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CDPとは?気候変動・水・フォレストレポートの詳細やA入り企業の紹介も

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未来を変えるために、企業は効果的に実行しているか?

CDPが、企業の環境への本気度を明かします。

気候変動対策、水セキュリティ、森林保護CDPは、企業のこれらの取り組みを一定の基準で評価します。

本記事では、持続可能な未来への扉を開くCDPについて分かりやすく解説し、世界が注目するAリスト入り企業の事例も紹介します。

CDPの評価結果を活用して、企業の環境経営を見極める力を身につけ、自社の投資・経営個人の消費・選択などに活かしましょう。

CDPとは

【情報開示の重要性】

出典:環境省『CDPからの情報提供』(2022年3月)

CDPとは、Climate Disclosure Project(気候変動開示プロジェクト)の略称で、企業や自治体などの気候変動に関する情報開示を促進する国際的な非営利団体です。2000年に英国で設立され、現在では世界190カ国以上で活動しています。

CDPは、企業や自治体に対して、気候変動に関する以下の情報を開示するよう求めています。

  1. 気候変動対策への取り組み
  2. 水セキュリティのための取り組み
  3. 森林保全・生物多様性保全への取り組み

これらの情報は、CDPの定める一定の規準によって評価され、投資や購買の判断材料となるほか、企業や自治体自身による気候変動対策の進捗状況を把握するためにも活用されます。

【CDPの情報開示システム】

目的

CDPの目的は、企業や自治体などの気候変動に関する情報開示を促進し、気候変動への取り組みを加速させることです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)※の第6次評価報告書によると、気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を45%削減する必要があります。

IPCC

気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称。IPCCは、世界中の科学者からなる専門家グループによって構成され、気候変動に関する科学的知見を評価し、政策立案者にその知見を提供している。

【関連記事】IPCCとはどんな組織?活動内容や各報告書の詳細、SDGsとの関係も

しかし、現状では、世界の温室効果ガス排出量は増加の一途をたどっています。このような状況下において、企業や自治体などの気候変動に関する情報開示を促進し、取り組みを加速させるために、CDPは活動しています。

【CDPの情報開示システム 回答企業数】

2022年時点で、CDPの情報開示システムは100ヵ国以上の国から、18,600社以上の企業が回答し、情報開示を行っています。この中で、日本の企業は約900社ほどで、例えば、

  • 環境省
  • トヨタ
  • 花王
  • 積水化学
  • 野村総研 (NRI)

などの企業が参加しています。

【CDPの情報開示システムに回答している日本企業の例】

TCFDとの違い

CDPとTCFD※は、どちらも企業の気候変動対策に関する情報開示を促進する国際的なイニシアチブです。どちらも、それぞれの機関が作成した質問書に回答することによって、情報が開示されます。

TCFD

Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略語で、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳される。企業が気候変動に関連するリスクと機会をどのように理解し、評価し、開示しているかについてのガイドラインを提供するために、金融安定理事会(FSB)によって2015年に設立された業界横断的なワーキンググループ。投資家や金融機関、企業などのステークホルダーが、気候変動による経済的影響をより良く理解し、長期的な投資決定を行うための情報を得られるようにするために活動している。

【関連記事】TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは?開示するものやシナリオ分析・戦略を解説

しかし、両者には以下のような違いがあります。

目的の違い

CDP:企業や自治体などの気候変動に関する情報開示を促進し、気候変動への取り組みを加速させること

TCFD:企業が気候変動に関連する財務情報を開示することを通じて、気候変動リスクの適切な認識と管理を促進すること

対象の違い

CDP:企業や自治体などの幅広い主体

TCFD:上場企業や金融機関などの金融市場参加者

内容の違い

CDP:温室効果ガス排出量・排出量削減目標・気候変動への適応策

TCFD:気候関連リスクと機会の評価・気候変動リスクへの対応方針・気候変動リスクの財務への影響

【CDPの質問書】

CDPとTCFDは、それぞれ異なる目的を持っていますが、両者は密接に関連しています。CDPの質問書は、TCFDの提言に沿って設計されており、TCFDの提言に沿った情報開示を行うには、CDPの質問書への回答が役立ちます。

また、CDPは、TCFDの提言に沿った情報開示を行っている企業を評価しており、TCFDの提言に沿った情報開示を行うことは、CDPの評価で高く評価されます。

次の章では、CDPが毎年の質問書への回答をもとに作成するレポートについて確認しましょう。*1)

