【ジェンダーギャップ指数とは】日本の課題・取り組み・2022年最新データを解説

”男女平等”や”女性の活躍”といった言葉は数年前からよく耳にするようになりました。SDGsの目標のひとつにも「ジェンダー平等を実現しよう」と掲げられており、さらに注目を集めています。

とはいえ、男女格差は目に見えない部分で発生していることも多く、実態が分かりづらい部分もあります。そこで、各国の男女不平等を数値化したのが「ジェンダーギャップ指数」です。

この記事では、ジェンダーギャップ指数について詳しく見ていき、さらには日本における男女格差の現状を明らかにしていきます!

目次

ジェンダーギャップ指数とは?

ジェンダーギャップ指数とは、各国における男女格差を数値化したもので、世界経済フォーラム(WEF)*が毎年公開しています。賃金格差や政治への参加など、複数の観点から男女格差を図ることで、各国が男女格差を把握し改善することを目的としています。

世界経済フォーラムとは、世界が直面している問題改善に取り組むことを目的にスイスで設立された民間非営利の団体。世界各国の企業や団体からの寄付金を財源にし、年次総会や地域サミットなどを開催する。

ジェンダーギャップ指数が低い=男女格差が大きい

ジェンダーギャップ指数は、0〜1で評価されます。1を男女完全平等とし、0を男女完全不平等とするため、1に近い数値であるほど男女格差が小さく、0に近くなるほど男女格差が大きいことを示します。日本のジェンダーギャップ指数を紹介する前に、ジェンダーギャップ指数が低いとどのような問題が発生するのか見ていきましょう。

2022年の日本のジェンダーギャップ指数は世界116位

2022年7月に発表された「ジェンダーギャップ指数2022年」によると、日本の総合スコアは0.650で146カ国中116位という位置付けでした。前年と比較すると順位は4つ上がったものの、決して良い数字とは言えない結果になっています。

日本はほとんどの分野で数値が低い

ジェンダーギャップ指数2022年の日本の各分野の数値は下の通りです。

分野スコア順位
経済0.564121位
教育1.0001位
保健0.97363位
政治0.061139位

経済と政治の部分で日本は大きくスコアを落としていることが分かります。

特に政治分野に関しては0.061と低く、順位も139位です。また、教育と保健分野に関しては、スコアだけを見ると0.9超えと限りなく男女平等に近いように見えますが、この2つの分野は世界的にも差が出にくい部分であり、順位的には奮いません。

ジェンダーギャップ指数を決める4分野

ジェンダーギャップ指数は、

  1. 経済
  2. 教育
  3. 保健
  4. 政治

の4つの分野で構成されています。

各分野には2次指標が設定されており、経済には5つ、教育には4つ、保健には2つ、政治には3つと合計14項目あります。その各項目について指標を出し、総合指数をまとめて国のジェンダーギャップ指数を決めています。

ではなぜ4つの分野に分かれているのでしょうか。

4分野に分かれている理由

男女格差は、ある特定の分野で存在するのではなく、経済や教育、保健そして政治といったあらゆる面で存在しています。例えばほとんどの先進国では、男女平等に医療が受けられ、平均寿命も大きな差はありませんが、政治においては男性率が高い国が多く見られます。分野によって男女格差が生まれているのです。

