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農業とSDGsの関係性を解説!取り組み事例も紹介

2015年にSDGsが採択されたことによって、さまざまな分野で目標達成に向けた取り組みが行われています。農業もその1つです。私たちの暮らしに欠かせない「食」と密接に関わる農業分野では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

また、つい「農業=環境」と連想してしまいますが、「社会」や「経済」に関する課題とも深く関係しています。本記事では、農業とSDGsの関係性や取り組み事例をまとめました。まずは、関係性を確認する前に、SDGsについて知りましょう。

まずはSDGsについて確認

SDGsは、「Sustainable Development Goals」の略であり、2015年に行われた国連総会にて、加盟している193カ国すべての国が賛同した国際目標です。日本では、「持続可能な開発目標」とも呼ばれています。SDGsは、世界中で起きている「社会」「環境」「経済」の課題を解決するために、17の目標169のターゲットが設定されています。

2022年に発表された、各国のSDGs達成度がわかる「Sustainable Development Report 2022」によると、日本は163カ国中19位。目標に対する進捗は、下図の通りです。

達成しているのは、緑色で表示された目標4「質の高い教育をみんなに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標16「平和と公平をすべての人に」の3つです。2030年までに残りの目標を達成するためにも、取り組みをさらに加速させていく必要があるでしょう。

【関連記事】

SDGsとは|1〜17の目標一覧と意味や達成状況、世界・日本の取り組み事例を紹介

17の目標についてはこちらから

農業とSDGsの関係

「Sustainable Development Report 2022」によると、日本が達成しなければならない目標は14個残っており、その内容も「社会」「環境」「経済」など多岐にわたります。この3つの中で農業分野を活用し解決できる課題を考えた時、「環境」と答える人は多いのではないでしょうか。

勿論、農業は環境課題の解決にも貢献します。しかしそれ以外にも、SDGsを意識した農業を行うことによって、持続可能な食料生産や雇用問題のような、「社会」や「経済」に関する課題解決にもつながるのです。

この章では、「社会=食糧の供給」「環境=環境への配慮」「経済=生産者の生活・雇用面」として、どのように農業が関わっているのかを説明します。

①食糧の供給(社会)

輸入大国である日本にとって、食糧供給は優先的に取り組まなければならない課題の1つです。この課題を解決するためには、「生産量の安定化」と「持続可能な農業」が鍵となります。

そのためには、

  • 農作物の安全性の向上や品質の確保
  • 自然災害に強い農作物の栽培

などが重要です。

これらに取り組むことで、目標2「飢餓をゼロに」の達成に貢献します。

②環境への配慮(環境)

農作物を育てたり出荷したりする中で、環境に負荷をかけてしまうこともあります。

例えば、害虫や病気から農作物を守るために、農薬や化学肥料を大量に使用するケースがあります。農薬によって見た目の綺麗な農作物ができますが、土壌や水質汚染が起こる危険性もあります。一年を通して室温を一定に保つ必要のあるハウス栽培では、化石燃料の使用によって二酸化炭素が発生し、地球温暖化の解決が遠ざかってしまいます

他にも農業を行う過程で環境負荷がかかる場面は多々あるため、これらの課題解決に取り組むことは、

  • 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
  • 目標12「つくる責任つかう責任」
  • 目標13「気候変動に具体的な対策を」
  • 目標15「陸の豊かさも守ろう」

の達成につながるのです。

【関連記事】【地球温暖化とSDGsとの関係】原因や対策、日本が受ける影響、私たちにできること

③生産者の生活・雇用面(経済)

近年、「農業従事者の高齢化」や「後継者不足」などの人不足が問題になっています。理由としては、「収入が安定しない」「仕事として行うには、ハードルが高い」「重労働」などが挙げられます。改善するためには、積極的な科学技術の導入による負担軽減農業経営への支援就農を希望する人への雇用機会をつくることなどが大切でしょう。

これらに取り組むことは、主に目標8「働きがいも経済成長も」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献します。

このように、農業は様々な目標達成に貢献できる分野と言えますが、具体的にどのような取り組みが進められているのでしょうか。

次では、「社会」「環境」「経済」のそれぞれの側面から事例を紹介します。

社会面における農業×SDGsの取り組み事例

まずは、社会面における「農業×SDGs」の取組事例を見ていきましょう。

イノチオグループ

イノチオグループは、主に農業技術や栽培方法、品種開発などを行っている会社です。そのなかでも、「バイオスティミュラント(※)」の普及や開発に力を入れています。

近年、気候変動の影響が農作物にも見られるようになりました。

例えば、2022年9月に日本を襲った台風14号の影響によって、宮崎県の市場ではきゅうりやピーマンの落札価格が、前日より2〜3割ほど高くなったとニュースで報じられました。このように、農作物は「自然災害や病気によって、収穫間近の農作物が全滅した」「猛暑によって枯れてしまった」など、病気や天候に大きく左右されるため、対策が欠かせません。

