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グリーン成長戦略とは?14の重点分野と取り組み事例も

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「グリーン」という言葉は、緑・緑色といった意味から、植物全般をさしたり「緑化する」といった使われ方を経て、近年は最早環境用語として定着してきています。

植物の成長力を感じさせてくれる「グリーン」は、海などの恵みや爽やかさを象徴する「ブルー」と同様、カーボンニュートラルへの行動を後押ししてくれる言葉です。

そのグリーンを冠した「グリーン成長戦略」について、重要分野の取り組みや事例をみながら、一緒に考えていきましょう。

目次

グリーン成長戦略とは

グリーン成長戦略とは「2050年カーボンニュートラルに伴なうグリーン成長戦略」のことで、「2050年カーボンニュートラルを目指す」と宣言をした日本が、2020年10月に策定した計画です。

概要

グリーン成長戦略推進の中心である経済産業省は、関係省庁と連携して産業政策・エネルギー政策の両面から成長が期待される14重要分野を選定し、それぞれ「主な今後の取り組み」を挙げています。

さらに、目標を実現しようとする企業の前向きな挑戦を後押しする政策ツールとして、次の8つを挙げています。

  • 予算:グリーンイノベーション基金として2兆円等
  • 税制:カーボンニュートラル投資促進税制
  • 金融:グリーン交際金融センター等
  • 規制改革・標準化:成長に資するカーボンプライシング ※ 等
  • 国際連携:東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク ※ 等 
  • 大学における取り組みの推奨等
  • 2025年日本国際博覧会
  • グリーン成長に関すつ若手ワーキンググループ
カーボンプライシング( carbon pricing )

炭素に価格を付けること。排出量取引などに使用するなど、数値化することで削減への対応を促そうとするもの。

「カーボンプライシング」とは?(資源エネルギー庁)
ビヨンド・ゼロ( beyond-zero )

0(ゼロ)を超えること。ここでは、カーボンをニュートラルにするだけでなく、さらに過去のストックまでなくそうとする試み。「東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク」では、環境関連の国際会議を集中的に行う。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 (METI/経済産業省)

また、それぞれの分野の目標を2050年までに達成すると、国民生活にどのようなメリットがあるかも述べられています。

実行期間

グリーン成長戦略は、カーボンニュートラルの最終的なゴールを2050年としています。

しかし、分野によってはこれまでの調子では達成が危ぶまれるものもあり、2030年までの中間目標値が示されている場合もあります。例えば、船舶分野において2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、前提条件としてゼロエミッション船(温室ガス効果排出ゼロの船舶)の運行が実現されなければなりません。そのため、その運航の実現を2028年としています。

詳しくは後の章でもお話しします。その前に、この戦略が必要とされる背景についてみていきましょう。

グリーン成長戦略が必要とされる背景

2020年以降、地球温暖化とそれを原因とする異常気象や災害などの多くの問題が、地球規模で発生していることはご存じの通りです。その原因・背景、そして目指すべき方向を整理してみましょう。

環境問題の深刻化

<二酸化炭素総放出量のイメージ>

カーボンニュートラルに取り組む国は増えています。しかしその取り組みは緊迫感がなかったのではと、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)はレポートで指摘しています。これは、温室ガス削減の方向性は理解したものの、危機感を持って短期的・中間的政策を指示されていなかったためと分析しているのです。

そしてこのままでは、2050年には世界で220億トンの二酸化炭素が排出されたままで、カーボンニュートラル達成は困難になると警告しています。

実は、2030年までの二酸化炭素排出削減量のほとんどは、現在使われている施設設備・技術によるものです。2050年までの目標は、これからの新しい技術投入を仮定して立てられています。つまり、2030年や2040年までに新しい技術を開発し、それを効率的に使うシステムを構築する必要があるのです。

今後は10年ごとの短期的な目標をしっかり見据えた取り組みが大切になってくると言うことです。

経済における「ゲームチェンジ」

経済産業省はグリーン成長戦略の概要の冒頭で、

温暖化への対応を経済成長の制約やコストとする時代は終わり、「成長の機会」と捉える時代に突入している。

グリーン成長戦略(概要)

と述べています。

そして、その成長のための研究開発方針や経営方針の転換などを「ゲームチェンジ」という言葉で表しています。

近年のコロナ禍で人流・物流が大きく停滞しました。

また、各地で治まる気配のない戦争・紛争は、多くの国にエネルギーや食料を他国に依存する不安を大きくしました。ロシアからの天然ガスに頼れなくなったEU、サハリンにおける事業プロジェクトからの撤退を余儀なくされた日本などです。

