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フードドライブとは?目的や手順とメリット・デメリット向いている食品も紹介

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生活困窮者を救うためにアメリカで始まったフードドライブですが、近年日本でも注目を集めています。この記事では、フードドライブとは何か、そしてメリットやデメリットを紹介します。実際にフードドライブを実施している団体も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

フードドライブとは

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フードドライブとは、家庭で余っている食品を学校や職場などに持ち寄り、食べ物を必要とする団体や施設に寄付をする活動のことです。「ドライブ」というと運転をイメージする人もいるかもしれませんが、ここでは「〜運動」という意味で使われています。最近では、企業のCSRやSDGs活動の一環として、企業がフードドライブを実施し、社員が家に余っている食品を持ち寄るといったケースも増えています。

目的

フードドライブの目的は主に2つ挙げられます。

  1. 家庭で出てしまうフードロスを減らすこと
  2. 食品を必要とする人々に支援として届ける

この目的を見ると、「フードバンク」と似た活動のように思いますが明確に違いがあります。フードバンクは主に食品を扱う企業や農家から、廃棄予定ではあるもののまだ食べられるものを募ります。一方でフードドライブは一般家庭が対象なので、より私たちにとって身近な活動と言えるでしょう!

仕組み

フードドライブでは、家庭で余っている食品を食べ物を必要とする人に直接渡すことはしません。まず食べ物を学校や職場で集め、地域のフードバンクや子ども食堂、施設などに寄付をします。そして寄付先の団体が、食べ物を必要とする人々に食品を分配する流れになります。

歴史

フードドライブは、1967年にアメリカのアリゾナ州で生まれたと言われています。世界で初めて貧困対策を目的に「St.Mary’s Food Bank」が設立され、活動を開始。フードドライブの知名度が上がったあとには「ブックドライブ(本の寄付)」「トイドライブ(おもちゃの寄付)」などさまざまな種類の「ドライブ」が生まれました。

その後、フランスやポーランドなど、ヨーロッパ圏を中心に世界各地でフードバンクが設立。日本では2013年に日本フードバンク連盟が立ち上がり、フードドライブの認知度が徐々に広がっていきました。

フードドライブが注目される背景

近年、特にフードドライブが注目されている背景には、食品ロス問題生活困窮者の増加が挙げられます。

食品ロス問題

消費者庁が発表した2020年(令和2年)度の統計によると、日本国内で発生する食品ロス量は年間522万トンです。国民1人当たりに換算すると、1日にお茶碗約1杯分の食べ物が廃棄されていることになります。

図を見ると、国内における食品ロスは、食品製造業の次に一般家庭から出ていることが分かります。食品ロスは、貴重な食べ物を無駄にするだけでなく、焼却処理する際に二酸化炭素を排出します。この二酸化炭素は、地球温暖化を進行させてしまうなど負の影響が大きいことから対策が急がれており、家庭からの食品ロス削減という意味でもフードドライブの活動が活発化しているのです。

生活困窮者の増加

フードドライブが注目を集める2つ目の理由は、生活困窮者の増加です。厚生労働省は2019年に、所得金額が100万円未満の世帯が全体の6.4%を占めると発表しました。生活していくために必要な食料を確保することができない貧困者数は決して少なくありません。国内で大量の食品ロスが出ている一方で、充分な食事を取れない層が存在するのです。

また、2021年には新型コロナウイルスの影響で、自治体への生活再建に関する相談数が前年度の3倍以上に急増したと厚生労働省が指摘しています。このような背景の中で、廃棄になってしまう食材を必要な人々の元に届けるという考えが広まりつつあります。

フードドライブのメリット

フードドライブは、上で挙げた社会課題を解決に導くことができます。詳しく見ていきましょう。

食品ロスを削減できる

消費庁の調査によると、家庭から食品ロスが出てしまう要因は「食べ残し」です。その中でも特に、下ごしらえが必要な筍や豆類など「調理しづらいもらい物」によるロスが多いことが分かっています。

例えばお土産や祝い品などをもらった際、自身の好みではなく調理に活かせない場合もあると思います。そのような食品を、賞味期限が切れる前にフードドライブで寄付することで食品ロスも削減でき、且つ誰かの役に立てることができます。

貧困問題解決を後押しする

集まった食品は、フードバンクや福祉施設、子ども食堂などに届けられます。食べ物を必要とする人々に届けることで、貧困問題解決の手助けとなります。実施団体は寄付先を明確に定めて公表していることも多いので、事前に寄付した食品が誰の役に立つのか知ることも可能です。

環境負荷の低減

食品を生産・保管・輸送する過程ですでに多くのエネルギーが使用されています。それに加え、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)は、地球上で排出される温室効果ガスのうち約10%は食品ロスから出たものだと指摘しています。

