#SDGsを知る

カリギュラ効果とは?由来や具体例、メリット・デメリットも

イメージ画像

浦島太郎は乙姫様から「開けてはいけない」と言われていたのに、玉手箱を開けてしまいおじいさんになってしまいました。「夕鶴」では、「機織りするところを見ないで」ときつく言われたのに、よひょうはのぞいてしまい、おつうは去らざるを得なくなりました。

子ども心に「ダメって言われていたのに・・・」と思った覚えはありませんか。

とはいえ、多くの人が太郎やよひょうの立場に立ったら、同じことをしてしまうでしょう。それがカリギュラ効果です。

そのカリギュラ効果について例をあげ、分かりやすく解説します。うまく使っていくことで日常に生かせるメリットや、気を付けなくてはいけないデメリットについてもまとめていきますので、是非一緒に考えていきましょう。

カリギュラ効果とは?

カリギュラ効果とは、人から行為や物事を禁止されたり限定されたりすると、かえって関心が高まり実行したくなる心理現象のことです。

由来

「カリギュラ」という名前は、1980年にアメリカで上映された映画「カリギュラ」からきています。

この映画は、暴君として名高いローマ皇帝カリグラを題材にしていましたが、残虐で過激な場面が多かったため、ボストンなどで放映禁止となりました。それがかえって人々の反発と関心を呼び、大ヒットしたのです。

この映画「カリギュラ」に因んで、このような心理現象をカリギュラ効果というようになったのです。

シロクマ効果との違い

シロクマ効果とは、自分は考えないようにしているのに、逆にそのことが頭から離れなくなってしなう現象をいいます。

「シロクマ」の由良は、アメリカの心理学者ダニエル・ウェグナーの行った「シロクマ実験」に由来します。

ウェグナーは、3つの被験者グループにシロクマの1日を追った映像を見せ、記憶力を試す実験を行いました。

グループは、

  1. シロクマのことを覚えておくように言う。
  2. シロクマのことは考えなくてもいいと言う。
  3. シロクマのことは考えないように言う。

の3つです。

この実験で、最も詳しく覚えていたのはCのグループだったのです。

カリギュラ効果との違いは、シロクマ効果がもともと「シロクマの1日を追う」といったテーマを受け入れているのに、カリギュラ効果はそれまでなかった事柄に新たに関心が禁止や限定によって生まれる点です。

心理的リアクタンスとの違い

リアクタンスは、文字通り< re:反 act:行為 -ance:名詞化する語尾>です。つまり、心理的リアクタンスとは、強制や禁止、限定されたことに反発する心理現象を言います。

「他者からの強制や禁止、限定」が起点になっている点は、カリギュラ効果と大変似ていますが、「やりなさい」と言われたことに対して「やりたくなくなる」という反発が心理的リアクタンスです。一方のカリギュラ効果で起こることは、反発ではなく逆に興味関心であるため、その点が異なると言えるでしょう。

カリギュラ効果の例

私たちの身近にもカリギュラ効果は現れています。どんな場面に現れているか見ていきましょう。

広告宣伝

限定品に弱い」という方が多いのではないでしょうか。「〇品限り」や「先着〇名様」などと限定されたことで、かえって購買意欲が刺激されてしまうのがカリギュラ効果です。

テレビ番組で「ピー」という音で言葉を聞こえなくしたり、モザイクをかけて映像を隠したりされると、視聴者はいっそう興味をもってしまいます。これもカリギュラ効果です。

また、最近少なくなってきたとはいえ、まだまだ使われている「この答えはCMの後で!」もカリギュラ効果のひとつです。これによって視聴者は答えを知りたいという欲求が増し、CM中もチャンネルをかえずに答えを待っています。

けして一人で観ないでください」とか「けして夜中に観ないでください」などと言われたら、怖いホラー映画もつい観たくなってしまいませんか?

