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ヘアドネーション(髪の毛の寄付)のやり方は?条件や送り先も紹介!

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あなたの髪が、誰かの笑顔と希望に変わる。

ヘアドネーションは、病気や脱毛症などで髪を失った人のために、自分の髪を寄付するボランティア活動です。年齢を問わず、外見を大きく左右する髪を失うと、重い精神的負担となる可能性があります。

ヘアドネーションは、そうした人々が自信を取り戻し、社会復帰を果たすための有効な支援の1つです。ヘアドネーションのやり方や条件、送り先などについて知り、より良い社会のために、あなたができることを考えてみましょう。

ヘアドネーションとは

ヘアドネーションとは、主に脱毛症や抗がん剤治療による脱毛などで髪を失った人々に、天然の髪で作ったウィッグを提供する活動です。髪を失った人々や髪のない人々が自信を持ち、普段の生活や社会での活動がしやすくなるように支援します。

誰に役立つ?

ヘアドネーションの活動を行なっている団体の多くは、病気などで髪を失った人々に、無償で「メディカルウイッグ」を提供しています。メディカルウイッグとは、医療用ウィッグのことで、脱毛症や抗がん剤治療による脱毛などで髪を失った人のために作られています。

また、ヘアドネーションの活動を行なっている団体の多くは、子どもだけでなく、大人にもメディカルウイッグを提供しています。ヘアドネーションによって作られたメディカルウイッグは、子どもはもちろんのこと、それを必要とするすべての年代の人々に、心強い支援となっているのです。

【小児がんと診断された人数(2019年罹患数)】

【全国がん登録における小児・AYAがんの年齢階級別罹患率(2018年)】

歴史

ヘアドネーションの歴史は、1970年代にアメリカで始まりました。当時、アメリカでは、抗がん剤治療による脱毛が問題視されていました。抗がん剤治療を受けると、髪の毛が抜け落ちてしまい、外見や自信を失う患者が多かったからです。

そんな中、1970年に、アメリカのある高校生が、自分の髪の毛を脱毛症の女性に寄付したことがきっかけとなり、ヘアドネーションの活動が広がりました。

日本では、1990年にNPO法人「Japan Hair Donation & Charity(JHD&C)」が設立され、ヘアドネーションの活動が始まりました。ヘアドネーションの活動は、日本でも徐々に広まり、現在では全国に多くのヘアドネーション団体があります。

「髪を送らない支援」の方法も!

もちろん、自然なウイッグを作るためには、天然の髪が材料として必要です。しかし、ウイッグを作る髪は集まっているけれども、資金が不足しているために「寄付された髪からウイッグを作るまでに時間がかかってしまう」という問題を抱えている団体もあります。

また、ヘアドネーションをしたいけれども、十分な長さに伸ばすことが難しい人もいます。そのような場合、髪ではなくお金を寄付するという支援の方法もあります。

多くの団体がヘアドネーションと同時に、寄付金も受け付けています。支援が必要な人に無償でメディカルウイッグを届けるためには、ウイッグを作る資金も必要なのです。

次の章では、近年ヘアドネーションが注目されるようになった背景を考えてみましょう。*1)

ヘアドネーションが注目される背景

【ぐんま国際アカデミー高等部:女子高生ヘアドネーション同好会の活動】

近年では、芸能人やスポーツ選手などの著名人がヘアドネーションを行うことも増えています。著名人のヘアドネーションの報道は、認知度を高めるだけでなく、社会的な関心を高めました。

その他にも、ヘアドネーションが注目されるようになった背景にはいくつかの理由があります。

SNSの普及

SNSの普及により、ヘアドネーションに関する情報や活動が、より多くの人に共有されるようになりました。また、SNSを通じて、ヘアドネーションに賛同する人が増えていったことも、注目度の高まりにつながっています。

