3つのポイント

動物愛護センターは環境省の指導により、殺処分を減らすための取り組みを推進しています。環境省の「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」ではそのための3つのポイントが示されています。

【人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトのロゴ】

ポイント1:飼い主・国民の意義の向上

犬猫の適正な買い方や管理を浸透させ、飼い主の責任を徹底する意識などを向上させるための活動を推進します。例えば教育活動や広報活動によって、飼い主の責任や命の大切さについての理解を広げます。

ポイント2:引き取り数の削減

無責任な飼い主をなくすために、「飼い主の責任」を徹底し、安易な購入・飼養と遺棄を防止します。また、飼い主のいない犬猫への対策として、

  • 不妊去勢措置の徹底
  • 猫の室内飼育
  • 無責任な餌やりの防止
  • 子犬・子猫の適正な取扱いの推進
  • 地域猫活動(後述)の推進

などの活動を推進しています。

ポイント3:返還と適正譲渡の推進

返還では、マイクロチップや迷子札などの装着の徹底により、迷子の犬猫を確実に飼い主に返す活動を推進します。また、譲渡では

  • ボランティアとの連携による譲渡
  • 自治体の管轄区域を越えて広い地域で譲渡

を推進します。

【全国の犬・猫の殺処分数の推移】

このような活動により、全国の犬・猫の殺処分数は年々減少傾向にあります。そして、最終的には不要な殺処分ゼロを目指しています。

動物愛護センターの取り組み事例

それでは実際に行われている動物愛護センターの取り組み事例を紹介します。

京都府:子ども達に命の大切さを教える教室

近年、動物飼育禁止マンションやバーチャルゲームの普及など、子どもを取り巻く環境が変わりました。これにより、動物と実際に触れ合う機会の少ない子どもや、必要以上に動物を怖がる子どもが増えています。京都府ではゲーム・動物愛護の授業・小動物と実際に触れ合う体験・教材配布などで構成された動物愛護教室を幼稚園児から小学生を対象に行なっています。

【動物愛護教室の様子】

この教室を通して子どもたちは、動物が実際に「生きている」ことを体験できます。京都府の動物愛護教室は希望する小学校が殺到し、調整に苦労するほど好評です。

神奈川県:「それが大事〜ぺットのいのちバージョン〜」の制作

近年のネット社会到来と、YouTube動画の人気を背景に、神奈川県は多くの著名人やボランティアの人々の協力を得て、殺処分ゼロを目指し犬や猫を最後まで飼うことの大切さを訴えるPR動画を制作しました。

誰でも手軽に視聴できるYouTube動画で1人でも多くの理解を広げるとともに、今後の動物愛護のイベントなどにも活用される予定です。

【「それが大事〜ペットのいのちバージョン〜」のオープニング】

普及啓発動画「それが大事~ペットのいのちバージョン~』

各都道府県ではそれぞれに動物愛護センターが様々な活動を推進しています。あなたの住む場所の動物愛護センターのホームページを、ぜひ一度見てみましょう。

あなたの身近でも、気軽に参加できるイベントや活動が見つかるかもしれません。*4)

続いての章では、一般的な知識として、過激だと指摘されることがある動物愛護団体などにも触れていきます。さまざまな意見の飛び交う話題ですが、あなたはどのように感じるでしょうか?

過激な動物愛護団体と倫理的ヴィーガンについて

「どのような動物をどれくらい身近に感じるか」、「その動物が自分にとってどのような存在か」は人それぞれです。時に動物に対しての庇護欲が高まり、他人個人や企業・研究機関・地方自治体や国に抗議を行う団体も存在します。

また、動物を守る行動の一環として「肉食をしない」という選択をする人もいます。これらの人々の考え方について簡単に知っておきましょう。

過激な動物愛護団体の存在

自分や団体の考え方を主張することは自由ですが、例え動物を守るためであっても、法律で許されないような暴力的な手段で行うと問題になってしまいます。

動物愛護は、私たちが力を合わせて動物と人間が幸せに暮らせる社会を目指すものです。不幸な動物が減るように、科学的な知識や倫理に則った取り組みが求められます。その一方で、過激な活動で人間を含む別の動物を不幸にしないよう配慮が必要です。

【毛皮を着ることに抗議する動物愛護団体:ヘルシンキ】

※上の写真は動物愛護団体による毛皮利用への抗議です。雪の積もるヘルシンキでボディペイントをして「動物だけが毛皮を着るべき」というスローガンを掲げています。

過去には、

  • 毛皮利用への抗議のためにファッションショーのランウェイに塗料を投げ込む
  • カナダのアザラシ漁への抗議のため、漁業担当大臣の顔にパイを投げつける
  • アイスランドの鯨加工工場が爆破される
  • 捕鯨船や漁船に発砲

