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代替タンパク質とは?メリット・デメリット(問題点)、市場の現状も

最近、スーパーの食品売場などでよく見かける、「大豆」や「植物性」の肉を使った商品。

これらに代表される「代替タンパク質」は、一過性のブームや特定の人向けと思われがちです。しかし、今後私たちの食生活は、この代替タンパク質なしでは成り立たなくなるおそれがあります。それはなぜなのでしょう?代替タンパク質を取り巻く状況や、今後の可能性などを追っていきたいと思います。

代替タンパク質とは

代替タンパク質とは、食肉や魚など従来のタンパク質に代わる新たなタンパク質のことを言います。特に、

  • 動物性タンパク質に似せて人工的に作られたもの
  • それまでタンパク源として食べられてこなかったものを、タンパク質を摂るための食料にしたもの

を代替タンパク質と呼びます。

特に重視する「肉の代わり」

代替タンパク質は食肉だけではなく、卵や乳製品、魚といった、動物性タンパク質すべてを代用するものですが、なかでも今の代替タンパク質は「肉ではないものから肉のようなものを作る」ことが主流になっています。代替タンパク質が「代替肉」と呼ばれることがあるのもそのためです。

代替タンパク質の種類(カテゴリー)

一口に代替タンパク質といっても、その種類はさまざまです。代替タンパク質は作られる原料の違いによって、大きく次のように分けられます。

①植物肉(大豆)

最もなじみがあるのが、大豆やエンドウ豆など、植物由来の原料から作られる代替タンパク質でしょう!

中でも最もよく使われているのが大豆です。大豆は「畑の肉」と呼ばれるくらいタンパク質が豊富です。特に私たち日本人は昔から豆腐や油揚げ、おから、味噌や醤油など、大豆由来の製品からタンパク質を摂取してきました。

そのため、現在の植物肉は大豆を原料に作られた代替タンパク質食品がほとんどです。

大豆と肉の栄養価比較

  • タンパク質含有量:米や小麦の4〜6倍、同量の豚肉(水分を除く)をしのぐ
  • アミノ酸:タンパク質を含む植物に不足する9種類の必須アミノ酸を含有。アミノ酸スコアが植物では唯一肉と同等
  • コレステロール:肉に多いコレステロールは大豆ではほぼゼロ

②培養肉

現在注目を集めているのが、この培養肉の分野です。培養肉は、実際の動物から生きている細胞を採取し、専用の培養液の中で細胞を増殖させます。この増殖させた細胞から筋繊維を成形し、積み重ねることで筋組織を作り、実際の肉そのものを再現させます。

培養肉の特徴は

  • 本物の肉と同じ食感や味、成分を再現できる
  • 短期間(数週間〜1か月ほど)で生産できる
  • 清潔な環境下で生産し、屠畜を行わないため「クリーンミート」とも呼ばれる

などがあります。

課題は価格です。かつてはハンバーガー用のパテ1枚に3,000万円のコストがかかりましたが、現在では12ユーロ(約1,700円)まで価格が下がっています。国によっては商品化も始まっており、さらなる技術開発と量産化、消費者に受け入れられる下地を作ることが求められます。

③昆虫ベース

動物性タンパク質の理想的な代替食品として期待されているのが昆虫食です。昔からアジアを中心に1,400種類もの昆虫が食用として食べられており、日本でもザザ虫や蜂の子が長野県の特産物になっています。筆者も子どもの頃に近所の田んぼでイナゴを袋いっぱいに捕まえ、佃煮にしてもらい食べたものです。

ただし昆虫食は見た目に対する心理的抵抗感が強いため、粉末状での利用が多くなります。

昆虫タンパク質の特徴

  • 養殖に必要な飼料がとても少ない
  • 栄養価が高く効率が良い:動物肉に近いアミノ酸、脂肪・ビタミン・ミネラルが豊富。特にコオロギは栄養価に優れ、養殖が盛ん
  • 成長がとても早い

④微生物・菌利用

微生物や菌の力を使って肉を作る取り組みも、世界各地で進められています。

中でも有望とされるのがマイコプロテインと呼ばれる、菌糸から生育した微生物由来のタンパク質です。マイコプロテインによる代替タンパク質は

  • 赤身の肉に似た食感
  • 全卵と同程度の豊富なタンパク質含有量(45~65%)
  • 必須アミノ酸やビタミン類を含み、栄養学的に優れる
  • 生育スピードが速く、1週間ほどで食料にできる