それらの状況を体験し、反省を加え、温室効果ガスを抑えるために経済成長を我慢するのではなく、むしろクリーンエネルギーの自給を促すような研究開発に投資し、技術開発を支援して、成果に結びつけられれば経済効果も十分に期待できるという方向を示したものが、グリーン成長戦略なのです。

グリーン成長戦略における14の重点分野と具体例

14の重点分野は、4つのエネルギー関連産業7つの輸送・製造関連産業3つの家庭・オフィス関連産業に大別されています。

ここからは、それぞれの目標・取り組み事項を表に整理しながら、取り組み事例もあげ解説していきます。

1.洋上風力・太陽光・地熱

分野目標・取り組み事項
洋上風力2030年までに1,000万kW2040年までに3,000万kW~4,500万kWという具体的な導入目標を明示することで、国内外の投資を呼び込むことを目標に掲げています。また、国内調達比率を60%確保できるようなサプライチェーンの強化を狙っています。
太陽光2030年の発電コスト:14円/kWhや、将来の世界市場5兆円の取り込みなどを目指しています。
地熱技術開発地域との共通理解が目標の柱です。

事例①:ポテンシャルを高い技術で支える八丁原地熱発電所;九州電力

出典:地熱発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー(経済産業省:資源エネルギー庁)

日本は世界有数の地熱大国です。地熱資源量は、アメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位に位置しています。

ここで紹介する八丁原地熱発電所は、国内最大規模の地熱発電所です。大規模な操業を支えるために、遠距離からの運転や計器の監視する技術が開発され、普段は無人運転をしています。無人運転により、車両の出入りを最小限に抑えていることは、この地熱発電所がある阿蘇くじゅう国立公園特別地域の環境にも貢献しているでしょう。

地熱発電は、天候に左右される太陽光発電、天候に影響される風力発電に比べ、設備利用率が高く、二酸化炭素排出率が低いため、ポテンシャルの高い分野です。

2.水素・燃料アンモニア

分野目標・取り組み事項
水素日本の持つ技術に強みを基に、早期商品化・国際競争力・安定供給などの点を強化する。
燃料アンモニア水素と同様の目標に加え、東南アジアの石炭火力に混焼技術を導入し、約5,000億円規模とも見込まれる燃料アンモニア市場を獲得する。

事例②:エマルジョン燃料って?;日本環境保全株式会社

画像出典と引用:日本環境保全株式会社

日本環境保全株式会社は、水素・アンモニア燃料を利用した燃焼技術を開発している企業です。この企業が開発したエマルジョン燃料は、乳化剤を使わずに使用燃料中のオイルを分散させた燃料です。エマルジョン燃料を活用することで、使用燃料を削減させることができます。

また、非常に細分化されて完全燃焼するので、煤が発生しない容易に高温に達するので燃焼に使われる空気量も少なくて済むなどのメリットも持っています。

3.次世代熱エネルギー

安価な合成メタンの供給と、合成メタン注入による都市ガスのカーボンニュートラルが目標の柱です。数値目標も明示されていて

  • 2050年までに液化天然ガスと同等のコスト(40〜50円/㎥)を目指す
  • 都市ガスの既存インフラに合成メタンを90%注入する。

が挙げられています。

事例③:メタネーション地産地消モデル開始;西部ガス・九州大学他

メタネーションとは、水素と二酸化炭素から都市ガス原料の主成分であるメタンを合成する技術です。

このプロジェクトは、西部ガス株式会社をプロジェクトの総括者として9つの企業や団体がかかわり、2023年にスタートしました。

事業内容の特徴は

  • 地域の再生可能エネルギーの余剰電力
  • 近隣工場から発生する副生水素・未利用二酸化炭素

を有効活用したメタネーションであることです。排ガス等の利用なので、大気中の二酸化酸素量は増加しません。

環境省から「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発実証事業」にも採択され、2025年の実証運転を目指しています。

4.原子力

この分野では今後の取り組みとして、2030年までに高温ガス炉における水素製造技術を確立することを挙げています。また「国際連携」「国際実証」といった表現が多く見られます。

事例④:テクネチウム99mの実用化;日本原子力研究開発機構(JAEA)

テクネチウム99mは、白金に似た外観を持つ銀白色の放射性金属です。体内投与した際に放出される放射線を測定して画像化したものを診断することで、がん等を発見することに利用されます。