恋愛

海外のお話の例では「ロミオとジュリエット」や「ウェストサイドストーリー」、邦画の時代劇でも身分違いの愛など、多くの恋愛場面でもカリギュラ効果が見られます。

近年のドラマにも「生徒と教師の恋愛」や「お嬢様と不良少年」など、許されない状況であるほど当事者は思いを止められなくなるストーリーがたくさん見られます。

親から反対されたり家や組織同士の確執など、結ばれるまでの障害が大きかったりすると、かえって二人の感情が高まるカリギュラ効果の心理です。

大恋愛でなくても、相手からメールの返信がなかなか来ないと普段より気になったり、「二人だけの秘密」などの想定が互いの親密感を高めたり、恋愛やそれと類似する場面にはカリギュラ効果が多くみられます。

子育て・教育

狂言の「附子(ぶす)」をご存じの方は多いと思います。主人が覗くことを禁じた桶を、禁じられたゆえに余計開けてみたくなってしまう小僧さんのお話です。ダメと言われるとやってみたくなってしまう心情は、まさにカリギュラ効果です。

人は禁じられるとフラストレーションが溜まります。特に子どもは、親にダメと言われると、あえてやってみたくなってしまいます。一時的に我慢できても、重なるとストレスとなって溜まってしまい、心理的抑圧が増幅してしまいます。結果として不安定な感情を持つようになったり、自己肯定感を減少させたりしてしまいます。

親の方がカリギュラ効果を認識し、子どもが納得するような理由付けをしたり、ストレスの解消法を工夫したりする必要がありそうです。

カリギュラ効果のメリット

<禁止・制限⇒フラストレーション⇒解消行動>といったカリギュラ効果のメカニズムを使うことは、様々なメリットを生み出します。

集客・購買行動の促進

「〇〇限定」のように消費者の行動に制限をかけることで、商品やサービスに付加価値がついたと同様になり、消費者の興味関心をひきつけます。

また「会員のみ」「一見さんお断り」などの制限は、利用できたユーザーに一種のステータスを与えることができます。これにより、ユーザーには特権意識を、周囲の人には憧れ意識を持たせる効果があります。

カリギュラ効果を利用した付加価値の増加は、集客・購買行動の増加に繋がります。

恋愛にも有効

ビジネスの場面でのカリギュラ効果は、利用したサービスや商品への付加価値を生み出しますが、恋愛では自分への付加価値を高めるテクニックに繋がります。

相手に対する自分の付加価値を高めるため、「初めての誘いは断る」「相手にあまり興味がないフリをする」「返事を意図的に遅らせる」など、制限や禁止を取り入れることで、相手の関心を高める効果が期待できます。

しかし、商品やサービスと違い、人の気持ち対気持ちですから、やりすぎると逆効果の危険性があります。また、付加価値はあくまで「付加」です。ベースとなる本価値がなければ、大きな効果は期待できないでしょう。

カリギュラ効果のデメリット

ビジネスや恋愛の場面で多く見られるメリットですが、子育て・教育はデメリットが現れやすい場面です。

教育への負の影響

禁止によって生じたフラストレーションの解消が、カリギュラ効果のメカニズムです。フラストレーションが解消されない、それが溜まってしまうことが最も心配な点です。

事例の章でお話した「不安定な感情」や「自己肯定感を減少」は、対人関係の悪化に繋がります。

相手が納得する禁止の理由付けをし、ストレスが溜まる前に適度な息抜きを設けることが大切です。

リバウンドや買いだめ

ダイエットや禁煙・禁酒に失敗した方も多いのではないでしょうか。禁止することでカリギュラ効果が出てしまうので、失敗は自然の流れと言えます。

気を付けなければいけないのは、時には過剰カリギュラ効果をもたらすことがあるということです。禁止や制限が強ければ強いほど、反動が大きくなる恐れがあるのです。

「お菓子はもう絶対食べない」「金輪際お酒は飲まない」は、カリギュラ効果の原因を自ら作り、効果を大きくしている可能性があります。やけ食いに走ってしまい、リバウンドした人もいます。

