2013年、オーストラリアのゴールドコーストに大量のコアラの彫刻が設置されました。
野生動物保護チャリティーイベントとして使われたコアラの彫刻ですが、イベントが終了した2023年時点でもゴールドコースト内のさまざまな場所でコアラの彫刻を目にすることができます。
今回は、チャリティーイベントの概要、主催者の詳細、コアラが採用された理由、コアラの彫刻を見たい場合のおすすめスポットなどについて解説していきます。
「これからゴールドコーストに行くから予備知識がほしい」という方はもちろん、「コアラの彫刻を見かけたけど野生動物保護にどう繋がっているのか知りたい」という方もぜひ参考にしてくださいね。
目次
ゴールドコーストの基本情報
ゴールドコーストは、クイーンズランド州南東部に位置する亜熱帯気候の都市です。
美しいビーチを有することで知られ、特に「サーファーズパラダイス」には世界中から多くのサーファーたちが集まっています。
ショッピング、グルメ、マリンスポーツを楽しめるリゾート地ということもあり、クイーンズランド州を代表する観光地のひとつです。
突如現れたコアラの彫刻
ゴールドコーストに突然コアラの彫刻が現れたのは、2013年のことです。
約1年間に渡って、ゴールドコースト内のショッピングセンター、ビーチ、市街地の路上、公園、病院、図書館などにコアラの彫刻が設置されました。
その後、2015年にも新たなコアラの彫刻が加わり、2度にわたって合計50体近くの彫刻が登場しました。
注目すべきは、コアラの柄や色が1体ずつ異なっているという点です。
アボリジニアート、コアラのイラスト柄、アメコミ、野鳥色、サンタクロース、コアラ注意の道路標識、スターウォーズ、トロピカル柄といったバリエーション豊富なコアラの彫刻があり、色々なコアラの彫刻を撮影するためにゴールドコースト各地を巡る人々まで現れました。
また、セーラームーンやスーパーマリオといった日本由来の柄のコアラの彫刻も作られ、オーストラリア版コミックマーケットに参加するためにブリスベンまで彫刻が移動することもありました。
チャリティーイベント「Animals with Attitude Sculpture Trails」
コアラの彫刻は、「Animals with Attitude Sculpture Trails」というチャリティーイベントの一環として行われました。
イベントは2013年と2015年の2度にわたって実施されており、主催者はカランビン野生動物病院財団です。
アーティストたちが1人1体ずつコアラの彫刻に色を塗り、各コアラの彫刻の設置場所はマップで公開されました。
「Animals with Attitude Sculpture Trails」は、資金集めと同時に野生動物保護に対する一般の意識を高めることを目的としたイベントです。
イベントを通して財団には多くの寄付金が寄せられ、さらにSNSなどでもさまざまなコアラの彫刻が投稿されました。
ゴールドコーストの住民はもちろん、観光客も野生動物保護について深く考えるきっかけとなったことから、啓発活動としても大成功を収めました。
尚、一見同じような形状のコアラの彫刻ですが、実は両方の前足を大きく広げているのと前足を片方だけ出しているポーズの2種類が存在しています。
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カランビン野生動物病院財団とは?
カランビン野生動物病院財団は、カランビン野生動物保護区及び病院を保有する団体です。
動物園として機能しているカランビン野生動物保護区の中に、野生動物専門の病院を設置しています。
カランビン野生動物病院は、年間12,000頭前後もの野生動物を無償で救護・治療している施設です。
カランビン野生動物保護区の売り上げを病院の運営費に充てており、より多くの野生動物たちを救うためにさまざまなチャリティーイベントを行っています。
また、野生動物が安心して暮らせる未来をつくるために、子どもや学生向けの教育プログラムなども実施しています。
人々の野生動物保護や環境保全の意識を向上させることで、オーストラリア全体の環境をより良くすることに直結すると考えているのです。
なぜコアラなの?