JAEA は、2011年の東京電力福島原発事故以来研究・製造を止めていましたが、約10年ぶりに研究用原子炉を再開させました。原料の希少価値・高エネルギー率・原発事故を考慮すると、国際的な理解を得ることはとても重要と言える分野の事例です。

JAEA

Japan Atomic Energy Agency;原子力に関する研究と技術開発を行う国立研究開発法人。

5.自動車・蓄電池

分野目標・取り組み事項
自動車乗用車・商用車・大型車についてそれぞれ2030〜2040年の目標を設定する。特に乗用車については、2035年までに新車販売における電動車の割合を100%にする。
蓄電池2030年までに・国内車載用蓄電池の製造能力を100GWh・家庭・業務・産業用蓄電池の累積導入量を24Whする。

国内の電動車導入は、地域のインフラ状況や価格の問題があり、諸外国に比べて伸び悩んでいます。自動車産業は日本の主力産業であり、さらなる努力が期待されています。

事例⑤:環境負荷ゼロ社会を目指す<Triple Action ZERO>:HONDA

ホンダでは、

  • カーボンニュートラル
  • クリーンエネルギー
  • リソースサーキュレーション

の3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action ZERO」を起ち上げ、短期・長期両方の数値目標をあげて取り組んでいます。

電動車の数値目標は下のように設定されており、コロナ禍後二輪車・四輪車ラインナップも拡大されつつあり、販売台数も増えています。

6.半導体・情報通信

この分野では、2040年までにカーボンニュートラルを達成することが目標とされています。特にデータセンターの研究開発支援が挙げられています。

事例⑥:グリ-ンデータセンター構想と取り組み;経済産業省

ここでは、グリーン成長戦略で求められる「グリーンデータセンター」について少し詳しくお話ししましょう。

近年、社会・経済を支えるデジタルインフラである通信デバイスやAI需要が爆発的に高まっています。このデータ処理に必要な電力も大きく、このままでは2030年には使用を制限しなくてはならなくなる恐れが出てきたのです。

そこで環境への影響に配慮した、スペースや消費エネルギーの抑制されたデータセンターの開発が急務となっているのです。

経済産業省は、次世代グリーンデータセンター開発プロジェクトで、40%以上の省エネ化を目指しています。また国内立地によって、データ通信速度を上げ、遠隔・非対面・非接触のサービスの実現を目指しています。

7.船舶

画像出典:https://www.mlit.go.jp/common/001377661.pdf(国土交通省)

この分野では、2028年までにゼロエミッション船(温室効果ガス排出ゼロの船舶)の商業運行を目標としています。

国土交通省は、できるだけ早い実現に向けて「国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ」を作成し、関連企業・団体を巻き込んで取り組んでいます。

事例⑦:水素エンジンゼロエミッション船;日本財団

上記の国土交通省のプロジェクトの関連企業の1つ日本財団では、水素エンジンゼロエミッション船の運行に向けて、コンソーシアム ※ を組んで開発を始めています。

コンソーシアム

共同体。ここでは複数の企業から組織される統一サービス体制。

2023年には、タグボート・エンジン発動機・研究開発センターを柱に検討と実証に取り組んでいます。水素エンジンに関するノウハウを蓄積し、今後は大型ゼロエミッション船だけでなく、港湾施設全般に応用することを目指して研究を進めています。

参考:水素エンジンゼロエミッション船実証運航コンソーシアム | 日本財団

8.物流・人流・土木インフラ

分野目標・取り組み事項
物流・物流高速道路・港湾・空港・ドローンなどをカーボンニュートラルに向けて整備する。
土木インフラ安全で環境に配慮した作業性能を持つ革新的建設機械を普及させる。

国土交通省ではこれらの目標を達成するために「カーボンニュートラルポート形成計画」や「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン」を策定し、社会実装を目指しています。

この分野においてはまちづくりとの連携が大切になってきます。公共交通の利便性を向上させながら、脱二酸化酸素輸送システムを整備する必要があります。

事例⑧:ドローン大活躍!;NTT docomo sky

近年脚光を浴びるドローンは、過疎地や危険個所への運行で効率的な働きをするばかりでなく、カーボンニュートラルに直接的にも間接的にも活躍しています。

株式会社NTTドコモは、AIドローンで、農場管理を行う事業を行っています。

空撮によるデータを解析し、必要な所にピンポイントで詳細調査や水・農薬の散布ができるので、時間や労働負担の軽減を図れるだけでなく、環境保全にも貢献しています。

カーボンニュートラル化の実現に向けて、ドローンのさらなる進歩と普及が期待されます。

参考:ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.4.0(検討会)(国土交通省)

