#SDGsを知る

森林破壊の対策とは?日本と世界の現状や原因・影響、私たちにできることを解説

森林破壊の対策とは?日本と世界の現状や原因・影響、私たちにできることを解説

森林は地球温暖化を防いでくれたり、私たちをリラックスさせてくれたりと、暮らしに欠かせない存在です。しかし近年、世界中で多くの森林が失われており、さまざまな影響が生じています!

そこで本記事では、森林破壊の現状や原因、森林破壊を防ぐために私たちが今すぐ行える取り組みについて詳しく説明していきたいと思います!

目次

森林破壊とは

森林破壊とは、火災や干ばつ、人間による伐採などによって、自然の回復力を超えて森林が減少・消失することです。

森林破壊はただ森林が減少するだけではなく、

  • 災害や地球温暖化などを引き起こす
  • 生物の生育場所を奪い生態系を変化させる

など、さまざまな影響を生じさせます。

森林が再生するには長い年月を必要とします。そのため、森林破壊が進めば進むほど、森林破壊による影響を解することは難しくなってしまうのです。

では現在、世界ではどれくらい森林が減少しているのでしょうか!

世界中で進む森林減少

FRA2020(世界森林資源評価2020)によると、2020年度の世界の森林面積は約40億6,000万ヘクタールで陸地の31%を占めています。構成としては自然再生林が93%、人工林(人の手によって育てられた木々のこと)が7%の割合です。

しかし、世界各地における森林破壊によって自然再生林の回復が追いつかず、1990年から2020年の30年間において世界の森林面積は1億7,800万ヘクタールも減少しています。

これは日本国土の約4.7倍に相当します!

世界では何度も森林問題に対する国際会議が行われているものの、2015年以降においても年間約1,000万ヘクタール(北海道面積の約1.2倍に相当)のペースで森林が失われています。*1)

次の章では、もう少し踏み込んで森林破壊の現状を見ていきましょう!

森林破壊の現状

まずは世界の現状から確認していきます。

世界の森林破壊の現状

先述した通り、世界の森林面積は約40億6,000万ヘクタールであり、その約45%は熱帯に分布しています。

しかし1990年から2020年の30年間において、森林減少の9割以上がその熱帯地域で発生しています。

2015年から2020年においての森林減少面積が多かったのはアフリカで、年平均で約441万ヘクタールもの森林が失われています。次いで南米が約296万ヘクタールアジアが約224万ヘクタールとなっています。

一方で森林面積が増加している国も存在し、2010年から2020年において、中国は年間約194万ヘクタール、オーストラリアは約45万ヘクタール増加しています。*2)

とはいえ依然として森林減少>森林増加のバランスであるため、改善傾向にはあるものの、世界では森林減少が進んでいるのです。

日本の森林破壊の現状

続いて日本の現状です。

日本の森林は世界の現状とは異なる問題を抱えています。

日本は世界有数の森林大国

日本は世界では22番目(先進国の中では3番目)に森林率(※)が高く、世界有数の森林大国です。*3)平成29年度において、日本の国土面積は約3,780万ヘクタールで、その3分の2にあたる約2,505万ヘクタールが森林で占められています。

構成としては天然林が1,348万ヘクタール、人工林が1,020万ヘクタール、その他(伐採跡地、未立入地、竹林)が136万ヘクタールとなっています。*4)

日本の森林面積は多少の増減はあるものの、昭和41年度から平成29年度においてほぼ横ばいに推移しており、大きな森林破壊は生じていないことがわかります。

しかし、森林蓄積の状況はどうでしょうか。

森林率とは

国の面積に対する森林面積の割合のこと。

森林の蓄積量はどんどん増えている

森林蓄積とは、森林の体積のことであり、人間でいう身長体重のようなものです。森林蓄積量の増加は成熟した森林が増えている(=森林資源が増えている)ことを表しています。

日本では、森林面積はほぼ変化がないのに対し森林の蓄積量はどんどん増加しており、令和4年度の蓄積量は55億6,000万立方メートルと昭和41年度の約3倍になっています。つまり、日本には資源として利用ができるにもかかわらず、放置されている森林が多く存在しているのです。

森林が増えていくことは良いことではないか、そのように考える方もいるかもしれません。しかし実は、森林が放置されることによって生じる問題もあるのです。

放置林による問題

森林を間引き、手入れすることを間伐(かんばつ)」といいます。間伐されない森林は、木々の成長が悪くなり木材としての価値が低下します。また、木が痩せ細り幹や枝が細くなると、風や雪によって木が折れたり倒れたりといった被害を受けやすくなります。

