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株式会社Dots for | アフリカ農村部をオンラインでつなぐ!活動の全ては顧客に届ける価値を最大化するために

株式会社Dots for

株式会社Dots for 大場カルロスさん インタビュー

大場カルロス

株式会社Dots for  CEO / 共同創業者
Amazonやリクルート、WASSHA、C Channelや独立行政法人などにおいて、官民でアフリカを含むグローバルの新規事業開発や経営に従事。
Amazonではトップライン向上や生産性向上に貢献。リクルートではサービスのアメリカ・ヨーロッパ進出に従事し、C Channelの海外事業執行役員としてタイ・インドネシア事業1年目で単月黒字を達成。
直近2年間はWASSHAの新規事業マネージャーとして、バイクタクシーハイヤーサービスの立ち上げを主導。
米国Univ. of California, San DiegoでMBA取得。100カ国近くを旅した現役バックパッカー。

introduction

私達にとって、生まれ育った町で暮らしていくことは当たり前に選べる選択肢の一つです。しかし、アフリカの農村部では収入が少ないために、家族と離れ都市に出稼ぎに行かざるを得ない人達が多くいます。

「アフリカ地方部の制約をなくす」ことを会社の目的とし、通信技術を使って誰もがどこでも便利に暮らす世界を作ることを目指して活動しているのが、株式会社Dots for(ドッツ フォー)です。

今回は、CEO兼共同創業者である大場カルロスさんに、事業内容とともにアフリカ農村部の問題や会社を立ち上げた背景などについてお聞きしました。

情報格差をなくし、農村部の収入を上げることが私達の役割

–はじめに株式会社Dots forの御紹介をお願いします。

大場さん:

株式会社Dots forは、通信技術を使ってアフリカの農村の問題を解決し、そこに住む人たちの生活を根本から変えていくための事業に取り組む会社です。

「アフリカ地方部の制約をなくす」ことを目的に掲げ、誰もがデジタルサービスにアクセスし、村・町・都会との相互通信・先進国と繋がりを持ち、情報格差や機会格差をなくし収入格差もなくすことを目指しています。

というのも、アフリカの農村部にはお金がないので「いろいろなことが後回しにされ、誰からも相手にされない」というのが一番の問題だと感じていました。

農村部の住民がお金を持っておらず、地方農村に投資をしても儲からないので投資をする人も少ないことから「見放される→取り残される→お金がない→見放される」のような堂々巡りの状態です。このロジックでインフラが整備されないので、新しいサービスも入ってこないし、稼げるようにならないというのが現状ですね。

このような背景もあり、出稼ぎに出る人の数も多く、家族と離れ物価の高い都会で一人で暮らしながら数ヶ月に一度しか村の家族の元に帰れない人々も大勢います。

その中で私たちの役割は、農村にいながら収入を上げることが出来る様にすることだと考えています。村の中で利益を奪い合うのではなく、他の村・都市部・先進国から外貨を稼ぐ。それができなければ状況は変わりません。

私達は通信という特性を活かし、周辺の村・都市部だけでなく世界の国々と農村をつなげられます。

例えば、現在の農村部はほとんどの人が農業で暮らしていて、キャッサバ・米・コーンなど作った作物はまず自分たちが食べて消費します。そして余ったものを周辺の村などに売っています。

都市と通信が繋がるようになれば、余った野菜を都市のレストランが直接買い付けたり、都市の仕事の入力代行を農村にいながら行ったりすることもできます。このように通信を使い、外貨を稼ぎ収入を増やす事が可能になるんです。

取り残された人々が、世界と繋がりステップアップできる技術とは

–では、農村の人々の収入を上げるために取り組んでいる事業について詳しくお聞かせください。

大場さん:

現在はインターネット通信網が整備されていないアフリカの各農村に、分散型無線ネットワーク技術「d.CONNECT」を利用して、デジタルサービスを提供しています。

従来の基地局を中心としたスター型ネットワークと違い、複数の無線ルーターを選択的に分散して送信する分散型無線ネットワーク技術です。

農村の私達のユーザーは、村ごとに設置した分散型無線ネットワークに接続して、動画や掲示板のサービスを見られるようにしています。無料でも限られたコンテンツは使用できますが、サブスクリプション形式で契約してもらえばサービスは使い放題です。