加えて、SNSを通して著名人や有名人によるボランティア活動への参加が知られるようになり、多様なボランティア活動の認知度向上につながっています。

社会におけるボランティア活動の拡大

インターネットやスマートフォンの普及により、ボランティア活動の募集情報がより簡単に見つけやすくなりました。また、ボランティア活動の参加方法も、多様化しています。

社会貢献やチャリティー活動に関心を持つ人が増え、ヘアドネーションにおいても、自分の髪を寄付することで、直接的な社会貢献ができるという認識が広まっています。

髪の毛の価値の再認識

近年、髪の価値が再認識されるようになってきました。また、美容技術の発展により、多様な髪のスタイルを楽しめるようになり、自由度が向上しました。

髪は、単なる物理的なものでなく、人の個性やアイデンティティを表現するものの1つと考えられるようになってきたのです。

このような風潮の中でも、がん治療やその他の病気によって髪を失うことは精神的にも大きな負担となります。ヘアドネーションは、これらの人々に自然な髪のかつらを提供し、自信を取り戻す手助けとなります。

これを読んでいるほとんどの人が、ヘアドネーションに関心を持つ「髪のある人」だと思います。では、髪を失うとはどのようなことなのでしょうか。次の章で、一緒に考えてみましょう。*2)

「髪を失う」ということについて考えてみよう

髪を失う原因はさまざまです。脱毛症や抗がん剤治療による脱毛など、病気が原因で髪を失う人もいます。また、加齢やストレス、栄養不足なども髪の毛の健康に影響を与え、髪を失う原因になることがあります。

しかし、髪を失うということは、多くの人にとって生活に大きな影響を与える出来事です。髪を失うと、どのような変化が起こるのか考えてみましょう。

自己イメージの変化

髪を失うと、外見が変わったことで、周囲の人が自分のことをどう思うか、自信がなくなることがあります。顔の一部でもある髪は、自分の外見やアイデンティティを決める大切なものです。髪を失うことで、人前に出るのが嫌になったり、自分自身を好きになれなくなったりすることがあります。

社会的な評価への影響

髪を失うと、社会的な評価や扱いの変化を感じることがあります。髪は、長い歴史の中で多くの場合、美しさや若さの象徴とされてきました。

髪を失ったことで、他人からの評価や扱いが変わる、または変わったのではないかと不安になる可能性があります。これにより、自己評価や社会的な関係に影響を及ぼすことがあります。

日常生活の制約

髪を失うと、日常生活においてさまざまな制約を経験することがあります。例えば、髪がないことによって頭皮の保護がなくなり、温かさが欠如したり、頭髪のない部分の日焼けに悩まされたりなどが挙げられます。

また、髪を失ったことによってヘアスタイルやヘアアクセサリーの選択肢が制限されることもあります。

心理的な健康への影響

髪は、多くの人にとって自己イメージアイデンティティの重要な部分であるため、髪を失うことは、

  • 自信喪失
  • うつ病
  • 不安

などの精神的健康の問題につながる可能性があります。

【関連記事】「ルッキズム」

外見で自分や人の価値を判断することは、倫理的に正しいこととは言えません。しかし、これまで続いてきた人間社会の文化や歴史の中で引き継がれてきた価値観は、例えそれが公正とは言えないものであっても、すぐに消し去ることは困難です。

もちろん、私たちはより公正な社会の構築を目指していきますが、その間にも髪を失った人のような少数派の人々に、現状での最適な配慮や支援を行っていくことも重要なのです。

このように、ヘアドネーションによってつくられる自然なウイッグは、多くの人の支えとなります。しかし、天然の髪でウイッグを作るためには、ヘアドネーションする側も条件を満たし、ルールを守って行う必要があります。次の章で、ヘアドネーションのやり方を確認しましょう。*3)

