2023年2月、国連人権理事会の作業部会は、人権状況を定期的に検証する制度に基づいて日本の報告書を公表しました。内容は、死刑制度の廃止をはじめ、国内人権機関の設立、ジェンダー平等、マイノリティーの権利など300項目について勧告するものでした。法的な拘束力はないものの、日本はこれを受け入れるかを考えることになります。
現在、国連加盟国のおよそ7割が、事実上、死刑制度を廃止しています。その中で日本は、今後どのような道を歩むべきなのでしょうか。死刑制度はなぜあるのか、歴史、現状、日本の死刑制度について、廃止しない理由、賛成・反対意見、SDGsとの関係について解説します。
死刑制度とは
死刑制度とは、刑罰として犯罪者の生命を奪うことを定めた法律などの規定です。2022年時点で死刑制度のある国は、日本やアメリカ、中国を含めた55カ国である一方、法律上または事実上廃止している国は144カ国と多数を占めています。死刑の罪状は、殺人、薬物関連、テロ関連、汚職、誘拐、強姦などであり、斬首や絞首、致死薬注射、銃殺といった方法で行われています。
2022年に世界で死刑が執行された件数は883件以上*、死刑判決が出されたのは2,016件以上、死刑囚の人数は28,282人以上[i]です。その年により増減はあるものの、世界では毎年死刑囚が生まれ、死刑が執行されています。**
*中国など、十分な情報を得ていない国については2件とカウントされています。
**国際人権NGOアムネスティ・インターナショナル報告書「2022年の死刑判決と死刑執行 日本語訳」より
死刑制度の歴史
死刑制度はいつ始まったのでしょうか。ヨーロッパと中国、日本を中心に、断片的ではありますが、歴史を簡単にたどってみましょう。
古代
古代のユダヤ=キリスト教の世界を見てみると、聖書に死刑制度についての記述が見られます。紀元前に成立した『旧約聖書』には、「人を打って死なせた者は、必ず殺さなければならない」(出エジプト記21:12)など、殺人を死刑とする規定があるほか、偶像崇拝や姦通などにも死刑が適用されていることが分かります。その後に書かれた『新約聖書』は、罪を赦し復讐を断念することを原則としていますが、死刑は存在していました。
ローマ共和政期の法の死刑は、犯罪者の被害者は加害者の懲罰によって償われるべきであるという「応報的」な意味と、犯罪をさせない「抑止的」な要素を持っていました。具体的には、斬首や獣刑(円形競技場の見せ物の中で、どう猛な動物に委ねられる)などの方法で行われていたようです。「応報的」「抑止的」な側面は、現在でも死刑制度の是非を問うキーワードになっています。
中国でも古くから死刑が行われています。例えば、紀元前207年に成立した規定『法三章』では、「人を殺した者は死刑、人を傷つけた者と物を盗んだ者は相応に罰する」と定められています。
死刑は古代から行われており、法や規定などにおいて定められていました。
中・近世
中世のヨーロッパでは、13世紀初めに行われた異端審問が歴史的に重要な出来事になるでしょう。ローマ教会は、イタリアとフランスのラングドック地方に広がる異端者を危機と捉え、異端審問と呼ばれている特別裁判を設けました。異端者が矯正不可能と判断された場合、世俗裁判所に引き渡され死刑になるという仕組みです。異端のほかに、殺人、魔女、故意の放火、強姦、大逆罪、偽金作りなどの犯罪に、火刑や絞首刑、斬首刑、生き埋めなどが科されています。この異端審問は、以後もヨーロッパで続けられます。
近世になると、死刑は犯罪の抑止的な面のみに目を向けられるようになり、次第に緩和され減少していきます。フランスでは、脱走罪の死刑を廃止したことから、死刑判決自体も減少する傾向が見られました。また、イタリアのトスカーナ大公や神聖ローマ皇帝の皇帝ヨーゼフ2世は死刑を廃止しています。[ii]
中国では、唐の時代の十余年間に「絞殺」と「斬殺」を廃止し、杖で犯罪者をたたく「重杖」を代替刑に採用したものの、歴代の律令には死刑が存在していました。
ヨーロッパの中・近世は、宗教や哲学などの分野において、死刑制度の意味や賛否について議論されてきた時代でもあります。
【補記】現代の国際的な人権保護の流れ
現代では、人権保護の立場から、国際人権規約などに代表される取り決めがあります。その中には死刑制度も含まれており、各国は国内の法体系に組み入れるなどの取り組みを行っています。死刑制度に関する主な規約は以下の通りです。