などの事件が起きています。

倫理的ヴィーガンについて

倫理的ヴィーガン(倫理的菜食主義)とは、一般的に

  • 動物を殺すこと自体に反対するために菜食主義を選択する人
  • 畜産動物の生産の環境に問題があるとして菜食主義を選択する人

などを指します。畜産のあり方については倫理面でも環境面でも様々な議論がされています。

しかし私たち人間は元々雑食性の動物なので、植物だけで必要な栄養を確保するのは大変です。また、植物も生きているということを考えた際、線引きが難しいと感じる人もいるでしょう。

無益な殺生はもちろんしてはなりませんが、私たち人間だけでなく動物全てが、生きるためには他の命を食べていかなくてはならないことも事実です。この事実を真摯に受け止め、大きな生命の循環の中の一員として生きていることを知る必要があるかもしれません。

「動物愛誤」にならない

「動物愛護」のつもりが「動物愛誤」になってしまわないよう、あなたの動物を守るための行動が、誰かに迷惑をかけたり他の生き物が犠牲にならないように注意しましょう。例え自分の考え方に反する行為への抗議であっても、抗議される側の尊厳を無視した方法は控えましょう。

日本でも、SNS上でこのような過激な動物愛護団体や倫理的ヴィーガンなどから猟友会のメンバーなどが誹謗中傷を受けている場面を見かけることもあります。しかし、動物を守るためであっても、誰かに誹謗中傷を浴びせたり、強要したりするのは相手の尊厳を無視した暴力的な行為と言えるので、歩み寄るためにはどうすれば良いかを考えていきましょう。

まとめ:動物と人、どちらの尊厳も大切に!

動物愛護とは動物と人間が幸せに暮らせる社会の構築を前提に、不幸な命が少しでも減り、最終的には不要な殺処分ゼロを目指すものです。また、動物と共存することで、人間社会にさらなる多様性が生まれます。

しかし、中には動物のアレルギーがある人や、過去の経験などから動物が苦手な人もいます。これらの人々に無理を強いたり不快な思いをさせないような配慮も忘れないでください。

動物愛護においてまず大切なのは、正しい知識と責任を持つことです。その上で、動物と人のどちらの尊厳も大切にしましょう。

不幸な命を減らし、幸せに動物と共存する社会が実現すれば、きっとあなたの生活の幸福度も上がるでしょう。そのためには、あなたの理解ある行動が必要なのです。

〈参考・引用文献〉
*1)動物愛護とは
環境省『動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針』(2020年改正)
WIKIMEDIA COMMONS『Lascaux painting』
WIKIMEDIA COMMONS『BM EA 6752, 26847』
一般財団法人ペットフード協会「2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査 結果』(2021年12月)
*2)動物愛護管理法
環境省『動物の愛護と適切な管理』
環境省『動物の愛護及び管理に関する法律(昭和 48 年法律第 105 号)』(2019年6月改正)
福岡県『第一種動物取扱業を営むには登録が必要です』
*3)私たちにできる動物愛護
日本動物愛護協会ホームページ
東山動植物園『ゾージアム』
NHK『ミガケ好奇心!時事もんドリル 動物の福祉で変わる動物園』
福岡市『ずっといっしょ むかえる』
環境省『購入した犬や猫のマイクロチップ情報の登録が義務になります』
環境省『犬と猫のマイクロチップ情報登録について』(2022年10月)
日本動物愛護協会ホームページ
日本動物愛護協会『地域猫活動について』
福岡市『「地域猫活動」でのら良猫トラブルの解決を目指しましょう』
hugUホームページ
anifairホームページ
ペットのおうちホームページ
OMUSUBI(お結び)ホームページ
環境省『犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況』(2020年4月~2021年3月)
*4)動物愛護センターとは
東京動物愛護相談センター『業務案内』
環境省『犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況』(2020年4月~2021年3月)
環境省『人と動物が幸せに暮らすための社会の実現プロジェクト アクションプラン』
環境省『人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト 事例紹介』
「それが大事~ペットのいのちバージョン~』https://youtu.be/PPX_pKiGJ7s
*5)過激な動物愛護団体と倫理的ヴィーガンについて
WIKIMEDIA COMMONS『PETA body paint protest in Helsinki cropped』
北九州市動物愛護センター『犬のしつけ方教室』