#インタビュー

株式会社Liberaware|業界最小級ドローンで見えない危険を検知し「誰もが安全な社会」を目指す!

株式会社Liberaware

株式会社Liberaware 長谷川大季さん インタビュー

長谷川大季

明治大学卒業後、新卒で国内大手メーカーにてルートセールスとして活動。
その後、PR代理店にて、外資系飲料メーカー・SaaSスタートアップ企業などtoC、toB問わず幅広い業種業界のクライアントを担当し、PR及び広告業に従事。
2023年6月に㈱Liberawareにジョインし、マーケティング・PR部門の責任者として活動中。

introduction

業界最小級のドローンを開発し「狭くて・暗くて・危険な」人の入れない屋内空間の点検を可能にした株式会社Liberaware。

この技術により、今まで見られなかった細部を確認することが可能となり、危険を可視化しリスクを軽減できるようになりました。

今回は、スマート保安事業部マーケティング・PRマネージャー の長谷川大季さんに、開発しているドローンについてや、事業に掛ける思い、事業とSDGsなどについてお聞きしました。

「狭くて・暗くて・危険な」場所でも飛べる、世界最小級ドローン「IBIS2」

–はじめに、株式会社Liberawareのご紹介をお願いいたします。

長谷川さん:

株式会社Liberawareは、狭い場所や危険な場所、GPSの使えない空間でも安定飛行ができるドローンの開発・製造・販売・レンタルサービスを軸とし、撮影した映像の画像解析なども行う、DXサービスを提供している会社です。

「誰もが安全な社会を作る」というミッションを掲げ、ドローンでの点検や画像解析技術により、今までは点検が困難だった場所での「見えないリスクを可視化する」ことをヴィジョンとして事業展開しています。

–御社が開発・製造されているドローンについてお聞かせいただけますか。

長谷川さん:

ドローンと言ってもいろいろな種類がありますが、大半を占めるのが空撮や農薬散布、運輸配送など屋外で使用する機体です。

その中で、弊社が開発しているドローン「IBIS2(アイビス ツー)」は屋内を飛行し、大きさはわずか20センチ✕20センチ✕5センチ、重さは243グラムと、業界最小クラスの超小型狭小空間専用の点検ドローンです。30センチ四方の点検口などの、人が入れないような場所からも進入できます。

小型ドローンは家電量販店などでも販売されていますが、壁に近づくだけでプロペラの風を吸って壁にくっついてしまったり、ぶつかるとすぐに落ちたりするので、産業用途では使用できません。一方のIBIS2は、壁にぶつかっても安定して飛行できるフライトコントローラーを搭載していますし、設備にぶつかっても壊れない・設備を壊さないような作りになっています。

《超狭小空間点検ドローン「IBIS2」》

また、塵や埃対策が施されていることも特徴です。

点検の必要な場所は、粉塵がある環境も多く、モーターが剥き出しになっている一般的なドローンは塵や埃が絡まってしまい、すぐに壊れてしまいます。IBIS2は粉塵構造モーターを搭載し、放熱している状態でもきちんと密閉されるようになっています。水滴のあるような場所や暗く汚れた環境にも対応できるんです。

このモーターは特許も取得しています。

他にも、暗所でも鮮明な画像を撮影できる好感度カメラを搭載し、そのデータを無線で送れます。

操縦に関しては、GPSの届かない場所を飛ばすため、ドローンの位置を把握しづらく、慣れるまでは少し難しいかもしれません。

弊社が提供する点検サービスの場合は自社パイロットが操縦しますが、IBIS2を購入、レンタルされているお客様には、操縦の講習会などを開きサポートしています。

とはいえ、多くの方が慣れれば使いこなせていますし、弊社のドローンは屋内で飛ばすので、航空法が適用される外を飛ばす場合と異なり、特別な免許は必要ありません。ただ、映像電造のための、無線を扱う免許は必要です。

そして、もう一つの特徴が映像分析です。映像を解析するだけでなく、画像の編集技術やAIを活⽤した技術を使い、異常箇所の抽出やメーターの数値を読み取ることで、より企業の⽣産性向上に寄与することができます。