CDPが出すレポートの種類と役割

【CDPを通じて情報開示した企業数(2022年)】

CDPは、毎年、企業や自治体から回答を受けた情報をもとに、気候変動に関するレポートを発行しています。CDPの作成する質問書は、

  • 気候変動
  • 水セキュリティ
  • 森林

の3つの分野について、企業はそれぞれの分野ごとに設定された項目に回答します。さらに、CDPは質問書にある3つの分野以外にもさまざまなレポートを発行しています。

【CDP質問書の内容】

気候変動レポート

気候変動レポートは、企業や自治体の気候変動への取り組み状況を評価したレポートです。このレポートでは、

  • 温室効果ガス排出量
  • 排出量削減目標
  • 気候変動への適応策

などについての評価が行われます。気候変動レポートは、企業や自治体の気候変動対策の進捗状況を評価し、気候変動への取り組みを加速させることを目的としています。

【日本企業と世界全体の割合比較:気候移行計画の作成・フィードバックの仕組み】

水セキュリティレポート

水セキュリティレポートは、企業や自治体の水資源に関する取り組み状況を評価したレポートです。このレポートでは、

  • 水使用量
  • 水資源の保全・管理
  • 水リスクへの対応

などについて、評価が行われます。水セキュリティレポートは、企業や自治体の水資源に関する取り組みを評価し、水資源の持続可能性を高めることを目的としています。

【水リスクとは】

フォレストレポート

フォレストレポートは、企業や自治体の森林に関する取り組み状況を評価したレポートです。このレポートでは、

  • 森林の保全・管理
  • 森林資源の活用
  • 森林リスクへの対応

などについて、評価が行われます。フォレストレポートは、企業や自治体の森林に関する取り組みを評価し、森林の持続可能性を高めることを目的としています。

【フォレストレポートの4つのカテゴリと回答企業数】

フォレストレポートでは、対象となる

  • 木材
  • パーム油
  • 畜牛品(食肉・革製品など)
  • 大豆

の4つごとに、スコアが付与されます。

ポリシーブリーフィング

ポリシーブリーフィングは、CDPの調査結果を政策担当者向けにまとめたレポートです。このレポートでは、

  • 気候変動
  • 水セキュリティ
  • 森林

などに関する最新のトレンド課題政策の方向性などが解説されています。ポリシーブリーフィングは、政策立案、投資判断のための政策担当者向けの情報提供を目的としています。

ノン・ディスクロージャー・キャンペーン

ノン・ディスクロージャー・キャンペーンは、気候変動、水セキュリティ、森林に関する情報を開示していない企業を対象としたキャンペーンです。キャンペーンでは、企業に対して、情報開示の重要性を訴え、情報開示を促しています。

ノン・ディスクロージャー・キャンペーンの目的は、企業への情報開示の啓発と情報開示の促進です。

サプライチェーンレポート

サプライチェーンレポートは、企業のサプライチェーンにおける気候変動、水セキュリティ、森林に関する取り組み状況を評価したレポートです。レポートでは、サプライチェーンにおける

  • 温室効果ガス排出量
  • 水使用量
  • 森林破壊

などのリスクと機会について、評価が行われます。 サプライチェーンレポートは、企業によるサプライチェーン全体の気候変動対策の進捗状況を評価することによって、企業のサプライチェーンにおける気候変動リスクの把握と管理を目的としています。

CDPシティ

CDPシティは、CDPが運営するプラットフォームです。シティでは、企業や自治体が気候変動、水セキュリティ、森林に関する情報を開示し、情報共有することができます。

CDPシティは、企業や自治体が自らの環境影響を計測、管理、開示し、そこで暮らし、働く人々にとって、より良い場所にする活動をサポートすることを目的としています。

これらのレポートは、企業や自治体、投資家、消費者などの利害関係者によって広く活用されており、気候変動対策や持続可能な社会の実現に貢献しています。

次の章では、CDPが企業からの回答をもとに評価する、格付けについて確認しましょう。*2)