さらに、木々が混み合うと地表に太陽の光が届かなくなるため、草木が生えず、野生生物が住みつけなくなります。そして草木が生えず地表が剥き出しになると水源涵養機能が低下し、雨によって土砂災害が起きやすくなってしまうのです。*5)

水源涵養(すいげんかんよう)機能とは

森林の土壌が雨水を貯留することで、川の水量を安定させたり、大雨の際に洪水を緩和したりする機能。

輸入木材に頼っている

また、森林が放置されているということは、輸入木材の使用が多い、ということも意味します。日本は木材自給率が低く(令和2年度は41.8%)、約60%を輸入木材に頼っています。*6)

海外では森林減少が、日本では放置林が問題となっているにもかかわらずです。

日本人が使用する多くの木材製品は海外の森林を利用して作られており、森林破壊問題は他人事ではありません。

森林破壊の原因

世界や日本の現状がわかったところで、次は森林破壊の原因について確認していきましょう!

原因①大規模な開拓

世界では人口増加に伴い、食料やバイオ燃料(※)などの需要が増えています。

そのため、東南アジアではアブラヤシなどのプランテーション(※)を、アマゾンではさとうきびや大豆などの農園や肉牛の飼育牧場、水力発電所などを作るために森林伐採が行われています。*7)

バイオ燃料とは

植物や動物など、再生可能な生物由来の資源(バイオマス原料)から作られた燃料のこと。

植物由来の資源:アブラヤシ、サトウキビ、とうもろこし、菜種、製材廃材など
動物由来の資源:生ごみ、下水汚泥、家畜糞尿など*8)

プランテーションとは

主に輸出のため、単一作物の栽培を行う大規模農園のこと。

ここからは、アブラヤシ生産のための大規模開拓をピックアップして見てみましょう!

アブラヤシ生産のための大規模開拓

アブラヤシはパーム油の原料となる植物で、雨量が多く日差しの強い赤道付近の熱帯地域でしか栽培ができないとされています。そして、パーム油は世界で1番多く使用されている植物油と言われており、スーパーに並ぶ多くの商品にも利用されています。

パーム油が使用されているものは、

  • 洗剤や石けん・シャンプー
  • 化粧品
  • パンなどの加工食品
  • コロッケやポテトチップ、フライドチキンなどの揚げ油
  • バイオマス燃料

など多岐に渡ります。

このアブラヤシの栽培が熱帯地域の森林減少の原因の1つと言われているのです。

現在世界では、約7,000万トンのパーム油が生産されており、その約9割を東南アジアが担い、インドネシアは約5割、マレーシアは約3割を生産しています。*9)

そのパーム油の主要生産国であるインドネシアのボルネオ島では、アブラヤシ農園を作るために熱帯雨林を大規模開拓しており、島の面積の3分の1にあたる森林が失われているのです。

原因②違法伐採

違法伐採とは、各々の国や地域の法に違反して行われる伐採のことです!

盗伐(※)や、伐採の許可を受けていてもその許可条件や法令に違反して行われる伐採は違法伐採にあたります。*10)2015年6月に行われたG8エルマウ・サミットでは、世界の森林伐採の15〜30%、主要熱帯木材生産国では50〜90%が違法伐採であると推計されています。*11)

違法伐採した木材は通常よりも安価で売買されるため、木材の市場価格を押し下げてしまいます。その結果、正当な運営をしている森林業者の経営は圧迫され、持続的な森林経営が阻害されてしまうのです。

さらに、2016年に公表された国際森林研究機関連合(IUFRO)の報告によると、2014年の違法伐採木材の貿易額は世界で約63億ドルであり、その半分以上が東南アジア(約35億ドル)とされています。

また、違法伐採および違法伐採に関連した汚職による利益は、ゲリラやテロ組織への資金供給になっていることも懸念されています。*12)

違法伐採は森林破壊だけではなく世界の治安悪化も招いてしまうのです。

盗伐 とは

所有権や伐採権がないにもかかわらず行われる森林伐採。

原因③非伝統的な焼畑農業

非伝統的な焼畑農業

焼畑農業とは世界各地で行われている農法で、予め計画された範囲の森林を切り倒し、その木々を焼き、残った灰を肥料にして作物をつくる伝統的な農業のことです。日本では縄文時代から行われている農法であり、現在は宮崎県椎葉村で行われています。*13)