■国際人権規約(自由権規約):1966年12月16日国連総会にて採択
死刑は最も重大な犯罪についてのみ科すことができる死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦または減刑を求める権利を有するなど(第6条) |
■国際人権規約第二選択議定書(死刑廃止条約):1989年12月15日国連総会にて採択
締結国は、死刑を廃止するためのあらゆる措置をとらなければならない |
■死刑に直面する者の権利の保護の保障に関する決議:1989年国連経済社会理事会にて採択
捜査から刑執行までのすべての段階において十分な弁護を受ける権利の保障妊婦・扶養の幼児を有する母・精神障害者・高齢者への死刑の禁止など |
2020年現在、国際人権規約の署名国数は74、締結国数は173であり、日本も1979年に批准しています。[iii]一方で、第二選択議定書(死刑廃止条約)は、20236年10月1日時点で締結国数は90ですが、日本は締結していません。
日本
続いて、日本における死刑制度の歴史を確認していきましょう。
古代
死刑が刑罰制度として現れたのは、仁徳天皇の時代(5世紀前半)です。殺人、強盗、姦の罪を犯すと、絞、斬、焚(焼殺)という方法で死刑が行われました。律令制の時代になると、絞(首を絞める)、斬(首を切る)、格殺(殴り殺す)の3刑になります。また死刑は、天皇に報告して許可を得る必要がありました。
中世
鎌倉幕府の刑罰には斬刑と流刑(遠刑)があり、室町時代も継続されました。戦国時代や安土桃山時代には、磔(はりつけ)、逆さ磔、串刺(くしざし)、鋸挽(のこぎりびき)、牛裂(うしざき)、火焙(ひあぶり)など、残酷な死刑が行われます。犯罪の予防を目的に死刑が行われていたといわれています。
近世
江戸時代、八代将軍吉宗のときには、「公事方御定書」の下巻が制定され、鋸挽、磔、獄門、火罪、死罪、斬刑を定めています。近代になると、これらの残酷な刑は廃止されました。[iv]
日本の死刑制度も、時代によって内容を変えながら現在に至っています。
死刑制度の現状
歴史を振り返ると、死刑制度はもともと多くの国にありました。しかし現在、死刑制度を残している国は55カ国と、廃止している144カ国に比べて圧倒的に少ないのが現状です。
死刑制度を続けている国はどこなのか、そして廃止する国が増加している背景について確認していきましょう。
死刑制度を存続している国
死刑制度が存続する国は以下の通りです。
■死刑制度の存置国:55カ国<2022年12月31日現在>
アフガニスタン、アンティグア・バーブーダ、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベラルーシ、ベリーズ、ボツワナ、中国、コモロ、コンゴ民主共和国、キューバ、ドミニカ国、エジプト、エチオピア、ガンビア、ガイアナ、インド、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、日本、ヨルダン、クウェート、レバノン、レソト、リビア、マレーシア、ミャンマー、ナイジェリア、北朝鮮、オマーン、パキスタン、パレスチナ、カタール、セントクリストファー・ネイビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サウジアラビア、シンガポール、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリア、台湾、タイ、トリニダード・トバゴ、ウガンダ、アラブ首長国連邦、米国、ベトナム、イエメン、ジンバブエ |
死刑制度の存置国には、アメリカをはじめ、アジア太平洋、中東、アフリカの国々が挙げられます。とはいえアメリカは、州により死刑制度への対応が異なり、2022年時点では27州で存続され、23州で廃止されているのが現状です。
また、2022年に死刑を執行した国は、日本を含め20カ国でした。
左軸は死刑執行数を示しています。死刑執行数が多いのは、中国、イラン、サウジアラビア、エジプト、アメリカです。ただし、中国、北朝鮮、ベトナム、その他一部の国については十分な情報がないため、あくまでアムネスティ・インターナショナルが調査した結果の数字となっています。
2022年は、死刑制度を存続している国の3割程度が刑を執行している実態が分かります。