9.食料・農林水産業

この分野では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性を両立させる革新的な技術が求められています。具体的に、農・林・水産の各領域で2040年までの取り組みが明示されています。

特に

  • 人工林の循環利用
  • 再造林・木材使用の拡大
  • 高層木造の技術確立

など、林業に関する文言が多く見られます。事例で詳しく紹介しましょう。

事例⑨:森林管理・木材活用でイノベーション;林野庁

樹木は二酸化炭素を吸収して成長し、木材は長期間炭素を貯蔵することができます。林野庁はこの原点に立って林業の成長産業化を進めています。

木材は、貯蔵能力を持つ上に、鉄などの資材より製造時のエネルギー消費が少ないというメリットもあります。また、木質バイオマスをエネルギーとして利用すれば、化石燃料を代替できます。マテリアル素材として開発が進めば、電子基板や車両の内外装にも利用でき、プラスチックの代替にもなると期待されています。

林野庁では、排出削減と吸収・固定の2領域で中間目標を明記した工程表を作成し取り組んでいます。賛同・協賛する企業も募集し、グリーンパートナーとして認定するなど、企業の参加を奨励しています。

このような林野庁の取り組みは、地方創生推進にもつながると期待できるのではないでしょうか。

10.航空機

ここで柱になっているのは、航空機の電動化に向けたコア技術の研究開発です。

電動化された電池・モータ・インバータ等を2030年以降に段階的に搭載することを目指しています。

その背景には、航空機が運輸産業の中でも二酸化炭素の排出量が多いという現状があります。自動車業界が電気自動車への移行を加速する中、航空業界にも電動化や循環型燃料の使用が求められているのです。

しかし、コアな部分だけでなく空港施設や周辺のインフラも視野に入れた開発も不可欠です。自動車・船舶分野とも連携を図りながらの推進が期待されます。

事例➉:2050年SAF70%!;ANA(全日本空輸)グループ

SAFSustainable Aviation Fuel :持続可能航空燃料)は、バイオマスや廃食油、ごみなどを原料としています。そのため、二酸化炭素の排出量の大幅な削減が期待できます。また既存のインフラを活用できるというメリットもあります。

ANAグループは、2050年にはSAFの活用を70%に増やすことで、カーボンニュートラルを実現しようとしています。

ANAの強みの1つに、国際的ネットワークとのつながりがあります。

RSB ※ のメンバーにもなっていて、海外の情報やデータを活用したり、制度作りに携わったりしています。

RSB( Roundtable on Sustainable Biofuels:持続可能なバイオ燃料のための円卓会議

バイオマス由来の燃料に対し、環境や社会への影響に配慮した原材料の生産・加工・輸送を実現するために作られた非営利組織。

RSB

11.カーボンリサイクル・マテリアル

分野目標・取り組み事項
カーボンリサイクル二酸化炭素の分離・回収技術の開発・実証を進め、低価格かつ高性能なCO2吸収型コンクリート、CO2回収型セメントなどの製造を目指す。
マテリアルゼロカーボン・スチールの実現に向けた技術開発・実証の実施。

ゼロカーボン・スチールとは、文字通りCO2排出ゼロで作られた鉄のことです。革新的な金属素材が開発されて軽量化・高強度化が進めば、長寿命の住宅や軽量化による高速輸送機器も実現し、さらなるカーボンニュートラルにつながります。

事例⑪:国内最大手のゼロカーボン・スチールへの挑戦;日本製鉄

日本最大手の鉄鋼メーカーである日本製鉄は、早くから独自のカーボンニュートラルビジョン「 Make Our Earth Green 」を持ち、ゼロカーボン・スチールへの挑戦を始めています。

開発しているのは、

  • 高炉水素還元製鉄
  • 100%水素直接還元プロセス
  • 大型電炉での高級鋼製造

の革新技術です。

「季刊ニッポンスチール」には、マテリアルの技術解説ばかりでなくカーボンリサイクルについての専門家へのインタビューや世界情勢の分析結果も掲載されていて、多角的な取り組みをしている様子が読み取れます。