焼畑を行った土地は数年農地として利用しますが、畑は何年も使用すると土地が痩せて良い作物が育たなくなります。そのため、農地として3~4年ほど利用した後はその土地を10〜30年ほど休ませ、森林を自然回復させます。

連続して同じ土地を利用しないため、地力(土地の作物を育てる力)を低下させずに農業を営むことができるのが焼畑農業の特徴です。また、焼畑農業は森林を部分的に伐採し火入れをするため、その土地に暮らす野生動物への影響も少ないとされています。

つまり、伝統的な焼畑農業は環境や生態系への負荷が少ない農法だといえます。

非伝統的な焼畑農業の横行

しかし近年は「非」伝統的な焼畑農業が問題となっています。

焼畑農業は主に東南アジアやアフリカなどの熱帯地域で行われていますが、それらの地域は人口増加にともなう食糧不足や土地不足といった問題により、焼畑のサイクルを短くしたり連続して同じ土地を利用する必要が生じています。*7)

結果的に土地が痩せてしまい森林が再生せず、農地として利用できなくなってしまうという悪循環が生まれているのです。このように非伝統的な焼畑農業は、森林破壊はもちろん、持続的な農業生産へのダメージへと繋がってしまうことがわかります。

原因④燃料に利用するために過剰な採取

世界の木材需要の約半分は薪や炭といった燃料としての利用です。*7)特に開発途上国では、ガスや電気などのインフラが整っていないことや貧困のために、比較的安く手に入る木材を燃料として利用しています。なかでもアフリカでは、家庭用エネルギーが占める木材利用の割合は9割にもなるのです。*14)

途上国は近年人口増加が著しく、それに伴う必要燃料も増えているため、森林伐採に対する森林の回復スピードが追いついていません。途上国のインフラを整えることは、森林減少を食い止める手段になり得ます。

原因⑤森林火災

森林火災

火災による森林減少も深刻です。

2020年にWWF(世界自然保護基金)とBCG(ボストンコンサルティンググループ)が発表した報告書によると、2020年4月の森林火災件数は2019年4月よりも13%も増加しています。*15)

なぜ森林火災は増えているのでしょうか。

森林火災の原因は、おおまかに自然発火と人為的発火の2つに分けられますが、現在の世界的大規模な森林火災は自然発火によるものが多いとされています。

自然発火による森林火災

自然発火は落雷や火山の噴火、空気の乾燥などにより生じます。例えばオーストラリアでは、たびたび森林火災が発生していますが、理由としては地球温暖化や降雨量の減少による空気の乾燥が大きいといわれています。

空気が乾燥すると枯れ葉同士の摩擦によって火種がうまれやすくなり、森林火災へと繋がってしまうのです。*16)

人為的発火による森林火災

人為的発火は、農地開拓のための火入れやゴミなどの焼却、タバコの不始末、放火などがあげられます。

日本の森林火災は人為的発火が多く、平成27年から令和元年における森林火災の約6割は人為的なものと報告されています。

消防庁によると、令和元年度の日本の森林火災件数は1,391件であり、焼損面積は837ヘクタール、損害額は2億6,900万円に及びます。*17)

住民避難勧告等が発令された大規模な山火事もたびたび発生しており、平成29年5月8日から5月22日に起きた岩手県釜石市での森林火災は、焼損面積は413ヘクタールに及び、136世帯348名が避難するに至っています。*18)

森林火災は他人事ではありません。火の始末にはくれぐれも気をつけましょう。

森林破壊と環境問題の関連性

ここまでは森林破壊の現状や原因についてみてきました。しかしなぜ森林破壊は問題視されているのでしょうか。

この章では森林破壊による影響について確認していきましょう。

森林破壊は地球温暖化を加速させる

現在、地球では温暖化が進んでいます。2021年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書によると、世界気温の平均値は年々高くなっている傾向にあり、2011年から2020年の世界平均気温は、1850年から1900年の気温よりも1.09°C高くなっています。*19)

地球温暖化は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの濃度が高まることが原因とされています。そして森林は、二酸化炭素を吸収し酸素を排出する役割を持っており、地球温暖化防止には欠かせない存在です。

しかし現在、自然が吸収できる二酸化炭素許容量はオーバーしており、年間約160億トンもの二酸化炭素が大気中に残ってしまっています。*20)このまま大気中に二酸化炭素が増え続けると地球温暖化はさらに加速し、大雨や干ばつなどといった異常気象が多発したり、海面の上昇が進行したりする可能性があります。

