イスラーム(イスラム教)を信仰する人々は現在、約16億人にのぼります。この内の多くの人が聖典と呼ばれるクルアーンに則り、ラマダンに断食を行います。ダイエット目的でもなく、疾病対策でもありません。にもかかわらず、30日もの間断食を続けるのはなぜでしょうか。
ラマダンについて正しく知ることは、16億人もの人たちが信仰するイスラームへの理解につながります。是非一緒に考えていきましょう。
イスラームの国に住んだり訪問したりした筆者の経験が、考えを深めていくことの一助になれば幸いです。
※本文に出てくる用語は、アラビア語やペルシャ語などを語源とするため、表音が難しい時があります。ここでは、基本的に大学や教育現場で表記されていることが多い呼び方を使用しています。
ラマダンとは
ラマダンとは、ヒジュラ暦 ※ の第9番目の月の名前で、ムスリム(イスラム教徒)はこの約1か月間、断食を行います。よくこの断食のことをラマダンだと解釈している方もいますが、特殊な暦の月の名前であることに注意しましょう。(※とはいえ、近年ではラマダンを断食の意味で使うことも増えてきています。)
断食はアラビア語でサウムといいます。サウムの原義は「慎み避けること」で、イスラーム(イスラム教)では、ラマダン月の日の出前から日没までの間、一切の飲食(水も含む)ばかりでなく、喫煙や性的な営み、喧嘩も禁止されています。
<ヒジュラ暦の月>
1月 ムハッラム | 7月 ラジャブ |
2月 サファル | 8月 シャバーン |
3月 ラビール・アウワル | 9月 ラマダン |
4月 ラビーウ・サーニー | 10月 シャウワール |
5月 シュマーダー・ウーラー | 11月 ズー・アル=カーダ |
6月 シュマーダー・アーヒラ | 12月 ズー・アル=ヒッジャ |
ラマダンの起源とイスラム教との関係
イスラームの聖典であるクルアーンは、ムスリム(イスラム教徒)の信仰の源泉で、信条の実践の規範です。具体的な実践として五行 ※ が示されており、ラマダンはその1つです。
ヒジュラ暦の9月は、イスラーム(イスラム教)の聖典であるクルアーン(コーラン)が、ムハンマドに初めて啓示された「聖なる月」です。そのため、ラマダン月にこの啓示を記念し、ヒジュラの道中の苦難を追体験する行為として断食が行われます。
※イスラーム五行
- 信仰の告白(神を信じることを声に出す)
- 礼拝(1日5回お祈りをする)
- 喜捨(富める者は貧しい者に与える)
- 断食(ラマダン月は日中の飲食を絶つ)
- 巡礼(一生に一度は聖地に行く)
信仰は「心の中で信じれば充分だ」というのではなく、それと同時に「具体的な行動・動作を忠実に行わなければならない」とするのは、イスラームの大きな特徴です。この教義は、日常生活の端々にわたり、広くは文化のあり方にも深く関わっています。
「イスラーム」の原義は「大切なものを他者に委ねる」ですが、「大切なもの=自分」を「他者=神」に「委ねる」と解釈されるようになりました。
ラマダンの目的
ラマダンはクルアーンに示された義務の1つですが、ムスリム皆が同じ試練を同じ時期に共有することで、信仰をより深める目的を持ちます。
お金持ちも貧乏な人も等しく空腹や渇きの辛さを味わうことで、恵まれない人々を思いやり、改めて平安の有難さに感謝し、より自身を清めようとする心を養うものです。ムスリムにとってラマダンは欲望や悪を遠ざけるとても神聖な実践なのです。
また、家族や知人、仕事仲間と辛さを共有することで一体感を持つことも大切な目的とされています。
ラマダンにおける断食のルール
いくら自身を清めるためと言っても「1か月もの断食」と聞くと、辛くないかと思われる方が多いのではないでしょうか。ラマダン中の断食の実際について、もう少し具体的に見ていきましょう。
断食する期間
断食をする期間は、ラマダン月の30日間です。
ヒジュラ暦の8月「シャアバーン」日没後に新月が確認された時から始まり、29日後の「シャウワール」(ヒジュラ暦9月)の新月が見えると終わります。
開始と終了は、どのイスラームの国においても新月の観察によって決定されます。天候によって観察できない場合はずらしたり、白夜になる場所では近隣国にタイミングを合わせたりするなど、国や地域の事情によって調整が図られる場合があります。
毎年決まった日にちに開催されるわけではない
ヒジュラ暦は太陰暦の中でも閏月による補正を行わないため、1年が354日となります。そのため、太陽暦とは毎年10〜12日ずつズレていきます。ラマダンもその分毎年ズレていきます。
断食する時間帯
断食といっても、期間中ずっと続けるわけではなく、日の出から日没までです。つまり、夕方の日没時から翌未明の日の出までは飲食は許されています。
アザーン(呼びかけの声)が家庭、あるいはモスク(イスラームの寺院)から流れてくるため、これが合図となります。
筆者が住んでいた家の近くにもモスクがあり、夜明け前には朗々としたアザーンが拡声器を通して聞こえてきました。始めはビックリしましたが、徐々に慣れていきました。モスクから遠くアザーンが聞こえにくい場所では、家長にあたる者が合図を出します。
断食の免除・代替はある?
