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一般財団法人 日本寄付財団 代表理事 村主 悠真さん|「寄付」で社会の仕組みを問い直し、社会課題の解決を目指す

一般財団法人日本寄付財団 代表理事 村主さん インタビュー

村主 悠真

19歳大阪大学在学中に起業し、五年間で約10社を連続で売却。 24歳でプライベートファンドを設立し、金融事業に参入。 国内外のファンドを運営し、事業のバイアウトを繰り返す。 30歳から社会貢献活動を開始。国内外の貧困問題を中心に寄付活動を広げる。 複数の一般社団法人やNPO法人の運営に携わり、 38歳で村主現代芸術文化財団を設立し、文化芸術への支援を開始。 39歳の今、日本の寄付文化の再構築を目指し、一般財団法人日本寄付財団を設立。 世界の最大公益化を目指し、非営利の世界に資本を流入させるべく活動中。

Introduction

日本寄付財団は、2021年11月に設立された一般財団法人です。

財団の資金を活用し、貧困をはじめとする社会問題の解決や、子どもたちとアーティストが自由で豊かな活動をできるように支援を行っています。

今回は代表理事の村主 悠真さんへ、活動の内容やきっかけ・寄付文化の未来についてお話を伺いました。

二極化が進む貧富の差に気づいたとき、資本主義へ疑問が生まれた

–本日はよろしくお願いします。早速ですが、日本寄付財団を立ち上げようと思った理由をお聞かせいただけますか。

村主さん:

ひと言で言えば、資本主義の構造に疑問を感じて、世の中を変えるために自分に出来ることを追及した結果です。

–資本主義社会のどのような点が気になったのでしょう。

村主さん:

一番は貧富の格差がどんどん拡大している点ですね。

現代では、わかりやすく言うと、1%のお金持ちが、世界の資産全体の99%を所有している状態です。年収の平均値も下がっていて、もともといたはずの中間層が減少しています。

つまり、世の中ではほんの一握りの人たち以外は、みんな貧困に向かっているのが現状です。

総合的に見れば、食糧を得られない、安全な水が飲めないといった、極限状態の貧困は世界でも徐々に減ってはいるんですけどね。

–確かに、日本でも子どもの7人に1人は貧困状態に陥っているといわれているように、隠れ貧困層の増加が問題になっていますよね。

村主さん:

そうですね。また日本のような資本主義社会が進んだ先進国では、別の意味での貧困もあるんですよ。

十分な収入がないために食事の選択肢が少なかったり、スポーツや芸術のような人生を彩る活動を楽しむ余裕がなかったり、人生の豊かさという観点で貧しさが問題視されています。

–そうした貧困層が生まれたのは、資本主義が原因だと考えているのでしょうか。

村主さん:

全てが資本主義のせいではないですし、社会主義に変えようという話ではありません。

人口も増え、市場が拡大してる間はいいんですが、その拡大が止まると、競争社会の原理、つまり資本主義の負の側面である、『敗者を生産するシステム』が悪目立ちしてしまい、そのしわ寄せが貧困層に集まり、格差の拡大が進んでるのが現状です。

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格差解消のために、自分にできることは何か

–資本主義から生じる格差を解消したいと思ったことが、きっかけだったんですね。

村主さん:

自分が日本で恵まれた暮らしをしている一方で、世界中で困っている人たちがいる。そんな状況を目の当たりにした以上、その現実を無視して生きるのは自分の正義に反すると感じました。ただ一方で、困ったこともあったんです。

起業や投資で資本を増やせた経験はあるものの、実際に社会貢献の活動をしてきたことはなくて。

無理に新しいことを始めるよりも、得意なことを活かす方が上手くいくだろうと腹を括り、「増やした資産を、社会貢献を行う非営利団体に流していく」という活動を始めることにしました。

–なるほど。それで寄付財団という形を取ったのですね。

「得意」を活かしあうことで社会は変わっていく

–具体的に、どのような活動をされているのかを教えてください。

村主さん:

基本的にはシンプルで、社会課題の解決を目指して活動する非営利団体の皆様への助成活動を中心とした活動を行っています。また、非営利団体の組織改革やリノベーションという意味で、希望があれば無償でコンサルティングもしています。

非営利団体の多くは、社会貢献活動をしたいけれどお金を集めるのが苦手という課題をお持ちです。一方で、自分はもともと資本主義社会の中で生きてきたので、お金を集めるのは得意です。

そこで、お互いの才能や長所を活かせるように、自分が資金を調達し、実際の社会貢献活動は現場のみなさんにお任せしています。

–それぞれが、お互いの得意な部分を活かし合う考え方なのですね。

村主さん:

そうですね。お互い得意なことが違うだけなので、もちろん関係性は完全に対等です。自分たちの武器を考えた時に、お金集めという形で貢献させて頂くのが、一番社会へのインパクトを与えられるんじゃないかと思い、この活動を始めました。

それぞれができることを活かし、役割を分担しながら社会課題の解決を目指しています。

–会社の報酬や株式のような「対価」「売買」の考え方ではないということですか。

村主さん:

現代の資本主義社会では、何をするにもお金が必要ですが、お金を集める行為自体に時間や気力を奪われてしまうと、非営利団体としての目指すべき活動に時間を割けなくなってしまいます。

なのでお金を受け取る皆さんには、「お金集めのことはなるべく気にせずご自身の活動に注力してください」と伝えています。

–社会貢献に集中できるという点で、日本寄付財団は非営利団体にとって、とてもありがたい存在ですね。

子どもたちに、人生を楽しく生きる選択肢を

–日本寄付財団の場合、財源はどのように調達していますか?

村主さん:

一般寄付と、年に一度定額をお送りいただく定額寄付の二種類で運用しています。時期や金額の規定は敢えて行わず、寄付したいという気持ちを行動に移しやすくしています。

今は立ち上げたばかりで、一般の方の寄付というのは集まりにくい状況なので、現状は自分の資産と、自分の周りの経営者仲間や投資家仲間の中で、同じ社会課題問題について共感して頂ける方からの寄付を中心に運用しています。

–そうなんですね。寄付先としてはどのような団体が挙げられますか?

村主さん:

こどもの貧困、教育、障がい者の就労支援、脳卒中者の支援団体、ペットの殺処分、寄付制度の構築、途上国支援、少年兵の解放などなど、多岐に渡っています。

前述したように、先進国ではスポーツや音楽といった、人生を豊かにする活動をやりたくても出来ない子どもたちが沢山います。お金が循環することで、子ども達がもっと楽しく生きられる世の中を作れたらいいなと考えています。

–これまでの村主さんのご活動を拝見すると、アートや芸術といった分野への支援が多いような印象を受けたのですが、ご自身にとって何か特別な思いがあるのでしょうか?

村主さん:

僕自身、生きていくうえでの彩りは大切にしています。特に子どもたちにとって、勉強以外にもスポーツやアートのような楽しみはあったほうがいいですよね。

–スポーツ選手やアーティストの養成のような目的もあるのでしょうか。

村主さん:

プロフェッショナルを目指してもらおうとは、まったく思っていません。単純に、楽しいと思うことを素直に楽しんでもらって、いい思い出になればいいなと。

–日本だけでなく、世界規模で非営利団体をサポートしているのですね。

寄付をクールに!日本で寄付文化を定着させるには

–個人的には、日本では寄付がなかなか定着しないイメージがあります。村主さんはどう思いますか?

村主さん:

日本で寄付文化が定着しないのは、2つの理由があると考えています。1つは、寄付をしても自分にメリットがないため。もう1つは、欧米のように、お金を寄付することで個人・企業のイメージアップにつながるという認識が浸透していないことです。

日本では有名人・著名人が寄付をすると、「売名」「偽善者」といわれてしまう風潮があるので、世間が寄付に対して持つイメージが欧米と異なっているのがわかりますね。そこは変えていく必要があると考えています。

–たしかに、世間で名の知れた人が寄付をして、みんなが「かっこいい」と思える社会になればいいなと思います。

村主さん:

まさにそうですね。寄付文化=かっこいい という考え方を広めていきたいです。

–具体的に、どのあたりが「クールな寄付」のポイントになると考えていますか?

村主さん:

寄付する人の意識と、メディアの取り上げ方がカギになってくると思います。

寄付する人に余計な思惑がなく、純粋に社会のためを思っていれば、その格好良さが第三者にも伝わると思うんです。あとは、メディアの伝え方が世論をリードする傾向があるので、ポジティブな発信をすることが重要ですね。

–寄付のイメージを変えるには、社会全体で取り組む必要がありそうですね。

村主さん:

本気で実行すれば、3~5年ほどで世間のイメージは変えられるのではないかなと思っています。一度「寄付=かっこいい」という風潮ができれば、広まるのは早いと思いますから。

ただ抜本的な変化のためには、税制をはじめ法律など、ルールの部分から改正する必要がるので、税制改正も含めたシステム作りの動きも始めています。

–最後に、今後の目標や展望があれば教えてください。

村主さん:

今後は、さらに多くの社会活動へ貢献できるよう、寄付の金額を増やしていきたいです。そのためには、自分自身も資本の世界でも更に頑張って、自分自身の寄付額も更に増やしていくのが目標です! 

–本日は貴重なお話をありがとうございました!

取材・大越 / 執筆・Rie Nonaka

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