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Hidamari株式会社 | 多様性を認め、人を活かすシェアハウスで誰かの「陽のあたる場所」をつくりたい

Hidamari株式会社

Hidamari株式会社 代表取締役 林田直大さん インタビュー

Hidamari株式会社

林田直大

1987年熊本市生まれ。2005年佐賀大学入学後、在学中に世界30カ国のゲストハウスの視察。2012年熊本大学院在学中にコミュニティ重視型のシェアハウスの企画運営会社Hidamariを創業。2014年にシェアハウス情報メディアMAHOLOVAをはじめ、北海道から沖縄まで日本全国のシェアハウスをめぐり、地方のシェアハウス情報をまとめた。
現在、熊本/福岡/大分/大阪/奈良/東京/横浜/鎌倉・湘南/埼玉/千葉/栃木/長野/石川のエリアにて70棟のシェアハウスを企画運営。全国各地にシェアハウスコミュニティを広げるべく活動中。

introduction:

コミュニティ型シェアハウスを全国で約70棟(2023年9月現在)運営管理しているHidamari(ひだまり)株式会社。

「入居すればそれで終わり」ではなく、いかに入居者が心地よく暮らし、自分の器を広げられるか、「陽のあたる場所」誰かの居場所をつくりたいという思いを大切にしている会社のビジョンは、代表取締役林田直大氏の原体験が大きく影響しています。

今回は林田さんにシェアハウスをはじめたきっかけや、事業に対する思いなどをお聞きしました。

自分が受け入れてもらったように多様性を受け入れ、人を活かす場所をつくりたい

–はじめにHidamari株式会社のご紹介をお願いいたします。

林田さん:

弊社は、全国でコミュニティ重視型のシェアハウスを運営管理している会社です。

現在は、物件を借りて自社が運営している「シェアハウスひだまり」と、オーナーさんと一緒に運営している物件、約70棟を展開しています。

また、シェアハウスの運営をしたい方の相談にのることもあります。

《大阪のシェアハウス》

–林田さんがシェアハウスの運営を始めるまでの経緯をお聞かせください。何かきっかけなどがあったのでしょうか。

林田さん:

僕は高校時代、学校にあまり行っていなかった時期があるんです。

かと言って家にこもっていることもできず、毎朝家を出ては学校に行かず、外に自分の居場所を求めていました。

その中で、中学時代に所属していた卓球部の友達のところに卓球をしに行ったり、色々な地区から生徒が集まって来る塾で過ごしたりしているうちに、自分を快く迎え入れてもらえる場所ができました。

このときに、自分で動き出せば、与えられた場所でなくても居場所は作れると初めて気付きました。そういう場所では自分の器も大きく出来ると感じたんです。

その後、学校に行ってみると自分のクラスがちっぽけに見えて、それからは高校に通えるようになりました。

この経験のお陰で、大学に入ってからは活動的で楽しい生活を送ることができました。自分って、思っている以上にコミュニケーション能力が高かったんだと気づきましたね(笑)

そんなある日、一人暮らしをする僕のもとに中学の同級生が家出同然で転がり込んできたんです。そして「吉本の養成所に行って芸人になろう」と誘われました。一緒に暮らした1ヶ月の間にいろいろなことを考え、結局芸人の話は断ったので、彼は一人で吉本に行きました。

ただ、18歳で親と縁を切り、自分の夢に向かってすべてを投げ出し向かっていく彼をみて「自分がそこまで心血を注ぎ、やりたいことは何だろう」と考えるきっかけになったんです。もしかしたら、彼と一緒に芸人になってうまくいった人生が万が一あったかもしれない、でもそうではない道を選んだことで、ちょっとした彼への嫉妬もあったかもしれません。

そこから自分でも情熱を傾けられるものを見つけたいと、いろいろなことをはじめました。

《長野市門前町のシェアハウス「シンカイ」》

大学3年の夏に旅行で行った鹿児島で、ゲストハウスに泊まったのですが、そこでの経験が次のステップにつながりました。

古民家のような家で、必要なのは1,500円の宿泊代と300円の夕食代のみです。高校生、お年寄り、外国の方など色々な人が宿泊していて、皆でおしゃべりしながらご飯を食べました。

国や性別、年齢の違う人達と交流することで、ここでもまた自分の器が大きくなる感覚がありました。

居場所がなかった高校生の頃の自分や、やりたいことを探している大学生の自分が、多くの刺激を受けて大きくなる場面に遭遇し、僕がやりたいことは、そんな場所の提供なんじゃないかと思ったんです。

《ハンガリー・ブダペストのゲストハウス「アンダンテ」》

そこから、海外から来た文化であるゲストハウスを見るために大学を休学し、お金をためて、世界30カ国を周りました。

実際に現場で体験してみて「やっぱりゲストハウスをやりたい!」という思いが強くなりましたね。また、短い宿泊よりも長期滞在できるゲストハウスがいいなとも考えていました。