イノチオグループでは、バイオスティミュラントを与えることによって、作物がもつ本来の力を引き出し、猛暑や豪雨などの外的ストレスに強い農作物になり、安定供給が実現するとしています。

イノチオグループHP

インタビュー記事

バイオスティミュラント

海藻や植物の抽出物、ミネラル、アミノ酸などが含まれたもの。植物に与えることによって、ストレスに強い農作物に育ち、本来持っている生命力を引き出す効果がある。

農業法人株式会社D&Tファーム

農業法人株式会社D&Tファームでは、通常であれば温暖な気候でしか育たない農作物(耐寒性品種)を、国内で栽培・収穫できるようにする技術「凍結解凍覚醒法」を用いて、苗の栽培や販売を行っています。

この凍結解凍覚醒法は、食糧問題の解決に貢献するとして注目されています。

日本の食料自給率(カロリーベース)は、2021年度時点で約38%と低く、多くを輸入に頼っているのが現状です。そのため、凍結解凍覚醒法が広まり対応できる農産物の種類が増えたり、今まで育てられなかった場所での栽培が可能になったりすると、日本の食糧自給率の上昇が期待できます。

例えば新潟県でのバナナ栽培。冬場は気温も低く雪が降ることの多い新潟県ですが、凍結解凍覚醒法とD&Tファーム推奨のビニールハウス栽培によってバナナの栽培を実現しました。

日本の一世帯あたりのバナナの消費量は年間18,206gで、「最も消費量が多い果物」だと言われています。凍結解凍覚醒法が普及してバナナ栽培が定着すれば、多くの消費量を国内でまかなえるようになるかもしれません。

さらに、苗の成長が通常より早くなり生産量も増えることから、収入の安定化も期待されます。

農業法人株式会社D&TファームHP

インタビュー記事

環境面における農業×SDGsの取り組み事例

続いては、環境面における農業×SDGsの取り組み事例を見ていきましょう。

株式会社坂ノ途中

株式会社坂ノ途中は、「100年先も続く、農業を。」を合言葉に、環境負荷の小さな農業に取り組む人を増やす活動を行っています。近年、就農を希望する人の中には、「有機農業」や「気候や土壌の性質に合わせた栽培スタイル」など、環境に優しい農業を目指す人が増えていると言います。

しかし、「借りられる農地が狭く、土壌の状態もあまり良くない」「収穫量が少ないため、取り引きをしてもらえない。その結果、収入が安定しない」などの問題によって、農業を続けられる人が限られていることも事実です。そういった新規就農者をサポートするために、株式会社坂ノ途中では、新規就農者が栽培した農産物の販売に力を入れています。

サポートによって収入が安定すれば、就農者は農業を続けていくことが期待されます。そして、環境負荷の少ない農業を行う人が増えると、株式会社坂ノ途中が目指す「100年先も続く農業」に近づき、地球環境にも良い影響を与えるでしょう。

株式会社坂ノ途中HP

株式会社地域法人無茶々園

株式会社地域法人無茶々園は、

  • みかんやレモンなどの柑橘の有機栽培や加工・販売
  • 農業研修施設の運営
  • 海産物の販売
  • 福祉事業

など、さまざまな事業を展開し、持続可能な産業と地域づくりを行っている会社です。

みかんの有機栽培では、農薬の使用を極力控えています。これは、農薬によってつくられる外見の美しさ(見栄え)より、安心感と生命力のある産物作りを意識しているためです。

その他にも、

  • 有機栽培を行っている生産者と積極的に関係を築く
  • 一般栽培を行っている生産者に有機栽培への転換を提案

などにより、有機栽培の拡大を図っています。

また無茶々園では、「山を守ることは、海を守ること」と考えています。農薬を極力使用しない有機栽培は、土壌や水質汚染を軽減できるため、汚染された水が川をつたい海へ流出する危険性も少なくなります。つまり有機栽培は、畑がある山だけではなく海の環境保全にもつながるのです。

株式会社地域法人無茶々園HP

インタビュー記事

株式会社テツゲンメタウォーターアクアアグリ

株式会社テツゲンメタウォーター株式会社株式会社プラントフォームからなる合同会社「株式会社テツゲンメタウォーターアクアアグリ」は、岩手県大船渡市でアクアポニックス事業を開始しました。使用されるアクアポニックスプラントは2,000㎡と、国内最大規模(2022年8月時点)です