これらの全ての分野で格差を減らす必要があるため、4つの基準が定められているのです。

ここからは、それぞれの分野について詳しく見ていきましょう。

1.経済分野

経済分野では、労働における男女平等が評価されます。経済分野の評価は、下の基準に基づいて実施されます。

労働参加率

生産年齢人口(16歳以上の人口から、高齢や病気などの理由で働けない人を除いたもの)に占める労働人口のうちの男女の割合。

同一労働における賃金

企業・団体内で同一の仕事をしていれば、同一の賃金を支給するという考え方を元にはかる、男女間賃金格差。

推定勤労所得

各国のGDPの絶対的な大きさと、男性の賃金に対する女性の賃金の相対的格差を用いて推計される。

管理的職業従事者

管理職の男女の割合。

専門技術の男女比

→専門技術職の男女の割合。

経済分野のトップ3位〜ワースト3位

トップ3位国名
1位ラオス人民民主共和国
2位バハマ国
3位ブルンジ

ワースト3位国名
1位アフガニスタン
2位イラク
3位イエメン

2.教育分野

教育分野の評価基準は下の通りです。

識字率

各国の人口の中で、文字の読み書きができる人の割合。

  • 初等教育(小学校)進学率
  • 中等教育(中学校・高校)進学率
  • 高等教育(大学・大学院)進学率

日本を始めとする先進国の識字率は比較的男女平等を達成していますが、大学や大学院の進学率になると男性の進学率がやや高くなるといった傾向があります。

教育分野のトップ3位〜ワースト3位

トップ3位国名
1位オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど
26カ国が1.0満点スコアで1位

ワースト3位国名
1位アフガニスタン
2位チャド共和国
3位コンゴ民主共和国

3.保健分野

保健分野は、「健康分野」とも呼ばれることがあり、男女間の健康に関する差を評価する物です。基準は下の2つです。

  • 出生時の男女比
  • 平均寿命・健康寿命の男女比

保健分野のトップ3位〜ワースト3位

トップ3位国名
1位1〜29.ブラジルやポーランドなど29カ国が0.98スコアで1位

ワースト3位国名
1位中国
2位インド
3位アゼルバイジャン共和国

4.政治分野

政治分野では、男女がどのくらい平等に政治に参加しているかを評価します。国会議員・閣僚・過去50年の首相の男女比を元に数値を出します。

  • 国会議員の男女比
  • 閣僚の男女比
  • 過去50年の首相の男女比

政治分野でのトップ3位〜ワースト3位

トップ3位国名
1位アイスランド
2位フィンランド
3位ノルウェー

ワースト3位国名
1位バヌアツ共和国
2位パプアニューギニア
3位イエメン

ジェンダーギャップ指数が低いと起こる問題

ジェンダーギャップ指数が低いと、

  • ・女性に対する暴力や人身売買といった被害が増える
  • ・賃金や雇用機会の不平等
  • ・教育の格差

といった問題が発生します。1つずつ見ていきましょう。

女性に対する暴力や人身売買といった被害が増える

ジェンダーギャップ指数の低さは、多くの場合女性に対する被害を引き起こします。女性が政治に参加できる環境がないことが原因で、女性の立場が弱くなり、声を上げることができなくなるからです。男女格差のひどい地域では、強姦や人身売買といった被害につながったり、宗教上の理由で女性器切除といった習慣が続いてしまう原因ともなります。

賃金や雇用機会の不平等

先進国で男女不平等が問題視される理由のひとつが、賃金や雇用機会の格差です。

OECD*が2019年に発表した統計によれば、OECD諸国での賃金の格差は13.6%にまで上ると言われています。OECD諸国にはヨーロッパ各国を含む先進国38カ国が含まれるので、発展途上国を含むと賃金格差はさらに大きくなると考えられます。

賃金や雇用機会の不平等には、産休や育休の制度が整っておらず女性が仕事を辞めざるを得ないといった制度の問題と、女性の能力を軽視する風習などが要因となっています。

OECDとは、Organisation for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)の略で、フランスに本部を持つ国際機関。国際経済全般について協議することを目的としている。

教育の格差

ジェンダーギャップ指数の低い国では、男女差別が教育の段階から発生していることがあります。ユニセフ協会によると、世界における中等教育では、男の子の就学率は65%であるのに対し、女の子の就学率は55%と男女格差が見られます。女の子が就学を得にくい理由は様々ですが、昔からの慣習によって女の子には教育が必要ないと判断されるケースや、国や地域の法律によって教育を受ける権利が保障されていない場合などがあります。

失われた機会:女子の教育機会の欠如が招く巨額の損失」と題された世界銀行による報告書によると、教育を受けられなかった女の子が職に就くことができる可能性は受けた者と比べ低く、収入も約半分になってしまいます。教育の格差はその後の生活に大きく影響する原因となるのです。

日本の課題や原因は?

