#インタビュー

川上産業株式会社|くうきシート「プチプチ」で被包装物を護り環境も守る

川上産業株式会社様

川上産業株式会社 東京本社 小森さん / 大阪営業所 金さん インタビュー

川上産業株式会社様

川上産業株式会社

会社概要
創立:1968年 従業員数:501名 売上高:153億円(2022年5月現在)
事業内容:
緩衝材製造機の開発、製造、レンタル、緩衝材、包装資材、物流資材、物流機器の仕入れ販売

introduction

「空気」と「プラスチック」を素材とするくうきシート「プチプチ」のメーカー川上産業株式会社は、強い使命感とともに、地球温暖化を主とする環境問題の解決に真剣に取り組み、大きな成果をあげています。

今回は、東京本社の小森さん、大阪営業所の金さんに、具体的な取り組みや今後の展望などを伺いました。

キャッチフレーズは〈くうきとともだち〉

–まずは、御社の事業について簡単に教えてください。

金さん:川上産業は、くうきシート 「プチプチ」や軽量剛性板「プラパール」のメーカーです。梱包材の仕入れ販売も手がけています。

プラスチックが、地球の環境に悪影響を及ぼす悪者とされる風潮であるからこそ、環境問題に真剣に取り組む企業でもあります。「プチプチ」はゴミとなるものではなく、再利用できる資源だということを実践し、広めていると同時にユニークな商品開発もしています。

最近では、手で切れるプチプチも商品化しました。手でスパッと切ることができるので、名前は「スパスパ」。フリマアプリの個人ユーザーさんなどにとても人気があります。緩衝材のメーカーながら、遊び心、面白さも提供する会社です。

–1年間に封入する空気が東京ドーム565ヶ分とのことですね。空気あっての御社のキャッチフレーズは、まさにぴったりの〈くうきとともだち〉だと感じます。そこにこめられた思いをお聞かせください。

小森さん:人間は、生まれた時から一生を終える時まで空気とともに生涯を過ごします。生まれたときから共に過ごしている人間と空気の関係とは、まさに友達そのものです。

私たちが送り出すプチプチは、空気を利用し製造され、空気のチカラで人やモノを守ります。そして粒をプチっとつぶしても、空気をそのまま自然界に解放し、ふたたび人間と共存していく優しさも備えています。

視界では捉えにくい空気も、プチプチのひと粒ひと粒の中に視覚的に感じることができ、プチプチの弾力から感じることができます。

空気を創り出す地球の環境を守るのは、人類の役目です。その意味からも、当社は環境改善企業として、地球にやさしい商品を開発し続けています。そんな方向性を示すキャッチコピーでもあります。

–「プチプチ」はどのようなプラスチックを素材としているのですか?また、空気を封入するプロセスを簡単に教えて頂けますか?

小森さん:「プチプチ」の素材はポリエチレンです。具体的に説明するのは難しいですが、簡単に言えば、フィルム二枚を貼り合わせる段階で、粒が形成され空気が入っていくかたちです。それぞれの工場のご当地の空気を感じて頂きたく、「プチプチ」には製造工場ごとにご当地ラベルをつけています。

–本当に遊び心が楽しいです。「プチプチ」は一般消費者にお馴染みですが、「プラバール」はほぼ業務用ですね。簡単にご紹介ください。

「プラバール」通い箱

金さん:「プチプチ」を固くしたような板が「プラバール」です。「プチプチ」とは素材が異なり、ポリプロピレンで出来ています。プチプチ構造で方向性が無いので強く、重さは合板の1/4で軽い特性を活かし、とりわけ「プラバール」を使った箱がリターナブルな用途で重宝されています。段ボール箱は使い捨てが殆どですが、「プラバール」の箱は軽くて丈夫で繰り返し使え、畳んで返却できるので、場所もとりません。

プラスチックの好循環サイクル「ループリサイクル」

–空気とプラスチックを素材とする商品のメーカーとして、御社の環境問題への取り組みの決意は大きなものがありますね。2011年に、環境マネジメントシステム「エコアクション21」に参加を発表されていますが、具体的な活動をお聞かせください。

金さん:「エコアクション21」に参加したころから特にリサイクル原料の使用率を加速させてきました。2020年には、プラスチック循環構築業務を専門とするリサイクル事業部も発足しました。まず、活動の要である「ループリサイクル」を紹介させて頂きます。

「ループリサイクル」の図

プラごみゼロ化、資源の有功活用、CO₂排出量削減を目的として、自社の「プチプチ」に限らず、他社の使用済み気泡緩衝材、ポリ袋(ポリエステル製)、ストレッチフィルムなどを回収して再加工する、循環のプラットフォームを進めています。

使用後にごみとして出される「プチプチ」は、燃やされてCO₂を排出して終わってしまいますが、「ループリサイクル」は、プラゴミゼロ化を目的に当社とお客様、パートナー様で作るシステムです。

これにより、新たに石油から作られる原料の使用率を削減できます。現在は、全体の8割ほどが再生原料による「プチプチ」です。世に出た「プチプチ」から再生をまかなうことができれば、さらに持続可能な生産となりえます。

さらには「ループリサイクル」によって、CO₂排出量を、再生原料を使用しない「プチプチ」と比較し、約34%削減できます。

–多くの家にあるはずの「プチプチ」ですが、再利用できるとは知りませんでした。一般消費者がリサイクルに協力したい場合、どうすればいいのですか?