ドローンの機体のハードウェアの技術と、映像解析‧編集のソフトウェアの技術を組み合わせたソリューションを提供できることが弊社の強みです。

–ドローンIBIS2を使ってどのような事業を展開されているのか、詳細をお聞かせください。

長谷川さん:

IBIS2は、製鉄・鉄道・建設・石油化学・エネルギー・自治体など様々な分野で使われています。

狭い場所、温度の高い場所、酸素濃度やガスなどの問題で危険な場所にIBIS2を飛ばし、人が直接行かなくても点検や計測、画像撮影ができるようにするのが主な事業です。

具体的な例の一つが、JR東日本の駅の天井裏や建設現場での事業です。

駅の天井裏や建設現場は狭く、人の出入りが難しい場所が多くあり、パイプや配管、コードなども張り巡らされています。そこで改修工事を始める前にIBIS2を飛ばし、映像を取得してデータ解析を行い、普段は見られない天井裏の様子を可視化して管理し、スムーズに工事ができるようにします。

このような作業により鉄道インフラ業界のDXを実現するべく、弊社とJR東日本グループで合弁会社「CalTa株式会社」を設立しました。

もう一つ、日本製鉄での事例があります。

製鉄所内には、構造が複雑で大型の設備が多く存在します。設備内にIBIS2を飛ばして、経年劣化等をデータとして残し、可視化できるようにしました。

これまでも点検にはドローンを導入していましたが、複雑な構造の狭い部位などは汎用のドローンを使うのが難しく限界がありました。

しかし、弊社のシステムなら、1ヶ月毎に撮影した映像から違いを検知することも可能で、「ここの凹凸が酷くなっている」「このクラックが大きくなっている」などの確認もできます。

他にも高速道路のトンネル内の点検や、製紙会社の設備点検など数多くの事業を手掛けています。

日本のものづくりを元気にし、次世代のプロダクトは自分達で作りたい

–ドローンの開発や、事業展開において何かこだわっていることはありますか。

長谷川さん:

ドローンの開発では、国産であることにこだわっています。フレームからフライトコントローラー、モーター、プロペラ、バッテリーまですべて⾃社で開発をしています。

この思いはドローンの名前「IBIS」にも込められています。「IBIS」は英語で朱鷺(とき)を意味しますが、元々日本を象徴する鳥と言われていました。それが、世界でも数羽しかいなくなり、日本では1980年代に絶滅してしまいました。その後、中国では生存していた朱鷺2羽が日本に寄贈され、今は繁殖に成功し数を増やしています。

ドローンも、中国で国が先行投資をし開発に力を入れているため、中国製の機体が市場の60〜70%のシェアを持っています。

弊社の「IBIS」も、朱鷺になぞらえて、中国で先に発展したものではあるものの、きちんといいものを日本で普及させていこうと、すべて国産であることにこだわっているんです。

日本のものづくりは、80年代にはソニーを代表するように、海外でもメイドインジャパンとしてブランド力がありましたが、現在はいつの間にか衰退してしまいました。

海外製にももちろん利点はあるのですが、弊社では日本のものづくりにこだわり製造しており、お客様にも国産という点で高い評価を頂いています。

–なぜドローンを使ったビジネスをしようと思ったのか、起業のきっかけをお聞かせください。

長谷川さん:

弊社のCEO、閔 弘圭(ミン ホンキュ)は千葉大学でロボット研究をしていた研究員でした。

2011年の東日本大震災の際、福島第一原子力発電所で発生した原子力事故のあと、国からのプロジェクトで、原子力発電所の探索に参加しました。

探索にドローンを使っていたのですが、当時のドローンはまだ技術的な制限があり、1メートル四方の大きさで、瓦礫やたくさんの障害物がある屋内では、本当に見たい場所が見られなかったそうです。

その後、世の中には人が入れないような狭い場所や危険な場所がたくさんあることがわかり、それならば、そんな場所にアプローチできるドローンを開発し、サービス化しようと千葉大の当時のメンバーと会社を作ったのが起業のきっかけだと聞いています。

