池田将太
<略歴>
1998年 千葉県船橋市生まれ
小学校~高校までは野球だけやってました
2017年 麗澤大学に入学 2019年 途上国の開発支援活動に従事(ミクロネシア連邦) 小学校英語教育支援事業設立(千葉県柏市)
2020年 地域の小水力発電を行う社団法人を設立・理事就任
2021年 ボーダレス・ジャパンに社会起業家として参画
同年10月 ハチドリソーラー設立 代表取締役 就任
目次
introduction
「自然エネルギーが主電源の社会を創る」のビジョンを実現すべく、新しい事業形態に取り組むハチドリソーラー株式会社。太陽光パネル設置費用0円という、これまでの業界にない新しい風を送りこみました。代表の池田将太さんは、太陽光パネルを「つけない理由がない」となるまで身近なものにしたいと語ります。環境負荷を最小限に抑え、誰でも参加できる発電事業に迫りました。
設置費用が0円でエネルギーの地産地消が可能
–事業を立ち上げたきっかけについて教えてください。
池田さん:
大学生の時に、国際協力に取り組みながら「ボランティア活動の限界」を痛感し、社会問題をビジネスで解決しようと思い、社会起業家を志しました。当初はミクロネシア連邦という国で再生エネルギー事業をやろうと準備をしていましたが学生時代には金融機関から融資を受けられず、起業家としてボーダレスジャパンにジョインしました。
ボーダレスジャパンは、世界16カ国で47の事業を展開しているグループ会社でして、「社会問題を解決するためのビジネス」だけを手がけています。
私は起業家として参画し、自分の事業プランを会社に承認してもらい、出資を受ける形でスタートしました。昨年の10月からサービスをリリースして、8月に法人化しました。
ミクロネシア連邦と同じ島国である日本が今、火力80%の状態で電力をまかなっているので、今後のことを考えた時に再生エネルギーが主電源になることは絶対大切だと思っていました。そして、日本で作ったモデルを世界に展開することに挑戦したいという思いから発電事業をスタートしました。
環境負荷の少ない太陽光パネルを日本の建物の屋根に設置して、小さな家庭の発電所を日本中に増やしていきたいと思っています。
–ハチドリソーラーの太陽光発電事業の特徴について教えてください。
池田さん:
まず、初期費用0円で太陽光パネルを設置できることですね。お客様が最初に高額な費用を負担することなく始めることができます。
次に、日本で唯一太陽光パネルを国内で製造している長州産業さんのパネルを導入していることです。山口県で製造しているのですが、国産の太陽光パネルとそこで作った電気を自宅で使うという、部材とエネルギーどちらも地産地消にもこだわっています。
そして、サービスのバリエーションを幅広く持っていることです。太陽光だけのプランと、太陽光と蓄電池をセットにしたプラン、太陽光と電気自動車を蓄電池として使える「ソーラー+VH2プラン」などがあります。お客様の生活スタイルやご家庭の状況に合わせて、オーダーメイドで太陽光パネルのリースを提供させていただいております。
そのほか、お客様が発電した電気は月々の定額料金を払えば使い放題で、売電収入も全額取得できる形にしています。私たちはリース料金しかもらわない形ですね。
–初期費用0円というのはかなりインパクトがありますね。どのようにして、実現できたのでしょうか。
池田さん:
金融機関とアライアンスを組み、事業者側で高額な初期費用を負担し、月々定額で使用できる事業設計をしました。設置費用が100万円とか150万円になるとお客様のハードルは高くなるので、お客様の持ち出しなしで設置できるようにして、月々にお客様がお支払いいただく料金で10年ないし15年で回収していくシステムです。
ちなみに太陽光パネルの所有権は私たち事業者側にあるので、万が一台風などの災害でパネルが途中で壊れたとしても、無料で新品に交換させていただきます。
高額で購入して、何か問題が起きて修理代をまた支払うことになったら、「やっぱりつけなければよかった」と感じる人が多いと思います。
「お客様がつけない理由がない」となるサービスを作るのが、社会課題を解決する会社の使命なのかなと思っています。お客様というよりは、一緒に再生エネルギーを増やしていく仲間だと思って、「みんなで一緒に屋根を使って発電所を作っていきましょう」といったスタンスでサービスの輪を広げていきたいなと考えております。
環境に負荷をかけない完璧な発電方法はない
–実際のところ、太陽光発電が環境に優しいのか疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。
池田さん:
本来、安価な海外のパネルを輸入している同業者もいると思います。しかし、日本国内の再生エネルギーのマーケットは世界的にみて小さいので、撤退してしまう会社も多いのです。
そうして海外で作ったものが日本で廃棄になったら、リサイクルしにくく結局ゴミが増えてしまうことにつながりますよね。
このような背景が、私たちが長州産業さんの太陽光パネルを導入する理由です。壊れても保証があるので、修理して引き続き使っていき、撤去時に使えるパネルはリースで活用していきます。どんどん資源が循環していく体制を今後も考えていきたいと思います。
なおかつ、輸送距離が増えるとCO2の排出量も増えますよね。環境負荷が少ないという観点からも国内の長州産業さんと提携しています。
実は再生エネルギー業界には、「CO2ペイバックタイム」という考え方があります。発電設備の製造・廃棄時にCO2が発生しますが、実際に発電し始めてから削減できるCO2と相殺していくと、どれくらいの期間で回収しきれるかという考え方です。
例えば、原子力発電や火力発電ではずっとCO2を出しながらエネルギーを生み出しますよね。そうすると、一生CO2は回収されません。つまりペイバックタイムがないということになります。
一方、太陽光の場合だと、2年間太陽光発電を稼働させたら、製造・廃棄時のCO2を全て回収し切って環境価値を出し続けることができます。太陽光パネルって、30年以上使えると言われていますので、残りの28年以上ずっとCO2を削減し続けていくことができます。
さらに、太陽光パネルの95%以上がアルミとガラスという再生可能な部品の素材でできています。マテリアル的な部分で考えても、環境負荷は少ないと考えています。
現段階では、何も環境負荷を発生させない完璧な発電方法はありません。そこで完璧を求めるのではなく、今ある選択肢の中からベターを作っていくのが大切だと思うので、私は太陽光が環境に良いと思って事業をさせていただいております。
太陽光発電について正しく知ることから始めよう
–どうしたら太陽光発電がもっと普及すると思いますか?