ヘアドネーションのやり方

髪を失うことは、誰にでも起こり得ることです。髪を失った人にとって、ウィッグは外見や自信を取り戻すための有効な手段です。

ヘアドネーションに参加を検討されている人は、まずはヘアドネーション団体のホームページなどで詳細を確認し、あなたのニーズに合った活動をしている団体を選びましょう。

ヘアドネーションの条件

メディカルウイッグを作るためには、一般的に、

  • 31cm以上の長さ
  • 完全に乾いている
  • 切り口を輪ゴムでしっかりまとめている
  • 髪の束は同一人物ごとにまとめている

の条件は必ずクリアする必要があります。ほとんどの団体が、カラーリングやパーマのかかっている髪、白髪のある髪も寄付できます。しかし、一部の団体では、子どもたちに自然で長持ちするウイッグを提供するために、カラー・パーマ・ブリーチ歴のある髪、白髪の混じった髪はNGとしていることもあります。

また、団体によっては、31cm以下の長さの髪でも寄付が可能な場合があります。

おすすめの団体・送り先

ヘアドネーションにより、必要としている人にウイッグを届ける活動を行っている団体をいくつか紹介します。

Japan Hair Donation & Charity(JHD&C)

【Japan Hair Donation & Charity(JHD&C)ロゴ】

JHD&Cは、2009年に日本で初めて「ヘアドネーション」を専門に行う団体として誕生しました。18歳以下の子どもたちのために、寄付された髪の毛で作った医療用ウィッグを無償で提供しています。

【送り先】JHD&C

〒530-0022

大阪市北区浪花町13-38 千代田ビル北館7A

NPO法人JHD&C事務局

つな髪

【つな髪 全国小児がん・こども病院支援ウィッグドネーションプロジェクト】

つな髪は、医療用ウィッグメーカーの株式会社グローウィングが運営する、18歳以下の子どもたちを対象とした医療用ウィッグの無償提供プロジェクトです。ヘアドネーションを通じて、医療用ウィッグの重要性や安心して使用できる品質のあり方を考え、医療用ウィッグ品質向上・医療用ウィッグを必要とされる方への理解と共に支え合う温かい社会作りを目指しています。

【送り先】つな髪

〒530-0001 

大阪府大阪市北区梅田3丁目3−45 マルイト西梅田ビル5F

 (株)グローウィング つな髪

HERO

【東北大学病院小児腫瘍センター センター長 呉 繁夫先生と破牙神ライザー龍】

HEROは、東日本大震災の被災地で、子どもたちにヒーローを通して元気と勇気を与える活動をしている団体です。幼稚園や保育園、児童施設などで交通安全教室や防犯教室などのボランティア活動(リュプロジェクト)を実施しています。

また、病気や怪我によって髪の毛を失った全国の子どもたちに、完全オーダーメイドの人毛による医療用ウィッグをプレゼントする「ヘアドネーションプロジェクト」を推進しています。

【送り先】HERO

〒981-8003

宮城県仙台市泉区南光台2丁目13-1

NPO法人HERO

ヘアドネーションプロジェクト係

手順と注意

ヘアドネーションは手順と注意事項をよく理解して、準備をしっかりとすることがとても重要です。あなたの寄付によって、社会に笑顔と幸せが増えるよう、ルールを守って行いましょう。

①美容室を決める

美容室を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。

  • ヘアドネーション団体と提携しているサロンかどうか
  • ドネーションカットの経験があるか
  • 料金がかかるか

②寄付する髪の長さを決める

ヘアドネーションに寄付できる髪の長さは、一般的に31cm以上です。髪の毛が短い場合は、もう少し伸ばしてから参加しましょう。

③髪を切る

ドネーションカットは、通常のカットとほとんど変わりません。ただし、以下のような点に注意しましょう。

  • 髪の毛は、シャンプーせずに、乾いた状態で切る
  • 髪の毛は、ゴムでしっかり束ねる
  • 髪の毛の毛先は、まっすぐで揃える(団体の指定があれば)

