まちや河川、海岸で、きれいな地球を守っていくゴミ拾いボランティア。
「ボランティア」と言うとハードルが高く感じるかもしれませんが、ゴミ拾いボランティアは、誰でも気軽にできる社会貢献活動です。身近に落ちているゴミを拾うだけでも、まちなかのゴミを減らし環境を守ります。この些細なアクションがきれいな地球を守ることに繋がっているのです。
本記事では、ゴミ拾いボランティアについて概要や目的、メリットをご紹介します。また、ゴミ拾いをしてみたい人へ向けて探し方やおすすめの団体も詳しくみていきます。ぜひ、ゴミ拾いボランティアについて知り、参加する機会にしてみてくださいね。
目次
ゴミ拾いボランティアとは
ゴミ拾いボランティアとは、無償でまちなかや海岸、イベント会場などに落ちているゴミを拾う活動です。活動体系は、NPOや個人、イベント運営者など様々です。北海道から沖縄まで全国各地でゴミ拾いボランティア活動が行われており、一人はもちろん、親子連れや友達同士でも参加できます。
SDGsの台頭でよりゴミ拾いが活発に
このように誰でも気軽にできる社会貢献であるゴミ拾いですが、昨今SDGsの台頭により活発になってきています。
SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された国際的な目標で、世界が抱える様々な課題の解消を目指しています。国内のSDGs認知度調査では、2018年の14.8%から2022年86%に上昇しました。
認知度が過去4年間で約5.6倍に上がり、現在ではSDGsが広く世間に知れ渡っていることが分かります。SDGs認知者の中でも実践意欲が高い層は36.9%に上り、地域貢献やボランティア、NPO活動などのSDGsに関する市民活動に参加する傾向にあります。
特に、90年代後半から2010年代前半に生まれた、いわゆるZ世代が、市民活動の参加に意欲的です。
ゴミ拾いボランティアの2つの目的
SDGsの台頭を背景として、ゴミ拾いボランティアなどの市民活動が活発化をみせる中で、ゴミ拾いボランティアには、
- まちをきれいにし、海への流出も防ぐ
- 啓発
といった2つの目的があります。1つずつ見ていきましょう。
まちをきれいにし、海への流出も防ぐ
第一にゴミ拾いボランティアは、
- 空き缶
- タバコ
- 紙くず
- プラスチックゴミ
などのゴミを拾ってまちをきれいにし、公衆衛生を保つことが大きな目的です。
もしゴミを拾わなかった場合はどうなるのでしょうか。
陸地で拾われなかったゴミは、風や雨により水路や河川へ流れ、海岸に漂着したり、そのまま海へ流出したりします。実は海に流れでるゴミ(海洋ゴミ)の約8割は、陸から流されてきたものだと言われています。2010年のデータにはなりますが、陸上から海洋に流出したプラスチックゴミ発生量は、年間6万トンにものぼります。ゴミ拾いボランティアで、プラスチックゴミを拾うことの意義は大きいでしょう。
啓発
ゴミ拾いボランティアの活動は啓発にもつながります。参加者自身がゴミ拾いを経験することで、
- ポイ捨てをしない
- 集積所に捨てる
- ゴミの分別を守る
など、ゴミの捨て方の見直しに加えて「そもそもゴミを生み出さないようにする」という意識付けとなります。
また、自身の経験を家族や友人に伝えることで、その輪が広がることも期待でき、多くの人を巻き込んだ活動に発展させることができます。
続いては、ゴミ拾いボランティアが活動している主な3つの場所を紹介します。活動場所ごとにそれぞれのメリットや注意ポイント、関連するボランティア団体もまとめています。
ゴミ拾いボランティアの活動・活動場所①海岸
まず紹介するのは海岸です。海岸のゴミ拾いはビーチクリーンと呼ばれており、これに特化した団体も数多く存在します。
活動場所
活動場所は、主に海水浴で賑わう砂浜で行われます。海岸線に沿ってゴミを拾う団体を目にした方も多いと思います。また、人が立ち入らない場所にもゴミが溜まっていることもあるため、徹底した安全管理のもと活動しているケースも見受けられます。
活動内容