またコロナ禍では、「マスクが買えない」という状況が、少し我慢して待つという選択より、「出回った時に買いだめする」という行動を引き起こしました。

これらのデメリットについて考えると、カリギュラ効果を知らないためにデメリットを自ら作りだしてしまうことが1番のデメリットと言えるのではないでしょうか。

必要な場面では上手に利用し、マイナスに働いてしまう場面では、うまく息抜き・ガス抜きができるようにすることをお勧めします。

ビジネスでカリギュラ効果を活用する際のポイント

前章ではカリギュラ効果について、メリットを生かしたり、デメリットに気を付けることをまとめてきました。この章では、さらに具体的にビジネスにうまく活用する際のポイントをお話しします。

ポイントは大きく3つにまとめられます。

  1. 理由を明確に
  2. 禁止・制限表現に注意
  3. 信頼関係を前提に

1つずつ解説していきましょう。

ポイント➀理由を明確に

ただ「しないでください」と言っても、理由が明らかでないと強い反応は期待できません。

例えば「限定〇品」と表現する場合でも、「手づくりなので大量生産ができないため」と付け加えると納得してもらいやすくなります。

この場合、「手づくり」という言葉が商品の付加価値を、「大量生産できない」ことが生産者の誠実さを伝える効果を生んでいます。

ポイント➁禁止・制限のレベルや表現に注意

「先着1名様」や「簡単な手続き」と言いながら会員登録の手順が複雑だったりすると、顧客は始めから、あるいは途中であきらめてしまいます。少し背伸びすれば手の届きそうな禁止・制限のレベルを設定しましょう。

また、広告は景品表示法 ※ に従わなければなりません。商品が提供可能な数量だけ揃ってないのに、「限定〇〇点のみ」などの購買意欲を上げるための表現をすると、法令上の誤認表示とみなされます。

さらにカリギュラ効果で顧客を引き寄せておいて、目的の商品を提供せず、他の商品を買うよう誘導した場合は、おとり広告とみなされて処罰の対象となってしまいます。

※ 景品表示法:正式名「不当景品類及び不当表示防止法」。不当表示や不当景品から一般消費者の利益を保護するための法律。

ポイント③信頼関係を前提に

出典:事例でわかる景品表示法(消費者庁)

カリギュラ効果は、それまでの実績の上に利用すると効果的です。

企業自体や代表的な商品の知名度がすでに高まっていれば、顧客との信頼関係ができていて「あの会社が言っているのだから」と、制限や禁止への許容度が高くなります。

また、それまでに地道な販売行動をして実績を重ねた企業が、「今回はこの商品にチャレンジしてみました!まだ大量生産はできないため限定〇〇です」と打ち出すと、カリギュラ効果はより高まると言えます。

実績がまだ積まれていない場合は、ていねいなマーケティングリサーチをし、信頼関係が構築できる見通しを持つ必要があります。また、冒険的な商品を販売したい時などは、実績がある場合でも十分なリサーチをお勧めします。

実績と十分なリサーチのないカリギュラ効果頼みは、危険を招きかねません。

引用:事例でわかる景品表示法及びおとり広告に関する表示 (平成 5年4月28日公正取引委員会告示第17号) 制 定 昭和57(消費者庁)
参考:カリギュラ効果とは?概要や集客に利用できる理由・活用方法を紹介

関連記事:バンドワゴン効果とは?アンダードッグ効果・スノッブ効果との違い、具体例も – SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』

カリギュラ効果に関してよくある疑問

ここからは、カリギュラ効果についてよくある疑問にお答えしていきましょう。

対策はある?

カリギュラ効果に対する対策を紹介します。

対策➀:カリギュラ効果を認めること

デメリットについての章で「カリギュラ効果を知らないためにデメリットを自ら作りだしてしまうことが1番のデメリット」とお話ししました。

カリギュラ効果は自然な心理現象です。止められない自分を責める必要はありません。現象を認めたうえで、自分にあった対処法を考えることが大切です。

対策➁:生き抜き・ガス抜きを

チートデイという言葉を耳にされたことはあるでしょうか。チートとは、cheat「あざむく」という意味です。

ダイエットを続けていると、脳が飢餓状態だと認識してしまい、体を消費カロリーを低く押さえるために体重が減りにくくなってしまいます。そこで「食べてもいい日」を設けて「飢餓状態ではない」と脳をあざむくのです。

このチートデイは脳のメカニズム上も、精神衛生上も大変効果があるということです。

ダイエット以外の場面でも、心理のメカニズムを客観的に捉えて、自分流のストレス解消法を見つけられると有効な対策になります。

参考:【医師監修】チートデイとは?メリットや注意点、やり方を解説

逆効果になることもある?

