#SDGsに取り組む

スウェーデンが緑豊かな未来のために行う都市開発の現状

私たちの老後や子供たちの未来のために、豊かな自然を残してあげたいと多くの方が願っているでしょう。将来の地球環境について考えるとき、私たちのひとりひとりにできることがあります。しかしながら、大切と理解はしつつも地道な作業となってしまう感は否めません。

もし普通に毎日を送りつつ、自然や環境によい生活を送れていたのなら…ストレスを感じることなく穏やかに暮らせそうですよね。そんな理想的な社会は都市開発にあります。

ますます人口が増加するスウェーデン都市部。都市開発の分野では、さまざまな環境への取り組みが配慮・研究されています。海外からの視察も増えているモデル地区や、注目を集めている電気道路など、国や地方・企業が独自に執り行う、環境問題に特化した都市開発についてご紹介していきます。

スウェーデンの画期的な都市開発

昔ながらのスローライフな生活は、間違いなくエコといえるでしょう。しかし現代に生きる私たちには、仕事場へのアクセスのよさや家族とのバランスの取れた生活が必要不可欠。そんな現代人の私たちにとって、”環境に配慮した正しいことを日常的に行える”のが、新しい都市開発の試みです。

マルメ市のエコライフモデル地区グリーンハウス

マルメ市の一画アウグステンボーリ(Augustenborg)には、現代的でかつ気候に配慮したライフスタイルを簡単に実現できる「グリーンハウス」があります。このグリーンハウスは、エコライフのモデル地区としても、多くの人々から注目を集めている地区。

市内が見渡せるほどの高層の建物は一般住宅で、ここはスウェーデンでも大手の不動産会社であるMKB(エム・コー・ベー)による都市開発プロジェクトのひとつです。

グリーンハウスのアパートは、環境技術をふんだんに駆使し、とくに現代社会で問題視されているエネルギー問題、ライフスタイル問題、そして社会的なコミュニティを見直す新たな取り組みとして注目を集めています

屋上には日照時間の少ないスウェーデンの住宅ではあまり見かけない、太陽電池のパネルが設置され、植物を植えたグリーンルーフが見られます。しかしグリーンハウス最大の特徴は、屋上に設置された、温室付きの共有庭園にあるのです。

ここでは、居住者はだれでも自由に屋上で家庭菜園を楽しめます。夏の短いスウェーデンでは、スウェーデン南端のマルメ市とはいえども、家庭菜園で可能な収穫時期は限られます。しかし屋上菜園で人々が育んでいるのは、単に野菜や収穫の喜びだけではなく、地域住民とのコミュニケーション

都市部の高層アパートで都会的な暮らしをしつつ、屋上で家庭菜園を営み、隣近所と密な付き合いをする生活。まるで、東京などの日本の都市部とは、まったく真逆の生活をしているようではありませんか。

グリーンハウスは環境やエコに配慮するだけではなく、社会的なコミュニティの形成を通し、都市部では希薄になりがちなライフスタイル問題にもアプローチする、まったく新しい取り組みなのです。

増え続ける木造のエコ住宅

木造建築は日本ではもっとも一般的です。それは木材という呼吸をする材質が、湿気の多い日本の気候にあっているからにほかなりません。

スウェーデンは、国土の3分の2が森林であるという真の森林地帯。そのような状況にあっても木造建築は近代的ではなく、これまで都市部の住宅用としてはあまり見かけませんでした。今木造建築は新しい技術とともに見直されている分野です

木材は再生可能な資源です。リサイクルできるため、持続可能性の観点からも理にかなっているといえます。また、全て地元産の木材を利用することにより輸送の必要性が減り、トラックを使わない分二酸化酸素排出量も減らせます。

スウェーデン北部の街フェレフテオ(Skellefteå)に2021年オープンしたサラ文化センターは、高さ80メートルにも及ぶ世界最大の木造建築のひとつ。サラ文化センターが注目されている要因は、先に述べたように近隣の森で伐採された木材を使用し、地元の企業で提案された建築技術を用いたサスティナブルな建物という点にあります。