池田さん:
私たちがお客様に伝えているのは、「太陽光パネルは電気代を削減する1つの家電製品」という考え方です。冷蔵庫や洗濯機って必要だから買うじゃないですか。同じように、太陽光も家電として家につけるの当たり前だよねっていうくらい、身近な存在になるといいのかなと思います。
そのためには、元々ある太陽光発電の良くないイメージを払拭する必要があると感じています。
例えば、サービスを立ち上げる時に50人以上の戸建て住まいの方にヒアリングをさせていただいたのですが、そこで一番お声として多かったのは「太陽光パネルは費用が高くてつけられない」といった声でした。住宅を建てたけど費用が高くて断念した方も多かったと思います。
また、太陽光=投資という考え方からくる、「お金くさい業界」のようなネガティブなイメージが広がっていました。
太陽光パネル設置の訪問営業のようなものが頻繁に行われていた時期もあって、本来100万円から150万円で設置できるものを300万円とか400万円で販売するという悪質な業者もすごく多かったんですよね。
そういう業者さんはどんどん淘汰されていっていますけど、やっぱりネガティブなイメージが未だに残っています。
あとは売電収入の考え方にも少し誤解があるようですね。過去と現在の売電単価だけを比較すると、当初の固定買取価格が42円/kWという設定に対して、2023年には16円/kWほどになるのではないかと言われています。
ただ、売電単価42円/kWの時代は設置に500~600万もの費用がかかっていて、元を取るのに時間がかかるから国が売電単価を引き上げていた背景があります。
現在は設置コストがかなり下がっていますから、固定で買い取る売電単価も比例して下がっているだけなので、儲からないというわけではないのです。
こういう正しい情報が伝わることも大事だと思います。
–自分に合った太陽光発電の選び方のポイントはありますか?
池田さん:
生活スタイルによって、適正なパネルの枚数や蓄電池を入れるかどうかが変わってきます。例えば、2世帯住宅にお住まいの方やペットを飼われている方、専業主婦の方がいる場合など、日中に電気を多く使う場合は太陽光パネルだけを取り付けて電力を有効活用することができます。
逆に共働きの方だと、日中家にいないことが多いと予想されるので、電気を蓄電池に貯めておいて夜活用する方が、電力会社から購入する電気は少なくなるでしょう。
このように、お客様の生活スタイルによって導入の仕方が大きく変わってくるので、お客様に合ったプランをしっかり説明して提案してくれる会社さんとお話をされるのがすごく大切かなと思います。
自然エネルギー100%の社会を実現するために
–今後の展望についてお願いします。
池田さん:
最終的には、再生可能エネルギーが主電源の社会を作っていかなければならないと思っています。そのためにまず「家を建てるなら必ずハチドリソーラーの太陽光パネルを載せよう」と思ってもらえるように、「太陽光発電=ハチドリソーラー」と言われるくらい認知を広げていきたいですね。
また、地域のビルダーさんと提携しながら、新築物件には全戸太陽光パネルを設置するようにコミットしたり、法人さんにも設置したりしてもらえるようなことを考えています。法人さんの社屋の屋根には結構十分なスペースがありますし、ハチドリソーラーなら個人のお客様向けのプランと同様に設置費用0円でスタートできます。
あとは、農場ですね。「ソーラーシェアリング」という、農地の上に背の高い架台を立てて太陽光パネルを設置する方法です。農業に迷惑がかからないように空間を使って発電させてもらうイメージです。
とにかく、環境負荷が少ない発電の形というのを日本中に広げていくところが今後のテーマですね。
ハチドリという鳥の話をご存じでしょうか。南アメリカの小さい鳥の話なんですけど、山火事が起きた時に、森の動物たちがみんな逃げていく中、ハチドリだけは自分の小さいくちばしで水を運んで山火事を消そうとするんです。当然、消えないんですよね。
でも、「その小さな一雫のような動きをみんながやったら、社会って少しずつ変わる」という思いを込めて、私たちの会社のアイコンにしています。
1つの家庭が太陽光パネルを設置して、エネルギー源を自然エネルギーに切り替えるって、世界的にみたらすごく小さなアクションだと思うんですけど、それが少しずつ地域で広がって、みんなが太陽光パネルをつけるのが当たり前になっていく。そんな社会変化が起きた時に、地球温暖化をはじめとしたエネルギーの課題というのはようやく解決できるのではないでしょうか。
–日本がモデルとなって、”小さな一雫”が世界に広がるといいですね。貴重なお話をありがとうございました。
ハチドリソーラー株式会社:https://hachidori-denryoku.jp/solar/