世界は今、脱炭素社会に向けて舵を切ろうとしています。
日本では2020年10月、脱炭素社会に向けて「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすると決めました。(※1)
現在、温室効果ガスの排出が増えたことで地球温暖化が進み、
- 海面上昇
- 砂漠化の拡大
- 異常気象
などの悪影響が見られるようになりました!
地球温暖化を解決するためにも、温室効果ガスの排出を減らす必要があり、そのためには脱炭素社会を実現しなければなりません。そこでこの記事では、脱炭素社会に向けて理解が深められるよう詳しく見ていきます。
はじめに、「脱炭素」の概要と意義を整理してみましょう!
目次
脱炭素とは?
脱炭素とは、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素を含む温室効果ガスを実質ゼロにすることです。
脱炭素とカーボンニュートラルの違い
脱炭素を実現するためにキーワードとなるのが「カーボンニュートラル」です。
カーボンニュートラルとは、生産などによって排出される温室効果ガスの量と、森林などの植物による吸収量を同じにして、実質的にプラスマイナスゼロにすることを指します。
このカーボンニュートラルを実現した社会を「脱炭素社会」と呼び、世界各国で対策が練られているのです。
温室効果ガスと二酸化炭素の関係
温室効果ガスの種類は、
- 二酸化炭素
- メタン
- 一酸化二窒素
- フロン
があります。
この中で、全体の76%を占める二酸化炭素は温室効果ガスの代表です。
そのため、脱炭素について語る際は二酸化炭素の排出を削減することを指すケースがほとんどです。そのため本記事では、二酸化炭素に統一して進めていきます。
世界が一丸となって脱炭素社会を目指す
脱炭素社会を目指すためには、国同士が連携して二酸化炭素を削減する必要があります。そこで、世界で初めて脱炭素に向けての共通目標が作られました。
それが、1997年に採択された京都議定書です。
京都議定書は、先進国を対象にした、二酸化炭素排出量を削減するための国際条約です。
2008年から2012年の第一約束期間の5年間に少なくとも5%の削減を目指していました。(※2)
しかしこのときアメリカは、
- 二酸化炭素排出量が多い途上国が対象でないのは不公平
- 経済に深刻な影響を与える
などの理由により賛同せず、カナダにおいては途中で脱退してしまいました…。
パリ協定により加速
京都議定書が発効された後、当時対象外であった途上国は急速に経済発展を遂げ、それに伴って排出量も急増。
これを受け、2015年12月にフランスのパリで開催された国際会議(COP21)で新たな削減目標が話し合われ、ここで合意されたのがパリ協定です。
パリ協定は、2020年以降の温室効果ガス排出の削減を目指したもので、
産業革命前に比べて2100年までの気温上昇を2度未満に抑え、可能であれば1.5度までに抑えられる努力をする
ことが掲げられました。京都議定書と異なり、先進国だけでなく途上国も含めたすべての国が対象となっています。(※3)
この協定にはアメリカも賛同し、インドや中国にも同意してもらうよう積極的に働きかけました。
パリ協定は歴史上初めての世界すべての国が参加する枠組みとなり、これを機に世界では脱炭素社会が共通認識となっていきました。
ではなぜ、脱炭素化を目指すほど二酸化炭素が増えてしまったのでしょうか。
なぜ世界は脱炭素を目指すのか?二酸化炭素が増えた原因は?
ここでは二酸化炭素が増えた理由を
- 産業の発展
- 森林面積の減少
の2つの面からそれぞれ詳しく見ていきましょう。
①産業の発展
人類の生産活動はもともと道具と人力で行なっていましたが、18世紀後半に始まった産業革命以降、
- 石炭
- 石油
- 天然ガス
などの化石燃料を利用した大量生産・大量消費の経済体系へシフトしました。
石炭も石油も、太古の動植物の死がいから作られた炭素を含む有機物で、燃やすことで二酸化炭素が発生します。
特に石炭は一度に大量に採掘できるため、この時期から二酸化炭素の排出も増え始めました。
産業の発展と二酸化炭素の関係を示したグラフを見てみましょう!