断食を実施できない事情がある人は、免除されたり振り替えたりすることが認められています。
具体的には、旅行中の人や重労働者、重病人や高齢者、妊娠中・生理中・授乳中の女性、乳幼児などです。その中でも、旅行中の人や妊婦など、後で断食をやり直せる見込みのある者は、やり直す必要があります。
また断食の代替として、貧しい人への施し(フィドヤ)を行うことも認められています。
このような背景から、中東の富裕の中には、避暑を目的として暑い時期は外国で過ごす一家もあります。ラマダンが近くなると、意図的にかなり長期の避暑旅行に出かける姿が見られました。
子どもの断食について
子ども達は、だいたい日本で言えば就学年齢に当たる6〜7歳頃から断食を始めます。最初は時間や日程を区切るなど、徐々に体を慣らしていくよう配慮されています。本格的に取り組むのは、女性は生理が来たら、男性はそれより少し遅く始める場合が多くなっています。
ラマダン時期の過ごし方
ラマダン時期は、自身の浄化と弱者への思いやりを新たにする期間であるため、寄付などを率先して行ったり、モスク(イスラーム寺院)で講話やイベントが開催されたりします。
営業を休む、もしくは短縮する店も多くなります。
ラマダン関連の休暇を設ける学校も多くあります。インドネシアでは、ラマダンの最後から明けまでの数日が休みになり、他の休日と重なって長い休暇になる年もあるので、子ども達の楽しみとなっています。
最近では、喜捨や善行を広く解釈し、「楽しみ」も味わえる企画を展開する国や地域、事業者もあります。商品が割引される「ラマダンセール」や、ポイントが通常の2〜3倍付くセールもあるとのことです。他にもボーナスを支給する企業もあります。
事業者や企業は、たくましくラマダンイベントを企画しながらも、営業する際は宗教的な配慮もしています。
下の画像はインドネシアのラマダン期間中のマクドナルドの店舗です。
ムスリムではない者が利用する際でも、断食中のムスリムに配慮して、内部が見えないようカーテンをしています。
時間外はどのようなものを食べている?
しかし、日中の仕事を行いながらの断食は大変なことには違いなく、この期間の断食実行者は、お粥やミルクなど普段より水分が多く栄養のある消化の良いものをとるようにしています。
断食に入る夜明け前の食事はスフール(スホール)と呼ばれ、通常よりやや早く夜明け前の祈り前にとることが多くなっています。
そして日没後の食事はイフタールと呼ばれています。イフタールはアラビア語で「朝食」を意味し、ムハンマドの慣行を真似て水分とナツメヤシをまず食べ、日没後の祈りの後、その日の断食をやり遂げたことをねぎらい合いながら本格的な夕食をとる家庭が多いようです。
このナツメヤシは、イスラーム発祥のドライフルーツですが、滋養の高い果物として人気が広まっています。消化のよい糖分が多く含まれていて甘味が強く、カロリーも高くて抗酸化物質も豊富に含まれているため、エネルギー補給と飢餓からくるストレス解消の両面で効果を発揮します。断食後には最適な果物として定着してきた理由が分かります。
参考:イスラム教徒の断食による生活リズムの変化が食習慣および睡眠にもたらす影響 ∼(日本微量栄養素学会)
イスラームの国でも人気のKFC((ケンタッキーフライドチキン)では、ラマダン中のメニューとして、定番のフライドチキンとご飯に加え、ナツメヤシとミネラルウォーターのファストフード・メニューを販売しています。
大手の店ばかりでなく地元の個人商店でも、この時期だけはデリバリーサービスを実施することがあります。
ラマダンに関してよくある疑問
この章では、ラマダンに関して実際によくある疑問についてお答えしていきます。
水分補給はできる?