企業の成長にSDGsへの取り組みと新たなる挑戦は欠かせない

–現在はどのような思いを持ち、事業を展開されているのか教えていただけますか。

長谷川さん:

弊社は事業をする上で、日本の社会課題を解決したいと思っています。

弊社のミッション「誰もが安全な社会を作る」を実現するには、人々の暮らしを支えるいろいろな設備や社会インフラが、当たり前に安全でなければなりません。

最近特に注目されている日本中のインフラの老朽化は大きな問題です。

現在の日本のインフラ設備やプラント設備などは、高度成長期に建てられたものが全体の60%以上を占めていて、建築後50年以上経過しています。それと同時にインフラ業界は人手不足が進み、修繕などがままならずに老朽化が進んでいるんです。

このような状況の中、設備点検はますます欠かせませんが、危険が伴うことが多く、怪我や時には死亡につながるような事故も多く起こっています。

弊社は、超小型ドローンやデータ編集・解析技術を通して、今までは気づくことができなかったリスクを可視化し、屋内設備点検の状況を変えたいと考えています。

この考えは、弊社の事業がSDGsの目標達成にも貢献していけるものだと思っていますし、弊社の企業成長にはSDGsへの挑戦が欠かせないと思っています。

–御社の事業はSDGsの目標達成への取り組みに、具体的にどのように関わっているのでしょうか。

長谷川さん:

IBIS2を使った点検業務では、人が現場に入らなくても点検やデータ取得ができるので、メンテナンス業務での人材不足の緩和や生産性向上、従事者の安全性向上に役立ちます。

また、DXサービスにおいては、今まで目に見えなかった危険などを画像解析し可視化できるので、人が目視で点検するよりも精度が向上します。

さらに、今まで後継者に伝えることが難しかった点検技術も、きちんと画像として残すことで継承がより可能になりました。

これらのことを総合して考えると、先進技術により産業の基盤を強固にできると同時に、誰もが安全安心な社会を作ることができます。長期的に見れば、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」に繋がっていくのではないでしょうか。

弊社の取り組みは「WOMAN’S VALUE AWARD 2023」にて、 サステナブル部門優秀賞・個人賞(コミュニケーション戦略室 青柳萌美氏)を受賞しました。

新しい技術を活用し、社会課題に取り組み、持続可能な社会を目指していることが評価されての受賞だと思っています。

–では最後に、今後どのように事業を展開していきたいか、展望をお聞かせください。

長谷川さん:

弊社にはドローンを飛ばし画像を解析することで得た、今までは見られなかったようなデータが沢山蓄積されています。このビックデータを用いて何かサービスを展開できないかと考えています。

例えば、スマートシティと呼ばれるまちづくりに、構想の初期段階から私達が入って、何かできることがあるのではないかなどです。

また、近い将来、ドローンは自動化されるものも多いと思います。これに関しては、すでに弊社でも実証実験が行われているんです。

実証実験段階ではありますが、ドローンが自動で施設を周り点検し、充電スポットに戻る仕組みができています。その都度映像が自動でアップされて3D画像に変換され、沿革の施工管理の場で確認できるようなシステムです。

この取り組みは「屋内自動巡回ドローンと画像解析技術を活用した施工管理DX」として、株式会社LiberawareとCalTa株式会社が国土交通省の「インフラDX大賞」を受賞しました。

このように、いろいろなデータを活用することで、自動巡回や作業の効率、安全性をグレードアップできるようになると思うので、そこを頑張っていきたいですし、皆さまからも期待されるポイントなのではないかと思います。

この業界は、あまり日の目を見ることのない業界で、知らない方も多いと思います。しかし、私達の住んでいる世界には、目に見えなくても危険がたくさん潜んでいて、そのリスクを少しでも軽減できるように、日々頑張っていることを知ってもらえたら嬉しく思います。

–ドローンの興味深いお話をありがとうございました。

関連リンク

株式会社Liberaware公式ホームページ:https://liberaware.co.jp/

株式会社Liberaware IBIS2 :https://liberaware.co.jp/ibis2