参考:
日本製鉄 カーボンニュートラル ビジョン2050
ゼロカーボン・スチール への挑戦

12.住宅・建築物・次世代電力マネジメント

分野目標・取り組み事項
住宅・建築物省エネ基準適合率の向上に向けた規制措置の導入を検討。非住宅や中高層建築物の木造化促進。
次世代電力マネジメント分散型エネルギーを活用したビジネスの推進。デジタル技術や市場を活用した次世代電力網の構築。マイクログリッド(小規模電力網)によるエネルギーの地産地消

「分散型エネルギー」とは、比較的小規模で様々な地域に分散しているエネルギーの総称です。これらを消費地近くに配置することで、発電ロスを少なくしたり、災害時のリスクも減らしたりすることができます。

事例⑫:自営線マイクログリッドで脱炭素;長野県生坂村

ここでの事例は、企業ではなくエネルギーの地産地消に取り組む地域をご紹介します。

長野県生坂村は、自営線マイクログリッドを活用した村おこしが評価され、2023年に環境省の脱炭素先行地域に選定された村です。

自営線マイクログリッドとは、地方公共団体などが自ら敷設する電線とエネルギー供給源を結ぶ小規模電力網です。

生坂村では、太陽光発電・小水力発電・蓄電池を導入し、村の基幹産業であるブドウ圃場や公共施設等を中心に自営線マイクログリッドを構築しました。茅葺住宅など古民家にも配電され、古民家脱炭素リノベーションを実施しています。

参考:第3回 脱炭素先行地域の概要

近年は、地域の特徴を生かし、様々な形でエネルギーの地産地消に取り組んでいるところが増えています。

13.資源循環関連

この分野では、お馴染みになった5つのR( Reduce・Renewable・Reuse・Recycle・Recover )ごとに取り組みを説明しています。特に目を引くのが、「2030年までにバイオプラスチックを約200万トン導入」に力を入れていることです。「バイオマスプラスチック導入ロードマップ」も作成され、さらなる利用拡大を目指しています。

廃棄物処理施設を地域のエネルギーセンターや防災拠点として活用することも狙っています。

環境省では年度ごとに「バイオマスプラスチック導入事例集」を出しています。令和4年度版の事例の中から、すっかり身近になった不識布マスクの事例をご紹介します。

事例⑬:ネピECOバイオマスク;王子ネピア株式会社

バイオマスプラスチックは、原料の植物が成長過程でCO2を吸収するので、焼却時にCO2が発生しても、大気中のCO2が増えるわけではないという仕組みが成り立っています。

このバイオマスクは、耳掛けのゴム部分とノーズフィッターの部分を除く製品の80%がバイオプラスチックからできています。

そして顔に当てる製品であるため、柔らかい質感を出す技術開発を進めました。販路等の物流コストも見直し、より安価な製品を安定供給することを今後の課題にあげています。

14.ライフスタイル関連

この分野の統括的な目標は、快適なカーボンニュートラルに向けて一人一人の行動変容を促すことです。それが持続できれば、エコかつ快適なライフスタイルを実現することにつながり、地域に広がれば、健康・安心・安全な社会が確立します。

グリーン成長戦略では行動変容の手法として、ナッジ・デジタル化・シェアリングをあげています。耳慣れない「ナッジ」という手法事例をご紹介しましょう。

事例⑭:クールチョイスリーダーズアワード「コロンブスの卵賞」受賞;糸井川氏の照明スイッチ

ナッジとは「背中をそっと押す」といった意味で、社会生活においては「決断の際のそれないサポート」を指します。無理なく自発的な行動変容を促す手法、という事です。

糸井川氏のアイデアは、「人はズレているものを不快に感じやすい」という心理的特徴を応用したスイッチシールです。「思わず消してしまう」行動をサポートするナッジです。

このスイッチシールは、原材料費も設置の手間もわずかで済み、学校・職場・公共施設などに広まってきています。

参考:コロンブスの卵賞 思わず消しちゃう照明スイッチ 糸井川 高穂 / 栃木県

【関連記事】ナッジとは?海外や日本の具体事例をもとにわかりやすく解説!