というのも、僕は1ヶ月くらいの長期滞在をメインにしていたこともあり、それだけいると家族のような感じになれるんです。1〜2泊だとこの関係を築くのは難しいですよね。

《ベトナム・フエのゲストハウス》

とはいえ、帰国後すぐにゲストハウスを開設することには踏ん切りがつかず…。大学院に進学した頃、ある日偶然に滞在期間が中・長期である「シェアハウス」というものを知りました。「自分のやりたかったことはまさにコレだ!」と思い、大学院を休学して起業に向かい動き出しました。2010年から2011年のことです。

–シェアハウスはまさに、林田さんの思いの詰まった場所なのですね。では、現在御社がどのような思いでシェアハウスを運営しているのか、ビジョンやミッションをお聞かせいただけますか。

林田さん:

弊社のビジョンは「陽のあたる場所をつくる」です。

僕は色々な人達に、心地よいと思えるような場所を作ってもらっていたので、今度は自分が皆を支え、気持ちよく過ごせる場所を作りたいと考えています。

そして、ミッションは「多様性を受け入れ、活かすひとを増やす」です。

一般的な不動産業の賃貸物件では、年齢や国籍、収入などで入居出来るかどうか決められる場合が多いんです。しかし「シェアハウスひだまり」では「こういう人がいたら楽しそう」とか「この人がいたら人生変わりそう」など、いろいろな個性を持った人に入居してもらい、それぞれの人を活かすことをモットーにしています。

ですから入居前に物件を見学していただき、沢山お話をさせてもらっています。

バリューはビジョン・ミッションを達成するために何を大切に行動していくのかを決めた7つの行動指針で一番大事にしていることです。

  1. ライフバリュー(ライフスタイル(生活様式)ではなく、ライフバリュー(人生価値)を提供する会社)
  2. 全てのステークホルダーの幸福度をあげる
  3. どんな時も誠実であろう
  4. いつまでも挑戦する弱者でいよう
  5. 待ち合わせ場所になる
  6. 活かすひとを増やす
  7. 自分たちがまず楽しもう

この行動指針に沿って事業を展開しています。

参照:Hidamari株式会社 会社概要

コミュニティ重視型のシェアハウスは新しい価値観と出会い、自分の器を広げる場所

–ではシェアハウス事業についてお聞かせください。なにか特徴などはありますか。

林田さん:

「シェアハウスひだまり」は、コミュニティ重視型のシェアハウスです。住人同士がどれだけスムーズにコミュニケーションがとれ、気持ちよく過ごせるかを仕組みとして追求しています。

そのためにひだまり独自の3つの制度を取り入れています。

1つ目に「ゆんたくカンパ金制度」があります。

「ゆんたく」とは、沖縄の言葉で「おしゃべり・団らん」という意味です。

住人が集まって飲み会を開き、お互いを知るきっかけや日々の生活についてコミュニケーションをとる場にしてもらっています。月一回の「ゆんたく」を推奨していて、そのためのカンパ金を支援する制度をつくっています。

2つ目は「ゴミ出し担当制度」です。

シェアハウスでは、住人が当番制でゴミ出しをするのは普通ですが、ひだまりでは住人の暮らしやすさを考え「ゴミ出し担当」という役割を作りました。

担当者にはサポート費用をお支払いして、共用部のゴミ出しや、管理などをしてもらいます。

ゴミ出しは面倒な業務なので人任せになってしまうことも多いと思うんです。ですからサポート費用を支払うことで、日常の苦情を減らし、担当者には感謝も集まる。皆が気持ちよく過ごすための制度です。

3つ目は「ひだまりフェロー制度」です。

これは、住人に弊社の業務を手伝ってもらう代わりに、家賃を減額する制度です。

現在お願いしている業務は、シェアハウスの定期巡回・入居希望社の内見案内・業者対応・退去の立会い・イベント時の撮影などです。

1回仕事を手伝ってもらうと3,000円、内見案内で入居を決めた方がいたらプラス1万円を家賃から減額しています。家賃全額分の手伝いをしていただいても構いません。運営側もよく知っている住人に仕事をしてもらえば安心ですし、助かります。

これは「今しかないシェアハウスでの時間を有意義に使ってほしい」という思いで作った制度です。シェアハウス内の仕事をすることで、住人同士の親睦が深まったり、自立したコミュニティが生まれたりします。この制度を通してシェアハウス生活をより楽しいものにしたいと考えています。