④ドナーシートに記入する

ドナーシートには、

  • 氏名
  • 住所
  • 電話番号
  • 生年月日
  • 髪の毛の色
  • 髪の毛の長さ
  • 寄付したきっかけ

などを記入する欄があります。無理のない範囲で記入しましょう。

ドナーシートは、ヘアドネーション団体のホームページからダウンロードできます。

⑤髪の毛を発送する

髪の毛は、ヘアドネーション団体に送ります。送付方法は、ヘアドネーション団体のホームページなどで確認しましょう。

簡易な包装で、追跡可能な方法で送ることが推奨されています。また、以下の包装はNGです。

  • ラップで巻く
  • アルミホイルで巻く
  • 台紙にテープで貼り付ける
  • ティッシュ・紙などで髪の毛を包む
  • 複数のドナーの髪をひとまとめにする

注意事項に留意して、髪の毛をゴムで括り、束にしてからビニール袋やジップロックなどに入れ、それを封筒やレターパックに入れて送りましょう。

⑥ボランティア証明書やサンキューカードを受け取る

ヘアドネーションに参加すると、ボランティア証明書やサンキューカードなどを受け取ることができる団体もあります。詳しくは各団体のホームページで確認しましょう。

ヘアドネーションを行なっているほとんどの団体は、社会貢献のために活動しています。せっかく寄付した髪が適切な状態で届かなかったり、ルールを守らないことによってスタッフに余計な手間をかけてしまったりしないよう、十分に注意してください。*4)

ヘアドネーションに関してよくある疑問

ヘアドネーションは一生のうちに多くても数回できる程度の特別なことですから、ほとんどの人が「よくわからない」と感じています。

ここではヘアドネーションに関して、よく寄せられる疑問を、わかりやすく解説します。

染めていても大丈夫?

先述したように、子ども向けのメディカルウイッグの場合は、カラーリングやパーマはNGです。しかし、その他の場合、カラーリングやパーマをしていても大丈夫です。

ただし、染料の種類や色によっては、ウィッグに反映されにくい場合があります。また、カラーリングやパーマを繰り返していると、髪の毛が傷んでしまい、ウィッグに使用できないこともあります。

どうしてほとんどの団体が31cmという基準を設けてるの?

ヘアドネーションで寄付される髪の毛は、ウィッグのベースとなる生地に使用されます。この生地は、髪の毛を二つ折りにした状態で織り込まれ、最後にスタイルを整えるのにカットされるため、髪の毛の長さが短いと、出来上がりに十分な長さを確保できません。

しかし、一部の団体では短い髪も寄付を受け付けています。短い髪の場合は、ショートスタイルのウイッグや刷毛の材料として使われます。

証明書は誰からもらえる?

ヘアドネーションの証明書は、寄付した髪の毛を受け取った団体からもらえます。証明書には、寄付した人の氏名や寄付した髪の毛の長さなどが記載されています。

また、感謝状(サンクスカード)の発行や、ドナー(寄付者)の名前をサイトに掲載するだけにとどめている団体もあります。簡易なものにしている理由は、少しでも多くの経費をウイッグ制作のために確保するためです。

どうしても証明書が欲しい場合は、あらかじめ各団体のホームページなどで確認し、発行に対応している団体を選びましょう。*5)

迷惑・意味がないと言われることもあるのはなぜ?

近年では、ヘアドネーションは、髪がない人々への支援というだけでなく、マイノリティである髪がない人々に対する無意識のバイアス※を助長する可能性があるという指摘があります。つまり、「髪のない人がそのままでも劣等感を抱くことなく普通に生活できる社会」を目指すべきであって、善意であってもウイッグを贈ることはウイッグを被ることを強要することにつながるという意見があるのです。

※バイアス

偏り、偏見、先入観などのこと。判断や行動に影響を与える、無意識のうちに生じる歪みや偏り。バイアスが強いと、適切な判断や行動ができなくなる可能性もある。

「髪がない」というマイノリティへの理解

確かに、髪を失った誰もが「ウイッグを被らなければ生活できない」社会ではなく、ウィッグを着用したい人もいれば、着用したくない人もいることを尊重できる社会を目指すべきです。髪の毛を失った人々・髪の毛がない人々が、ウィッグを着用しなければ社会生活を送ることができないという、マイノリティであるがゆえの「劣等感」を抱かないように、社会全体で配慮と理解を深める必要があります。

