近年、使われていない土地の活用方法としてメガソーラーの設置が増加しています。とはいえ、一般的な太陽光発電との違いがわからない人も多いと思います。
そこでこの記事では、太陽光発電のなかでも大規模なシステムであるメガーソーラーにスポットを当てて、メリットからデメリット、導入事例などを取り上げながら詳しく見ていきます。
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またメガソーラーは環境破壊だ、という声も聞かれていますが、再生可能エネルギーである太陽光を用いた太陽光発電(メガソーラー)が環境に与える影響についても解説していきます。
目次
メガソーラーとは

メガソーラーとは、産業用太陽光発電とも呼ばれる大規模太陽光発電システムです。
住宅用の太陽光発電と同じ仕組みを持っていますが、家の屋根に設置するのではなく、未利用の土地に数千~数万枚の太陽光パネルを敷き詰め、100~1,000軒分の家庭の電力を生み出せるのが特徴です。
大手企業が導入を進めている
産業用太陽光発電は、
- 電気会社が、化石燃料を利用した発電方法から再生可能エネルギーを利用した発電方法へと移行したい
- 大手企業が、自社の設備を再生可能エネルギーで稼働したい
などの目的で、導入されるケースが目立ちます。
iPhoneやMacbookなどを開発した世界的なIT企業Appleも、原材料の生産から製品の製造、流通の全ての過程で必要な電力を、再生可能エネルギーでまかなうことを目的としてメガソーラー事業を行っています。
公式サイトによると、
2017年には286メガワットの太陽光発電が稼働を開始しました。
Apple公式サイトNewsroom
とあり、一般家庭8万5千世帯が一年間で必要な電力をまかなえるほどの量を自社で生み出しています。
メガソーラーのメリット
では、メガソーラーはどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット①脱炭素を加速させる
1つ目に、メガソーラーによって脱炭素を加速させられます。脱炭素とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を実質的にゼロにすることです。パリ協定が採択された2015年以降、世界全体で脱炭素への取り組みが活発になっています。
太陽光発電は、発電時にCO2を排出しません。(製造時やパネル輸送、設置時にCO2を排出しているとの見方もありますが、ここでは発電時に焦点を当てています。)
そのため大規模な発電が見込めるメガソーラーは、日本の火力依存からの脱却(日本の年間発電量の約70%が火力発電)を実現するための有効な手段と言えるでしょう。
実際に取り組んでいる例として、千葉商科大学があります。千葉商科大学は、国内大学で初めて「自然エネルギー100%の大学」を実現しました。

同校では、千葉県野田市にメガソーラー野田発電所を所有しています。2014年に設置したメガソーラー野田発電所は、2018年に太陽光パネルを2.88MWに増設し、年間発電量が約365万kWhとなりました。それと同時に大学の消費エネルギーの削減にも努め、2019年には発電量が消費電力量を上回っています。
【関連記事】千葉商科大学|千葉商科大学が目指す「自然エネルギー100%大学」の全貌とは
メリット②土地の有効活用にも
2つ目に土地の有効活用が挙げられます。所有しているものの、活用方法がないため使っていない土地に、メガソーラー設置は有効的です。例えばゴルフ場は、プレーするホール以外、有効活用されていないケースが目立ちます。そこにメガソーラーを設置することで、売電収入を得るビジネスモデルが流行しました。
また、同様にゴルフ場が倒産してしまい、跡地となった場所にもメガソーラーが建設されています。
ゴルフ場以外にも活用できていない土地が多いことから、そこにメガソーラーを設置していくことは、太陽光発電の普及にもつながるでしょう。
メガソーラーのデメリット|問題点・課題
太陽光発電を普及させるためには、企業や自治体が行う大規模太陽光発電設備であるメガソーラーが欠かせません。しかし、いくつか課題があります。
問題点①災害に弱い|メガソーラーによって起こった事故
2018年9月、関西地方に大型の台風21号が上陸した際、強風によって太陽光パネルの損傷・吹き飛んだパネルによる二次被害が発生しました。
太陽光パネルの損傷