地球温暖化を食い止めるためにも森林破壊を改善していく必要があるのです。

生物多様性の損失

地球にはさまざまな生物が暮らしており、現在発見されているだけでも約175万種もの生物が存在しています。しかし近年、森林減少により、森林をすみかとする野生生物の1万4,000種以上が絶滅の危機にさらされています。*21)

また、エッジ効果による生態系の変化も問題です。

エッジ効果とは、生物の生息地がその境界線を介して外部からの影響を受けることをいいます。例えば、森林が分断化・縮小化すると、その森林が森林の外の世界と接触する範囲が大きくなります。すると、野生生物が森林の外へ出てしまったり、境界部分から湿気が逃げてしまい森林が乾燥するといった影響が生じます。

実際、2017年11月のNatureにおいてMarion Pfeiferたちの研究グループは、調査した脊椎動物種全体の85%がエッジ効果の影響を受け、林縁付近では大きく個体数も減少していたと発表しています。*22)

生物は密接に関わり合いながら暮らしているため、ある生物が減少・絶滅してしまうと、その生物と関わりのある生物の数も変化し、結果的に多くの生態系が変化してしまいます。

人間への影響

エッジ効果は感染症リスクにも影響を与えます。

森林破壊によって野生生物が森林外へ出る機会が多くなると、人や家畜がさまざまな病原体を持つ生物との接触機会も増えてしまうからです。マラリアやエボラ出血熱、鳥インフルエンザといった人畜共通感染症もエッジ効果と関連があると報告されています。*23)

また、森林破壊は人々の暮らしにも影響を及ぼします。

FAOによると、世界の約16億人の人々は生活の糧(仕事や食料、資源など)を森林に頼って生活しています。*24)森林が減少すると、多くの人の生活が立ち行かなくなり、貧困がうまれてしまうのです。

では、森林破壊を解決するために世界ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

森林破壊を解決するための世界の取り組み

イメージ画像

森林破壊が問題視されはじめた20世紀後半から、世界では幾度も森林に対する国際的会合が行われています。ここでは森林破壊を解決するための世界的な取り組みについて見ていきましょう。

1992年6月森林原則声明が採択

1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催されたUNCED(国連環境開発会議、通称:地球サミット)では、森林問題に関して初の世界的合意に至った「森林原則声明」が採択されました。

森林原則声明は「全ての種類の森林の経営、保全及び持続可能な開発に関する世界的合意のための法的拘束力のない権威ある原則声明」が正式名称で、森林の保全や持続的な森林経営・開発を行うために世界で協力して取り組むべきことなどといった15項目を規定しています。*25)

このなかでのポイントは「法的拘束力がない」ことです。

会議では、自国の資源利用を制限されることを恐れた途上国の反対が多く、国際条約制定には至らなかった経緯があります。しかしUNCEDでは森林原則声明とともに、アジェンダ21の第11章に森林減少対策が組み込まれたこともあり、世界が一丸となって森林破壊を防ぐための一歩となりました。

森林原則声明の15項目の詳細は下記リンク先に記載されています。

1993年モントリオール・プロセス開始

UNCEDでの森林原則声明などの採択を踏まえて、1993年、モントリオール・プロセスが開始されました。

モントリオール・プロセスは、持続的な森林経営のための「基準と指標」を作成する国際的な取り組みです。

欧州を除く温帯林・北方林を有する12ヵ国(カナダ、アメリカ、ロシア、中国、メキシコ、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本)が加盟しており、1995年には7基準67指標が採択されました(2008年には7基準54指標に改訂)。2007年からは日本の林野庁が事務局をつとめています。*25)

※モントリオール・プロセスの7基準54指標の詳細は、下記リンク内の「持続可能な森林経営の「基準・指標」~モントリオール・プロセス~」欄に記載されています。

1995年4月森林政府間パネル(IPF)の設立

先述したアジェンダ21の実施状況をフォローアップするため、1993年にCSD(国連持続可能な開発委員会が設立されました。森林政府間パネル(IPF)はそのCSD第3回会合にて、1997年までの2年間の期限付きでCSDのもとに設置されました。

森林政府間パネルの設置目的は、森林問題に対する世界各国の取り組みについて評価することや、環境・社会・経済といった全ての分野において全ての種類の森林の保全・管理・持続的な開発を推進するための提案及び合意を推進すること等です。

1997年4月に期限満期をむかえましたが、期間中に解決できなかった項目もあり、森林政府間フォーラム(IFF)へと移行しています。*26)