逆効果が現れる1番の場面は「やりすぎ」です。

ビジネスの場面では、過剰な表現や、信頼関係ができていないうちの早すぎるカリギュラ効果狙いの広告・販売は、顧客の信頼を失ったり、法令に触れるおそれさえ出てきます。

子育て・教育の場面でも、過度な禁止が子どもの心にフラストレーションを溜めてしまい、

良好な対人関係を築きにくくしてしまいます。

チートデイのないストイックすぎるダイエット、メディアの品薄情報に煽られた買いだめも、カリギュラ効果が逆効果になってしまった例です。

カリギュラ効果とSDGs

イメージ画像

日常の多くの場面に見られるカリギュラ効果です。最後にSDGsとの関わりを見ていきましょう。

カリギュラ効果が顕著に出るのは商品やサービスの提供・利用の場面です。SDGsの目標では、目標12「つくる責任つかう責任に最も深く関係します。

目標12「つくる責任つかう責任」とカリギュラ効果

企業が、信頼関係を築いた上で適度なレベル正しい表現で使えば、カリギュラ効果は購買意欲を刺激し、持続可能な業績を生み出すでしょう。そして商品やサービスを広げ、経済の発展に貢献します。

反対に、利益をあげることのみを目的にカリギュラ効果を使うと、信頼関係を失うことになり、企業の発展はかえって難しくなります。

カリギュラ効果を正しく使った経済活動は「つくる責任」に直結します。

経済活動ばかりでなく、子育てや恋愛、日常生活全般を見渡してもカリギュラ効果は現れています。日常生活を営む側としても、まずカリギュラ効果という現象を認め、「やりすぎ」現象が起きないよう、メリットを生かす使い方をすることが「つかう責任」を達成することになります。

まとめ

今回は、まず印象的な名前の由来から解説を始め、他の心理現象との違い、メリット・デメリット、そして具体例やビジネスでの効果的な活用の仕方をまとめてきました。さらによくある疑問にもお答えし、SDGsとの関りもお話ししました。

宣伝広告の場面ばかりでなく、日常の様々な場面に現れているカリギュラ効果です。「そういう心理現象がある」と認識していただけたら、それはこの効果を有効活用するスタートラインに立ったことと同じです。この記事が有効活用の一助になれば幸いです。

先日友人と食事に行った時、ある美味しそうなレストランを見つけ入ろうとしました。でも、席はたくさん空いて見えるのに入口には「満席」の知らせが。完全予約制であることを知り「この次は是非予約を!」と友人共々思いました。

これはカリギュラ効果を活用したレストランの戦略なのでしょうか。

<参考資料・文献>
カリギュラ効果 – 一般社団法人日本経営心理士協会
カリギュラ効果(カリギュラコウカ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
カリギュラ効果 – Wikipedia
附子(ぶす)
夕鶴(ユウヅル)とは? 意味や使い方 – コトバンク
事例でわかる景品表示法(消費者庁)
おとり広告に関する表示 (平成 5年4月28日公正取引委員会告示第17号) 制 定 昭和57(消費者庁)
バンドワゴン効果とは?アンダードッグ効果・スノッブ効果との違い、具体例も – SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』
カリギュラ効果とは?概要や集客に利用できる理由・活用方法を紹介
【医師監修】チートデイとは?メリットや注意点、やり方を解説
自分の心理学:斎藤勇(ナツメ社)
パフォーマンス・マネジメント:島宗理(米田出版)
人間心理の不思議現象:内藤誼人(三笠書房)
SDGs:蟹江憲史(中公新書)