といった特性を備えます。

微生物による代替タンパク質の生産はいまだ開発途上であり、コストもかかるため、商業化にはまだ時間がかかりそうです。筑波大学では現在、麹菌を原料にした機能性の高い代替肉の開発研究が行われています。

⑤その他

その他の代替タンパク質の原料としては、

  • スピルリナやクロレラなどの藻類による代替肉
  • 微生物を利用して空気中の二酸化炭素から生成される代替肉

などがあります。中でもスピルリナは理想的な素材として注目を集め、植物性のエビ、カニ、マグロ、サーモンなどの開発が進められています。

代替タンパク質の市場規模

代替タンパク質の需要は、年を追うごとに増加しています。そして、それに合わせて代替タンパク質業界の市場規模も成長を続けています。

世界の市場規模

代替タンパク質の市場規模は、2021年時点で約4,861億円(矢野経済研究所調べ)とされており、将来的にはさらに拡大し、2030年に3兆円を超えると試算されています。

JPモルガンチュースの推計では、植物由来肉の市場規模は15年以内に約11兆円を超えるとされ、昆虫由来のタンパク質については、2050年までに世界のタンパク質の15%を占めるともいわれています。

日本の市場規模

一方日本では、植物性タンパク質の歴史が長いにもかかわらず、代替タンパク質の市場規模は正確に把握されていません。これは、最近の植物性代替肉製品の規格基準が整備されておらず、数値的に規模を把握することをしていなかったためです。

大豆タンパク質の国内生産量を数値として見ていくと、2010年に23,560トンだったものが、2019年には33,297トンへと増加しています。この伸び幅に従えば、2028年には植物肉だけで43,000トンになるという試算です。

代替タンパク質がなぜ注目されているのか

現在、代替タンパク質がここまで注目を浴び、世界的に市場規模が拡大している背景には

  • 人口増加によるタンパク質危機
  • 畜産の環境負荷
  • 健康・倫理・信条の観点

が挙げられます。

人口増加によるタンパク質危機

代替タンパク質が求められる背景には、世界の人口増加があります。

2022年の11月15日に世界の総人口は80億人に達し、予想を上回る速さで増加が進んでいます。今後も中東やアジア、アフリカを中心に人口は増え続け、2038年には90億人、2050年には100億人に達すると推測されます。

当然増えた人口を賄うだけの食料も必要になる上に、途上国の生活水準が向上すれば食肉への需要も増えていきます。タンパク質は体に不可欠な栄養素であるため、当然摂らないわけにはいきません。

このため、近い将来には世界的にタンパク質が不足する、「タンパク質危機(プロテイン・クライシス)」が危惧されています。

畜産の環境負荷

もうひとつは、畜産が抱える環境負荷の大きさです。

食糧生産には大量の資源やエネルギーを消費し、世界の水使用の7割は食料生産に使われます。肥料や農薬も、原料の輸送や製造、使用に多くの化石燃料・エネルギーが必要です。

中でも畜産は、

  • 大量の水や飼料を使う:1kgの肉を作るために、牛で11kg、豚で7kg、鶏で4kgの飼料
  • 畜産用地(放牧と飼料生産用)はすでに世界中の農地の77%を占め、拡大の余地がない
  • 生産過程での温室効果ガス排出量が多い

といった問題を抱えており、地球を持続可能なものにするために、解決策が求められていました。

健康・倫理・信条の観点

そしてもうひとつの背景は、健康・倫理・主義や信条といった、私たち個々人の食肉をめぐる選択の問題です。

健康の問題は肉食や加工肉への偏りが、肥満や心血管疾患、一部のがんのリスクを高める問題、倫理面では動物を屠殺することへの忌避感、信条面では、宗教上の問題やベジタリアン、ヴィーガンといった動物性食品を避ける思想などです。