しかし、現状では社会はまだそこまで成熟しているとは言えません。今を生きている髪のない人にとって、社会がそこまで成熟するのを待つ時間を許容できるかは個人差があります。

もちろんウイッグを被る・被らないは個人の自由ですし、髪がなくても明るく幸せに生きている人々もいます。一方で、「髪がないことを気にしないで生活するべき」という強要もできません。必要としている人に、必要なものが届けられる、ということが大切なのです。

実際には、ヘアドネーションによって作られた自然なウイッグは、髪を失った人・髪がない人にとって、ほとんどの場合大きな支援になります。あなたの「誰かの役に立ちたい」と思う気持ちは、きっと誰かの笑顔につながるでしょう。*6)

ヘアドネーションとSDGs

「誰かの笑顔のために、髪を寄付する。」

ヘアドネーションの意義はそれだけではありません。ヘアドネーションは、持続可能な開発目標(SDGs)にもつながっているのです。

特に関係の深い目標を見ていきましょう。

SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を

がん患者や髪を失った人々にとって、自然な髪のウィッグは大きな支えになります。ヘアドネーションは、髪を失った人の精神的な健康と社会的な復帰を支援します。

SDGs目標10:人や国の不平等をなくそう

ヘアドネーションを通じて、髪の毛を失った人たちに自信を取り戻し、不平等を減らす手助けになります。これは、誰もが平等に幸せに暮らせる社会の実現につながります。

SDGs目標16:平和と公正をすべての人に

髪の毛は、人の外見やアイデンティティを大きく左右するものです。そのため、髪の毛を失うことは、大きなストレスや不安につながる可能性があります。

ヘアドネーションは、髪の毛を失った人に、ウィッグを提供することで、見た目や精神的な不安を軽減し、平和で公正な社会の実現に貢献するのです。

SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ヘアドネーションは、個人が自分の髪の毛を寄付することで、誰かの役に立つことができるボランティア活動です。ヘアドネーションは、個人と団体がパートナーシップで協力して、SDGsの目標達成に取り組む姿勢を示す、エシカルで公正な活動の1つなのです。

このようにヘアドネーションは、ただ髪を寄付するというだけでなく、SDGsの目標達成にも貢献し、世界をより良い場所にするための一歩でもあるのです。

>>SDGsの各目標に関する記事はこちらから

まとめ

【ぐんま国際アカデミー 女子高生ヘアドネーション同好会が寄贈した第一号ウイッグ】

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2022年の日本人の人口は約1億2,570万人です。そのうち、病気や脱毛症などの原因で髪を失っている人の割合は、約5%程度と推定されています。つまり、約630万人が「髪がない」状態であると考えられます。

髪がないことで、周囲から差別や偏見を受けることを恐れて、悩んでいる人や気にかけている人は少なくありません。また、髪がないことで、自分の容姿に自信が持てず、社会生活に支障をきたしている人も多くいます。

ヘアドネーションは、そのような髪のない人にとって大きな支援となります。ウイッグを着用することで、髪がないことを気にせず、社会生活を送ることができます。

また、ウイッグを着用することで、希望と自信を取り戻し、自分らしく生きられるようになる人もいます。

しかし、ヘアドネーションはあくまでも外見的な支援です。髪のない人が本質的に幸せに生活するためには、社会全体の意識改革も必要です。髪の有無で人を判断するのではなく、その人の内面や人柄を大切にする社会を目指すべきです。

もちろん、髪がないことを自然なこととして受け入れ、悩んだり気にかけたりしない人もいます。そのような人は、自分の個性として髪の毛がないことを捉え、ポジティブに生きています。

ただ、誰もがそのようにポジティブになれるわけではありません。闘病により髪を失い、心のサポートも、外見のサポートも必要としている人は実際に多くいるのです。

髪を失ったことがない人にとっては、髪を失った人、髪のない人の気持ちを深く理解することは簡単なことではないかもしれません。しかし、「役に立ちたい」と思う気持ちは素晴らしいものです。