金さん:「ループリサイクル」の取り組みは10年以上前にスタートしています。当時は大きな企業様中心の大きなループリサイクルの輪が中心でしたが、SDGsに取リ組む企業様そして個人の関心の高さと相まって、小さなループリサイクルの輪がたくさんできてきました。

今のところは「プチプチ」を大量購入する通販関係の事業者や、ホームセンターなどに使用済みのものをためてもらい、新しい「「プチプチ」を納品する際に回収、というケースが軌道にのっています。「ポストコンシューマー」、つまり市場に出た「プチプチ」をいかに回収するかが、今後の課題です。

CO₂排出量削減を実現する新素材の「プチプチ」

–再利用によるCO₂削減活動とは別に、そもそもCO₂の排出が少ない新たな素材も取り入れられています。その紹介をして頂けますか?

金さん:まず、生分解性の原料を一部使用した「生分解性プチ」を開発しています。生分解性には、「土に還るタイプ」と「海に還るタイプ」がありますが、当社の場合は土のほうになります。腐葉土微生物の多い土の中に捨てられると、一年ほどで分解します。ただ、環境にやさしい製品とはいえ、まだまだ認知されていないことと、お客様でのコストと実用バランスから選択されにくいのが課題です。

生分解性「プチプチ」の絵図

他にもサトウキビ由来の原料「グリーンポリエチレン(Braskem社)」を15%使った「バイオプチ」も製造しています。こちらも、通常の商品より多少高めの価格となりますが、CO₂排出量を5%削減できます。

価格が高めですから、すべて切り替えて頂くのは難しいものですが、消費者の目に触れる部分への使用だったり、環境に配慮している製品をアピールする場合だったりなどに使われることが多い商品です。

バイオプチ

「この製品は価格が少し高いけれど、環境を考えて選択肢に入れよう」という考えは、ヨーロッパなどSDGsに積極的かつ先進的に取り組んでいる国が盛んですし、だからこそ、そのようなビジネスも成り立っています。それを日本で成立させるには、メーカーとしての啓発活動が必要だと感じます。

「メーカーが提供する環境配慮型の製品を、消費者は若干高くても環境に貢献するために選ぶ。」そのようにして一緒にがんばりたい、という気持ちが大切だと思いますし、私個人としても持っています。

社員一人ひとりや地域の小学生への環境問題教育と啓発活動

–ここからは、製品以外での環境問題への取り組みについて教えてください。

小森さん:一部の工場では、デマンド計という、電力使用量を見える化するシステムを導入して、すべて数字で管理し、目標を立てて電力量削減に努めています。一定ラインを越えるとアラームが出るので、その際には電灯やエアコンの調節などの細かな努力もします。

その他では、社内使用車にエコカー導入、再生可能エネルギーの導入など様々な計画をしております。

–社員お一人おひとりの環境問題への意識も高いと伺いました。社員教育は実施されているのですか?

小森さん:近年、全社員対象に、社内の環境への取り組みなどについて、繰り返し学び直しています。新入社時のみだった研修を、年に二度ほど他の社員にも行います。

また、社員の脱炭素運動や環境問題取り組みを後押しする「ボランティア休暇」といった精度が新設されました。加えて社内での備品や消耗品の購入については、グリーン購入ネットワーク認証のものにすることを推奨しています。

工場では、2~3か月に一度、周辺のゴミ拾いもあります。それぞれ小さなアクションではあれ、社員の環境への意識が高まる要素だと感じています。

–他にも地域の小学生への環境教育、啓発活動もなさっていますよね。

金さん:学校への環境問題活動については、自治体と協働するなかで、当社の「ループリサイクル」について出前授業をしてほしい、となったのが始まりでした。授業では、子どもたちに「プチプチはごみではなく資源」であることを中心にお伝えしています。

子どもたちがそういった知識を身につけると、親やおばあちゃん、おじいちゃんといった大人へとそれが伝わることもあります。そうすると、大人が子どもの前でちゃんとしなければ、ともなります。

また、工場の近隣の小学校には「プチプチ回収ボックス」を設置しています。再生のためには「プチプチ」の空気が抜けているほうが助かりますので、使い終わった「プチプチ」は、できれば潰してから回収ボックスに入れてくださいね、と授業でも伝えています。

そして「プチプチ」は、緩衝材以外の隠れた使い道もあるユニークな商品なんです。潰すことがストレス解消になったり、認知症の方々には指や脳のトレーニングにもなるようです。

そのような特性を背景に、バンダイさんと「プチプチ」の玩具、「∞プチプチ」を共同開発して販売中です。無限に潰して遊べる、ストレス解消、ひま潰し、かつ脳トレの玩具です。

おもちゃ「∞プチプチ」の写真

当社サイトの「プチプチ文化研究所」という頁で、「プチプチ」の様々な楽しみ方を紹介しています。今後、一般消費者の方にも回収に協力頂けるシステムができた際には、ぜひいろいろな潰し方で遊んでみてください。

–環境問題にも、楽しい参加ができそうです!最後に、今後の展望をお聞かせください。

小森さん:「プチプチ環境宣言2030」として、製造工程での三つの目標を掲げています。

①プチプチ主原料の再生比率を、2020年実績値80%以上から、2025年までに100%に引き上げる。
②2030年までに、プチプチ再生比率100%レベルのうち、55%以上をポストコンシューマー(使用済み「プチプチ」、およびその再生原料)使用を目指す。
③2030年までに、①と②の達成によりCO₂排出量20%削減を目指す

というものです。

そのためには様々なハードルがありますが、ペットボトル、食品トレーという再生資源の認識を獲得したジャンルの次に、「プチプチ」およびポリエチレンも再生資源と認識されるように努めていきたいです。

–本日は、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。

※プチプチ、プラパール、∞プチプチ、スパスパ、ループリサイクルは登録商標となっています

関連リンク

川上産業株式会社 https://www.putiputi.co.jp/