他にも「ハッピーシェアライフ保証」という制度も取り入れています。

弊社ではもともと、多くの賃貸物件で取り入れられている1年や2年以内の退去時の違約金を半年以内に設定しています。

しかし、入居を考えている方からは「シェアハウスに住んで馴染めるかどうか不安」という話を聞くのと「実際に住んでみたら、思っていたのと違った」という声もありました。

そこで入居後1ヶ月以内に退去を希望した場合、「入居された物件が、入居日に60%以上の入居率であること」「退去理由を、具体的に教えていただけること」を条件に、違約金無しで退去可能にしました。

商品に保証期間がついているのと同じように、シェアハウスにも保証をつけようと考えたんです。住んでみないとわからないことなど、頂いた意見を参考に改善を行い、安心な暮らしを目指しています。

–色々な制度があり、充実した生活が送れそうですね。では、シェアハウスにはどのような物件があるのでしょうか。

林田さん:

弊社のシェアハウスには2種類の運営形態があります。

1つは空き家を借り、シェアハウス用にリノベーションして家電や家具を揃え、住人を募集する形態です。運営はすべて弊社が直接しています。

もう1つは「シェアホスト」という制度です。

「シェアホスト」は空き部屋をお持ちのオーナーで、現在住んでいる自宅をシェアハウスにし、弊社と一緒に運営をしてもらう方です。

きっかけは空き部屋を貸したいという相談を受けたことなのですが、不動産会社はこのようなケースには対応しないことがほとんどなので、そんなニーズに答えたいと思い始めました。

空き物件をシェアハウス化するよりも手間がかかりますが、弊社も現地での管理が必要ないですし、物件をよくわかっている方が管理してくれれば安心です。

シェアハウスを始めるにあたっては、オーナーのコンセプトやライフスタイルを詳細にヒアリングし、目指すコミュニティ像に寄り添って決めています。

《江ノ島・鵠沼 etoile de mer(ヒトデ軒)》

日本には昔から「下宿」という文化がありますが、シェアホストと下宿の大家さんはちょっと違います。大家さんは絶対的な存在で、言われたことには従わなければいけないというイメージがありますよね。一方のシェアホストは単なる管理者ではなく、住人の一人として役割分担にも参加していただきます。弊社のシェアハウスはあくまで住人が主役なんです。

更に「シェアホスト」制度ならではの利点もあります。

オーナーの皆さんは特別な才能を持っている、人生経験が豊富という方が多いんです。

例えば、世界的なフラワーデザイナーの方や、熊本の「赤ちゃんポスト」を立ち上げた看護師さんなどがいらっしゃいます。

そこでは単にシェアハウスに住むということにとどまらず、オーナーの人柄に触れ、色々な話を聞いたり経験できたりする付加価値があるんです。

《フラワーデザイナー ガブリエレさん》

また、今までの不動産物件は立地と築年数で家賃が決まっていました。「シェアホスト」では、住んでいるオーナーにフォーカスして家賃が決められます。そのため、新しい価値を生み出せると考えています。

シェアハウスは入居してからが大事。理想のシェアハウスをつくりたい!

–入居者はどのような方が多いのでしょうか。また運営で難しいことや課題などはありますか。

–林田さん:

入居者に共通しているのは、自分のことがわかっていて自立している人が多いということでしょうか。自分がわかっているので他人との距離感もわかる。

日本人は他人の目を気にする傾向にあると思いますが、そうではなく、自分の価値観で何事も前向きに取り組んでいる人が多い気がします。

また、自分を変えたいと考えている人、生活費を抑えてやりたいことのために貯蓄をしたいと思っている人など、様々な住人が集まっています。

そんな中、住人もホストも考え方がそれぞれ違いますから、一緒に生活していく上での食い違いは必ずあります。

リラックスして気持ちよく住むには皆で共有し、守らないといけない最低限の規律は必要です。そこの調整が難しいですね。

ですから、なるべく出来ることは仕組み化し、スムーズに運営できるように心掛けています。

問題が起こったときは、基本的には住人同士の話し合いで解決してもらいます。しかし、それができない場合は弊社が中に入り、対話と今までの運営のノウハウで解決するようにしています。

弊社のシェアハウスは入居してもらってからが大事だと思っているからこその取り組みです。

–では最後に、これからどのように事業を展開していきたいか、展望をお聞かせください。

林田さん:

現在は賃貸物件をシェアハウスにしていますので、リノベーションはしているものの、それが入居者にとって100%の住みやすさかどうかは疑問です。

今後は自分達が物件を所有し、理想のシェアハウスを作りたいと考えています。

そして日本中にコミュニティのあるシェアハウスを展開したいです。

空き家や空室に困っている方や、いろいろな人達とのコミュニケーションで自分を変えたい、価値観を広げたいと考えている方は、ぜひご連絡をいただきたいと思います。

–「シェアハウスひだまり」はとても魅力的なシェアハウスですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

「シェアハウスひだまり。」公式サイト :https://sharehouse-hidamari.com/

公式インスタグラム :https://www.instagram.com/sharehouse_hidamari/