産業革命開始当初、蒸気機関や製鉄、造船の燃料のメインは石炭でした。そこに19世紀後半に石油が加わり、二酸化炭素排出量が加速度的に増加したのです。
こうして化石燃料を燃やし続けた結果、地球の炭素循環システムではカバーできない膨大な量の二酸化炭素が大気中に放出され、大気中の炭素濃度を上昇させました。
②森林面積の減少
もう1つの理由は、森林面積の減少です。
樹木は光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出し、自然界の炭素バランスを保っています。
ところが、人間の経済活動によって世界の森林が破壊され森林面積が減少。特に世界最大の熱帯雨林地帯である南米アマゾンでは、1970年代から農地開拓のため伐採が始まり、森は次々と焼き払われていきました。
森林が減少すれば当然大気中の二酸化炭素の吸収量も減少するため、炭素濃度は上昇してしまうのです。(※4)
この結果招いてしまったのが、地球温暖化です。
脱炭素を目指す背景には地球温暖化が深刻化したことが関係
産業革命後の100年から150年の間に地球の平均気温は既に1度上昇しており、このままでは今後も上昇し続け、事態はさらに深刻化していくと言われています。どのような影響がでているのか見ていきましょう。
世界では次々と最高気温を更新。気温が高くなっている
日本では2018年、埼玉県の熊谷市、岐阜県の美濃市では最高気温41度を記録しニュースになりました。
ロシア・シベリアでは2020年1月から6月まで熱波が続き、これまでの平均気温よりも5度以上高くなったといいます。(※5)
さらにカナダのブリティッシュコロンビアでは2021年6月、観測史上最高気温の49.5度を記録し、熱波に見舞われました。(※6)
このような記録的な熱波が世界中を襲うようになったのは、温暖化の影響と言われているのです。
気候変動
温暖化は地球の気候システムも変え、世界各地で異常気象が見られるようになりました。
巨大台風や豪雨の増加
温暖化によって海水温が上昇し、水蒸気が増えたことによって引き起こされます。
株式会社ウェザーニューズによると、日本では、
・時間降水量50㎜以上の「非常に激しい雨」はここ30年で約1.3倍に増加
・時間降水量80㎜以上の「猛烈な雨」もここ30年で約1.7倍に増加
総務省「最近の気象現象の変化について 株式会社ウェザーニューズ」
と報告しています。
干ばつの増加
長期間雨が降らずに水不足になる地域も増加しています。
干ばつによりアフリカなどの乾燥地帯では、河川や地下水を枯渇させ、水不足が深刻です。
また、乾燥したところに熱波が重なると、今度は森林火災も発生します。
多くの科学者たちは、これらの気候変動による異常気象が起きる背景には、経済活動などの人為的な要因があると結論付けています。(※7)
生態系への影響
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2007年に「地球の気温が1度から3度上昇すると生物の20%から30%が絶滅の危機に陥る」と発表し、さらに2018年の報告書では「1.5度の上昇で植物の8%、昆虫の6%、脊椎動物の4%の生息地がなくなる」と指摘しました。
こうした地球温暖化の影響は高緯度の地域ほどリスクが高まると言います。
北極海の氷は30年前に比べ半分に減少しており、2040年には消滅すると予測されており、海氷で狩りを行なっていたホッキョクグマなどは食糧難に陥り、絶滅が危惧されます。
海洋への影響
温暖化によって海の温度も上昇しています。
【海面水温の長期変化傾向】
上のグラフは日本近郊の海面水温の上昇傾向を表したもので、青い線は、5年移動平均値、赤い線は長期変化傾向を示します。
上昇率はここ100年の間に1.14度となっており、先述した台風の巨大化に加え、海洋生態系への影響をもたらしています。
海面水温の上昇によるサンゴ礁の死滅
例えば、海にいる生物のうち約1/4が住処としているサンゴ礁。
サンゴは、海水温度の上昇が続くと白化(白い骨格が透けて見える現象)し、最終的に死滅してしまうのです。
これにより、住処としている生物も同時に絶滅してしまう可能性があると考えられています!