日本のジェンダーギャップ指数116位という結果は、G7諸国の中では最下位で、99位の韓国や102位の中国など、ASEAN諸国よりも低い結果となっています。日本のジェンダーギャップ指数が低い主な理由を3つ見ていきましょう。

女性管理職の割合が低い

日本の企業で女性管理職の割合が低いのは、多くの人がイメージできると思います。「ガラスの天井」という言葉が使われるように、能力や実績があっても「女性」という理由で昇進しにくいことがあるのです。

この背景には、女性は出産や育児で仕事を離れることになってしまう可能性や、またそれに対する制度が整っていないことが原因として挙げられます。実際に帝国データバンクの2020年の調査によると、女性管理職割合は平均7.8%と、前年より微増しているものの、非常に低い結果が出ています。

女性の政治参加割合が低い

筆者作成(参考:WEF

WEFの発表では、日本の女性の政治への参加率の低さが指摘されています。国会議員の女性の割合はわずか9.9%、大臣の女性の割合は10%に過ぎず、未だ政治は男性によって成り立っているといっても過言ではありません。

また、女性の政治参加率は国会だけでなく市町村議会における女性議員の割合にも現れています。女性議員の比率が20%を超える都道府県は東京を含む4都道府県のみで、残りの44都道府県では20%以下となっています。

理系学部に進学する女性が少ない

日本の教育分野のスコアは高いものの、他先進国と比べ順位は低い結果となっています。その理由に、大学進学率の男女差が挙げられます。男女共同参画局によると、大学(学部)への進学率は、女子48.2%、男子55.6%と男子の方が7.4%ポイント高くなっています。

また、日本では「男子の方が理系に向いている」というステレオタイプが浸透しており、理系学部に女性が少なくなり、大学や院への就学率が低くなる要因となっています。その結果、研究者数の女性の割合も全体の約12%ほどと低くなっています。

これらの差によって、日本の教育分野の順位が低くなっているのです。

ランキング1位のアイスランドと日本の違いとは

ではここで、ジェンダーギャップ指数1位で12年間トップを守り続けているアイスランドと日本を比較してみましょう。

同一労働同一賃金が法律で義務化

アイスランドでは、2018年に男女間で異なる賃金を払うことを違法にする世界初の法律が整備されました。この法律によって、2020年からは25名以上の従業員がいる企業は、同一労働を行う男女に、同一の賃金を支払っているという証明書の提出が義務づけられました。証明できない場合は高額の罰金が課せられるという仕組みです。

世界最高レベルの育児休暇制度

アイスランドには育児休業精度が導入されており、父親も母親もそれぞれ3ヶ月の休暇を取得できます。取得しないと権利がなくなってしまうため、アイスランドでは父親の約9割が育児休暇を取得しています。一方で日本の父親で育児休暇を取得する人は1割ほどと言われており、男女格差が大きいことが分かります。

男女平等は教育から

アイスランドでは、2008年から全教育課程で男女平等についての授業をすることが義務化されています。男女間で違いのある教育や、性別差別に関わる記述のある教材を使用することも禁じられています。子供の頃から男女平等について学ぶことで、「ガラスの天井」といった文化が発生するのを防ぐことに繋がります。

このように、さまざまな面から取り組みを進めているため、高いジェンダーギャップ指数を達成しているのです。

では、日本はどのような取り組みを進めているのでしょうか。

ジェンダーギャップ指数を上げるための日本の取り組み

現在、日本はジェンダーギャップ指数が低いものの、政府・自治体・企業がさまざまな取り組みを行っています。

【政府】女性活躍推進法/イクメンプロジェクトの整備

2016年に安倍前首相がアベノミクスの3本目の矢として「女性の活躍」を取り上げ、「女性活躍推進法」を施行しました。この法律は、女性がより働きやすい環境を作るためのものです。

