#インタビュー

リアルテックホールディングス株式会社|地球の課題を解決する技術を持ったスタートアップ企業を投資で支援する

Real Tech Holdings Co.,Ltd. 藤井さん インタビュー

藤井 昭剛 ヴィルヘルム

東京大学大学院修士課程(国際協力学専攻)修了後、気候変動対策のインキュベーション事業やアクセレレーターを運営するEIT Climate-KIC(株)に入社。複数部署の立ち上げに関わり、チーム設計・採用・チームビルディング・評価など人事業務に携わる他、2017年には全社の人事制度改革タスクフォースの責任者となる。在籍期間中に、200を超えるベンチャーや新規事業助成(グラント)案件を評価し、助成後のポートフォリオを管理。また、出資先の環境インパクト評価も担当し、幅広い気候変動対策イノベーションに触れる。
2019年3月、チームデベロッパーとしてリアルテックファンドに参画。出資先ベンチャーの成長を加速するための採用・チームビルディング・人事制度設計等、幅広い人事業務のハンズオン支援を行う傍ら、リアルテックファンドのエコシステム形成に貢献する。
2020年5月よりリアルテックホールディングスの取締役社長に就任し、組織全体の運営強化を推進。

Introduction

リアルテックホールディングス株式会社(以下、リアルテック)は、地球や人類の課題を解決する技術を世の中に広めるため、株式会社ユーグレナ・株式会社リバネスの2社が協力して設立されました。研究開発型スタートアップとして幾多の困難を乗り越えてきたユーグレナと、研究から技術の社会実装への包括的な支援を行うリバネスの知見を活かし、スタートアップへの投資育成などの事業を行っていることが特徴です。

「SDGsに取り組む企業にしか投資しない」と明言するリアルテックの考え方や、投資先の企業、また今後の展望について、取締役社長の藤井さんにお話を伺いました。

投資や事業成長支援を通してスタートアップ企業を応援するリアルテックホールディングス株式会社

–まずはリアルテックについて教えてください。

藤井さん:

弊社は、地球や人類の課題を解決する研究開発型のスタートアップ企業(イノベーションを起こして短期的に成長する企業)を応援するために設立された会社です。

投資のような資金面に加えて、企業と一緒に採用活動をしたり、営業先を回ったりなど、その後の事業成長支援なども行っています。

3DC Inc.(カーボン新素材で電池性能を革新するベンチャー3DC社と東北大学内にて)

–投資だけではなく経営の手助けまで行っているとは、スタートアップ企業側は心強いですね。

資金や支援が得られにくいスタートアップ企業を応援するために立ち上がる

–なぜ、スタートアップ企業を支援しようと思ったのでしょうか。

藤井さん:


私たちリアルテックは、複数の企業によって設立されているのですが、その一つが「株式会社ユーグレナ」です。今は上場して知名度も高いユーグレナですが、もともとはスタートアップ企業でした。

創業して間もない頃は、資金が集まらない、応援してくれる人が少ないということで、とても苦戦した過去があります。

株式会社ユーグレナとは

微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養に世界で初めて成功。「Susutainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーとして掲げ、ヘルスケア・ビューティーケア・バイオ燃料・遺伝子解析サービス・ソーシャルビジネスといった事業を展開している。2012年に東証マザーズに上場し2014年に東証一部へ市場変更、2022年よりプライム市場。

このように孤軍奮闘しているスタートアップ企業の中には、確かに地球の課題を解決する高い技術・強い情熱を持っている企業も多数あります。そのような技術を世に送り出すためには、投資などで事業をサポートする会社が必要だと感じたのです。

–実際にスタートアップ企業として困難を乗り越え、何が必要か実感している会社が支援しているのですね。

「技術的に何がどうすごいか」を理解できる投資家は少ない

–新たな技術を開発するスタートアップ企業は、資金集めの際にどんな点で苦労することが多いのですか?

藤井さん:

どんなに素晴らしい技術を持っていても「何がどうすごいか」を判断できる投資家が少ないので、興味を持ってもらいにくい点です。また「いかに早く大きなリターンが得られるか」を重視している投資家も多いので、世に出るまで多くのステップが必要な技術系のスタートアップ企業は敬遠されがちです。

–スタートアップ企業の技術の価値が、投資家には伝わりにくい一面があるのですね。

藤井さん:

そうですね。そのため、リアルテックでは技術の目利きをし、「何がどうすごいか」を翻訳してコミュニケーションできる体制を整えています。具体的には、同じく会社の設立に関わっている「株式会社リバネス」の研究者メンバーや、テクノロジーに詳しい社員が集まった専門チームなどにより、適切に判断しているんです。

株式会社リバネスとは

ユーグレナ設立当初から、特に研究開発の面でユーグレナを支援してきた会社。メンバー全員が研究者で構成され、サイエンスとテクノロジーをわかりやすく伝えることで、異分野連携を促し、地球貢献に資するビジネスを生み出している。