このように、地球温暖化の影響は環境、生態系に被害をもたらしています。
気温上昇は1度、1.5度とわずかな数字に見えるかもしれません。しかし、科学者たちはこのわずかな上昇が地球規模の気象の仕組みに影響を与え、危機をもたらすと警鐘を鳴ら続けているのです。
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SDGsと脱炭素の関係
世界共通課題となった二酸化炭素の削減ですが、SDGsの登場により、さらに脱炭素社会の実現に向けた動きが加速していきます。
SDGsとは、パリ協定が合意された2015年、ニューヨーク国連本部で開催された「持続可能な開発サミット」で採択された国際的な目標です。
環境、社会、経済の3つの側面から17個の目標で構成されています。
特に気候変動を引き起こす地球温暖化は、食糧難や水不足など命にかかわる問題であるため、ほとんどの目標で触れられています。
そのなかでも特に関連する目標を次でまとめています。
脱炭素化社会と関連するSDGs目標
SDGs17の目標のうち、脱炭素化社会の実現に関わるものは
- SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
- SDGs目標9「産業と技術確信の基盤をつくろう」
- SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」
- SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」
です。1つずつ見ていきましょう。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
この目標は、世界中のすべての人が安全かつ安心して使えるクリーンなエネルギーを普及させることで、地球上のあらゆる問題を解決することを目指しています。
ここでのクリーンなエネルギーとは太陽光、風力、地熱など二酸化炭素を出さない再生可能エネルギーを指します。
具体的には2030年までに再生可能エネルギーの割合を大幅に増やし、炭素循環を元に戻し、脱炭素社会を目指すという内容です。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
この目標は、災害に強いインフラを整備し、持続可能な産業化を進めるとともにイノベーションの拡大を図ることを目指しています。
脱炭素社会を目指すには、まず産業のあり方を見直す必要があります。2020年に日本が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」では、産業政策として「グリーン成長戦略」を掲げました。
これは、経済成長と環境適合をうまく循環させるための産業政策で、なかでも脱炭素化に向けて電力部門では炭素除去技術が不可欠とされています。(※8)
SDGs目標12「つくる責任つかう責任」
この目標は、持続可能な消費と生産のパターンを確保することを目指しています。
これまでの消費は大量生産・大量消費によって資源を使い続け、大量廃棄を生み出し、二酸化炭素や有害物質を排出し続けてきました。
製品ライフサイクル全体の仕組みを変えることで、脱炭素社会への実現を進めます。
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」
SDGs13は、地球温暖化によって引き起こされる気候変動とその影響に立ち向かうため、緊具体的な対策を取っていこうというものです。
これまで読んできたように、気候変動は人間活動における二酸化炭素の増加によって起き、その影響は広範囲に及ぶため、SDGsのその他の目標解決にも関わっています。
このように、SDGsの達成は脱炭素社会の実現に向けて大きな存在感を示していることがわかります。とはいえ具体的にどのような取り組みが必要になるのでしょうか。
脱炭素に向けた世界的な取り組み|再生可能エネルギーの普及
脱炭素化に向けた取り組みとして注目されているのが、再生可能エネルギーです。
まず、再生可能エネルギーとは何か、化石燃料と何が違うのかを見ていきましょう。
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、波力、バイオマスなどの自然の力を利用したエネルギー資源を指し、これらの特徴として、
- 使ってもなくならない
- 二酸化炭素を排出しない
- 輸入、輸出が必要がなく自国で生産できる
ことが挙げられます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
太陽光発電
太陽の光を利用して電気に変換するのが太陽光発電です。
メリットは、太陽が存在している限り、地形に関係なく発電し続けるという点です。
発電量は天候によって左右されますが、年単位で見た場合、再生可能エネルギーの中でももっとも安定しており、脱炭素社会の実現には欠かせない存在であると言われています。
風力発電
風の力を利用したものが風力発電です。
風力発電の仕組みは、発電機に風車を取り付け、風が吹くと風車が回って電気が発生します。
水力発電
水の流れる勢いを利用したものが水力発電です。
一般的には、川の水をせき止めてダムを作り、そこから流れ落ちる勢いを利用して発電機を回し、電気を作ります。
地熱発電
地下のマグマによって暖められた熱を利用して電気を作ることを地熱発電といいます。
日本は火山帯に位置するため、安定して発電ができる国産エネルギーとして注目されています。
波力発電
海水などの波のエネルギーを利用して電気を作ることを波力発電といいます。
バイオマス
バイオマス発電とは、動植物からできた生物資源を燃やして発電します。
バイオマスエネルギーの種類は、
- 材木を使う木質燃料
- サトウキビやとうもろこしを利用するバイオエタノール
- 生ゴミや家畜の糞尿を使ったバイオガス
があります。
他の再生可能エネルギーと違い、発電する際に二酸化炭素を排出しますが、原料の成長過程で吸収しているため、大気中の炭素濃度を増やさないカーボンニュートラルとなります。
このように、再生可能エネルギーは脱炭素化社会を実現するための重要な立ち位置にいることは確かです。
では、この再生可能エネルギーをどのように活用しているのでしょうか。世界の国々の取り組みで確認しましょう!