海岸では、砂浜に流れ着いたゴミを始め、
- 漁網や釣り糸などの漁業で出るゴミ
- 海岸でのポイ捨てゴミ
などを拾います。さらに、波の力や紫外線を受けたプラスチック(マイクロプラスチック)が砂に紛れているため、これらも一つ一つ拾い集めます。
海岸でゴミ拾いをするメリット
海岸でゴミ拾いボランティアを行うメリットは、「海洋汚染の現状を知れる」ことです。特にマイクロプラスチックは、海の生物が餌と見誤って食べてしまったり、食物連鎖で最終的にその魚を食べた人間の体内でも確認されたりなど、大きな問題となっています。このような現状がわかれば、プラスチックフリーな生活を取り入れるきっかけとなるでしょう。
注意ポイント
海岸でのゴミ拾いの注意ポイントは、服装と日焼け止めです。サンダルでの参加は問題ありませんが、砂浜を歩くことで足元が砂まみれになる、潮を受けて体がベタつくなども多いに考えられます。服や靴が汚れてしまうことが気になる人は、替えの服装があるといいでしょう。
また、海岸は日差しも強いため日焼けには注意したいところです。対策として日焼け止めの使用が挙げられますが、可能な限り自然由来で海に優しいものにすると、なお良いでしょう。
ボランティア団体
海岸清掃に特化したボランティア団体は全国にありますが、中でもビーチクリーンや海ゴミ問題の専門団体が「かながわ海岸美化財団」です。1991年に設立以降、県や市と連携し、神奈川県横須賀市から湯河原町150kmの海岸清掃に取り組んでいます。
ゴミ拾いボランティアの活動・活動場所②河川
次に、河川でのゴミ拾いボランティア活動をみていきましょう。
活動場所
河川敷沿いの道や生い茂った茂みの中、ゴミ捨て場周辺などを活動場所とします。
活動内容
河川敷沿いで、
- まちから河川へ流れ着いたゴミ
- 茂みの中のポイ捨てゴミや不法投棄されたゴミ
などを回収します。
河川でゴミ拾いをするメリット
河川でのゴミ拾いのメリットは、海岸同様に「河川のゴミ問題を知れる」ことです。海岸付近とは異なる川に住む生き物や水質への影響を目の当たりにします。生き物と川を守るきっかけとなるでしょう。
注意ポイント
雑草の生い茂る場所では、草木で怪我をする可能性があったり、虫に刺されたりすることがあります。そのため、河川で雑草の生い茂る場所を清掃する時には、肌の露出を控える、虫除けをするなどの対策が必要です。
ボランティア団体
東京都荒川を拠点にする清掃団体「荒川クリーンエイド・フォーラム」は、26年間荒川のゴミを拾ってきました。百聞は一見にしかずをモットーに、365日誰もがゴミ拾いをできる環境を整えています。さらに、YouTubeチャンネルにてゴミ拾いの楽しさを発信しています。
ゴミ拾いボランティアの活動・活動場所③まちなか
3つ目は、まちなかでのゴミ拾いボランティアです。
活動場所
人で賑わう繁華街などの中心街や公園などを活動場所とします。
活動内容
まちなかでは、ペットボトルやタバコの吸い殻など、ポイ捨てされたゴミを拾います。また、道路脇のツツジなど植物が生える場所にも、運転ドライバーが窓から投げ捨てたり、不法投棄された家電などが落ちていたりすることもあり、隠れたゴミが多くあります。
街中でゴミ拾いをするメリット
まちなかでのメリットは、街行く人への啓発にもつながることです。特に人混みの多い場所や通りならば、多くの人の目につきます。ゴミ拾いの取り組みを見た人が多くいるほど、活動を知ってもらう機会につながり、将来的に参加してもらえる可能性も秘めていますよね。
また、人との交流が盛んです。道を歩いて進むので、河川や海岸に比べて狭まった範囲内でのゴミ拾いとなります。そのため、参加者同士の距離が近くコミュニケーションを取りやすくなるため、意見交換の場としても活用できるでしょう。
注意ポイント
歩行者や自転車に乗った通行人の邪魔にならないようにしましょう。ゴミ拾いは目線が下に向くため、周りの状況を忘れがちになります。ゴミを拾うことに集中しすぎないように、周りへの配慮を忘れずにしてくださいね。
ボランティア団体