1997年7月森林政府間フォーラム(IFF)採択

森林政府間フォーラム(IFF)は森林政府間パネル(IPF)の後継として、1997年から2000年の期限付きでCSDのもとに設置されました。

森林政府間パネルで提案された取り組みの促進や未達成事項の検討などを行うことを目的とし、設立期間中に計4回の会合を行っています。

しかし最終会合では森林問題に対する国際的な取り決めを議論しましたが、条約作成を反対する国も多く、今回も制定には至りませんでした。

しかし、森林経営の促進や政策対話などの継続の必要性は各国一致していたため、その後は国連森林フォーラム(UNFF)を設立し議論していくこととなります。*26)

2000年10月国連森林フォーラム(UNFF)設立

国連森林フォーラムは、

  • 持続的な森林経営のための取り組みの検討
  • 森林政府間パネル及び森林政府間フォーラムの行動提案の実施促進
  • 国際条約の検討

などを目的とした機関で、森林問題に対する政府間対話の場です。

国連森林フォーラムは2000年10月に設立され、設立当初は2001年から2005年の5年間に渡る多年度作業計画を作成し、計画に基づいた活動が行われました。

第5回目の会合では、各国は森林問題に対して国際的な枠組が必要であると共通認識を有することが確認されました。しかし、具体的な枠組のあり方や目標に対する各国の意見の隔たりは依然として大きく、今回も森林問題に対する条約制定には至りませんでした。

そのため、UNFFは引き続き会合を実施し、国際条約の制定への合意を目指していくことになります。

主要な会合およびその内容に関しては次の表の通りです。ポイントについては後述しますのでざっと目を通してみてください。

2006年第6回会合(UNFF6)
4つの世界的目標であるGOFsを提示。2015年までの10年間は、法的拘束力を伴わない国際的枠組のもとで、GOFsの達成と持続的な森林経営の推進を目指すこととなる。

2007年第7回会合(UNFF7)
・UNFF6を受け、持続的な森林経営達成にむけた取り組み事項を盛り込んだ「全てのタイプの森林に関する法的拘束力を伴わない文書(NLBI)」を採択。
・多年度作業計画(MYPOW)が採択され、2015年までの会合は2年に1度開催されること、および各会合の議題が設定される。

2015年第11回会合(UNFF11)
・国際的な枠組となるUNFF11閣僚宣言「我々の求める2015年以降の森林に関する国際的な枠組(The International Arrangement on Forests We Want beyond 2015)」が採択。
・UNFF11決議「2015年以降の森林に関する国際的な枠組(IAF2015)」が採択。
・世界森林基金の名称を「世界森林資金供給促進ネットワーク(GFFFN)」に変更。各国は「国家森林資金戦略」を策定し、持続的な森林経営のため、既存の基金や新たな資金メカニズムへのアクセス向上を目指すことになる。

2017年1月UNFF特別会合
・「国連森林戦略計画2017-2030」(UNSPF)
・「4ヶ年作業計画2017-2020」(4POW)の2つが採択。

2015年のUNFF11では、とうとう森林に関する国際的枠組が採択され、2030年までの計画を策定及び実施状況の評価が行われることになりました。

UNFF特別会合で採択されたUNSPFは、あらゆる森林や樹木を持続的に管理することで森林減少・劣化を防ぐための国際的な枠組で、2030年までに世界が達成すべき目標として、6つの世界森林目標とそれに関連する26のターゲット※※を設けています。

各国はその達成状況および評価を定期的に報告していくことが求められており、現在に至るまでUNFFの会合は継続して行われています。*26)

GOFs4つの世界的目標の詳細はこちらのリンク先のUNFF第6回会合(UNFF6)を参照

※※  UNSPFの6つの世界森林目標とそれに関連する26のターゲットの詳細はこちら

2015年9月 2030アジェンダ採択

2015年9月の国連サミットにて「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」が採択されました!

この2030アジェンダでは、17の目標と169のターゲットからなる「国連の持続可能な開発目標(SDGs)」が定められ、その目標の1つである目標15「陸の豊かさも守ろう」は森林問題に対するターゲットが設けられており、国際的な目標と取り組みとなっています。

次の章ではSDGsについて簡単に説明していきます。

SDGsとは?