CDPの格付けについて

CDPは、企業や自治体から回答を受けた情報をもとに、気候変動への取り組み状況を評価し、AからDまでの4段階の格付けを行っています。

CDPスコアとは

CDPスコアとは、企業がCDPの作成する質問書に回答した内容に基づいて、CDPが独自に開発した評価方法で算出されるスコアです。

CDPスコアは、企業が環境に対する取り組みをどの程度進めているかを評価する指標であり、

  • A:リーダーシップ(優秀な企業)
  • B:マネジメント(取り組みを進めている企業)
  • C:認識(理解している企業)
  • D:情報開示(CDPの質問書に回答している企業)

という4つの対応レベルに分けられます。Aが最高評価、D-が最低評価となります。

また、 CDPの作成する質問書に十分な情報を提供していない企業はF評価となります。(F評価企業はあくまで「CDPの質問書に回答していない、または十分な回答をしていない」という評価であり、CDPのスコアリングにおいてF評価の企業すべてが、環境問題に取り組んでいないわけではありません。)

このCDPスコアは、以下の2つの要素から算出されます。

  • 回答率:CDPの質問書に回答した項目の割合
  • 回答の質:回答内容の充実度

回答率は、回答した項目の割合が大きいほど高くなります。また、回答の質は、回答内容がCDPの評価基準を満たしているかによって評価されます。

【CDPスコアリング】

Aリスト入りする条件

Aリストとは、CDPが評価する3つのテーマのうち、少なくとも1つのテーマでAスコアを獲得した企業のことを指します。Aリスト入りするには、回答率が90%以上で、回答の質がAまたはBの評価を受けることが条件となります。

具体的には、

  • 環境に関するリスクや機会を正確に把握し、分析・報告する
  • 環境に関する目標や方針を明確に設定し、実行・評価する
  • 環境に関する目標や方針を科学的根拠に基づいて設定し、パリ協定やSDGsなどの国際的な枠組みに沿って推進する
  • 環境に関する目標や方針をサプライチェーンやステークホルダーと共有し、協力するとともに、その影響を拡大する

などの条件を満たす必要があります。Aリストに入ることは、企業の環境への取り組みの優秀さを証明するとともに、競争力や信頼性を高めることにつながります。

【気候変動 Aリスト企業数 2022年】

CDPのAリストに選ばれるのは、その分野の取り組みにおいて特に優秀な成果を挙げている証拠です。次の章では、どのような企業がAリストに選出されているのかを見ていきましょう。*3)

【最新版】CDPでAリスト入りしている企業

【CDPの情報開示システム(サプライチェーンメンバー)】

前の章で紹介した「Aリスト」に入ることは、気候変動への取り組みが最も優れていることを示す、最高の評価です。つまり、Aリスト入りは、企業の気候変動対策の頂点とも言えるでしょう!世界と日本に分けて、代表的なAリストに入っている企業と、その取り組みの実例を紹介します。

世界のAリスト企業

まずは日本国外のAリスト入り企業の中から、代表的な企業を確認しましょう。

気候変動レポート2022 Aリスト企業

  • Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン:アメリカ)
  • Danone(ダノン:フランス)
  • Ford Motor Company(フォード:アメリカ)
  • L’Oréal(ロレアル:フランス)
  • Unilever plc(ユニリーバ:イギリス)
  • Zurich Insurance Group(チューリッヒ:スイス)※保険会社

水セキュリティレポート2022 Aリスト企業

  • Hermes International(エルメス:フランス)
  • Danone(ダノン:フランス)
  • L’Oréal(ロレアル:フランス)
  • Stanley Black & Decker, Inc.(スタンレー:アメリカ)

フォレストレポート2022 Aリスト企業

  • Danone(ダノン:フランス)
  • Philip Morris Internationa(フィリップモリス:アメリカ)
  • L’Oréal(ロレアル:フランス)
  • Unilever plc(ユニリーバ:イギリス)

【トリプルA企業】Danone(ダノン:フランス)

ダノンは、フランスに本社を置く食品・飲料メーカーです。2022年のCDPレポートにおいて、気候変動、水セキュリティ、森林保全の3分野すべてで最高評価のトリプルAを獲得しました。

これは、4年連続のトリプルA評価となります。ダノンは2017年に、「One Planet.One Health」というサステナビリティ戦略を発表しました。この戦略のビジョンは、人々の健康と地球の健康は相互につながっており、より健康的で持続可能な食習慣を促進することで、両方の健康を守ることができるという考えに基づいています。

ダノンは、このビジョンを実現するために、「食の革命」ムーブメントを推進しています。このムーブメントは、自分たちの食習慣が世界にどのような影響を与えるのかに関心を持つ人々を「食の世代」と呼び、そのような人々が、より健康的で持続可能な食習慣を身につけるための支援活動です。