アクアポニックスとは、魚の養殖と水耕栽培を同時に行う新しい農業形態です。別名「水で行う有機栽培」とも呼ばれており、魚の排泄物を肥料に野菜や果物を育てます。

化学肥料や農薬を使用せずに育てることができるうえに、植物の力によって汚れた水は浄化され水槽に戻ることから、「環境負荷が少ない農業の手法」として注目されているのです。

株式会社テツゲンメタウォーターアクアアグリでは、チョウザメの養殖と無農薬・無化学肥料の野菜の水耕栽培を行っています。

【関連記事】アクアポニックスとは?自作は難しい?デメリットや企業事例、SDGsとの関係・できること

経済面における農業×SDGsの取り組み事例

最後に、経済面における農業とSDGsの取り組みを見ていきます。

さんさん山城

さんさん宮城は、聴覚障がい者の就労支援の場(就労継続支援B型事業所)として開所しました。その事業所で行われている活動の1つに、農業と福祉の課題を解決し、お互いにとってプラスになる取り組み「農福連携」があります。

事業所がある京都府京田辺市は、お茶づくりが盛んな地域ですが、農業従事者の高齢化が進み後継者がいないお茶農家も増えています。

そこでさんさん宮城は、農業を続けることが厳しくなった農家さんから茶園を譲り受け、聴覚障がい者(以下利用者)の方たちと一緒に、お茶の葉や野菜作りを始めました。利用者たちも、農作業にイキイキと取り組んでいるそうです。その他にも、収穫した農産物を活用した加工品の開発や販売も行っています

このようにさんさん山城は、農業を通して、聴覚障がい者が自分らしく働ける職場の提供を実現しました。

さんさん山城HP

インタビュー記事

AGRIST株式会社

AGRIST株式会社は、「100年先も続く 持続可能な農業を実現する」を経営理念に、農業が抱える問題をテクノロジーの力によって解決する会社です。ピーマンの自動収獲機「L」を開発し、人手不足の解消や収穫作業の負担軽減を可能にしました。

すべての工程において手間と時間のかかる農業ですが、その中でも収穫作業は、多くの人手や時間が必要です。特に、個人経営の農園や高齢の農業従事者にとっては重労働でしょう。農業機械を導入したくても、高額なため購入できない人も少なくありません。

AGRIST株式会社は、そういった農業従事者の悩みを聞き「L」を開発し、一般の農業機械より購入しやすい価格にしました。収穫作業時の負担が軽減され時間の短縮につながれば、浮いた時間を栽培や販売など他の作業に充てられます。すると収益は向上し、農業従事者の生活の安定にもつながるのです。

その他にも、農業へ挑戦する若者のハードルを下げるために「土バック方式(※)」を採用しています。

土づくりは農作物に大きく影響する重要な作業ですが、経験がないと難しく、若者の農業参入のハードルを高くしている原因の1つでもあります。AGRIST株式会社は、土づくりに費やす時間を短縮し、農作物の安定した生産を可能にする土バック方式を採用することによって、若い農業従事者の参入を後押ししているのです。

AGRIST株式会社HP

インタビュー記事

土バック方式

直接地面を耕し農作物を植えるのではなく、土バックの中に植えて育てる方法。

まとめ

「社会」「環境」「経済」の課題を解決する可能性を秘めている農業は、私たちの暮らしに欠かせない存在です。これまで課題であった労働や収入、環境面も、さまざまな企業の努力や開発した技術によって、少しずつ改善されています。

今後も、技術や支援によって持続可能な農業を後押しする企業が増えれば、日本の農業の未来は明るくなるでしょう。その結果、SDGsの目標達成にも貢献するのです。

〈参考文献〉
Sustainable Development Report 2022
SDGs(持続可能な開発目標)|蟹江憲史著
最適な温度制御、地中熱・太陽熱、排気中CO2の利用 施設園芸の再生可能エネルギー活用技術|農林水産技術会議事務局 研究開発官(基礎・基盤、環境)室
農業労働力に関する統計|農林水産省
ラインナップ|農業法人株式会社D&Tファーム
【速報】食料自給率38% 前年から1ポイント上昇 2021年度|一般社団法人 農協協会
私たちの考え|株式会社坂ノ途中
無茶々園のいま|株式会社地域法人無茶々園
導入実績|株式会社プラントフォーム
岩手県大船渡市で魚と植物を同時に育てる循環型農業「アクアポニックス」事業を開始|メタウォーター株式会社
活動事例|さんさん山城|社会福祉法人京都聴覚言語障害者福祉協会
新潟県の気象の特徴|新潟地方気象台