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脱炭素社会に向けた世界の取り組み事例
ここではイギリスとフィンランドの例を取り上げています。
2024年までに石炭火力発電を廃止!【イギリス】
イギリスは2024年までに石油火力発電を全廃すると発表し、脱石炭に踏み切りました。
石炭火力の代わりになるのが、洋上風力発電です。2021年5月には全体の需要の62.1%を記録し、脱石炭に大きく貢献し、脱炭素社会の実現に向けて加速し始めています。(※9)
2035年の二酸化炭素排出量ゼロ目標【フィンランド】
フィンランドは、2035年の二酸化炭素排出ゼロ目標を発表し、具体的には次の取り組みを行なっています。
- 食生活の変化(環境に優しい生産・消費の見直し)
- 鉄道網への投資
- エネルギー税制改革
- 電気自動車の市場拡大
フィンランドでは2012年から行った再生可能エネルギーへの積極投資によって石炭の利用がすでに減っており、その分、風力発電が増えています。(※10)
脱炭素社会に向けた日本の取り組み事例①
続いて脱炭素化社会に向けた日本の動きも見ていきいましょう。
日本政府は、
- 2020年10月26日に「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」
- 2021年4月に「2030年までの二酸化炭素排出量を46%削減する」
と宣言しています。
次では、この宣言を達成するための具体的な計画を3つの柱をポイントに見ていきます。
計画その1「カーボンプライシング」
カーボンプライシングとは、たくさんの二酸化炭素を排出した企業や法人、家庭に対してお金を負担してもらう制度です。(※11)
具体的な負担方法は、
- 炭素税(各企業の排出量に応じて課税を行う制度。排出量1トン当たり289円を課税する)
- 排出枠取引(企業の排出量に上限を設け、超過した場合は罰則が付く)
- 国境調整措置(輸出入品の製造過程で発生した排出量に応じ課税される)
の3つです。
これは世界的に広がりを見せる制度で、先行している国々では軒並み二酸化炭素の削減に成功しており、日本でも脱炭素化社会の実現に向けて、その効果が期待されます。
計画その2「エネルギーミックス」
エネルギーミックスとは、複数の発電方法を組み合わせて電気を供給することを指します。
火力発電だけに頼るのではなく、再生可能エネルギーなどの比率を高めるなど、あらゆる発電方法で構成することで、二酸化炭素の削減が可能になります。最適なエネルギーミックスを実現するためには、
- 安定的な供給
- 経済性向上
- 環境保全
- 安全性
に配慮しながら供給システムを構築する必要があります。
計画その3「ゼロカーボンシティ」
ゼロカーボンシティとは、「2050年までにCO2排出量ゼロを目指そう!」と表明する地方自治体です。(※12)
例えば、横浜市では消費電力の100%を再エネにすると発表(※13)。沖縄では県と電力会社が連携して脱炭素化の計画を立てています(※14)。
脱炭素社会に向けた日本の取り組み事例②地域脱炭素ロードマップ
次に紹介するのが、地域脱炭素ロードマップです。地域脱炭素ロードマップとは、2050年カーボンニュートラルが宣言された後、その実現を目指して策定された具体的な工程表のようなものです。
この中で、先行して脱炭素に取り組む地域を「脱炭素先行地域」として選定することが掲げられています。
脱炭素先行地域とは
環境省が運営する脱炭素地域づくり支援サイトには、脱炭素先行地域について以下のようにまとめられています。
脱炭素先行地域とは、2050年カーボンニュートラルに向けて、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出(※)の実質ゼロを実現し、運輸部門や熱利用等も含めてそのほかの温室効果ガス排出削減についても、我が国全体の2030年度目標と整合する削減を地域特性に応じて実現する地域で、「実行の脱炭素ドミノ」のモデルとなります。
脱炭素地域づくり支援サイト
脱炭素ドミノとは
脱炭素ドミノとは、脱炭素先行地域などの取り組みを参考にすることで、より多くの地域が取り組むようになることを意味しています。