廃止する国は年々増加
死刑制度を存続する国がある一方で、廃止する国は年々増加しています。すべての犯罪に対して死刑を廃止した国は、2013年には98カ国でしたが、2022年には112カ国になり、年々増える傾向にあります。
2013年には98カ国だったのが2022年には112カ国に
OECD(経済協力開発機構)に加盟する先進国38カ国の死刑制度の有無を見てみると、日本とアメリカ、韓国を除いたヨーロッパ諸国や北欧の国々などでは廃止されていることが分かります。
例えばイギリスでは、「人道的な見地から」「誤判の可能性がある」「犯罪防止力がない」などの理由から、1998年に死刑が全廃されました。またドイツでは、1949年にドイツ連邦共和国(西ドイツ)、1987年にドイツ民主共和国(東ドイツ)が死刑制度を廃止しました。西ドイツは、ナチス時代に死刑の対象犯罪が広がり、死刑判決や執行件数が増えたことへの反省を廃止の理由に挙げています。[v]
2022年には、ザンビア政府が生命の保護と更生に重きを置いた制度にするとして、死刑廃止に向けた取り組みを進めると発表しました。死刑制度廃止の動きは、今後も活発になると予想されます。
なぜ死刑制度があるのか
死刑制度を廃止する国は年々増加していますが、なぜ存続する国があるのでしょうか。国の事情により理由はさまざまですが、よく議論されるテーマに、「犯罪抑止力への期待」と「社会的・文化的背景」があります。
犯罪抑止力への期待
死刑制度は、犯罪を抑止すると考えられています。大きな罪を犯せば自分の生命を奪われるという刑罰が心理的な作用をもたらし、犯罪を起きにくくするというのがこの考え方です。また一部の国では、他の者への戒めのために公開処刑が行われることもあります。
社会的・文化的背景
死刑が執行される罪状は、国によってさまざまです。殺人だけでなく、宗教への侵害や汚職事件、不倫や同性愛などが含まれる場合もあります。これらの行為は、「罪であり死刑に相当するとみなす社会的・文化的な価値観」が強く影響していると考えられます。
この2つのテーマは古くから存在していることもあり、死刑制度を存続している国があるのが実情です。
日本の死刑制度について
死刑制度は国により内容や方法などが異なりますが、日本ではどのように運用されているのでしょうか。はじめに、死刑を規定した刑法を見ていきましょう。刑法第9条には刑罰として死刑が規定され、第11条に執行方法が記載されています。
■刑法
(刑の種類)第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。(死刑)第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。 |
死刑は主刑である7種類のうちの1つであり、刑事施設内において絞首して執行されます。人の生命を奪う刑であることから「生命刑」と呼ばれ、最も重い刑罰です。
また日本では、どのような行為が犯罪であり、それに対してどのような刑罰が科されるのかを法律であらかじめ定めておく「罪刑法定主義」をとっています。法律の格言に「法律なければ刑罰なし」とあるように、たとえ凶悪な犯罪であっても法律で定めていなければ死刑の求刑や宣告をすることはありません。このことは日本国憲法にも規定されています。
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 |
これらのことを踏まえた上で、死刑になる犯罪の種類と執行されるまでの流れを確認していきましょう。
死刑になる犯罪の種類
日本において死刑になる犯罪の種類は、殺人罪を含めて19種類です。根拠となる法律とその内容を簡単に見ていきましょう。
■刑法
内乱首謀(第77条1項1号) | 国会や裁判所などの国の統治機構を破壊し、統治の基本秩序を崩し乱す目的で暴動を起こす |
外患誘致(第81条) | 外国と共謀して日本国に対して武力を行使させる |
外患援助(第82条) | 日本に対する外国からの武力行使に加担して、軍事上の利益を与える |
現住建造物等放火(第108条) | 人が住居として使用しているか、人がいる建物、電車、船などを放火する |
激発物破裂(第117条1項前段) | 火薬、ボイラー、その他の爆発物を破裂させて、人がいる建物や電車などを損壊する |
