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どんな政策も国民性に合わせることが重要?車社会韓国の環境問題への取り組み

韓国の大気汚染

ミセモンジという韓国語を聞いたことはありますか?

日本語で「微細なほこり」と言いますが、日本でよく耳にするPM2.5よりも、粒子が少し大きいものです。韓国に来た当初、ソウルは霧がよく出るんだな〜なんて思っていたのですが、韓国人にあっさりと、「それは霧ではなくてミセモンジというほこりだよ」って笑われてから、突然息苦しくなったことを今でも覚えています。

韓国では天気予報でミセモンジの状況を毎日伝えるほど、状況が深刻化しているのです。

またいつでもミセモンジの状態を確認できるアプリもあり、韓国人ほぼ全員がダウンロードしています。人体への危険度も高いミセモンジの状況を改善すべく、韓国が取り組んでいることの光と影についてご紹介します!

出典:Spaceship Earth

韓国在住者必須アプリのミセミセ「ミセモンジ」で検索できます。

出典:Spaceship Earth
2つともカンナム区テチドンの状態 赤:매우 나쁨(とても悪い) 青:최고 좋음(最高に良い)

アプリを開いた時にひと目でわかるようになっています。

そもそもミセモンジの原因は?

ミセモンジの発生原因は、自然的な原因と人為的な原因に区分されますが、人為的に発生していることがほとんどです。

これは、ほとんど燃料燃焼によるもので、冬にオンドル(床暖房のようなもの)を使用する際に使うボイラーや、自動車、発電施設などの排出物質が主な発生源です。 その他、工事現場、道路などで飛散するホコリも多くの量を占めています。

ミセモンジアプリで「悪い」が出ている時のソウル
ミセモンジアプリで「良好」が出ている時のソウル

韓国首都圏で発生するミセモンジの30%以上が、自動車から排出される汚染物質によるものです。

そのため、韓国産業通称資源部は、2030年までにEV(電気自動車)・PHEV(プラグインハイブリット)普及率を現在の5%から12%まで引き上げることを目標に掲げました。

▶︎関連記事:「大気汚染とは?世界・日本の現状や原因、環境への影響、企業の取り組み

韓国で急激に伸びるEV車の普及率、やっぱりブランド・流行が大好き!

日本ではまだまだ普及していないEV車ですが、実は世界では急激に販売シェアを高めてきています。もちろん韓国がこの流行にのらないわけがなく、2017年には1%だった販売シェア率が、2021年には販売台数の5%以上がEV・PHEV車両を占めています。一方日本では、2017年の1%から2021年までほぼ変化がありません

ヨーロッパでは20%を超える国も多く、中国も15%を超えています。

(参考:Global Electric Vehicle Outlook 2022

韓国でEV車普及率が伸びている理由は、韓国の現代自動車(ヒュンダイ)と起亜自動車(キア)のIONIQ5とGV60、EV6の売れ行きが好調であるからだと考えられています。

特に現代自動車の高級車ブランド「ジェネシス」シリーズは、2020年に高級車の韓国国内販売台数がベンツを抜いて第1位となるほど人気があり、その中でGV60はブランド初の専用電気自動車モデルということでさらに期待が高まっています。現在、半導体不足から生産が追いついていない状況となっているほどです。

日本と韓国の普及率の差には、国民性や価値観が大きく影響していると考えます。

韓国は自分の収入に見合わなくても、自身の見せ方や周りの目を意識するため借金をしてでも高級車を買うケースが多いように感じます。

中には高級車に乗るそんな自分が好き!という方もいます。こういった点は、日本にはあまりない価値観かもしれません。

現在、公共機関の充電場設備がまだ十分に整っていないところも多いため、この不安が解消されれば今後さらなるペースでEV普及率が高まる見込みです。

韓国政府やソウル市が実施してきた排気ガス抑制への取り組み、果たして効果は?

韓国では2003年7月から「車両5部制」という、曜日別に車のナンバープレートの最後の数によって、車の走行をしない日を設ける制度があります。例えば、月曜日は1と6で終わるナンバープレートを持つ車の人は、月曜日は車を使うのをやめましょうということです。

出典:Spaceship Earth

この制度が開始した当初や制度のインセンティブ(市によって差はあるが、主に自動車税が10%免税、公営駐車場が20〜30%割引される)が拡大していた2012年までは、参加率が年々上昇していたのですが、2012年の7月から電子タグ車両付着認証制が施行されてから、参加率は減少していきました。電子タグになってからつけずに走行する人が増えたことも原因の1つです。

このような状況を解決するために、ソウル市は17年ぶりに車両5部制を廃止し、自動車の運行距離を短くすればインセンティブを与える「乗用車マイレージ制度」に変更しました。

自家用車の1年間の走行距離が少ない人を対象に、距離に応じて2万〜7万ポイントを付与し、市のホームページで必要な商品(現金、自動車税・地方税納付、モバイルギフト券・寄付)と交換できる仕組みです。

参加方法はシンプルで、計測開始時の車両番号と計器盤の写真をあらかじめソウル市に提出し、1年後に計器盤を再度提出することで審査を経た後、ポイントが獲得できるという流れです。1ポイントは1ウォン(日本円=約0.1円)になります。

このような写真をあらかじめソウル市に提出

しかし、この制度についてソウル市在住の車を持つ韓国人10人に聞いても、誰も知らなかったのです…!

この制度について説明したところ、「1年間かけて実施するなんて面倒!」という声も聞かれました。普及率の調査結果がはっきり出ていないので実際はわかりませんが、2017年からこの制度は存在しつつも、5年経った今でもあまり知られていないのでは?という気がします。

それでは、なぜこの2つの制度が普及していないのかを考えていきます。

まず、車両5部制については自主的な取り組みを推奨しているだけで、守らなくても法律で罰せられることがないからです。

しかも電車が発達していないソウル周辺のベッドタウンに住む人たちにとっては、車は毎日の通勤手段となります。それをわざわざ1週間に1度だけ車を使わずに会社に行くという人が、どれだけいるでしょうか。

基本的にルールは守る韓国人ですが、自分が不便さを感じてまでも、環境問題へ取り組むという熱心な人はまだまだ少ない印象です。

韓国人は新しいものが好きなので、車両5部制ができた当時は盛り上がり、参加する人が多いのですが、時間が経過するにつれて興味関心が徐々に薄れてしまう印象です。

この制度ができてまもなく10年が経ちます。再度この制度を国民に参加を促すためには、ペナルティを課すか、インセンティブの拡大や新たなキャンペーンなどを画策する必要があります。

何より面倒なことは嫌いな韓国人、複雑な手続きや制度についてはちょっと抵抗があるようです。

まとめ

韓国政府や市が環境問題を解決すべく、様々な政策を打ち出してはいるものの、やはり国民の気質に合わせた方法を取ることがその政策が成功することへの一番の近道だと感じます。

現に韓国人の気質に合わせたマーケティングを打ち出したEV車は急激な成長率を見せていますが、政府が打ち出した政策は下火の状態が続いています。

今後、韓国がどのような画期的な政策をとり、EV車普及率がさらにどれほどのスピードで増加するのか楽しみですね!

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