私たちには、持続可能で公正な社会を実現するために、今後これまでの「当たり前」をもう一度深く考え直す機会が、何度も訪れるでしょう。ヘアドネーションについても、その奥にある本質的な問題は、私たちひとりひとりがこれまでの「当たり前」にとらわれることなく、どうすべきかをしっかり考える必要があります。

私たち人間は、社会的な生活を送っています。髪のない人も幸せに暮らせる社会とはどのようなものなのでしょうか。

より良い未来のために、このような繊細な課題にも真摯に向き合い、身近な人はもちろんのこと、どこか遠くで支援を必要としている誰かのために、今と未来に、何が本当に必要なのかを考えることが大切です。社会に幸せな笑顔が1つでも多くなるように、無理なくできることから行動しましょう。*7)

<参考・引用文献>
*1)ヘアドネーションとは
がん研究振興財団『小児がんの患者数(がん統計)』
がん研究振興財団『がんの統計 2022』p.40
厚生労働省『令和2年(2020)患者調査の概況』
JHD&C『JHD&Cとは?』
日本経済新聞『「髪の寄付」善意つなげ 医療用ウィッグ、製作停滞も』(2022年8月)
船橋市『ヘアドネーションという活動をご存知ですか?』(2023年8月)
*2)ヘアドネーションが注目される背景
アートネイチャー『「女子高生ヘアドネーション同好会」ウィッグをお届けしました』(2020年1月)
アートネイチャー『ふやしたいのは、笑顔です。』
アデランス『あなたの「いつも」のために アデランスの医療用ウィッグ「ラフラ®」』
朝日新聞『小2男児がヘアドネーション 「病気の子に」同級生に話した思い』(2022年4月)
毎日新聞『ヘアドネーションで切った髪はどこに ウイッグになるまでの旅』(2022年12月
日本経済新聞『髪の毛の寄付「ヘアドネーション」 病気の子にかつら』(2016年11月)
*3)「髪を失う」ということについて考えてみよう
JHD&C『髪の毛を送る』
HERO『HAIR DONATION PROJECT』
ヘアドネージュ『ヘアドネーションとは』
福岡県『「ヘアドネーション」についてご存知ですか?』(2022年3月)
つな髪『全国小児がん・こども病院支援 ウィッグドネーションプロジェクト』
厚生労働省『収益力の向上に向けた 取組みのヒント 生活衛生関係営業の生産性向上を図るためのマニュアル 美容業編』
がん研究振興財団『がんの統計 2022』
SmileProject『スマイルプロジェクト』
*4)ヘアドネーションのやり方
NPO法人Japan hair donation&charity (JHD&C/ジャーダック) 公式X(Twitter)
JHD&C
つな髪『つな髪について』
つな髪
HERO『ABOUT US We will be your hero.』
HERO
JHD&C『髪の毛を送る』
HERO『DONATION OF HAIR』
ヘアドネージュ『ヘアドネーションをするには?』
つな髪『寄付できる髪・髪の送り方』(2021年3月)
JHD&C『JHD&Cとは?』
*5)ヘアドネーションに関してよくある疑問
JHD&C『よくあるご質問』
SmileProject『ヘアドネーションの寄付・送り方』
*6)迷惑・意味がないと言われることもあるのはなぜ?
NHK『ヘアドネーションは意味がない?』(2021年2月)
ランドリーボックス『ヘアドネーションという罪。「いいこと」がもたらす社会の歪みについて』(2022年5月)
*7)ヘアドネーションとSDGs・まとめ
経済産業省『SDGs』
アートネイチャー『女子高生が髪の寄付活動「女子高生ヘアドネーション同好会」第一号ウィッグを寄贈』(2018年3月)
厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 世帯員の健康状況』
厚生労働省『統計情報 患者調査(がん患者等)結果の概要 推計患者数』