–スタートアップ企業が開発した新技術の価値や、将来性が理解できる専門家が揃っているからこそ、正確な投資が可能なのですね。

細胞培養肉や次世代型の風力発電機など、投資実績は多岐にわたる

–実際にどのような技術を持った会社に投資しているか教えてください。

藤井さん:

これまで様々な企業に投資してきましたが、その中から細胞培養肉や、次世代型の風力発電機を開発している会社を紹介します。

まず細胞培養肉についてです。これは動物の細胞を培養槽などで組織培養することによって得られた肉や魚のことです。今後、地球上でタンパク質の需要が増え続けると限界がくると言われているので、タンパク質の供給量を増やすために考えられました。

IntegriCulture Inc.(細胞培養肉を開発するインテグリカルチャー社の培養システム
IntegriCulture Inc.(試作した培養フォアグラ)

–私もテレビで拝見しました。素晴らしい技術だと思ったのですが、まだ実際に口にすることはできないんですよね?

藤井さん:

そうですね。法整備がまだ整っていないため、日本ではまだ食べることはできません。

–それでも投資したのはなぜでしょうか?

藤井さん:

地球や社会に役立つ技術だと確信しているからです。また、シンガポールではすでに細胞培養肉のチキンナゲットが食べられていて世界の流れが変わってきています。日本でも、安全性や法的な課題をクリアできると考えられます。

–細胞培養肉を調理すると、普通のお肉と色も香りも変わらないと聞きました。一度食べてみたいです!

続いて、次世代型の風力発電機も教えてください。

藤井さん:

台風のような強風・乱流時では、一般的な水平軸型プロペラ風車による発電が困難です。世界中で再生可能エネルギーが注目されていますが、世界では台風やハリケーンやサイクロンなどの地域では風車の普及が進んでいません。そこで水平軸型プロペラ風車ではなく、台風でも発電可能な、垂直軸型かつマグナス力を活用した風力発電の開発が進んでいます。

Challenergy inc.(強風・台風時でも発電ができるチャレナジー社の風力発電機)

–台風の中でも発電できると、どんな利点があるのでしょうか?

藤井さん:

電力インフラが脆弱な台風の多い地域では、ディーゼル発電などに頼っており、台風で燃料供給が途切れると電力も途切れます。特に東南アジアでは強力な台風が上陸することが多く、そんな時でも次世代型の風力発電により、安定的な電力供給を目指しています。

–災害に強い電力が確保できるわけですね。

「SDGsに取り組んでいる企業にしか投資しない」という強い信念

–お話しを伺っていると、世界の課題を解決するための技術に投資していることがよくわかりました。

藤井さん:

そうですね。私たちは、世界の課題解決への情熱を持っている企業、そしてSDGsに取り組んでいる企業にしか投資しません。SDGsのすべての課題に取り組むことは大変なので、一部でも良いと思っています。しかし、サイドビジネスとしてではなく、主たる事業で世界の課題を解決しようとしていることが重要です。

–それはどういうことでしょうか?

藤井さん:

SDGsに取り組むための既存事業とは、「他にサイドビジネスとして事業を立ち上げる」といった考えではなく、例えば「貧困や水問題の課題のためだけに会社を起こそう」と考えることです。そうすれば、何かを解決するためのスタートラインが、すでにSDGsに取り組んでいることになりますよね。

–社会課題解決のための事業になっているかが重要なのですね。

藤井さん:

また、課題解決だけではなく、それがビジネスとして成り立つことも大切です。私たちは三井住友信託銀⾏とアドバイザー契約を締結しましたので、インパクト投資ファンドを運用し、企業としてのさらなる利益追及にも取り組んでいく予定です。

インパクト投資とは

民間企業の力を活用して、社会的課題を解決すると同時に、経済的利益を追求するという投資。より積極的に経済的利益を追求する新しい投資の考え方。

参考:マネックス証券

–技術で社会課題を解決しながら利益を追及できる企業が増えれば、結果的にSDGsの達成にも大きく近づきますね!

海外と日本を繋ぐ活動で地球の課題を解決できる企業を目指して

–最後に、今後の展望を教えてください。

藤井さん:

我々は、新しい技術を開発するスタートアップ企業が、世界を変える大きな力となると信じています。これからもしっかりと支援するために、海外の拠点も活用しながら自分たちの会社を大きく強くしたいです。

Real Tech Holdings Co.,Ltd.

–海外にも拠点があるのですね!

藤井さん:

はい。シンガポールに拠点があります。海外にも若く、多様性のある起業家が多いんですよ。我々がやり取りしているマレーシアやインドネシアの起業家は、約半数が女性です。また、自国の問題を解決しようとする、熱い思いを持った起業家も沢山おります。

日本と海外を繋ぎ、お互いの強みを活かしてさらに技術を高め、地球全体の課題解決を促進していきたいですね。

–同じ地球人として、色んな国の人が手を取り合って、地球の問題を解決していけるといいですね。今日は貴重なお話しを聞かせていただき、ありがとうございました!

関連リンク

リアルテックホールディングス株式会社:https://www.realtech.holdings/

株式会社ユーグレナ:https://www.euglena.jp/

株式会社リバネス:https://lne.st/