具体的には、

  • 女性の活躍推進に向けた数値目標
  • 女性の職業選択に関する情報

の公表を義務付けました。

また、政府が行っている取り組みにイクメンプロジェクトが挙げられます。その名の通り、男性が育児を行うことを推進していくプロジェクトです。

具体的には、男性が育児休暇を取得できるように働きかけるもので、未だ取得率は低いものの、10年前と比べて数%増加しています。

【自治体】「輝く女性活躍パワーアップ企業」登録制度

政府だけでなく、各自治体も女性が活躍できる社会づくりに取り組んでいます。鳥取県では、女性が活躍しやすい人材育成に取り組んでいる団体を登録、公表しています。団体名を公表することで、企業は女性が活躍できる環境整備に取り組みイメージアップにも繋がります。また、これらの取り組みに必要となる経費の補助も行われています。

【企業】育児休暇後に復帰しやすい環境を整備

女性が育児休暇後に復帰できる環境を整えることは、女性の活躍の場を広げるだけでなく、優秀な人材を確保するといった面で企業側にもメリットがあります。社内でグローバル化が進んでいる「楽天株式会社」では、産休や育児休暇後に社員が復帰しやすいよう、社内に搾乳室や託児所を設けています。他にもキャリアセッションや、産休前・復帰前のセミナーを実施するなど、サポートが充実しています。

ジェンダーギャップ指数上昇はSDGsの目標達成には不可欠

今回紹介したジェンダーギャップ指数は、SDGsとも大きな関わりがあります。ジェンダー平等はSDGsの目標のひとつにも定められており、男女格差を小さくすることで目標達成に貢献します。ここでは、SDGsについておさらいをし、特に関わりの深い3つの目標について紹介します。

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年の国連サミットで採択された世界共通の目標で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。2030年までに持続可能でより良い世界を目指すために掲げられた目標で、17の目標と169のターゲットで構成されています。さらには目標を解決していく上で、「誰一人取り残さない」ことを誓っています。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

​​17の目標のうち、SDGs目標5はジェンダー平等を取り上げています。性別による差別をなくし、男性と女性が対等に権利を持てる社会づくりを目指すための目標です。ジェンダーギャップ指数の4分野も目標5に大きく関わっており、実際にターゲット5.5には政治や経済について掲げられています。

5.5 政治や経済や社会のなかで、何かを決めるときに、女性も男性と同じように参加したり、リーダーになったりできるようにする。

女性が男性と同じように政治や経済に参加しジェンダーギャップ指数を上げることは、男女平等に近づけることであり、目標5の解決に貢献します。

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」は、世界からあらゆる面での不平等をなくすことを目標としています。性別に関わらず全ての人が社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすることがターゲットに綴られており、男女不平等をなくすこともそのうちのひとつです。

ジェンダーギャップ指数を上げるには男女平等な社会を作るための制度が不可欠であり、これを進めることは、人や国の不平等をなくすことに繋がります。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」は、誰もが法律や制度によって守られる平和な世界実現のために掲げられている目標です。ターゲット16.1は以下のように定められています。

16.1 あらゆる場所で、あらゆる形の暴力と、暴力による死を大きく減らす。

ジェンダーギャップ指数が低いと起こる問題で紹介したように、男女不平等は暴力といった女性への被害をもたらします。女性を含む誰もが声を挙げられる社会を実現することで、平和な世界を達成することができるのです。

まとめ

ジェンダーギャップ指数は、各国の男女平等・不平等を目に見える形にするための重要なものさしです。ジェンダーギャップ指数が低いと、女性への被害が増えたり賃金の不平等が発生するなど、さまざまな問題が発生します。

今回紹介したように、日本のジェンダーギャップ指数は決して誇れるものではありませんが、政府や自治体、企業が取り組みを進めている最中です。ジェンダー問題の解決には社会の在り方や制度に変革が不可欠で、時間がかかるからこそ、今から行動を起こすことが重要なのです。

<参考文献>
世界経済フォーラム(WEF)
OECD
ユニセフ協会
失われた機会:女子の教育機会の欠如が招く巨額の損失
ジェンダーギャップ指数2021年
帝国データバンク市町村議会における女性議員の割合
WEF
内閣府男女共同参画局
男性の育休取得の現状-2020年は過去最高で12.7%、5日未満が3割、業種で大きな差
イクメンプロジェクト
厚生労働省

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)