基本的に期間中は水を飲むことはできません。しかし「免除」の例に当てはまる場合もあり、判断は個人でするのでいろいろな場合があります。
例えばスポーツ選手。
国際大会などに出場するアスリートを「旅行者」や国を代表する「兵士」または「重労働者」ととらえ、出場期間中は水分を補給しても問題ないとする考えもあります。それでも厳密に義務を実行しようとする選手もおり、夏の期間などは大会運営者側が選手の安全対応に頭を悩ませる問題となっています。
サッカーの2014年ワールドカップは、決勝トーナメント日程とラマダンが重なっていました。その中で、イスラームの国であるアルジェリアのチームは断食を実践しながら試合に望み、ベスト16という成績を残しました。選手の一人は「(ベスト8への試合に勝てなかった)敗因はラマダンではない。この試合を見て、パフォーマンスを発揮できなかったとは誰も思わないだろう」とコメントしています。
プロ選手については「個人の宗教上の行いを規制はしないが、充分水分をとらないためにパフォーマンスが落ちた選手は使わない」という監督・コーチもいます。反対にできるだけのサポートを惜しまない指導者もいます。
相撲力士の大砂嵐は、厳格なイスラームの国エジプトの出身です。日本に来てからもラマダンの断食を実行しています。
親方は、日本の夏の暑さは格別なので日中水が飲めないことをとても心配した、と話しています。そこでその期間中は、本人の様子をよく観察し、こまめにホースで水をかけたり後頭部などを冷やしたりしたそうです。日本で初めてのラマダン時期こそ体重は減ったものの、次からは体重は変わらず体調も維持できるようになりました。
大砂嵐は「やめたい」と言ったことはなく、「当然のこと」と話し、稽古にも本場所にも意欲的に取り組みました。
W杯と大相撲に関する参考・引用:
大砂嵐ラマダン明けで1カ月ぶり昼食 体重減なし – 大相撲 : 日刊スポーツ
断食しても活躍、さすが一流アスリート W杯・相撲とラマダン
お祈りはどのタイミングでする?
ここではお祈りのタイミングについて紹介します。
毎日のお祈り
1日5回のお祈りは、クルアーンに示された五行の1つであるため、ラマダン中も行われます。その5回は下のように決められています。
種類 | 回数 ※ | |
1 | ファジル(早朝の礼拝) | 2ラカート |
2 | ズフル(昼の礼拝) | 4ラカート |
3 | アスル(遅い午後の礼拝) | 4ラカート |
4 | マグリブ(日没後の礼拝) | 3ラカート |
5 | イシャー(就寝前の礼拝) | 4ラカート |
参考:「世界の三大宗教」(保坂俊司監修;昭文社)
下の表は、福岡県にあるモスクの礼拝時刻表です。5種類の礼拝の時刻が分かりますが、太陰暦で決まるので、毎日少しずつズレていくのも確認できます。
イスラームの国では、モスクや家庭ばかりでなく、公共施設・中規模以上の店舗にもお祈りをするスペースが設けられています。ズフルやアスルの礼拝は、立ち寄った所でできるよう配慮されているのです。また特別な場所がない場合は、通行の邪魔にならず、あまり人目を引かない場所で行います。
金曜日のお祈り
イスラームでは、金曜日を聖なる安息日としているため、多くの男性はモスクに行って集団(合同)礼拝を行います。女性は家で行います。
金曜日の特別集団礼拝はジュムアと呼ばれ、ラマダン中も行われます。
ラマダン中の特別なお祈り
上のラマダン礼拝時刻表の最下段をご覧ください。「タラウィーの礼拝」と表記されています。これは、通常の礼拝に加えてラマダン中に行われる特別礼拝です。
このモスクではイシャーの10〜15分後に予定されていますが、家庭で行う場合は「イフタール(日没後簡単な食事)の後」が目安です。
回数は20ラカートで、通常の礼拝よりかなり多く行うことが分かります。
ラマダン明けにすることはある?
新しい細い月が観察されると、いよいよラマダン明け!
ラマダン明けにはイード(イド・アル=フィトル)と呼ばれる盛大なお祭りが催されます。最終日の日没後には、家族・親族、友人・知人達が特別なご馳走を食べたり、音楽を楽しんだりします。子ども達も、学校がお休みになる上にご馳走を味わえ、お小遣いやお菓子、おもちゃなどをもらえるので、とても楽しみにしています。長期休暇をとって帰省する家族もいます。
大勢で盛大に無事に断食月を過ごせた喜びを分かち合うのです。
翌朝は、新たな月が始まる特別な礼拝を行います。多くの人がモスクに晴着を着て集まり、挨拶をかわします。小さなモスクでは収容しきれず、学校の校庭や運動場を使うこともあります。
またラマダンの断食は、ムスリムでなくても行うことができるので、完遂できた人はこのイードに参加することもできます。ただ、多くのノン・ムスリムの人が断食に挑戦したのを見てきましたが、イードに参加する資格を得た人は、残念ながら筆者の周囲にはいませんでした。
断食中と明け、健康面は大丈夫?