つまり、フードバンクを通じて食品ロスを減らすことは、エネルギーの無駄削減と二酸化炭素排出量削減につながります。

フードドライブのデメリット

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フードドライブ自体は貧困問題・環境問題を解決に導く素晴らしい活動ですが、デメリットも存在します。ここでは3つのデメリットについて見ていきましょう。

食品の種類の偏り

フードバンクで寄付される食品には、長期間家庭で眠っているインスタントやレトルト食品が多い傾向にあります。また、寄付を受け付けている団体は、野菜や果物を扱っていないケースがほとんどであるため、寄付食品だけでは充分な栄養を取ることができないという課題があります。

食品品質管理

寄付者がそれぞれの家庭から持ち寄る食品には、品質管理のリスクがあります。

  • 寄付する一般家庭への教育
  • 回収者による賞味期限の確認
  • 分配者による再確認

この3段階を踏むことでリスクを減らすことができますが、「寄付する一般家庭への教育」は簡単ではありません。損害保険会社が提供する「NPO賠償 責任保険」に団体等が加入することで、万が一食品事故が発生した際に保険の適用を受けられるという取り組みもあります。しかし、加入するのに費用がかかるのであれば、決して簡単な決断ではないでしょう。

検品や運送の負担

3つ目のデメリットは、検品作業や運送の負担です。フードドライブを運営する多くの団体は非営利のため、常時駐在のスタッフがいない場合がほとんどです。そのため、賞味期限切れの食品が含まれていないか確認をする作業や、輸送による時間や費用が負担となってしまう場合があります。

この負担を少しでも減らすためには、賞味期限を瞬時に判断しづらい外国語表記の食品は回収不可にするなど、あらかじめ回収できないものを明確に告知することが重要です。

輸送負担を減らすために海外で行われていること

アメリカでは春に「Stamp Out Hunger」というフードドライブが全国規模で実施されます。Stamp Out Hungerは、全米郵便配達員組合が地域の家庭から余っている食品を回収し、施設や慈善団体に寄付するイベントです。

フードドライブのための負担を減らすため、すでに存在する人員と車両を使って食品の回収・配達を行うことで運送の負担を減らすという合理的な仕組みが生まれたのです。

フードドライブを行う手順

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自社でフードドライブを行いたいと考えても、どのように進めればいいのか分からない人も少なくないはずです。そこで、環境省が推進するフードドライブの実施手順を参考に、実施方法を見ていきましょう。

ステップ①実施計画の作成

まずは実施計画を作成しましょう。決めるべきことは主に、

  • フードドライブの実施場所(食品を集める場所)
  • 期間
  • 食品の提供先
  • 広報の方法

です。

食品の提供先には、フードバンク、社会福祉協議会、子ども食堂などが挙げられます。提供先については、インターネットで探したり、自治体に問い合わせたりすると良いでしょう。また、社員以外に近隣の住民などから食品を集める場合、チラシやSNS、さらに自治体福祉部局やマスコミと連携することができれば、より多くの協力を募ることが期待できます。

ステップ②事前準備

実施計画が立てられたら、広報活動を開始します。その際には、集める対象食品の詳細をしっかりと伝えるようにしましょう。また、当日回収場所で必要となる椅子や机、食品を入れる箱、看板などを用意します。

ステップ③フードドライブの実施

当日は受付や集まった食品の記録、分類などを行う必要があります。そのため、フードドライブの規模にもよりますが、環境省は3〜4人のスタッフと共に実施することを推進しています。

当日の流れとしては、

  1. 食品を寄付者から受け取る
  2. 寄付者から受付票を記入してもらう
  3. 食品が対象の食品かを確認し、記録する
  4. 食品を種類ごとに分類する

が一般的です。分類の際には、賞味期限の近いものを分けておくと、引き渡しの際に寄付先の団体に伝えることができるのでおすすめです。

ステップ④寄付食品の引き渡し

最後に、集まった寄付食品を引き渡します。このとき、記録したリストと一緒に提供先団体に渡すようにしましょう。

フードドライブの注意点

続いては、フードドライブに向いている食品と、向いていない食品について紹介します。

向いている食品

フードドライブに向いていると言われる食品は、

  • 未開封の加工食品
  • 常温保存が可能なもの(農産物・米など)
  • 賞味期限が1〜3ヶ月以上あるもの
  • 未開封の調味料(醤油、みりん、塩胡椒など)

などです。

農林水産省が「フードドライブの寄付先のひとつであるフードバンクの現状」をまとめた統計によると、主な取り扱い食品は常温加工食品・農産物・米・パン・弁当・惣菜が上位に挙げられています。フードドライブを実施する際には、これらが多く集まるよう、広報活動時に希望食品を記載すると良いでしょう。