現在スウェーデンではこのような木造の高層ビルの建築が増加しています。それは、スウェーデンが2045年度まで設定した気候目標、カーボンニュートラルを達成するための目標のひとつでもあります。

木材や有機材料は湿気を吸収し湿度を調整するため、二酸化炭素のレベルを一定に保ち、室内環境を適切にする自然の働きがあります。今まで当たり前のように使われてきた床や壁のPVC素材を排除し、有機物製の塗料や油の塗装をやめれば、建物全体が「呼吸する家」となるのです。

また、家庭での熱源に再生可能電力を使用することによって空気の質が改善され、都市部では騒音が減少するため、環境への悪影響が軽減されます。環境へ配慮した木造建築は、スウェーデンの都市開発の方法のひとつとして、増加の一途をたどっています。

今後もさらに木造建築の技術は洗練され、スウェーデン国内では木造の建物が増えていくと予想されています。

エコな地域暖房システム

出典:Spaceship Earth

スウェーデンをはじめとする北欧諸国では、地域暖房システムが一般的です。地域暖房システムとは、日本のように各家庭や建物で独立した暖房システムを持たずに、地域ごとで温水を作り貯めたものを、周辺の地域や住宅にパイプを使って送るシステムです。

地域暖房の普及率は首都ストックホルムで約80%。一般のアパートのほか、個人住宅、オフィス、産業施設などで利用されています。地域暖房のシステムを使うことで、最大約93%ものシステム内のエネルギーが再利用でき、二酸化炭素排出量をおさえたり、コスト削減に貢献したりと環境によい面が多くあるのです。

北欧の一般住宅では、各部屋の窓下にはパネルヒーターが設置されています。パネルヒーター内を温水が通り、窓からの冷気と混ざり合い上昇気流を作ることによって、部屋の中の空気を循環させ、室内全体をやわらかく温めます。このような地域暖房システムの熱源には、食品廃棄物から生成されるバイオガスや、工場生産からの余剰熱などの地域資源が再利用されています

ストックホルム郊外のロイヤルシーポート地区では、脱化石燃料を目標にしたサスティナブルな街の開発が進んでいます。もともとパッシブハウスが一般的なスウェーデンですが、ロイヤルシーポート地区では、太陽光パネルを用いたり、古いガス工場を利用したバイオガス工場で、住人が使用する電力を自家生産したりと、新たな取り組みが行われているのです。

同地区ではすでに、数千棟のエコ住宅や電気自動車を提供しています。このように、建物自体がエネルギーを生み出す「プラスハウス」の建築も、今後ますます増加することが期待されています。

スウェーデンが世界で注目を集める電気道路システム

スウェーデンでは電気自動車(EV)の普及がますます一般的になっています。それにともない注目を集めているのは、電気自動車を運転中に充電できる電気道路のシステム。すでにスウェーデンの一部の道路で実用化に向けて試験運転されている、電気道路システムについて詳しく見てみましょう。

走りながら充電できる電気道路

スウェーデン全体の二酸化炭素排出量のうち、3分の1は道路交通によるものです。さらにそのうち3分の1は貨物輸送によるものとなっています。

電気道路は従来のガソリン(化石燃料)を使用しない新たな輸送システムとして、開発の進んでいる分野です。電気自動車は定期的に充電する必要がありますが、電気道路の開発が進めば走行中に車を充電できます。電気道路の実用化はバッテリー容量の削減ができ、化石燃料から発生する二酸化炭素排出量を抑えるなどの利点が期待されています。

スウェーデンでは今後ますます電気自動車(EV)の普及が高まっていくと予想されていますが、車両用のバッテリーサイズや重さ、コストなどを総合的に考えた場合、現在の技術では経済性を十分に得られるとはいえないのが現状なのです。

一般家庭で使われるような、より軽量な電気自動車が増えると、自宅や公共の駐車場以外にもさらに充電スペースを拡大させる必要があります。また、大型で重い車両の場合には、重くて単価の高いバッテリーに代わる長期的な解決方法が必要になってきます。