さて、このような断食は、ムスリムの方にどのような健康上の影響を与えるのでしょうか。
下のグラフは、ラマダン前(BR:Before Ramadan)・期間中(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)・ラマダン明け(AR:After Ramadan 明けてから1週間後計測)のムスリム(MM男性・MF女性)とそうでない方(NM・NF )の食事摂取エネルギーを比べたものです。
ムスリム男性(MM)は、期間中ぐんぐん数値が下がっています。体重・腹囲が減少したという報告もされています。またラマダン明けの増加の原因として、研究者は、イードの影響と夜間に消化の良い高カロリーな飲食物を摂る食習慣の継続をあげています。「ラマダン断食で太ってしまった」という話が聞かれますが、こういうことだったのですね。
女性には男性ほどの変化は見られません。女性の方が体内調節機能が高いためと言われています。
しかし、ムスリムの男性達が体重の増減を深刻に考えている声は聞こえません。
大事なのは、ラマダンの断食はダイエットが目的ではなく、自分を浄化するという信仰の行為であるということです。
病気を抱えている、またはケガをしている人は断食を免除、もしくは代替を許されているので、深刻な状況は報告されていません。
また子ども達も、「最初は1日から」「数時間だけ」のように徐々に慣れていくようしつけられているので、初めて本格的に断食しても大きな問題はないとのことです。
2025年のラマダンはいつ?
2024年のラマダンは
- 開始:3月11日
- 終了:4月9日
でした。
2023年の開始が3月22日であることから、数日早まっていることが分かります。
2025年のラマダンも3月上旬〜4月上旬にかけて行われると予想できます。
新月の観察で決まるため、国や地域によって異なります。イスラームの国に出かける場合には配慮や対策が必要だと言えるでしょう。また、イスラームの国から訪問された方々にも配慮したいものです。
ラマダンはどこの国で行われる?
ラマダンはイスラム圏の国で行われます。
例えば、エジプト、スーダン、ソマリア、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、イラク、モルディブ、バングラデシュ、マレーシア、インドネシアなどがイスラム圏に該当されます。
実はラマダンの効果と似ている16時間ダイエット
ここまでラマダン時期の断食について詳しく見てきましたが、少し角度を変えて、16時間ダイエットとの関係を見ていきましょう。
16時間ダイエットは、断食をするという点ではラマダン断食に共通する点があります。ラマダン断食との相似・相違をみていきましょう。
16時間ダイエットとは?
16時間ダイエットとは、1日24時間のうち16時間は何も食べず、残りの8時間で自由に食事をとる方法です。16時間には睡眠時間が含まれ、実際には<16-睡眠時間>が断食時間となります。
自由に飲食ができる8時間では、暴飲暴食を慎んだり、適度な運動が奨励されたりしますが、基本的に禁止事項や義務はありません。また水分補給はむしろ奨励されています。
1日の生活サイクルのどの部分で行ってもよく、カスタマイズしやすい断食法と言えます。
細胞は飢餓状態になると、古かったり壊れたりしている細胞を自食して新しいタンパク質として生まれ変わる仕組みを持っています。細胞が飢餓状態を感じ、オートファジー ※ 機能を発揮し始める時間の目安が16時間なのです。
効果はある?:効果も逆効果も
細胞本来のオートファジー機能を使い、生活スタイルに合わせて行える16時間ダイエットには、正しく行えば、
- 体重の減少
- 腸内環境改善
- 免疫力アップ
などの効果が見られます。また、1週間に1回続けるだけでも効果があるとされています。
しかし「効果がない」「逆に太った」などの声も聞かれます。
食事のバランスが悪かったとか、高カロリーのものを摂ったなど、他のダイエット方法でもよく見られる失敗原因もありますが、このダイエット方法の特色である「残り8時間は自由」というところに原因が隠れています。
私たちは普通、8時間睡眠をとったとしても残り16時間で3回の食事をしています。8時間で栄養バランスのよい食事を上手にとれるでしょうか。忙しい時は特に難しいでしょう。