向いていない食品

一方で、以下のような食品はフードドライブには向いていません。

  • 賞味期限が1ヶ月を切っているもの
  • 賞味期限の記載がないもの
  • 外国語記載のもの
  • 腐敗しやすい食品(生野菜や肉類、豆腐など)
  • 開封されているもの

こちらも広報活動時に記載することで、食品を持ち寄る方々の負担を減らすことができます。ここで特に注意したいのが賞味期限についてです。

賞味期限について

一般的なフードドライブでは、食品を受け入れる際に賞味期限の残期間を設定しています。

例えば特定非営利活動団体の「フードバンクさが」では、寄付食品に関しては1〜3ヶ月以上が目安と明記しています。

寄付する側であれば、事前にフードドライブの企画者に設定された賞味期限の確認をしましょう。フードドライブを企画する場合であれば、配布前に賞味期限切れになってしまわないように食品を持ち寄る方々に向けて、日数を設定する必要があります。

フードドライブを実施している団体・企業

ここでは、フードドライブの計画まではできないけれど、寄付を行いたいという人のために、現在実施している団体と企業を紹介します。

特定非営利活動法人「セカンドハーベストジャパン」

「セカンドハーベストジャパン」は、食品会社や一般家庭から提供を受けた食品を、生活困窮者に提供している団体です。2000年(平成12年)に炊き出し活動を行ったことをきっかけに組織が立ち上がりました。家庭で余っている食品を直接、もしくは郵送で寄付することができます。

また、自分でフードドライブのイベントを開催したい人へのサポートも実施しています。

公益社団法人「フードバンク神奈川」

「フードバンク神奈川」は、地域の家庭から余っている食品を回収し、フードバンクを通して困窮家庭や施設への寄付を実施している公益社団法人です。回収している食品は常温で保存ができ開封されていないもの、そして賞味期限が明示され、残り日数が2ヶ月以上あるものです。

食品の回収場所が多いのがフードバンク神奈川の特徴で、川崎市・横浜市・海老名市・横須賀市・大和市など各地に拡がっています。

特定非営利活動法人「フードバンク横浜」

「フードバンク横浜」は、「誰も置き去りにしない」「救われる側から救う側へ」をコンセプトに、横浜市を中心にフードドライブを実施している団体です。集められた食品は、シングルマザー・シングルファザーの家庭や、小中高生、生活困窮者、ホームレスの元へ届けられます。

ここで紹介した団体の他にも、自治体を中心に各地でフードドライブが実施されています。お住まいの市区町村でも実施されていないか、各自治体のホームページで確認してみましょう。

フードドライブとSDGsの関係

最後にフードドライブとSDGsの関係を確認します。

SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで採択された世界共通の目標です。2030年までに達成すべき目標を環境・社会・経済を軸に、17のゴールと169のターゲットで掲げています。

今回紹介したフードドライブは、17ある目標のなかでも特に2「飢餓をゼロに」と関係しています。

特にSDGs目標2「飢餓をなくそう」と関係

目標2は、世界から飢餓をなくすことを目標に掲げています。飢餓とは、必要な食べ物を食べられずに健康を保つことができなくなった状態のことです。特にフードドライブと関わりが深いターゲット2.1には、以下のように記載されています。

”2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼 児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料 を十分得られるようにする。”

フードドライブの背景でも述べたように、日本国内で充分な食料を確保することができない貧困者数は決して少なくありません。フードドライブの活動は、これらの人々を飢餓から救う手助けになるでしょう。

一方で、フードドライブからの寄付だけでは栄養が偏ってしまう可能性もあります。特に子どもや若年女子、妊婦、高齢者の栄養ニーズへの対処をいかに行っていくかが今後の課題とも言えるでしょう。

まとめ

フードドライブは、家庭から出てしまう食品ロスを減らし、食べ物を必要とする人に届けることができるアクションです。環境問題解決・貧困撲滅を後押しすることができますが、作業の負担や栄養の偏りといった課題が残されているのも事実です。

フードドライブを実施している団体や自治体は増えてきているので、近くで開催されていたら足を運んでみるのもおすすめです。まずは知ることから始めれば、次にご自身でできることが見えてくるはずです。

<参考文献>
消費者庁「食品ロス量について」
厚生労働省「生活困窮者自立支援制度の現状について」
環境省「フードドライブ実施の手引き」
農林水産省「フードバンクの現状について」
フードバンクさが
フードバンクかながわ
消費庁「平成29年度徳島県における食品ロス削減に関する実証事業の結果の概要(ポイント)」