では、脱炭素先行地域に選定された地域ではどのような取り組みが進められているのでしょうか。
脱炭素先行地域事例|北海道上士幌町
北海道の十勝地方北部に位置する上士幌町は、人口約5,000人の町です。SDGs未来都市にも選定されるなど、積極的に先進的な取り組みを進めています。
2022年4月に脱炭素先行地域に選ばれた上士幌町は、「ゼロカーボン上士幌の実現とスマートタウンの構築」をコンセプトに掲げ、
- 家畜の糞尿を資源としたバイオガス発電などを使い、町全域の家庭・業務ビルの電力に関する脱炭素化
- 同時に、大規模な停電などの事態が発生した際には、役場庁舎を中心に防災拠点としての電力を確保
などを進めていくこととなっています。
【関連記事】【SDGs未来都市】北海道上士幌町役場|自然豊かな町で、若者の力とスマート技術を活用した環境づくりを
このように、日本も含めて世界各国で国を挙げて脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しています。とはいえ、国だけの努力では目標を達成することは難しく、企業の協力が不可欠です。
脱炭素に向けた企業の取り組み
現在、多くの企業が脱炭素化社会の実現に向けて取り組みを進めています。
ここでは、その中から2社の事例を紹介します。
再エネの発電、開発・運営を2本柱にする【レノバ】
レノバは、太陽光発電、洋上風力発電、バイオマスなど再生可能エネルギーの発電、開発と運営を手掛けている企業です。
現在、レノバが注目しているのは海の風を利用する洋上風力発電です。風力発電は再エネのうち約半分を占めていますが、陸上の場合、騒音や風の強さが不安定という課題を抱えていました。
海ではそうした問題を解決できると考えたのです。
レノバは今後、洋上での実用化に向けて開発を進めています。
これが日本のモノづくりの底力だ【トヨタ自動車】
脱炭素化の流れの中で、自動車産業においても環境負荷をなくす開発が進んでおり、国内でもいち早くカーボンニュートラルの実現に向けて長期目標を立てたのが、モノづくりを根本から改善してきたトヨタ自動車です。
トヨタでは、2035年までに世界の自社工場の二酸化炭素排出量を実質ゼロにすると宣言しました。
例えば塗装工程では、最小限の塗料で最大限の塗布効果を発揮する技術を開発。今後はシールで代替し、塗装そのものの工程をなくすこともできると考えています。
トヨタがこれまで大切にしてきた日々のカイゼンがこうしたアイディアを生み出した結果であり、モノづくりの底力なのです。
脱炭素社会のために私たちにできること・個人にできることはある?
脱炭素を実現するには、私たち一人ひとりのライフスタイルの転換も不可欠です。
最後に個人でできることを紹介します。
食生活で脱炭素アクション!
毎日の食生活で気をつけたいのは食品ロスをなくし、廃棄物を減らすことです。廃棄物を減らせばその分、ゴミの焼却時に発生する二酸化炭素を抑制できます。
そこで、食品ロスをなくすために意識したいポイントを紹介します。
食品の分量に気をつけて買う
食べ物が余ってしまった!気がついたら期限切れになっていた!という経験はありませんか。もしかしたら買いすぎが原因かもしれません。
- 食べる分だけ買う
- あらかじめ献立を立てておく
など、買いすぎない対策を立てることで廃棄物削減できます。
フードドライブを活用しよう!
食べきれずに賞味期限が近づいてきてしまった缶詰などが自宅にあれば、フードドライブを活用しましょう。
最近では自治体で受け付けているケースも増えてきたので、ぜひ調べてみてはいかがでしょうか。
住まいの中で省エネ対策をしよう
自宅にいながらできる脱炭素化のアクションとしては節電がおすすめです。
家庭で使う電力が削減できれば、その分発電所が稼働しなくてすむため、積極的に節電に取り組みましょう。
グリーンカーテンで省エネ対策
夏はゴーヤや朝顔でグリーンカーテンを作ると室内の温度は最大6度低下、エアコンの使用頻度も下がり、省エネになります。
冷蔵庫の温度を中に設定しておく
冷蔵庫内の温度設定を強から中にすることで省エネになります。長時間外出する際や頻繁に開け閉めしないときは弱に設定するとさらに効果的です。
炊飯器やポットの保温機能をOFF!