【ダノンの取り組み】

【トリプルA企業】L’Oréal(ロレアル:フランス)

ロレアルは、フランスに本社を置く化粧品メーカーです。2022年のCDPレポートにおいて、気候変動、水セキュリティ、森林保全の3分野すべてで最高評価のトリプルAを獲得しました。

ロレアルは、2030年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」というサステナビリティ戦略を掲げています。また、ロレアルは、サステナビリティを「企業の社会的責任(CSR)」ではなく、「ビジネスの成功に不可欠な要素」と位置づけしています。

世界のトリプルA企業(2022年レポート)

2022年のCDPレポートでは世界で、

  1. バイヤスドルフ(ドイツ):化粧品
  2. ダノン(フランス):乳製品
  3. フィルメニッヒ(ドイツ):化学
  4. HP(アメリカ):IT
  5. 花王(日本):日用品
  6. クラビン(ブラジル):製紙
  7. Lenzing(オーストリア):繊維
  8. ロレアル(フランス):化粧品
  9. LVMH(フランス):高級品
  10. メッツァ・ボアルド(フィンランド):森林
  11. フィリップ・モリス・インターナショナル(スイス):たばこ
  12. UPM(フィンランド):製紙

12社がトリプルA企業となっています。

日本のAリスト企業

続いて、各レポートにAリスト入りした日本企業を確認しましょう。

気候変動レポート2022 Aリスト企業(世界では287社)

  1. 大塚ホールディングス 
  2. 小野薬品工業 
  3. 塩野義製薬 
  4. 第一三共 
  5. 武田薬品工業 
  6. 中外製薬
  7. アサヒグループホールディングス 
  8. 味の素
  9. キリンホールディングス 
  10. コカ・コーラ ボトラーズジャパン
  11. ホールディングス 
  12. サントリーホールディングス 
  13. 住友林業 
  14. 明治ホールディングス 
  15. 日本たばこ産業
  16. 大林組 
  17. 清水建設
  18. 積水ハウス 
  19. 大成建設 
  20. 大和ハウス工業 
  21. 戸田建設 
  22. ヒューリック 
  23. 三井不動産 
  24. 三菱地所
  25. アズビル
  26. オムロン 
  27. 川崎重工業 
  28. コニカミノルタ 
  29. 小松製作所 
  30. セイコーエプソン 
  31. ソニーグループ 
  32. ダイキン工業 
  33. 太陽誘電 
  34. デンソー 
  35. 豊田自動織機 
  36. トヨタ紡織 
  37. ナブテスコ 
  38. ニコン 
  39. パナソニック ホールディングス 
  40. 日立製作所 
  41. 日立ハイテク 
  42. 富士電機 
  43. 富士フイルムホールディングス 
  44. 横浜ゴム 
  45. リコー
  46. AGC 
  47. 花王 
  48. コーセー 
  49. 資生堂 
  50. 住友化学 
  51. 太平洋セメント
  52. 東京製鐵
  53. ポーラ・オルビスホールディングス
  54. J.フロント リテイリング
  55. イオン
  56. ファーストリテイリング
  57. 丸井グループ
  58. 三越伊勢丹ホールディングス
  59. KDDI
  60. SOMPOホールディングス
  61. 三機工業
  62. ジャパンリアルエステイト投資法人
  63. セコム
  64. 第一生命ホールディングス
  65. 大日本印刷
  66. 大和証券グループ本社
  67. 大和ハウスリート投資法人
  68. 東急不動産ホールディングス
  69. 日本電気
  70. 野村総合研究所
  71. 富士通
  72. ANAホールディングス
  73. SGホールディングス

水セキュリティレポート2022 Aリスト企業(世界では106社)

  1. 小野薬品工業
  2. 塩野義製薬
  3. キリンホールディングス 
  4. サントリーホールディングス 
  5. 不二製油グループ本社 
  6. 明治ホールディングス
  7. 大阪ガス 
  8. 大和ハウス工業
  9. TDK 
  10. アイシン 
  11. オムロン 
  12. 小松製作所 
  13. ジェイテクト 
  14. デンソー 
  15. トヨタ自動車 
  16. トヨタ紡織 
  17. ナブテスコ 
  18. 日産自動車 
  19. 日立製作所 
  20. 富士フイルムホールディングス 
  21. ミネベアミツミ 
  22. 横河電機 
  23. LIXIL 
  24. ローム
  25. 花王 
  26. コーセー 
  27. 住友化学 
  28. 東レ 
  29. 三菱マテリアル 
  30. ライオン
  31. 長瀬産業 
  32. ファーストリテイリング 
  33. 丸紅
  34. 富士通 
  35. 日本電気