代替タンパク質のメリット

代替タンパク質は、現在の畜産や農業、食肉にまつわる多くの問題に解決策を提示し、来るべき「タンパク質危機」に立ち向かう手段として実用化と普及が急がれています。

資源・土地・エネルギーの削減

最も大きなメリットは、食肉用の家畜を飼育するための水や飼料、土地、生産に使われるエネルギーを大幅に削減できることです。

大豆から作られる植物肉や、施設内で作られる培養肉・微生物肉は、生育するための飼料が不要なため、放牧地や飼料作物のための耕地もいりません。

また、畜産に起因する温室効果ガスなどの環境負荷も、代替タンパク質の普及で低減することが期待されます。近年の研究では、微生物原料のマイコプロテインを世界の牛肉消費量に対し一定割合置き換えることで、森林伐採や温室効果ガス排出、水利用などの問題が改善されるという試算がなされています。

動物福祉

動物愛護の観点からも、代替タンパク質の普及はメリットになります。

不衛生な環境で多頭飼いされる家畜、工場のような不自然な環境や、抗生物質入りの餌を与えられ、屠殺されるために育てられた動物たち。それらもひとたび鳥インフルエンザなどの病気が発生すれば、すべて殺処分を余儀なくされます。

代替タンパク質は、こうした生命倫理の側面からも大きな意義を持ちます。

効率的なタンパク質供給

代替タンパク質は、その多くがタンパク質やアミノ酸などの含有量が豊富で、栄養価の面でも優れています。例として昆虫、特にコオロギは畜産物の3倍以上ものタンパク質含有率を誇り、藻類に至っては大豆の10倍ものタンパク質生産性があります。

また畜産動物が成長に時間がかかるのに対し、代替タンパク質はどの原料も製品化に期間を要しないことも利点です。

代替タンパク質の課題や問題点

今後の人類の食生活のためにも、地球環境のためにも必要となる代替タンパク質ですが、それぞれの種類に課題を抱え、いまだ本格的な普及への道のりは遠い状況です。そのためには、代替タンパク質の課題や問題点を一つひとつ解決していかなくてはなりません。

課題①生産コスト・価格

代替タンパク質の一番のハードルが価格と生産コストの高さです。

植物由来の代替肉は比較的ポピュラーになりつつありますが、本物の肉に比べいまだ割高です。

培養肉や微生物由来の肉もその多くが開発研究の段階で、商用化のためには生産コストを抑えることが求められます。

課題②消費者の信用と受容度

私たち消費者が、代替タンパク質をどのくらい抵抗なく受け入れられるかも問題です。

特に「人工的に作られた肉」である培養肉を、はたしてどのくらいの人が「進んで食べてみたい」と思うでしょう。その人工的な肉に何が使われ、何が入っているのか、本当に食べても問題はないのか。そうした疑念を少しずつ晴らし、不安に応える努力が求められます。

課題③新たな環境負荷

生産にあたって環境負荷の少ないとされる代替タンパク質ですが、完全に環境にやさしいとは言い切れない面もあります。

例えば植物性のタンパク質を作るためには、今以上に大豆の生産を増やさなければなりません。このことが新たな農地獲得や森林破壊につながらないとは限りません。

また培養肉は、肉1キロを生産するのに45リットルの培養液を必要とします。培養液に使われる家畜由来の血清や穀物などによっては、違った形の環境負荷がかかる可能性もあります。

代替タンパク質に取り組む企業の技術・イノベーション事例

現在、世界中で多くの企業や研究機関が、代替タンパク質の開発や発売を行っています。

ここでは、特に注目すべき技術で代替タンパク質の新しい可能性を示す事例を紹介していきます。

【培養肉】ダイバースファーム株式会社

ダイバースファームでは、ネットモールド法という独自の技術を使った培養肉の開発を進めています。ネットモールド法とは、網目状の鋳型に細胞の塊を流し込んで培養することで、ステーキなどと同等の味や食感を持った塊肉を作ろうとするものです。

人工臓器などの技術を応用しているため、安全性が高い培養肉が作れることが期待されています。

ダイバースファーム: 培養肉

【植物肉】ネクストミーツ株式会社

2020年に創業したベンチャー企業であるネクストミーツは、食から社会問題を解決するコンセプトのもと、植物由来の焼肉や鶏肉商品などを開発し、販売しています。肉だけでなく、豆乳と米粉のベシャメルソースを使ったラザニア、オーツミルクや植物性ツナ缶など、多種多彩な商品の開発にも余念がありません。