- ご飯は食べる直前に炊く
- ポットは使う前に沸かす
これを徹底することで余分な電力を使わずに済みます。さらに炊飯器の場合は、タイマー機能を上手に利用しても保温時間をなくすことができます。
LED照明にする
LED照明は、従来の蛍光灯と比べると、約6割電力が削減でき、さらには電気代の節約にもなります。
このように、脱炭素化社会の実現に向けて自宅でできるアクションはたくさんあるのです。
お出かけ先でできる脱炭素アクション!
外出時にほんの少し行動を変えてみるだけでも脱炭素化アクションにつながります。
近い買い物は自転車で行ってみる
近い場所への買い物は、自動車ではなく自転車を使うことで二酸化炭素の排出を抑えられます。健康にも良いのでおすすめです。
マイボトル、マイバッグを持ち歩く
マイボトル、マイバッグを持ち歩くことで使い捨てカップやレジ袋の廃棄物を減らせます。今は無料でお水が補充できる給水スポットも増えてきたので、活用してみてはいかがでしょうか。
地域のマルシェで買い物する
地元で作られた食材を積極的に購入するようにしましょう。お店に商品を運ぶためにも燃料が使われています。そのため、長距離輸送ではなく、地元産の近場の商品を購入することでCO2の排出量の削減につながるのです。
カーシェアリングを利用してみる
カーシェアリングを利用することで自動車の車両台数の増加を抑えられ、社会全体の二酸化炭素の排出量を削減でき、脱炭素化社会の実現が近づきます。カーシェアリングはレンタカーと違い、会員登録をすれば分単位から利用ができるのでとても便利です。
このように、脱炭素化社会に向けて個人が取り組めるアクションはたくさんあります。ぜひ今日からできそうなことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか!
まとめ
今回は、脱炭素とは何か、注目される理由を整理し、各国の取り組みを紹介しました。最後に、流れを整理しましょう。
脱炭素とは、温室効果ガスをプラスマイナスゼロにするという考え方です。脱炭素を目指す理由は、これまでの産業の中で排出してきた二酸化炭素によって地球の気温が上昇し、環境と生態系にあらゆる影響が出てきているため。もはやそれは地球規模の問題となっており、世界各国が連携して共通の目標を持つ必要があります。
パリ協定では、地球の温度上昇を1.5度に留める努力をすることを掲げ、世界各国で取り組みが行われています。そして脱炭素に向けては、個人でも行動が起こせます。それは、消費方法の見直しから、省エネ対策など、さほど難しいものではありません!
脱炭素化社会を迎えるために、私たち自身も行動していきましょう。
参考文献
※1:経済産業省 資源エネルギー庁
※2:環境省 京都議定書の概要
※3:国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)京都議定書第12回締約国会合(CMP12)パリ協定第1回締約国会合(CMA1)等(概要と評価)
※4:NHK for school アマゾン開発の歴史
※5:東京新聞 半年にわたるシベリアの「熱波」は地球温暖化の影響 欧州などの研究グループが警鐘
※6:AFP BB News カナダで49.5度、3日連続で観測史上最高気温更新
※7:Chem Station 地球温暖化-世界の科学者の総意は?
※8:経済産業省 カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?
※9:ニュースウィーク日本版 英は2024年に石炭火力発電を全廃 石炭依存の日本は海外にプラント輸出も
※10:一般社団法人環境金融研究機構 フィンランド、2035年にカーボンニュートラル達成の法的目標導入へ。外国のクレジットに頼らず、国内のシンク源と再エネ発電中心で。CO2排出量の多い泥炭産業の雇用対策も
※11:環境省「カーボンプライシングの効果・影響」
※12:環境省 2050 年 ゼロカーボンシティの表明について
※13:【横浜市】横浜市の脱炭素化「Zero Carbon Yokohama」とは?!
※14:【沖縄】沖縄県と沖縄電力株式会社との2050年脱炭素社会の実現に向けた連携協定について