フォレストレポート2022 Aリスト企業(世界では25社)

  1. 不二製油グループ本社
  2. 積水ハウス 
  3. 王子ホールディングス
  4. 花王

【トリプルA企業】花王

2022年のCDPレポートにおいて、花王日本で唯一、気候変動、水セキュリティ、森林保全の3分野すべてで最高評価のトリプルAを獲得しました。花王は、「Kirei Lifestyle Plan 2050」を掲げ、

  1. 快適な暮らしを自分らしく送るために
  2. 思いやりのある選択を社会のために
  3. よりすこやかな地球のために

の3つの柱に基づいて活動しています。

【花王の花王の容器のコンパ花王のへの取り組み例】

花王は、CDPの質問書への回答だけでなく、ウェブサイトやCSRレポートなどを通じて、取り組み内容や成果を積極的に開示しています。また、サプライチェーン全体での取り組みを重視し、サプライヤーに対しても、持続可能な調達の基準を定め、遵守を促しています。

【花王のKirei Lifestyle Plan】

現在、世界的にもCDPの作成する質問書への回答企業数は増加傾向にあります。環境や社会問題への取り組みが一定の基準で可視化・評価されることは、SDGsの目標達成にも大きく貢献しています。

次の章では、CDPとSDGsの関係について考えてみましょう。*4)

CDPとSDGs

【SDGsとCDP開示】

CDPの取り組みは、SDGsの目標達成に大きく貢献しています。CDPのデータは、SDGsの目標達成に向けた取り組みの進捗を測るための、実際の貢献と査定値で生じるギャップを埋めると期待されています。

CDPのデータは、特に、

  1. SDGs目標6:安全な水とトイレを世界中に
  2. SDGs目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  3. SDGs目標11:住み続けられるまちづくりを
  4. SDGs目標12:つくる責任 つかう責任
  5. SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を
  6. SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

の6つのSDGs目標をカバーしています。また、一般に公表されている情報からは、既に行動に移されているものしか把握できませんが、CDPの質問書による回答には、

  • 行動しない理由
  • いつ行動する予定か

などの項目も設定されています。

SDGsの目標達成には、企業や自治体などの主体的な取り組みが必要

SDGsの目標達成には、政府や国際機関の取り組みに加えて、企業や自治体などの主体的な取り組みが必要不可欠です。CDPの取り組みは、企業や自治体に気候変動対策の重要性を認識させ、具体的な取り組みを促すことで、SDGsの目標達成に貢献しています。

CDPは、企業や自治体の取り組みを可視化・評価する

CDPは、企業や自治体の気候変動対策の取り組みを可視化・評価することで、その取り組みの有効性を判断する材料を提供しています。これにより、企業や自治体は、より効果的な取り組みを実施することができます。

また、CDPの取り組みは、情報を開示することにより、企業や自治体間の連携を促進し、より広範囲にわたる連携を実現する可能性を高めています。

CDPの取り組みによりSDGsに貢献する企業に資金が集まる

CDPの取り組みにより、企業や自治体の気候変動対策の取り組みが可視化され、一定の基準で評価されることによって、ESG投資※を心掛ける投資家からの資金が集まりやすくなります。これにより、CDPから良い評価を受けた企業は、より積極的にSDGsに貢献する取り組みを進めることができます。

ESG投資

環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を考慮して投資を行うこと。従来の財務情報だけでなく、ESGに関する情報も投資判断に活用することで、持続可能な社会の実現に貢献することを目的としている。

【関連記事】ESG投資とは?仕組みや種類、メリット・デメリット・問題点、企業の取り組み事例

このように、CDPの取り組みは、さまざまな面でSDGsの目標達成において、重要な役割を担っています。今後の流れを考えて、中小企業であっても

  • CDPの活動
  • 質問書の内容
  • 各分野のレポート

などを確認し、世界の流れを把握しましょう。*5)