SDGsとはSustainableDevelopmentGoalsの頭文字をとった言葉で、読み方は〝エスディージーズ〟です。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。

2016年から2030年までの間に、環境・社会・経済に関する課題を「地球上の誰一人も取り残さない」という誓いのもと、「その場限りの解決ではなく継続して取り組んでいく」ことで、より良い世界を目指していこうというものです。そのなかで森林破壊は、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」と関わりを持ちます。

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」は、正式には「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」と訳されます。

簡単に言うと、陸の資源を持続的に利用かつ経営できるようにし、環境やあらゆる生物を守ろう、という目標です。

SDGs目標15のターゲットは、

  1. 森林減少や砂漠化、土地の劣化を回復させ、持続的な管理を行えるようにすること
  2. 陸上の生物多様性の損失を防ぐこと

に重きを置いており、そのためにも資金の調達や違法な取引への対策を行うことなどを推進しています。

森林をはじめ、あらゆる陸上生態系を守る=陸の豊かさを守るためには、世界各国が一丸となって行動する必要があるのです。

続いては日本の取り組みについて見ていきましょう。

森林破壊を解決するための日本の取り組み

イメージ画像

日本においても森林破壊を解決するための取り組みを実施しています。

時系列に沿って見ていきましょう。

2000年5月 グリーン購入法制定

グリーン購入法は、正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」で、2000年5月に制定されました。

この法律は、国や地方公共団体といった公的機関が、環境に優しい製品及びサービスを利用することや適切な情報提供を促進することで社会の持続的な発展を目指したものです。同法は地方公共団体や事業者、国民の責務についても定めている他、公的機関に対しては調達物品に対する基準を設けています。

例えばトイレットペーパーやティッシュペーパーは古紙パルプの配合率が100%であること、そして製品の包装や梱包も簡易的で環境負荷低減に配慮されているかを考慮することを求めています。

また、グリーン購入法はリデュースすることを重要視としており、物品を無駄なく調達・利用することで環境負荷への配慮を行っています。*27)

2017年5月 クリーンウッド法施行

クリーンウッド法は2016年5月20日に公布、2017年5月20日に施行された法律で、正式名称は「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」です。

クリーンウッド法は違法伐採された木材の流通を取り締まるものではなく、すべての木材関連事業者が、合法の木材および木材製品の流通・利用を促進することを目的とした、環境保全と持続的な木材産業の経営を図ることを推進するための法律です。

この法律では「登録木材関連事業者」という制度を設けており、合法木材の利用に取り組む事業者は、国の認定機関の承認を受けると登録木材関連事業者の名称を用いることができます。*28)

違法伐採問題への取り組み

日本政府は2000年の九州・沖縄サミット以来、違法伐採問題への対策の重要性を唱えており、違法伐採に対して取り組みを行っています。

①二国間協力

日本とインドネシアは、衛星データを用いた森林伐採の状況把握や木材のトレーサビリティ技術の開発などにより、森林経営や森林保全において協力を結んでいます。*29)

②地域間協力

2013年4月に活動は終了しましたが、日本とアジア大洋州諸国はアジア森林パートナーシップ(AFP)を結び、木材伐採の合法性の基準を設け、違法伐採対策に焦点をあて活動しました。*29)

③多数国間協力

国際熱帯木材機関(ITTO)は「1983年国際熱帯木材協定」に基づき、1986年に設立された日本の横浜みなとみらいに本部を有する国際機関です。2019年12月時点で木材生産国36ヵ国、消費国は37ヵ国が加盟しています。

ITTOは熱帯林の保全と持続的な森林経営や利用、熱帯林の合法木材の貿易を促進するためのガイドラインを作成し、加盟国間の国際協力を促しています。*30)

トレーサビリティとは

トレース(追跡)とアビリティ(能力)を組み合わせた造語で、日本語では「追跡可能性」と訳されます。製品の原材料の調達や生産、消費、廃棄の全ての工程を追跡可能な状態にすること、またはそのシステムのこと。

世界各国への森林技術支援

日本はさまざまな分野の技術を使って、世界各国への森林技術支援を行っています。

例えば、国際協力機構(JICA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、衛星を利用した熱帯林減少を早期発見する「JICA-JAXA 熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)」を開発し、世界77ヵ国の熱帯林を観測および熱帯林減少の早期発見を行っています。

ブラジルで実施された森林保全のための衛星画像の利用プロジェクトにおいては、2010年から2011年にかけて1,000ヵ所の森林減少と150ヵ所の違法伐採を発見し、2014年の森林減少面積は50万ヘクタールまで改善しました(2004年より約80%減少)。*31)

また、日本森林技術協会は森林問題に焦点をあてた気候変動対策REDD+の推進プロジェクトに多くの技術者を現地派遣しています。*32)