グリーン成長戦略の課題

14の重点分野についてお話ししてきました。各分野で企業が進んで研究や開発、実証を行っていることが分かっていただけたと思いますが、残っている課題も整理しておきましょう。

本当に経済効果に結びつくのか

14の重点項目の章を読んでいくと「ロードマップ」「プラン」「プロジェクト」「技術の開発」といった言葉がたくさん出てきました。方向性はよく理解できたものの、技術偏重を危惧する専門家もいます。

各分野から年度などの区切りに反省が出されて整理され、方向性の修正はなされているようですが、定量的な評価があまり見られません。14分野でもかなり広い領域にまたがっていますが、他の分野についてはどうなんだろう、と感じるのは筆者だけでしょうか。

環境省も冒頭で「2050年カーボンニュートラルの実現は、並大抵の努力では実現できない」と述べています。

「国民生活へのメリット」に示された数値や文言が「期待」で終わらないよう、経済効果へ強く結びつくメッセージが必要ではないでしょうか。

危ぶまれる世界情勢

ロシアのウクライナ侵攻で、それまでは消費が減少すると期待されていた液化天然ガスの新規投資が、アメリカやEUで決まりました。ロシア産ガスの供給途絶が各国にエネルギー危機感を増大させ、カーボン由来のエネルギーを復活させたり、再生可能エネルギー部門に投資するはずだった予算を化石燃料への費用としたりと、カーボンニュートラル戦略を後戻りさせてしまったのです。

そうしている間にも温暖化は進んでいます。

グリーン成長戦略とSDGs

最後に、グリーン成長戦略とSDGsの関連をみていきましょう。

SDGsは、環境・社会・経済の問題解決に向けて、2015年に国連総会で採択された17の国際目標です。2030年までの解決を目指し、169のターゲットが設定されています。

グリーン成長戦略は環境と経済の連携に直結する戦略なので、すべての目標達成に関連を持つといっても過言ではありません。しかしその中でも1番に関連をもつのが「SDGs目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とグリーン成長戦略

目標7には5つのターゲットが示されています。

その第2番目には「再生可能エネルギーの割合を大幅に増やす」とあります。グリーン成長戦略も重点分野の第1に「洋上風力・太陽光・地熱」分野をあげています。

続く第3ターゲットには「エネルギー効率の改善率を倍増させる」とあります。技術開発を目標の大きな柱とするグリーン成長戦略の目指すところです。

その方策として「クリーンエネルギー技術への投資促進」も明記されています。

日本が「グリーン成長戦略」推進の政策ツールとして、予算・税制・金融をまず最初にあげていることも、ここにつながっています。

グリーン成長戦略を推進することは、下の目標にもつながっていきます。

まとめ

グリーン成長戦略について、14の重要分野と各事例をあげながら、そしてSDGsとの関連についても一緒に考えていただきました。

残る課題もけっして小さくありません。しかしカーボンニュートラルへの動きは最早止めてはならない状況です。

14の分野の中には、専門的知識を持っていないと実感しにくいものもありますが、地域や個人の生活に直結する目標も見られます。応援したい企業があれば自分にできるかたちで支援したり、自分の行動をよい方向に変えられるヒントがあれば取り入れるところから、自分たちのグリーン成長戦略を始めませんか。

<参考資料・文献>
東京ビヨンド・ゼロ・ウイーク開催(資源エネルギー庁)
2050 年カーボンニュートラルに伴う グリーン成長戦略
2050年カーボンニュートラルに伴う グリーン成長戦略
グリーン成長戦略(概要)
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 (METI/経済産業省)
「カーボンプライシング」とは?(資源エネルギー庁)
日本環境保全株式会社
地域の原料を活用したメタネーション実証事業の開始について ;九州大学
医学診断用テクネチウム99mの実用化へ大きく前進(JAEA)
「次世代デジタルインフラの構築」 に関する国内外の動向
水素エンジンゼロエミッション船実証運航コンソーシアム | 日本財団
ドローンの活用事例を紹介!メリットや市場規模も解説
ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.4.0(検討会)(国土交通省)
航空機の運航における取り組み | サステナビリティ | ANAグループ企業情報
長野県生坂村 環境省の脱炭素先行地域に選定
「エネルギーの地産地消」に取り組む地域の例
バイオプラスチック導入事例集
環境 | 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
(資源エネルギー庁)
2 世界における新型コロナウイルス感染拡大の影響も含めた二酸化炭素排出動向
(国土交通白書2022)
統計|国際エネルギー
環境省『COOL CHOICE ゼロカーボンアクション30』
気候変動への「適応」を考える:肱岡靖明(丸善出版)
カーボンニュートラル:エネルギー総合工学研究所(技術評論社)
カーボンニュートラル:山﨑耕造(技報堂出版)
ビジネス屋と技術屋が一緒に考える脱炭素:江田健二・矢田部隆志(オーム社)
第4の革命カーボンゼロ:日本経済新聞社(日本経済新聞出版)
SDGs:蟹江憲史(中公新書)