大阪市住之江区の物流施設の屋根上に設置されていたメガソーラーでは、2万8,160枚のパネルのうち約半分の1万3,780枚が台風の強風によって、損壊、飛散したとされています。
また、破損したパネルでは、何らかの原因で内部から発火したため、消火器で対応した報告もされています。
太陽光パネルの発火は水で消火しようとすると、感電の危険性もあり、慎重に対応しなければいけません。
さらに、同じ大阪沿岸部の地域で稼働していたメガソーラーでも3万6,480枚のパネルのうち、1万3,413枚が強風によってひびが入るような破損をしています。
吹き飛んだパネルによる二次被害
強風によって吹き飛んだ太陽光パネルも非常に危険です。重量のあるパネルが人や家屋にぶつかるだけでなく、壊れてもなお発電を続けているので近づいたり、触ったりすると感電する恐れがあります。
こうしたことからも分かる通り、太陽光発電は自然災害に弱いという課題を抱えています。
日本では毎年のように台風や地震が発生するため、自然災害に弱い発電方法というのは解決しなければいけない課題といえるでしょう。
2021年7月に発生した熱海土砂崩れの原因説も
2021年7月、東海地方を中心に記録的な大雨が降りました。この雨により、静岡県熱海市の伊豆山地区で大規模な土砂災害が発生し、多くの方が犠牲となりました。
当初、土砂災害が発生した原因として指摘されていたのが近くにある太陽光発電所です。山を切り開いて太陽光パネルを設置したことで、地盤が緩み土砂災害が発生したと言われていました。
その後、調査が行われるもはっきりとした原因は特定されませんでしたが、これにより太陽光発電への反対層が一定数増加したとも言われています。
問題点②自然改変による近隣住民とのトラブル
メガソーラー建設の際、事業者と地域住民との間でのトラブルは後を絶ちません。
トラブルの内容も以下のように様々です。
- 住民への説明会の周知がなされていない
事業者側:チラシはしっかりと配った
地域住民側:チラシは受け取っていない - 工事のホコリや騒音被害
事業者側:工事の際に発生するホコリや音はある程度は許容してほしい - 山にメガソーラーを建設することによるリスクを許容できない
地域住民側:山の保水力が弱まるので、大雨の際に水害が増えるのでは…
国土面積の小さい日本で、再生可能エネルギーを利用する発電施設を建設しようとすると、住宅地域と隣接することも少なくありません。
太陽光発電普及には、メガソーラーをはじめとする大規模な発電設備の建設は不可欠であるため、どのように地域住民と共生していくかが課題となります。
問題点③環境破壊問題
先ほど熱海の話で触れたように、メガソーラーは多くのパネルが必要となり、設置スペースの確保のために森林伐採を行うケースがあります。一般的には、地域住民や自治体との話し合いによって適切な場所へ設置されます。しかし、すべてがこのケースに当てはまるわけではないようです。適切でない場所に太陽光パネルが設置されることで、生態系の崩壊や地滑り、森林減少など、環境への負荷が大きくなってしまいます。
今後、再生可能エネルギーの普及に向けて、解決すべき問題と言えるでしょう。
世界のメガソーラーの導入事例
続いては、世界のメガソーラー事例を紹介します。
中国|ジンコソーラー
ジンコソーラーは、太陽光発電産業で世界をリードする中国の企業です。世界に9か所の生産拠点と14の子会社を持ち、太陽光発電の普及に努めています。同社の数ある事例の中から、チリのメガソーラーを紹介します。
チリの北部に位置するアントファガスタ州にあるメガソーラーは、2016年から運転がスタートしました。当初は668,160枚の太陽光パネルを設置し、年間発電量は400GWhでしたが、2020年にパネルを315,900枚を追加しています。これにより、年間発電量は789GWhとなりました。
また、2022年にはモンゴルで太陽光発電を活用した砂漠化対策にも取り組むなど、様々な社会課題の解決に向けた事業を展開しています。
>>ジンコソーラー
日本国内のメガソーラーの導入事例
続いては、日本のメガソーラーに取り組む企業を紹介します。
瀬戸内Kirei未来創り合同会社
瀬戸内Kirei未来創り合同会社は、岡山県瀬戸内市でメガソーラープロジェクトを推進しています。
瀬戸内市の温暖で晴れの日が多い地域性を活かして、2018年から日本最大級の太陽光発電所の稼働がスタートしました。
東京ドーム約56個分の敷地に90万枚のパネルが設置されており、一般家庭約8万世帯分の消費電力に相当する最大235メガワットの発電量を誇ります。
このプロジェクトにより、年間約192,000tものCO2が削減できる見込みです。
スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー株式会社
スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー株式会社は、再エネにおける発電事業とそのコンサルティングを展開している会社です。同社では、福島県南相馬市にSGET南相馬メガソーラー発電所を2020年7月から稼働させています。
東日本大震災により津波の被害を受けた農地の跡地に建てられ、南相馬市が掲げる「2030年に再生可能エネルギーの導入比率100%」の目標達成に向けて貢献しています。
メガソーラーとSDGsの関係
最後にメガソーラーとSDGsの関係について確認しましょう。
SDGsは、2015年に採択された国際的な目標です。世界が抱えている「社会」「経済」「環境」の3つの側面における課題の解決を目指しています。その指針となるよう、SDGsには17の目標と169のターゲットが掲げられており、メガソーラーは特にsdgs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と関係しています。
メガソーラーと目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
目標7は、世界中の人々が電気などのエネルギーを使えるようにすることを目指す目標です。とはいえ、その電気を発電する際に環境に負荷をかけてはなりません。地球を持続可能なものにするためにも、CO2を排出しないクリーンなエネルギーの活用が求められています。
ここまで見てきたように、メガソーラーは課題は抱えているものの、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。そのため、メガソーラーを普及させることはSDGsの達成にも貢献できると言えるでしょう。
まとめ
この記事では、メガソーラーについて見てきました。
様々な課題を持つメガソーラーですが、脱炭素社会の実現には不可欠な存在です。今後、課題解決に向けた研究や技術開発が進むことを期待しましょう。
関連リンク:https://solsell.jp/