>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから

まとめ

世界の気候変動や水不足、森林減少などの環境課題は、もはや個々の企業や国の努力だけでは解決できない、地球規模の課題となっています。CDPは、これらの課題に取り組む企業を評価・認知することで、企業の環境経営を促進し、持続可能な社会の実現に貢献しています。

今後、CDPの評価結果は、企業の環境経営を促進する上で、ますます重要な指標となっていくでしょう。CDPの評価結果を活用する企業が増えていくことで、企業の環境経営の普及が進むことが期待されています。

また、CDPの評価結果は、機関投資家・個人投資家が投資先を選定する際に活用されています。このまま環境配慮型投資の拡大が進むことで、CDPの評価結果の重要性はさらに高まっていくでしょう。

【加速する金融市場での動き】

これをふまえ、企業は、

  • 環境経営を強化し、CDPの評価で高スコアを獲得することを目指す
  • 環境配慮型投資を活用し、ESG経営を推進する

などの取り組みが求められます。また個人でも、

  • 環境問題への理解を深め、環境に配慮した行動を心がける
  • 環境配慮型の商品やサービスを選ぶ

などの行動で、持続可能な地球環境と人間社会の実現に貢献しましょう。

環境に国境はありません。今後世界は一層連携を強め、具体的な対策を検討・実行していく必要があります。

CDPは、企業の環境への活動を国際的に共通の規準で評価・開示することで、取り組みを可視化しています。これは、世界の環境対策をより効果的に進める上で、重要な役割を担っています。

企業は今後、中小企業でも経営計画の中に環境への配慮を自社の特性や規模に合わせて取り入れていくことが、ますます重要になります。CDPの質問書やレポートは、事業計画や投資を検討する際の参考として、必ず知っておきたい資料です。

また、私たちは個人としても、環境に配慮した行動を意識することが大切です。国や企業の取り組みに協力するだけでなく、消費者の行動が社会の流れをつくることを忘れず、責任ある生活を心掛けてください。*6)

<参考・引用文献>
*1)CDPとは
環境省『CDPからの情報提供』(2022年3月)
経済産業省『CDPを通して見る非財務情報開示の国際動向』
IPCCとはどんな組織?活動内容や各報告書の詳細、SDGsとの関係も
経済産業省『CDP概要と非化石価値証書の再エネ属性証書としての妥当性と提言』
中部経済局『CDP 質問書とは? 』
J-クレジット『CDP・SBT・RE100での活用』
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは?開示するものやシナリオ分析・戦略を解説
CDP『CDPについて』
*2)CDPが出すレポートの種類と役割
CDP『質の高い情報開示義務化に向けて』(2023年9月)
環境省『CDPとSDGs』(2021年11月)
CDP『CDP 気候変動レポート 2022』(2023年4月)
CDP『CDP2023水セキュリティ』(2023年5月)
CDP『CDP フォレストレポート 2022』(2023年4月)
CDP『レポート』
*3)CDPの格付けについて
CDP『CDP フォレストレポート 2022』(2023年4月)
CDP『CDP 気候変動レポート 2022』(2023年2月)
*4)【最新版】CDPでAリスト入りしている企業
環境省『CDPからの情報提供』(2022年3月)
DANONE『B CORP』
DONONE『ONE PLANET. ONE HEALTH』
L’Oréal プロフェッショナル『iNOA×美容師』
L’Oréal『ロレアル、CDPより7 年連続でトリプル A 企業に認定』(2022年12月)
L’Oréal『ロレアル・フォー・ザ・フューチャー 2030年に向けた ロレアルのサステナビリティ・コミットメント』
L’Oréal『日本ロレアルのサステナビリティ』
花王『花王、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表』
花王『プラスチック容器の完全リサイクル化をめざして』
花王『花王、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表』
花王『花王、3年連続でCDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の分野で最高評価を獲得』(2022年12月)
CDP『CDP 気候変動レポート 2022』(2023年4月)
CDP『CDP 水セキュリティレポート 2022』(2023年2月)
CDP『CDP フォレストレポート 2022』(2023年4月)
CDP『2022年度 Aリスト企業』
*5)CDPとSDGs
環境省『CDPとSDGs』(2021年11月)
ESG投資とは?仕組みや種類、メリット・デメリット・問題点、企業の取り組み事例
*6)まとめ
環境省『CDPとSDGs』(2021年11月)
環境省『CDPからの情報提供』(2022年3月)