日本の技術は、国境をこえて森林問題対策に取り組んでいるのです。

森林破壊問題を解決するための日本企業の取り組み

ここまでは国の取り組みを見てきましたが、森林破壊を防ぐには企業の協力も欠かせません。

そこでこの章では、企業の取り組みを紹介していきます。

株式会社フェリシモ

株式会社フェリシモは、1965年に設立されたダイレクトマーケティング事業で、いわゆる通販ショップを展開する企業です。

「しあわせ社会学の確立と実践」を経営理念に、良心、関心、発達、創造といった4つの価値観のもとに慈善活動を行っており、その1つに顧客から毎月100円を集めて森づくりにあてる「フェリシモ森基金」があります。

フェリシモ森基金は1990年に発足し、2020年4月の時点で4億4,000万円以上の基金が集まり、国内外の42カ所において約2,782万本の植林を行っています。

また、植林を行ったインドでは果樹が実ることで農家が収入を得られるようになるなど、森林再生だけではなく、その地域で暮らす人々の雇用と持続的な生産が生まれています。さらに、象が森に戻ってきたという嬉しい効果もありました。

皆さんもお買い物の際には100円を寄付し、森林再生に貢献してみませんか。

株式会社フルッタフルッタ

株式会社フルッタフルッタは「アグロフォレストリー(※)」で栽培されたアマゾンフルーツを輸入することで、ビジネスを通じて森林再生に貢献している会社です。輸入したフルーツ原料を他社メーカーに販売したり、ジュースなどの自社製品として加工・販売することで、アグロフォレストリーの作物が日本で流通拡大することを担っています。

アグロフォレストリーとは

アグリカルチャー(農業)とフォレストリー(林業)が合わさった造語で、「森をつくる農業」といわれている。

収穫時期の異なる多数の農作物や果樹などを木々の間で育てることで、持続的に農業を営みながら森林を再生する農法であり、多種の作物を少量ずつ収穫できるのが特徴です。

私たち消費者も、アグロフォレストリーで作られた作物を商品を購入することで森林再生および生産地の農業経営に貢献できます。アマゾンフルーツは栄養も豊富です。商品をみかけたらぜひ購入してみてくださいね。

森林破壊の解決に向け私たちにできること

最後に、森林破壊を防ぐために私たち個人にできることを見ていきましょう。

私たちにできること①FSC認証マークがついた商品を選ぼう

FSC(森林管理協議会)は、環境・社会・経済の面で持続可能な森林管理を世界に広めることを目的に設立された国際的非営利団体です。

FSCは10の原則と70の基準、各国の状況に応じた約200〜300の指標を設けており、適切な管理がされていると認められた森林から作られた木材製品・紙製品にFSCマークの認証を行っています。*33)

つまり、FSCマークがついている製品を購入することは、私たち消費者が違法伐採された木材・木材製品を購入しないことに繋がります。

FSCマークはさまざまな商品についています。

筆者もこの数日で、FSCマークがついた商品をいくつも発見・購入することができました。下記は筆者が見つけたFSCマークです。皆さんも買い物する時は意識して見てみてくださいね。

FSCマークの例

私たちにできること②国産木材を使おう

イメージ画像

日本の現状にて先述した通り、日本国内の森林は放置されている傾向があり、使用木材の約60%を輸入品に頼っています。

その理由の1つに、輸入木材は国産木材よりも安価であることが挙げられます。

日本は湿度が高いために木材を乾燥する手間がかかるうえ、林業従事者の不足により国産木材は輸入木材よりも高いというデメリットがあります。

しかし使用木材によっては費用をおさえることも可能と言われており、自社で森林をもつことによりそのデメリットを軽減している事業者も存在します。

また、国産木材には、

  • 放置林問題を改善できるため災害予防効果が生まれる
  • 四季があり寒暖差のある日本で育った木は、日本の気候に適した建材であり耐久性にも優れているため、その木材を使用した家は長く住み続けられる
  • 年輪がはっきりしているため見た目がきれい
  • 防虫剤や防腐剤が使われていない木材が多いため安心して使用できる

などといったメリットがあります。*34)

私たち日本人は家を建築する機会はそう幾度もなく、普段の生活で多くの国産建材を利用することは少ないかもしれません。しかし、国産木材の間伐材(建材として使用できない部分)を利用した割り箸を利用するなどであれば、実践できるのではないでしょうか。