現住建造物等浸害(第119条) | 管理されている水力を解放するなどして、人がいる建物や電車などを侵害する |
汽車転覆等致死(第126条3項) | 人がいる電車、船を転覆させたり破壊したりして人を死亡させる |
往来危険による汽車転覆等致死(第127条、第126条3項) | 鉄道や標識を損壊し、電車、船を転覆、沈没、破壊して人を死亡させる |
水道毒物等混入致死(第146条後段) | 水道に毒物を混入して人を死亡させる |
殺人(第199条) | 人を殺す |
強盗致死(第240条後段) | 強盗が人を死亡させる |
強盗強姦致死(第241条後段) | 強盗が同意しない人や16歳未満の人と性交などをし、その人を死亡させる |
爆発物使用(第1条) | 治安を妨げ、人の身体、財産を害する目的で爆発物を使用する |
航空機墜落等致死(第2条3項) | 航行中の航空機を墜落、転覆させ、破壊して人を死亡させる |
航空機強取等致死(第2条) | 暴行、脅迫などにより航行中の航空機を強奪、運航して人を死亡させる |
人質殺害(第4条) | 2人以上が共同して凶器を示して人質にし、第三者に対して義務のない行為を要求し、人質を殺す |
決闘殺人(第3条、刑法第199条) | 決闘をして人を殺傷する |
組織的な殺人(第3条第1項7号) | 団体の活動として組織が人を殺す |
海賊行為に関する罪(第4条) | 船に乗り込み、暴行、脅迫などにより強取、支配し、人を死亡させる |
これら19種類のうち、刑罰に死刑しかない罪は「外患誘致(刑法第81条)」のみです。その他は「死刑または無期懲役」と定められています。ただし、「外患誘致罪」で起訴された例はこれまでにありません。
死刑が執行されるまで
刑事訴訟法では、死刑判決が確定してから6カ月以内に死刑を執行するのが原則です。この間、死刑判決が確定した者は、刑事施設に拘置されます。(第475条1項)
死刑執行は、法務大臣の命令により行われます。命令が発せられたら、検察官は死刑執行指揮書を発行し、刑事施設の長に死刑の執行を指揮します。(執行事務規程第10条)執行には、検察官、検察事務官、刑事施設の長が立ち会うのが決まりです。(刑事訴訟法第477条1項)そして死刑は、刑事施設の長の職務上の命令を受けた職員が行います。
その後、法務省は被害者やその親族などの希望に応じて、死刑を執行した事実を通知することになっています。これは2020年10月1日から始まった「被害者等通知制度」という被害者支援のための制度です。
*少年法について
少年が犯罪行為をしたときの処分や措置を定めた法律に、少年法があります。少年法では、少年が起こした事件は家庭裁判所に送られ、処分が決定される仕組みです。処分には、検察官送致(懲役刑、罰金刑などの刑罰)や保護処分(少年院送致、保護観察)などがあります。
少年法では、20歳未満を「少年」、18歳以上の少年を「特定少年」としています。特定少年は、罪質や情状に照らして刑事処分が相当と認められる場合、同じように検察官に送致される規定です。この刑事処分とは、死刑、無期懲役または短期1年以上の懲役、禁錮も含まれます。つまり、18歳以上の少年も死刑の判決を受ける可能性があります。
なぜ日本は死刑制度を廃止しないのか
多くの国が死刑制度を廃止する中、なぜ日本は継続しているのでしょうか。その理由として政府は、世論の動きと凶悪な犯罪が後を絶たない状況を挙げています。[vi]そこで、世論調査と犯罪の状況について詳しく見ていきます。
死刑もやむを得ないと考えている人が8割
令和元年、死刑制度に対する国民の意識を聞く世論調査(回答数1,572人)が行われました。その結果、「死刑もやむを得ない」と答えた人が80.8%と大半を占めました。一方、「死刑は廃止すべきである」と答えた人は9.0%、「わからない・一概に言えない」は10.2%と、廃止すべきと考えている人はわずかでした。
さらに、「死刑もやむを得ない」と答えた人にその理由を聞いたところ、「死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」と答えた人の割合は56.6%、「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」は53.6%でした。(複数回答)
