大自然に囲まれた地・オーストラリア。
しかし、シドニーやメルボルンをはじめとする大都会では、さまざまな規模のショッピングセンターが設置されています。
オーストラリアのショッピングセンターの中には、日本と同じようにフードコートがあるのが一般的です。
当然、食べ終えた後のゴミを捨てるゴミ箱も置かれているものの、近年ではテクノロジーを駆使したSmart binが普及しています。
Smart binは、リサイクル率を高めるための新たな取り組みです。
この記事では、Smart binの基本情報、フードコートに設置され始めた背景、具体的な使用方法、子ども達への影響などについて解説していきます。
リサイクル率アップを狙うオーストラリア
オーストラリアは、リサイクル率の向上を目指しています。
エコ活動や環境保全に積極的なオーストラリアですが、排出するプラスチックごみの量は年間100 万トンです。
ペットボトルなどのプラスチック製品の消費量が特に深刻化しており、日本同様に国全体でリサイクルの促進に向き合っています。
リサイクルに回されるリサイクル製品は50%程度
日本でもおなじみのリサイクル専用のゴミ箱。
しかし、リサイクル専用のゴミ箱の中身全てがリサイクルされているわけではありません。
リサイクル専用のゴミ箱に投げ込まれた製品の約50%しかリサイクルされていないと言われており、残りは地中に埋められているのが実情です。
「リサイクル用のゴミ箱に入れても意味がないの?」「じゃあ何のためにわざわざ分別しないといけないの?」と思われるかもしれませんが、リサイクル専用のゴミ箱の中身がリサイクルできない理由は、分別の不十分さにあります。
リサイクル製品以外の物がリサイクル専用のゴミ箱に混ざっている場合、リサイクル製品は汚染されてしまいます。
汚染されたリサイクル製品は再利用することが困難なため、結果として一般ごみと共に埋め立てることになるのです。
フードコートが直面するリサイクルの難しさ
フードコートに設置されているリサイクル専用のゴミ箱は、特に再利用が難しい傾向にあります。
飲み物が入っていたペットボトルや紙パック類を食べ物などのごみと綺麗に分別しにくく、リサイクル専用のゴミ箱に食品が投げ込まれることも珍しくありません。
また、分別に関する正しい知識を持っていない人や子どもの場合も、リサイクル製品と一般ごみを一緒に捨ててしまうケースが多くなっています。
フードコートに設置されているリサイクル専用のゴミ箱は、さまざまな人が利用します。
そのため、ショッピングセンター内に置かれているリサイクル専用のゴミ箱の中でも、特にフードコートの物はリサイクル率が低くなっているのです。
Smart binってどんなもの?
Smart binは、テクノロジーを取り入れたリサイクル専用のゴミ箱です。
2020年に設立されたオーストラリア企業・Charopy Pty Ltdが開発したゴミ箱で、フードコートにおけるリサイクル製品の汚染を防ぐ工夫が凝らされています。
Smart binは一般的なリサイクル用のゴミ箱と違って、常に投入口が閉ざされています。
投入口を開くためには、リサイクル製品に付いているバーコードをスキャンしなければなりません。
Smart binにはあらかじめリサイクル製品のバーコード情報が登録されており、スキャンしたアイテムがリサイクル製品であると認識された場合にのみ投入口が開く仕組みです。
リサイクル製品以外のゴミでは投入口が開かないため、フードコートの利用客が一般ごみを誤って投げ込むリスクを大幅に軽減できます。
また、一部のSmart binには、大型のスクリーンが付いています。
スキャンしたリサイクル製品の材質などが表示されるため、具体的にどのような材料がリサイクル製品に含まれているのかを学習できるところがポイントです。
Smart binに投入できるものとは?
Smart binに投入できるリサイクル製品の詳細は、本体に記載されています。
ペットボトル、瓶、缶、紙パックなどを対象としており、その他の製品をスキャンしても投入口は開きません。
あくまでフードコートなどの飲食エリアで使用することを目的としているため、段ボールや紙類などのリサイクル製品は投入できない仕組みになっています。
Smart binの使い方
テクノロジーを導入していることから、操作が難しそうなイメージも抱かれやすいSmart bin。
しかし、実際には短時間で手軽に使えるゴミ箱となっています。
以下では、Smart binの具体的な使用方法3ステップを紹介していきます。
①リサイクル製品の中を空の状態にする
Smart binには、中身が空になっているリサイクル製品を入れる決まりになっています。
リサイクル製品を処分する前に、綺麗に飲み切ってしまいましょう。
②バーコードをスキャン
「SCAN BARCODE」と記載されている箇所に、ペットボトル、瓶、缶、紙パックに付いているバーコードを当ててスキャンします。
スキャンした製品がペットボトル、瓶、缶、紙パックであることをSmart binが認識すると、投入口にランプが付きます。
③投入
投入口にランプが付くと、自動で蓋が開く仕組みになっています。
スキャンしたペットボトル、瓶、缶、紙パックを穴の中に投入すると、再び蓋が閉まります。
子どもがリサイクルに関心を持つきっかけにも
Smart binの目的は、単なるフードコートにおけるリサイクル率の向上だけではありません。
子どもに正しいリサイクルの知識を教育すると同時に、リサイクルに関心を持ってもらうためのきっかけ作りとしても役立っています。
バーコードをスキャンすると投入口が開くSmart binは、子どもの興味をそそるゴミ箱です。
お店屋さんごっこの延長やゲーム感覚で利用できるので、家族の分のリサイクル製品を積極的に投入する子どもの姿も見られます。
幼い頃からSmart binを使うことにより、どのような製品をフードコートのリサイクル専用のゴミ箱に投入して良いのかを理解できます。
Smart binがないフードコートでもペットボトル、瓶、缶、紙パックなどの分別を進んで行う子どもが増えるため、Smart binは将来的なリサイクル率のアップにも繋がるエコ活動です。
フードコートにスペースがないショッピングセンターではどうしてるの?
古いショッピングセンターや小規模なフードコートにおいては、Smart binを置くスペースがないケースも多くなっています。
Smart binをフードコートに設置できない場合は、屋外にリサイクル専用のゴミ箱が置かれていることが一般的です。
屋外に設置されているゴミ箱は、Smart binではなく返金用のゴミ箱です。
投入できるリサイクル製品はSmart binと同じで、ペットボトル、瓶、缶、紙パックとなっています。
リサイクル製品1つにつき10セントが戻ってくる仕組みになっており、ショップで使えるバウチャーを受け取れるほか、希望する環境団体への寄付も可能です。
Smart binは、まだ導入されて間もないシステムです。
そのため、Smart binに対応していないショッピングセンターやSmart binを置くスペースを確保できていないフードコートもたくさんあります。
Smart binがオーストラリア全土に普及するまでの間は、屋外のリサイクル専用のゴミ箱を使ってエコ活動を行っていくと思われます。
まとめ
オーストラリアに出現したSmart binには、フードコートのリサイクル率向上が期待されています。
誤った分別の知識を持っている人でも簡単にリサイクル製品を分けられるので、大人はもちろん、子どもの意識改善にも繋がるエコ活動です。
不十分な分別によるリサイクル製品の汚染は、日本のフードコートでも起こりやすい傾向にあります。
リサイクル率のアップを目指すためにも、家庭内でゴミの分別について知識を深め合ってみてはいかがでしょう?