まちなかのボランティア団体のうち、原宿表参道発信のプロジェクト「Green Bird」は、「街を汚すことはカッコ悪い」と働きかけ、まちをもっときれいにカッコいい街することを目指しています。Green Birdの取り組みは2002年に始まって以来、日本各地と海外へも波及。さらに、ただゴミ拾いで終わるのではなく、人々に関心を持ってもらえるように、ゴミ拾い×タピオカ、ゴミ拾い×ワールドカップなど、ゴミ拾いの魅力を日々工夫している団体です。
当サイトでもインタビューを行っています。興味のある方はこちらも合わせてお読みください。
>>認定NPO法人グリーンバード|街をキレイにするだけではない。これがゴミ拾いの面白さ
ゴミ拾いボランティアの探し方
ここでは、実際にゴミ拾いボランティアに参加してみたいと思った方へ団体の探し方をご紹介します。
プラットフォーム
まずは、ゴミ拾いボランティアを募集しているプラットフォームを利用して探しましょう。ゴミ拾いの開催イベントを簡単に探せるプラットフォームの一つであるBLUE SHIPは、きれいな海を目指しており、海岸清掃を中心に豊富なボランティア活動が掲載されています。自分が住む近所や参加してみたい地域を都道府県別や日程指定して探すことが可能です。
SNS
インスタやツイッターなどのSNSでハッシュタグ検索をすることもおすすめです。「#ゴミ拾いボランティア」など、関連しそうなキーワードで検索してみましょう。SNS検索では、団体の活動が写真で視覚的に入るので、初めてゴミ拾いボランティアに参加したい人にとって参考になる情報が多いという利点もあります。
ゴミ拾いボランティアは子ども・中高生・大学生個人でもできる
ここまでゴミ拾いボランティアについて詳しく見ていきましたが、団体などの活動に参加せずとも、身近なところからゴミ拾いは始められます。学校帰りや休みの日など、気がついた際にゴミを拾うようにしましょう。
また、個人がゴミ拾いを行う場合、自治体からゴミ袋や道具の提供を受けられることもあるため、簡単にその内容を紹介します。
ゴミ袋や清掃用具の貸し出しもある
自治体では、個人でのゴミ拾いボランティア向けに清掃用具の貸し出しを行なっています。自治体によっては、清掃活動の申請や報告書の作成が必要です。また回収したゴミの処理は、ゴミ置き場があるのか、それとも、個人で処理をするのかなど、事前に確認しておきましょう。自治体によって個人の清掃活動の対応は異なるため、ゴミ拾いをしたいと考えている自治体のホームページをご確認ください。
まとめ
陸から生まれたゴミは、まちから河川へ、河川から海へ流され、海を汚しています。しかし、昨今では、SDGsの台頭によってZ世代を中心にゴミ拾いなどの市民活動が活発になってきました。
ゴミ拾いボランティアは、街中、河川、海の三ヶ所で清掃団体のもと活動が行われています。昔から活動してきた清掃団体も多く、ゴミ拾いをする機会を市民に提供してきました。
その一方で、団体のイベントに参加するだけでなく個人でゴミ拾いを行うことも可能です。無料でゴミ用具を貸し出す自治体もあります。
子どもから大人まで幅広い層が気軽にできる市民活動、ゴミ拾い。まちや河川、海からゴミを無くしてきれいな地球を作っていきましょう。ぜひ、自分に合ったスタイルでゴミ拾いボランティアをしてみてはいかがでしょうか。
<参考>
東京ボランティア レガシーネットワーク
環境省 令和元年度 「ポイ捨て」に関する調査 報告書
ELEMINIST 【ごみゼロ月間】海ごみの8割は街で生まれている 都市で出たごみが海に行きつくまで
Mitsui Chemicals 海ごみはどこからやってくる? 〜オープンイベント実施報告〜
環境省 海洋プラスチック問題について
環境省 一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について
厚生労働省 ボランティアについて
電通 第5回「SDGsに関する生活者調査」
日本財団ジャーナル 【増え続ける海洋ごみ】官民学一体の「楽しい」ごみ拾いで未来を変える。荒川クリーンエイド・フォーラムの海ごみゼロへの挑戦