都市部では多くの人がスマートフォンを持っていますが、村では持っている人がいないので、スマートフォンの販売もしています。

設備の設置は弊社が全て行い、顧客にはスマートフォンを買ってもらい、サービス料金を払ってもらうのが現在のビジネスモデルです。

–Wi-Fi設備を取り入れた農村の方々の反応はいかがですか。

大場さん:

村には通信環境はほぼないので、弊社のサービスで動画などがサクサク見放題になるのは単純に「すごい!」と感動してくれます。

有料サービスを使う方も多く、顧客に受け入れられている証拠だと思います。

自分の職業に関連した動画、例えば床屋さんなら「最新のニューヨークの髪型」の情報を見て、それを自分のお客様に提供することで新規顧客を獲得でき、収入も上がるという経験をしている人もいます。

弊社のサービスを利用して収入が上がった人ほど、サービスに払うお金は投資として認知してくれて、ロイヤルカスタマーになってくれます。

–現地の方々は、自分たちの村に御社のサービスを導入することに反対することはないのでしょうか。

大場さん:

サ-ビス導入の際は大体がアポ無しで行き、まずその村の村長さんに会って話しますが、非常にスムーズに受け入れてもらえます。

今まで100くらいの村に展開していますが、断られたことは一度もないです。

外国人が何か新しいことをして、自分達の村を変えてくれることを期待と興味を持って見ています。そして、サービスに対して絶対だめと反対する人もいません。

彼らは村がインターネットに繋がらず、情報が得られないということを自覚しています。

自分達ではお金はかけられないが、Dots forが設備を作ってくれるならと両手を上げて歓迎してくれるんです。

通信事業で農村部に「きっかけ」を!自分の生きた証を残すために起業を決意

–アフリカ農村部をターゲットにした会社を起業しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

大場さん:

前職では、色々な会社で主に国際事業・グローバル事業展開を担当していました。

アフリカとの最初の関わりは、日本のスタートアップ企業でタンザニアの農村部における電力問題を解決するための仕事でした。

現地を訪問した際、アフリカの農村が世界で一番取り残されていると感じました。

現地の人達は行動を起こす「きっかけ」がないだけで、その「きっかけ」を与えられれば生活を大きく変えられるのではないかと思ったんです。

「きっかけ」は水や電気の問題の解決という方法もあるけれど、彼らの生活を劇的に変えるには通信がいいのではないかと考え、アフリカの農村部で通信事業をする会社、株式会社Dots forを2021年10月に立ち上げました。

この事業によって、アフリカ農村部が取り残されている現状をどう変えるか、変えることによって自分の起こした社会へのインパクトの総量をどれだけ体現できるか、ビジネスチャンスだけでなく「自分の生きた証」を残すためでもありました。

–「生きた証を残す」といった大場さんの考えのバックグラウンドはどのようなところにあるのですか。

大場さん:

私は今まで100カ国くらいをバックパッカーとして旅してきましたが、きっかけは25歳のときに母親が急逝したことでした。

父も小学生の時に亡くなっていて、これでもう帰る場所が無いんだと感じたとき、もっと自由に生きようと思ったんです。

それで英語・フランス語・スペイン語の勉強も始めました。

両親の死を体験して、人間って簡単に死ぬんだなと改めて実感し、自分が死ぬときは「あれをやっておけばよかった」と後悔しない人生を送ろうと決めたんです。

それから20年間、ずっとその思いで生きてきました。

また、世界中を旅していて心を震わせるような出来事に何度も遭遇しました。一番印象深いのは、2013年にエジプト滞在中に起こった軍事クーデターです。デモや集会、血だらけで運ばれる人たち、軍事行動で大砲が打たれるなどを目の当たりにし「明日は何が起きるかわからない」と改めて感じたこともマインドを変える大きな要因の一つでした。

そして自分の存在意義を行動で証明することを使命としました。これは弊社で「Our Core Value Statements(私達の核となる価値の宣言)」として掲げている社の宣言項目にも表れています。

–御社の「Our Core Value Statements」とはどのようなものなのでしょうか。

大場さん:

このステートメントを見れば、自分達がどんな人間かわかってもらえるように作ったものです。

作るときに気をつけたのは、ステートメントの内容と自分達創業者、経営者の人格がズレていないかということです。

創業者や経営者のしていることと言っていることが違うと、一緒に働く人たちが覚めますし、思ってもいないことを実践し続けるのも自分達が辛くなると思い、「自分達はこういう人」ということを現せる内容にしています。

この手の行動指針は、人が増えてきた頃に作ることが多いと思いますが、この思いに賛同し、それに沿った行動をしてくれる人をメンバーとして評価したいと思い、創業前に作りました。