死刑制度は、犯した罪を命で償うという国民の価値観が影響しているほか、再犯や犯罪の抑止力になると考えられていることが分かります。この調査結果を受け、政府は死刑制度を廃止することは適当でないと考えています。
※この調査方法にはさまざまな問題があることが指摘されています。例えば選択肢に、「死刑は存続すべきである」ではなく「死刑もやむを得ない」と容認する言い方になっていることや、回答の回収総数が1,572人しかいないことなど、国民の総意とは言い切れない部分があるのも事実です。
凶悪な犯罪件数は微減
政府は、犯罪被害者の施策として「犯罪被害者白書」を毎年作成し、公表しています。令和5年版の「犯罪被害者白書」によると、過去5年間の強制性交等の犯罪は増えていますが、その他の凶悪犯件数は減少傾向にあります。
凶悪犯罪は全体的に減ってはいますが、今なお発生していることは確かです。凶悪犯罪が起きている以上、世論からうかがえる死刑制度はやむを得ないという立場をとっているのが、現在の日本であると言えるでしょう。
日本における死刑制度に対する意見
日本では、死刑制度に対して賛否両方の意見があります。それぞれの立場を見ていきましょう。
賛成理由
賛成理由としては、世論にもあるように「被害者や家族の心情から必要」「凶悪な犯罪は命で償うべき」「凶悪な犯罪が増える」などがあります。被害者の親族が加害者の死を望むケースや、死刑が心理的に犯罪を抑止するという考え方があるのも事実です。こうした応報的・犯罪抑止的な面は、世界で古くから死刑制度を実施してきた理由でもあります。
反対理由
反対理由としては、「誤判や無実の罪の場合取り返しがつかない」「生きて生涯にわたり罪を償うべきである」「更生の可能性を奪う」「人道上問題である」などです。実際に死刑が確定した後に無罪であることが判明するケースや、代替刑として終身刑とすべきだという意見もあります。また、人の命を奪う行為は人権侵害であり、基本的人権を脅かすとしています。
死刑制度を廃止する国が増える中で、日本はどのような立場をとるのか、今後も議論を深めていく必要がありそうです。
死刑制度とSDGs
最後に、死刑制度とSDGsの関係を確認します。SDGsは、死刑制度について触れていません。なぜなら、国により制度が異なるため、意見が対立する課題を取り上げないからです。
しかし一方で、「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム’90」は、死刑制度を生きる権利を否定するものとし、世界人権宣言や国際人権規約の精神を受け継いだSDGsに反するとしています。死刑制度が貧困や差別と結びついていることから、SDGsの目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」に相反するなどとしています。[vii]
まとめ
死刑制度とは、刑罰として犯罪者の生命を奪うことを定めた法律などの規定です。2022年時点で死刑制度のある国は55カ国である一方、法律上または事実上廃止している国は144カ国と多数を占めています。死刑制度を存続する理由としては、犯罪を抑止する効果が期待できることや、社会的・文化的な背景が挙げられます。
日本は、死刑制度を存続している国の1つです。その理由は、死刑をやむを得ないと考えている国民が多数いることや、凶悪犯罪が後を絶たないことなどがあります。ただし、国民の中にも賛否があるのも事実です。
またSDGsでは、死刑制度を各国ごとに判断すべきとしています。しかし、人権を否定するものであり、SDGsに反するという意見もあります。国際的に死刑制度の廃止が進む中、日本は今後どのような道を取るのか、国民一人一人の意識も重要な要素になるでしょう。
<参考文献>
[i] 「死刑廃止国・存置国リスト(2022年12月末現在)」死刑廃止 : アムネスティ日本 AMNESTY
[ii] 『死刑制度の歴史(新版)』ジャン=マリ・カルバス著、吉原達也/波多野敏訳、白水社、2006年
[iii] 市民的及び政治的権利に関する国際規約 締約国一覧|外務省
[iv] 死刑制度に関する資料 平成20年6月 衆議院調査局法務調査室
[v] 法務省:添付資料・議事録 資料19 死刑廃止国における死刑廃止の経緯等について
[vi] 法務省:法務大臣臨時記者会見の概要 令和4年7月26日(火)
[vii] SDGsと死刑制度が両立する・しない理由とは – オルタナ