#インタビュー

TABLE FOR TWO 山本様|TFTプログラムやおにぎりアクションを通して持続可能な社会貢献の輪を広げる

特定非営利活動法人 TABLE FOR TWO International 山本 真穂様 インタビュー

山本 真穂

筑波大学比較文化学類卒業。 専門商社で法人営業、仕入業務に従事した後、カナダ滞在を経て、財団法人での事業開発・運営のサポート業務に携わる。 2021年よりTFTに入職。国内事業推進・コミュニケーション担当。

introduction

「飢餓」と「肥満」という食の不均衡を同時に解消することをミッションに掲げるTABLE FOR TWO。

今回はTABLE FOR TWOで国内事業推進・コミュニケーション担当を務める山本様に、相反する2つの課題を解決するための取り組み内容や、ビジネスマインドを持った持続可能な社会貢献のあり方について伺いました。

「飢餓と肥満を同時に解消する」TABLE FOR TWOが掲げるミッション

-本日はよろしくお願いします。TABLE FOR TWO様では、食を軸に様々な取り組みをされていますね。山本様ご自身も「おにぎりアクション」というキャンペーンの企画運営に携わっているとのことですが、どういった思いで活動をされているか教えてください。

山本さん:

私たちTABLE FOR TWO(以下、TFT)は、SDGsが提唱された2015年より前の 2007年から、飢餓と肥満という相反する食の不均衡に着目し、世界の食や健康にまつわる問題、そしてその先にある教育機会の不平等や貧困がなくなることを目指して活動をしてきました。

世界の人口75億人のうち8億人が飢餓で苦しんでいる一方で、20億人は肥満というアンバランスな状況に対する危機感が背景にあります。

2つの課題を解決するためにどういった取り組みをされているのですか?

山本さん:

先進国でヘルシーメニューを1食摂ることで、開発途上国の子どもたちへ学校給食1食分が贈られる”TABLE FOR TWOプログラム”(以下、TFTプログラム)を推進しています。

TFTプログラムは企業様の社員食堂と相性が良く、食堂で寄付付きのヘルシーメニューを提供するというのが私たちの基幹事業となっています。

提供:TABLE FOR TWO

取り組みやすい画期的なプログラムですね。TFTプログラム以外にも様々な取り組みをされているそうですね。

山本さん:

運動をして消費したカロリーを寄付につなげる活動や、専用の自動販売機で飲み物を買っていただくと、設定いただいた割合の金額が寄付されるといった活動も行っています。

また、支援の方法についても、より持続可能な形で行えないか模索しています。具体的にはアフリカなどで、菜園設置のための支援を行ったり、農業技術の指導を行う「菜園プログラム」の推進を行っています。

提供:TABLE FOR TWO

楽しみながら社会貢献について考える「おにぎりアクション」

日本のソウルフード「おにぎり」を使ったキャンペーン

ここからは山本様が企画運営に携わっている「おにぎりアクション」についてお伺いしたいと思います。この活動はどういった経緯で始められたのですか?

山本さん:

より多くの方が気軽に参加できるソーシャルアクションを立ち上げたいという思いがあったからです。

私たちの活動は社員食堂での展開が多いのですが、実はTFTのコンセプトに共感してくださる方の中には主婦の方や未来ある子どもたちへの思いを持っている方が非常に多いんです。

そういった方にもご参加いただける何かをやりたいという思いから始まったのが、”おにぎりアクション”です。

提供:TABLE FOR TWO
提供:TABLE FOR TWO
提供:TABLE FOR TWO
提供:TABLE FOR TWO

あえて「おにぎり」をモチーフにしているのは、何か理由があるのですか?

山本さん:

おにぎりは誰もが知っている日本のソウルフードだからです。おにぎりって皆さんそれぞれに思い出がある食べ物だと思うんですね。

例えば、お母さんやおばあちゃんが握ってくれた思い出や、部活の時にみんなで食べた思い出…そういった温かい思いが詰まった食べ物だからこそ、「アフリカやアジアの子どもたちへ気持ちを込めて握ってもらうことができたら、何かが変わるのではないか」と考えました。

同時に”日本発”のアクションだということを大切にしたかったという想いもありますね。

一枚の写真投稿で給食5食分の寄付につながる

-おにぎりアクションの仕組みが気になります。具体的にどういった形で貢献ができるのか教えてください。

山本さん:

おにぎりにまつわる写真を特設サイトに投稿していただくか、SNSで#OnigiriActionをつけて写真を投稿すると、1枚の写真投稿につき給食5食分の寄付が行えるというものです。写真投稿をするだけで寄付ができるという気軽さがこの活動のポイントです。

寄付のお金はどこから出ているのですか?

山本さん:

私どもの活動に賛同してくださった協賛企業様からのご寄付によって成り立っています。

SNSで広がる社会貢献の輪

現在は参加者も増え、たくさんの方に愛される活動になっているようですね。始めた当初は不安もあったのではないですか?

山本さん:

立ち上げ当初は「みんな参加してくれるのかな…」という不安があったと聞いています。初年度はSNSでの展開をしておらず、1ヶ月半ほどの開催で集まったのは5,000枚ほどの写真のみで、協賛企業様も3社と、まだまだご参加いただける方が少ない状況でした。

そこでより多くの方にこの活動を知ってもらうため、2年目以降はSNSのハッシュタグを使ったアプローチをすることにしました。SNSの拡散力のおかげで、共感してくれる方の輪を広げることができました。

SNSの力はすごいですね!