Next Meats | 地球を終わらせない。

【微生物・菌類】Meati Foods(アメリカ)

Meati Foodsはアメリカの企業で、キノコの根の菌糸体由来で肉を作り、ステーキ肉やカツレツ、鶏むね肉などの商品展開を始めています。非常に資源効率の良い菌糸を使用し、従来型畜産による食肉と同等の価格、生産性が実現できるとしています。

日本での展開は行なっておりませんが、今後の発展に期待の持てる企業です。

Meati Foods: It’s Meati™

【培養肉・藻類】インテグリカルチャー株式会社

インテグリカルチャー社では、CulNet培養技術という手法で培養肉の研究開発を行っています。これは、生体内の臓器を模倣して血清を代替し、微細な藻類との栄養を融合させることで、従来の培養液の問題を解決しようとするものです。

将来的には、肉1kgを200円で作れるという試算のもと、環境悪化を最小限に抑えた持続可能な食料生産を目指しています。

IntegriCulture Inc. | IntegriCulture Inc.は、コスメから食材まで様々な …

【昆虫ベース】株式会社BugMo

BugMoは、養殖コオロギを使った代替タンパク質商品を開発。2022年11月には、「こおろぎミート」を使ったハンバーガーを販売開始しました。廃熱などの再生可能エネルギーや農業残渣を使用するなど、持続可能な生産にも取り組んでいます。

株式会社BugMo |

【昆虫ベース】うつせみテクノ

うつせみテクノは、昆虫食の普及と未来の農業を創造するべく設立された、東京農業大学の学生ベンチャー企業です。タガメやオケラ、各種幼虫などをそのままの姿でスナック化した「昆虫姿スナック」という、かなり大胆な商品を扱っています。

うつせみテクノ – 東京農業大学 フードテック学生企業

代替タンパク質とSDGsの関係

最後に、SDGsとの関係を確認しましょう。

代替タンパク質への取り組みは、「産業と技術革新の基盤」「海の豊かさ」「陸の豊かさ」「気候変動への対策」など様々な目標達成に貢献するなど、SDGs(持続可能な開発目標)と大きな関連性を持ちます。

そして、特に関係が深い目標が「飢餓をゼロに」です。

【関連記事】SDGsとは|1〜17の目標一覧と意味や達成状況、世界・日本の取り組み事例を紹介

目標2「飢餓をゼロに」

この目標では、

  • 「2030年までに飢餓を撲滅し、誰もが安全で栄養のある食料を得られること」
  • 「持続可能な食料生産システムを確保すること」

などのターゲットを掲げています。今後の人口増加や、現在の畜産では解決困難な問題が山積していることもあり、代替タンパク質の生産と普及も待ったなしの取り組みと言えるでしょう。

【関連記事】SDGs2「飢餓をゼロに」の現状と問題点、日本の取り組み事例、私たちにできること

まとめ

代替タンパク質についての話は、誰にとっても避けられない食料確保に関わる深刻な問題です。

そのいくつかは今までにない技術を応用した未知の食品であることから、さまざまな懸念や不安もあることと思います。しかし、今後世界的な食料供給に危機が訪れることを考えれば、代替タンパク質の議論は不可欠です。

正しい知識と情報を取り入れ、技術で問題解決に挑む人々を信じ、疑問や不安にはしっかりと向き合う。そして少しの勇気をもって一口でも食べてみること。大事なことはそこから始まるのではないかと思います。

<参考文献・資料>
図解入門 よくわかる最新代替肉の基本と仕組み/齋藤勝裕 著/株式会社秀和システム
代替タンパク質の現状と社会実装へ向けた取り組み : 培養肉、植物肉、昆虫食、藻類など/執筆:木附誠一ほか/情報機構
堀 晴菜, オオニシ タクヤ,「タンパク質多様性社会」実現の重要性について| 日本デザイン学会 第69回研究発表大会
菌類由来の代替タンパク質の環境的利益 | Nature ダイジェスト
―麹菌が地球を救う!代替プロテイン研究―|研究室にようこそ|筑波大学 生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系
代替タンパク質の拡大と代替タンパク質をめぐる議論/内田真穂/SOMPO未来研レポート