コアラは、オーストラリアで絶滅が危惧されている野生動物です。
元々は十分な個体数を維持していたものの、生息地の減少や病気などを理由に2016年に「絶滅危急」に変更されました。
「絶滅危急」は、レッドリストにおいて上から3つ目に分類されるカテゴリーです。
コアラの個体数は減少し続けていると報告されており、2023年時点でも「絶滅危急」から抜け出せていない状態です。
このままでは将来的にコアラが絶滅の危機に瀕する可能性もあるため、カランビン野生動物病院財団はコアラの彫刻を使って啓発活動を行おうと考えました。
また、オーストラリアのマスコット的存在であるコアラを採用することで、訪れた観光客に興味を持ってもらえるという狙いもあります。
コアラの保護はもちろん、コアラをきっかけに他の野生動物についても関心が寄せられれば、オーストラリアの自然環境を長期的に守っていくことに繋がります。
イベント自体は既に終了
チャリティーイベントである「Animals with Attitude Sculpture Trails」が最後に行われたのは、2015年です。
1年後の2016年にイベントは終了しており、ゴールドコーストに散らばっていた全てのコアラの彫刻は一度片づけられました。
その後、コアラの彫刻達はオーストラリア国内でオークションに出品され、オークションの収益は全額がカランビン野生動物病院財団に寄付されています。
今でもコアラの彫刻を見られる?
「Animals with Attitude Sculpture Trails」で使用されたコアラの彫刻たちは、実は今でもゴールドコーストで目にすることができます。
オークションでコアラの彫刻を購入した層には、個人以外にも商店や施設などが含まれていました。
購入後に施設の敷地内や店の前などにコアラの彫刻を飾っているケースも多く、ゴールドコーストの市街地や郊外で思いがけずコアラの彫刻を見つけられる可能性が高くなっています。
ただし、オークション後のコアラの彫刻の取り扱いは、購入者に委ねられています。
中には色を塗り替えて店の名前などを入れているパターンもあるので、必ずしもイベント時の姿のままであるとは限りません。
もし興味がある場合は、商店や施設のスタッフに元々の柄や色などを聞いてみるのがおすすめです。
カランビン野生動物保護区にも彫刻が!
「できるだけ色々なコアラの彫刻を見たい」「興味はあるけどどこに設置されているのか探すのが大変」という方は、ぜひカランビン野生動物保護区に足を運んでみましょう。
園内の端に位置するカランビン野生動物病院の前には、2023年7月時点で2体のコアラの彫刻が置かれています。
1体はクイーンズランド州の元州議会議員が寄贈したもので、彫刻全体に道路マップが描かれています。
もう1体はゴールドコーストの自然環境と高層ビルが立ち並ぶ2面性を表現した柄になっており、自然との共存を連想させるデザインです。
自然との共存を意識しながら発展することは、ゴールドコーストが持続可能な観光地であり続けるための大きな課題です。
コアラの顔の大部分にビルが描かれており、自然環境や野生動物たちに配慮した暮らしの大切さを改めて考えさせられます。
尚、カランビン野生動物病院自体は外からでも出入りできるものの、コアラの彫刻を見るためには園内エントランスから入って病院まで歩かなければなりません。
入場料を払って中に入る必要がありますが、入場料を含む園内でのさまざまな出費は野生動物を救うための資金に充てられます。
間接的な野生動物保護に繋がるので、オーストラリアで観光をしながら手軽に環境保全をしたい方にもおすすめです。
まとめ
チャリティーイベントの「Animals with Attitude Sculpture Trails」により、ゴールドコーストに数多くのコアラの彫刻が出現しました。
イベントが終わっても数体はゴールドコースト市内で見られる状態になっており、主催者・カランビン野生動物病院財団が保有する園内にも2体のコアラの彫刻が置かれています。
コアラの彫刻を通してコアラやその他の野生動物たちの絶滅状況や保全について考え、環境に優しい暮らしやライフスタイルを意識しましょう。