16時間ダイエットでは1日2食になることが多く、朝食を欠食した場合はデメリットもより大きくなります。1食抜くと反動で食べすぎてしまうことも多くなります。これが「効果がない」「逆に太ってしまった」という結果につながってしまうのです。
ラマダンとSDGs目標16「平和と公平をすべての人に」との関わり
最後にラマダンとSDGsの関係をみていきましょう。
1番深く関わっているのは、目標16「平和と公正をすべての人に」です。
目標16は「持続可能な開発のための平和でだれをも受け入れる社会を促進し、すべての人々が司法を利用できるようにし、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任がありだれも排除しないしくみを構築する」と定められ、12のターゲットを含んでいます。
平和であるということは、戦争や暴力、虐待や拷問がないというだけでなく、「穏やかに日常生活がおくれる」ということです。
目標16にある「だれをも」「すべての人々」「あらゆるレベル」という文言は、各ターゲットにも使われています。あらゆる信仰に対しても考慮されなければなりません。
現在ムスリム人口は約16億人といわれ、キリスト教(約22億人)に次ぐ多さとなっていて、世界に広がっています。
日本ではまだ多くはありませんが、近年は東南アジアの国々を中心に、観光、仕事、留学や研修目的でイスラームの国からのインバウンド(訪日外国人)も増えています。
石油を輸入に頼る日本は、中東のムスリムの国とも密接な関係にあるはずです。
イスラームでは、クルアーンが法律であり生活の規範なのです。断食も礼拝も当然に実行すべき習慣です。ムスリムの方達が日本に来ても、食事や断食を安心して行うなど「おだやかに=平和に」過ごせるよう配慮することは、「だれも排除しない仕組みを構築する」ことに直結します。
【関連記事】SDGs16「平和と公正をすべての人に」の現状と日本の取り組み事例、私たちにできること
まとめ
ラマダン月の断食について、起源や目的、その現状などをまとめてきました。ムスリムの方達が大きな達成感・満足感をもってラマダンを終了することも分かりました。
近年の異常気象で大きな自然災害が多くなっています。数日間停電や断水する時があります。その後に初めて水道から水が流れ出てくると、普段水が出るという「当たり前」のことが何とありがたいことだったのかと反省し、穏やかな日常生活がおくれることに感謝します。そして同じような被害を被った人たちの報を耳にすると、自然と共感できます。
ムスリムの方達は、これに似ている、でももっと深い広い他者への思いを新たにするために毎年断食をしているのではないでしょうか。
日本では、イスラームというとテロやタリバン、戒律の厳しさがクローズアップされがちですが、最近ではハラル ※ などイスラームの国々の文化に対する知識も深まってきました。
私たちがラマダン断食について知ることを通して、ムスリムの方達の信仰や慣習への理解を深めることは、多様性を認め合う持続可能な社会をつくるための大きな1歩です。
異文化を広い視野から正しく知って、世界の多様性への学びへと一緒に歩を進めていきましょう。
<参考資料・文献>
イスラム教について – ハラル基礎知識
ラマダーンとは? 意味や使い方 – コトバンク
イスラム教の文化:ラマダンを知っていますか?
ラマダンについて、知ってみませんか?ラマダンQ&A | 国連UNHCR協会
【コラム】インドネシアにおけるラマダン期間中のフードプロモーション
ラマダン 礼拝時刻表 (箱崎)
スラム教徒の断食による生活リズムの変化が食習慣および睡眠にもたらす影響 ∼(日本微量栄養素学会)
大砂嵐ラマダン明けで1カ月ぶり昼食 体重減なし – 大相撲 : 日刊スポーツ
断食しても活躍、さすが一流アスリート W杯・相撲とラマダン
クルアーン:水谷周・杉本恭一郎訳(国書刊行会)
イスラム/ムスリムをどう教えるか:新井正剛・小林春夫(明石書店)
イスラーム医学:マンフレッド・ウルマン;橋爪烈・中島愛里奈訳(青土社)
中東&イスラム:高橋和夫(昭文社)
東南アジアのイスラームを知るための64章:野中葉・久志本裕子(明石書店)
世界の三大宗教:保坂俊司監修(昭文社)
世界の宗教を読む事典:ポール・オリバー;森英明訳(講談社)
13才からのイスラーム:長沢英治(かもがわ出版)
おいしいダイバーシティ:横山真也(ころから)
イスラームってなに?:後藤恵美・長沢栄治(かもがわ出版)
イスラームとコーラン:牧野信也(講談社)
SDGs:蟹江憲史(中央公論新社)
広辞苑(岩波書店;電子版)