電気道路の開発は、これらの電気自動車の問題点を補充して、解決に導く新たな都市開発方法のひとつです。

電気道路の仕組み

電気道路の仕組みはひとつではなく、現状ではいくつかの異なる技術が開発され、実用可能かどうかの検討がされています。

ひとつは鉄道などでも使用されているように、吊り下げワイヤーなど導電性の高い物質を使った送電方法です。パンタグラフを利用したもので、架線にはプラス電気、線路にはマイナス電気が流れることによって電気の回路を作ります。

また、車道に通電レールを敷くことによって通電させる方法もあります。これらの方法で電気を充電する場合、車両側に何らかのコネクターが必要となります。

電流の誘電伝送は、私たちの身近な例では、携帯電話を充電する充電パッドと似ています。道路には電極が埋め込まれていて、車両側には充電用のコネクターがあります。充電用のコネクターを道路の送電レール上へ落として走行すると、走行期間中の充電が可能になる仕組みです。

電気道路建設には立地条件も必要不可欠

スウェーデン初の常設電気道路は、すでにE20(欧州間幹線道路)のハルスベリ(Hallsberg)とエレブロ(Örebro)の間に建設され、実用化に向けてテストがおこなわれています。エレブロとハルスベリ間は、スウェーデンの物流においてとても重要な区間です。

エレブロとハルスベリ間に常設が決まったのは、スウェーデンの3大都市、首都ストックホルム、ヨーテボリ、マルメのほぼ中間に位置しているからです。位置的にはスウェーデンの各3大都市に約3時間で到達できるメリットがあります。

また、交通量と積載量の多い大型車の行き交う交通ルートであり、多くの企業のほか、農業地帯や風力発電所なども隣接しています。交通の利便性だけでなく、電気の供給がしやすい、恵まれた立地といえるでしょう。

電気道路実用の可能性

スウェーデンには、合計約65,000キロメートルを超える道路があります。現存の主要道路に電気道路を導入すると、車両による温室効果ガスの排出量を半減できると予想されています。

今日、電気自動車のコストの約半分は、高価なバッテリーコストです。そのため、従来の定位置型の充電方法と、電気道路を使った動的な充電方法を組み合わせることで、電気自動車に搭載するバッテリーの必要性が軽減されます。

電気自動車の充電インフラを開発することで、ガソリンをはじめとする化石燃料のみで走る自動車と比較すると、最大約90%の二酸化炭素排出量を削減できるようになると考えられているのです。

スウェーデン運輸局(Trafikverket)はすでに2017年、電気道路のロードマップを完成させています。また、いくつかの異なる技術のデモンストレーションとして、実際の公道を使用した大型車の充電テストが、スキャンヴィーケン(Scandviken)とアーランダ(E-Road Arlanda)で実際におこなわれました。

そのほかにも、2個所の電気道路のプロジェクトが、ゴットランド島のヴィスビー(Visby・Smart Road Gotland)とスコーネ地方の大学都市ルンド(E-Volution Road)で進行中です。電気道路の実用化は、さほど遠い未来の話ではなさそうです。

まとめ

最新の技術を用いた都市開発計画は、さまざまな形で人々の生活を支えています。温室効果ガスを生み出している現代の生活を改善し、環境に配慮した生活をするのは、将来の私たちの家族や地球上に生きるすべての生態系にとっての課題です。

スウェーデンをはじめとする北欧各国でも、近年夏場の高気温による山火事や水不足、北極の氷解による海面上昇など、異常気象の影響が報告されています。スウェーデンはカーボンニュートラルの観点から、2045年までに二酸化炭素排出量ゼロの目標を掲げています。

温室効果ガスの影響は、実に100年間も続くと言われています。すでに生み出されてしまったものは、私たちが生きている間には取り返しのつかないものなのです。

スウェーデンでは暮らしを快適に整えながら、無理をせずに正しい環境への取り組み方を実現する試みがなされています。人々が自然に暮らすことを第一に考え、日々の生活を大切にする実に北欧らしい考え方だと思います。