この7つのステートメントの中で一番大事にしていることは「全ては顧客のために」です。顧客・パートナー・社員や家族を含めた自分達と関わりのあるすべての人は大事なカスタマーだと考えていて、他の6つの頂点になるものだと思っています。

他のステートメントの例で言えば、「自分の足で立とう」は体験や思考、自分の中から出てきたことを大切にするということ。

例えば、SDGsの取り組みをするときに、最初にSDGsありきで囚われてしまうのではなく、自分の中にある思考を行動に移したら、結果的にSDGsの問題を解決し、人生にインパクトを起こしたという方が自然なんじゃないかということです。

起業をするとすごく苦しいこともありますが、自分の中から出てきた自分で決めたことですから乗り越えられるんですね。

–この事業を立ち上げるときに何か困難なことや大変なことがありましたか。

大場さん:

大変なことはいろいろありますが、致命的に困難なことはあまりないように思います。

強いて言えば、食あたり・お湯が出ない・トイレの便座は基本ない・停電は当たり前

みたいな物理的なことでしょうか。移動時間が長いことも大変ですね。

外国人が現地の言葉も喋れない、文化もわかっていない場所で起業するのはやはり大変です。

その様な状況なので、立ち上げた当初からどれだけローカル化を進められるかが勝負だと思っていました。ですから、現地の社員は私達が展開している地域で生まれ育った人を中心に採用しています。

自分の村を中心に担当エリアを訪ねて顧客との関係を築いたり、機器の導入をしたりする役目を担ってもらっています。

現地への投資こそ今必要な解決策!成功を証明したくさんの仲間を巻き込みたい

–では、現在事業を進める中で何か課題はありますか。

大場さん:

現地の人の収入をどれだけ上げられるかが課題であり、ゴールの一つでもあります。収入が上がればビジネスとして成功だし、上がらなければサービス拡大の頭打ちが早く来てしまいます。

また、アフリカでのビジネスに参入する企業が少なく、資金調達が難しいこともあります。

特に、アフリカ農村に投資をしようという方は本当に少ないです。ビジネスとして成り立つかどうかはっきりしないので、参入する人が少なすぎるんです。

ですので、アフリカの地方を見る限り、世界でのSDGsの取り組みの影響がアフリカ地方部に届いているようにはまだまだ思えません。

「投資」と「援助」という考え方があります。リターンが必要な投資は、まだまだ都市部に集中しています。

「援助」は農村にもされますが、設備や建物などを作っても、その後は現地に任せっきりで、お金がなくなれば終わり。作ったものが壊れても誰も直さない状態になっています。アフリカにはここ60年間で数十兆円の援助が入ってきていますが、それが問題を解決しているとは思えません。

だからこそ、きちんとリターンがあるんだぞということを、自分たちの少ない資本の中で証明しながら周りを巻き込んでいき、農村部への投資をするプレイヤーを増やすことが重要だと考えています。

–最後にこれから事業をどのように展開していきたいか、今後の展望をお聞かせください。

大場さん:

現在、西アフリカのベナン共和国やセネガル共和国で事業展開していますが、より多くの村にシステムを展開し、現地の人々の生活を変えたいと思っています。

確実に収入はあがっていて、スマートフォンだけでなく農機具や、バイクなどを販売する下地もできてきて非常に良く売れています。

このように個人の収入や資産を増やした次のステップは外貨を稼ぐことです。

外貨を稼ぐため、生産性を上げることが必要なので他社との協力も大切です。

弊社は、電力会社や通信会社・メーカーなど色々な会社との繋がりがありますから、しっかり協力しあって現地の方々の生産性を上げ、収入をもっと増やすことを目指したいですね。

また、私達が農村部に通信インフラを作り、その上で自前で提供しているサービスを使ってもらうことにより、農村住民個人個人のデータが収集できるのはとても大事なことだと思います。

彼らの活動時間や、何にアクセスしてどんなサービスを使ったかなど、このアフリカの農村部のデータは、世界中で私達しか持っていません。このデータをどう活用して次のステップに繋げるか、外貨の獲得の仕方なども含め網羅的に進めていきたいと考えています。

会社の目的「アフリカ地方部の制約をなくす」を果たし、皆が生まれ育った村で出稼ぎに出ずに当たり前に暮らすことができるよう活動していきます。

–本日は貴重なお話をありがとうございました。

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