例えば、ナチュラルローソンで使用している割り箸は国産木材を利用しています。*35)近くに店舗がある場合はナチュラルローソンでお弁当を買うのも良いですね。

また、コクヨ株式会社から販売されている「間伐材ノート〈mori-no-oto〉」は中紙に間伐材が使用されており、先述したグリーン購入法の適合商品でもあります。

ノートはコクヨのネットショップでも購入できますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

私たちにできること③紙製品・木材製品の消費量を減らそう

イメージ画像

私たちは日常生活で多くの紙製品・木材製品を使用しています。

日々の暮らしの中でついついティッシュを取りすぎてしまったりと無駄遣いをした経験がある方も多いのではないでしょうか。紙製品・木材製品の無駄遣いは森林の無駄遣いと同じ意味を持ちます。必要な量だけ使用するように心がけましょう。

またほかにも、再生紙の利用や、書類をデジタル化することでコピー紙の使用量を減らしたり、紙製品の過剰な包装・梱包(紙袋や包装紙など)を断ることも私たちに行える取り組みです。

日々の暮らしを見直し、紙製品・木材製品の消費量を減らしましょう!

私たちにできること④森林破壊対策に取り組む企業への賛同や募金、商品の購入

企業の取り組みにて述べた通り、森林再生に取り組む企業への募金や商品の購入は私たち個人ができる取り組みの1つです。

森林問題への取り組みを行っている日本企業はこの記事で紹介した2社以外にも存在します。「森林保全活動 企業」といったワードで検索すると、森林問題に取り組む企業を見つけることができるので、ぜひ賛同できる企業を見つけ、協力してみてくださいね。

また、環境省自然環境局自然環境計画課によって運営されているForest Partnership Platformでも、企業による森林保全活動の事例が記載されていますので確認してみてください。

まとめ

世界では多くの森林が減少しており、1990年から2020年の30年間で1億7,800万ヘクタールもの森林が失われています。

森林破壊は地球温暖化や災害、感染症リスクを増加させるなどといったさまざまな影響を生じさせるため、国や企業、個人が協力して対策を講じる必要があります。

私たち個人が行える取り組みとしては、国産木材を選ぶ、FSC認証がついた商品の利用や購入、森林破壊対策に取り組む企業への賛同、募金、商品の購入、そもそも紙・木製品の消費を見直すなどが挙げられます。

地球環境を守るためにも、できることから始めてみませんか。

〈参考文献〉
*1)Global Forest Resource Assessment 2020
*2)林野庁 世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要
*3)世界の森林率 国別ランキング・推移 – Global Note
*4)林野庁 森林資源の現況
*5)林野庁 間伐の推進について
*6)林野庁 「令和2年木材需給表」の公表について
*7) フォレストパートナーシップ・プラットフォーム
*8)出光興産株式会社 バイオ燃料  バイオマス発電
*9)WWFジャパン パーム油 私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの
*10)森林・林業学習館 違法伐採とその対策
*11)外務省 違法伐採問題
*12)林野庁 クリーンウッドを使って世界と日本の森林を守ろう
*13)一般社団法人椎葉村観光協会 椎葉村を知るエピソード 焼畑
*14)森林・林業学習館 森林減少・森林破壊・森林消失の原因
*15)WWF_ForestFiresReport2020
*16)ETAS Online Center オーストラリアで森林火災が多発する原因とは?
*17)総務省消防庁 林野火災対策
*18)林野庁 日本では山火事はどの位発生しているの?
*19)
IPCC 第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書 気候変動 2021:自然科学的根拠 政策決定者向け要約(SPM) 暫定訳(2021 年 9 月 1 日版)
*20)WWFジャパン 地球温暖化とは?温暖化の原因と仕組みを解説
*21)WWFジャパン 森林破壊の原因って?森林破壊を止めるために、今日からできること
*22)nature Creation of forest edges has a global impact on forest vertebrates
*23)WWFジャパン 算数で解く森林破壊と感染症リスクの科学
*24)国際連合広報センター 持続可能な開発目標(SDGs)ー 事実と数字
*25)林野庁 森林・林業分野の国際的取組
*26)外務省 国連における森林問題への取組

*27
環境省 グリーン購入法について 
*28)林野庁 クリーンウッド法の概要 
*29)環境省 世界の森林を守るために
*30)外務省 ITTO(国際熱帯木材機
関)の概要
*31)JJ-FAST  JICA- JAXA Forest Early Warning System in the Tropics
*32)一般社団法人日本森林技術協会 国際協力支援 -緑豊かな地球環境のために 
*33)FSCジャパン ビジョンとミッション
*34)シルバニアホーム 国産材と輸入材(外材)のメリットとデメリット
*35)LAWSON トピックス