山本さん:

そうですね。参加される方が増えると協賛企業様や寄付額も増えていくので、2年目以降良いサイクルが生まれてきているという状況です。

参加してくださる方がいないと成り立たないキャンペーンですので、参加者の皆さんに心からお礼を伝えたいです。

この「おにぎりアクション」は10月16日の世界食糧デーに合わせて毎年行っているのですが、これを通してつながった方たちが、1年後に再会できるプラットフォームとしての役割も果たせているようです。そういう意味では、私たちからも少し恩返しができているかもしれないと感じています。

素敵ですね!楽しみながら社会貢献ができるという点が、多くの方の心に響いているんでしょうね。

社会課題を自分ごととして考えるきっかけに

おにぎりアクションを通して、どういった成果を感じていますか?

山本さん:

2021年は10月5日〜11月5日までの開催で、27万枚以上の写真投稿が集まりおよそ140万食分の寄付をすることができました。

素晴らしい成果ですね!実際に参加された方たちには、活動を通じてどういった変化があったのでしょうか?

山本さん:

参加者アンケートを取らせていただいたところ、社会課題への関心が高まったと回答した方が約80%もいらっしゃいました。

手軽なアクションで社会貢献ができることや、「おにぎりアクション」というキャッチーな名前の効果もあるかもしれませんが、キャンペーンをきっかけに「写真1枚からどうやって寄付につながるんだろう」と、仕組みの裏側まで想像してくださった方がたくさんいたのではないかと思います。

そういう意味で、一人でも多くの方が社会課題を「自分ごと」として考えるきっかけとなれたということも、大きな成果なのではないかと感じています。

おにぎりアクションがきっかけとなり、別の社会貢献にもつながっていくと嬉しいですね。

山本さん:

そうですね。社内課題の解決につながるような大きなうねりを生み出すには一人一人の意識が非常に重要だと思っています。この活動が地球規模の課題に目を向けるきっかけとして機能してくれるのであれば、とても有意義だなと思いますね。

ビジネスマインドを持った持続可能な社会貢献のかたち

継続的な支援には、持続可能な組織であることが求められる

-TFT様では、収益の確保と社会事業の両立を大切にされていますよね。

山本さん:

やはり社会貢献自体も持続可能であるべきだと感じています。

気まぐれで支援を始めて、支援できなくなったら手を引くということは絶対にできませんから、支援を始めたからには自立できるまで応援していくということが必要になってきます。

そのためには、私たち自身が持続可能な組織であるべきだというのは常々考えております。事業としてしっかりとしたモデルやシステムを作り、組織を続けていくことで継続的な支援を行える。そういう意味でのビジネスマインドは大切にしていきたいです。

今回のおにぎりアクションでいうと、協賛企業様の存在がポイントでしょうか。

山本さん:

そうですね。2021年は過去最大となる31の企業・団体様に協賛をしていただきました。これまで企業のCSR活動は事業と切り離して推進されるケースが多かったですが、SDGs達成に向けた機運の高まりもあり、事業の中に社会貢献の要素を取り入れることの重要性が高まっていることも背景にあるのではないかと思います。

協賛企業様のご寄付がないと続かないアクションですので、協賛していただいた企業様に価値が提供できるように動いていきたいです。

社会貢献が社員のモチベーションアップにつながる

-協賛企業様はどういった効果を感じていらっしゃるのでしょうか?

山本さん:

トップスポンサーである日産セレナ様からは、販売会社の方のモチベーションの向上につながったというとても嬉しい言葉を頂きました。

この度、全国にある販売会社を巻き込んだおにぎりアクションを展開してくださったのですが、お客様から「すごく良い活動に参加してるね」というポジティブなコメントを頂けたそうです。

そういった効果があるというのは私たち自身も予想していませんでした。

-「うちの会社も何かやってみたい!」という企業が今後も増えそうですね。

山本さん:

私たちは企業様に合ったプログラムをご提案させていただくことを大切にしています。

社員食堂でのTFTプログラムの導入が一番多い形態ではありますが、社員食堂をお持ちでなかったり、テレワーク中心など、企業様によってそれぞれの事情があると思います。そういった場合は、自動販売機でできる活動や寄付つきウォーキングイベント、おにぎりアクションへのご協賛など様々なかたちでご提案させていただいています。

また、企業様が抱えていらっしゃる課題が新しいプログラムの開発につながるケースもあります。一緒にアイデアを出し合いながら、前向きに新しいものを作っていけたらと思います。

ウォーキングイベントの様子 提供:デロイト トーマツ グループ

パートナーシップでより良い支援のかたちを広げたい

-最後に、TFT様の今後の展望を教えてください。

山本さん:

おにぎりアクションについて言うと、よりインパクトのあるアクションにするためには、たくさんのセクターの方の巻き込みが大切だと思っています。賛同してくださる企業様・団体様とともに創り上げて拡大し、より多くの方にご参加いただける取り組みにしていきたいです。

残念ながら、コロナ禍の影響で世界の飢餓人口が増えてしまっているという現状があります。今までと同じ活動を漫然と続けていくだけで良いのかということは常に問い続けていかなければいけないと感じています。

SDGsや社会課題に目を向ける方が増えていることは、私たちにとって追い風にもなり得ると思いますので、様々な企業様・団体様とのパートナーシップで、より多くの人を巻き込みながら新しい活動を生み出していきたいです。

-今度も活動の輪が広がっていくことを期待しています。山本様、ありがとうございました。

インタビュー動画

TABLE FOR TWO リンク

>>特定非営利活動法人 TABLE FOR TWO International