普段の暮らしの中で身近な食品や洗剤・パーソナルケア用品に含まれるパーム油。実は近年、気候変動をはじめとした環境問題において注目が集まっており、世界でもパーム油に関する動きが活発になっています。
そこで今回は、パーム油とは何か?にはじまり、使用用途と問題点・世界での動きについてご紹介します。
パーム油とは
パーム油とは、植物油の一種で、アブラヤシという植物から抽出されるオイルです。
世界で最も消費されているといわれ、食品から化粧品まで、幅広いアイテムに利用されています。
原料であるアブラヤシの特徴や生産地
原料であるアブラヤシは、ヤシ科アブラヤシ目に属する植物です。20メートルほどの木に、赤く小さな粒が密集した実を付けます。
栽培地は限定されており、陽射しが強く雨量の多い熱帯地域で育ちます。原産地は西アフリカ・中南米ですが、現在、商業用の植物として栽培される生産地のほとんどは、マレーシアとインドネシアです。
パーム油の原料になるのは、アブラヤシの木になる果房(かほう)の部分です。軸を覆うようにびっしりと付いた小さな果房からは、2種類の油が抽出できます。ひとつ20~40㎏ほどある塊から大量の油を抽出できる点が特徴です。
続いては、パーム油の生産工程を簡単に押さえておきましょう。
パーム油の生産工程
パーム油には2種類あります。赤い粒上の果房(かほう)からはパーム油、中心部の白い種子からはパーム核油が抽出できます。
アブラヤシの実の収穫は、手作業で行われます。20メートル以上ある木の先端に30kg前後の実がなるため、長いカマを操って収穫しなければなりません。
収穫後の実はすぐに酸化が始まるため、大型トラックに乗せて加工所へ運びます。そして蒸して処理したあと、果実を潰して油を抽出します。濾過を経てはじめて、わたしたちの身のまわりのアイテムに使われるパーム油となるのです。
パーム油が使われている商品
では、パーム油は一体どのような商品に使われているのでしょうか。
ひと言でいってしまえば、パーム油はわたしたちの暮らしの中で用いられる、あらゆるアイテムに含まれています。ひとつずつ見ていきましょう。
食品
まずは食品です。パーム油は、成分表示では「植物油」と表記されるほか、加工することで以下のような名称で登場します。
- マーガリン
- ショートニング
- 植物油脂(乳化剤)
- 香料
- カテロイド色素 など
つまりパーム油は植物油の一種として、そのまま揚げ油や原料に用いられるだけでなく、加工してマーガリン・ショートニングにしたり、それらをお菓子やアイスクリーム・冷凍食品といったアイテムに使用したりと、幅広く活躍しています。
パーム油を加えると、なめらかな口当たりを実現できること、一方で揚げ油などとして活用すると軽やかな食感も再現できることから、とても汎用性の高い原料であることが分かります。
化粧品・パーソナルケア用品
パーム油が持つ「加工のしやすさ」を利用したアイテムは、食品だけではありません。口紅のような化粧品や、歯みがき粉やシャンプー・洗剤といったパーソナルケア用品にも、パーム油が含まれています。
成分表示には「パーム油」とは書いていませんが、いくつかの製品に使われている以下の成分には、何らかの形でパーム油が含まれていることが明らかになっています。
- 界面活性剤(デシルグルコシドなど)
- セテアリルアルコール
- グリセリン
- パルミチン酸アスコルビル など
企業のウェブサイトを見ても、パーム油に言及されていないケースが多々あり、消費者にとって見分けがつかないこともあります。
それでも、加工しやすく扱いやすい特徴を持つパーム油は、こうした成分に変身し、日常で使われるさまざまなアイテムに潜んでいる可能性があるのです。
バイオマス燃料
パーム油は日常のアイテム以外にも、エネルギー生成の手段として利用されています。
バイオマスとは「動植物の生物資源」を指し、例えば家畜の排泄物や生ゴミ・稲わらといった地域に存在する自然の材料を燃やすことで得られるエネルギーを使い、発電する方法を「バイオマス発電」と呼びます。
近年、地球温暖化や化石燃料の離脱といった背景から、バイオマス発電が注目を集めており、中でも設備投資と燃焼後の処理が比較的楽という理由から、パーム油を利用したバイオマス発電が増えています。
このように、パーム油はわたしたちの暮らしに密接な存在であることが分かりました。
次に、パーム油を使用するメリット・デメリットについてチェックしていきましょう。
パーム油のメリット
まずは、パーム油を使用するメリットについてご紹介します。
メリット①一度にたくさん採れる植物油
パーム油は、数ある植物油の中で最もたくさん採れる油だといわれています。
以下の図では、1ヘクタールごとに採れる植物油の種類(2019年時点)を示しています。
植物油の定番ともいえる、ヒマワリ油やなたね油と比べても、同じ面積での収穫量が4倍以上と、ずば抜けて高いことが分かります。
加えて、一度栽培をはじめればおよそ25年もの間、年中アブラヤシの実を収穫できる点もポイントです。
このように、ほかの植物油生産と比較して、最も効率よく植物油を生産できるため、パーム油の需要は年々高まっています。
メリット②汎用性が高い
もうひとつのメリットは「汎用性の高さ」です。
パーム油は一度にたくさん採れるため価格が安く、さまざまな商品へ利用しやすくなります。
また、先ほどご紹介したように、食品や化粧品・パーソナルケア用品まで幅広い商品に使われるパーム油には、以下のような特徴が挙げられます。
- 2種類の飽和脂肪酸をバランスよく含み、加工がしやすい
- なめらかな質感を出せる
- 特に食品において、軽い食感・質感を再現できる
- ほかの植物油に比べ、健康への被害が心配されるトランス脂肪酸を多く含まない
パーム油が持つ飽和脂肪酸(パルチミン酸)、不飽和脂肪酸(オレイン酸)という2種類の成分は、ともに40%程度含まれています。このバランスを変えることで溶ける温度をコントロールでき、液体としても固体としても利用できるのが、パーム油の大きな強みです。
パーム油のデメリット
続いて、パーム油を使用するデメリットについても確認しておきましょう。
デメリット:発がん物質として危険視されている
パーム油を使用するデメリットとして「健康への被害が疑われる」という点があります。
現在、多くの食品に対して腐敗・味が落ちるのを防ぐために「酸化防止剤」を添加することがあります。
日本ではパーム油を生産できないため、マレーシアやインドネシアからの輸入に頼っていますが、長時間の輸送で品質が低下しないよう、酸化防止剤としてBHA(ブチルヒドロキシアニソール)が添加されています。
しかしこのBHAは、かつて日本で「発がん性が疑われる物質」との証拠を示すラットの実験が発表され、問題になりました。日本政府はBHAの禁止措置を検討しましたが、アメリカからの反発もあり、1982年には「BHAおよびこれを含む製剤は油脂の製造に用いるパーム原料油およびパーム核原料油以外の食品に使用してはならない」と添加物等の規格基準を一部改正するに至っています。
ここでパーム油だけが除外されたのには、輸出の際にBHAの添加が生産国に義務付けられているから、という理由ですが、結局のところ人間にも発がん性があるのかはまだ解明されていません。
現在、日本においてBHAの評価は変わっておらず、1982年の食品衛生調査会では「弱いながらも発がん性を示すラットの実験結果には同意」としています。BHAが食品に残留していることも認めていることから、正確な真偽は定かではないとはいえ、少なくともBHAが人間にとって必ずしも安全なものとはいえないでしょう。
また、それ以外にも健康への影響が懸念されています。現在、なたね油や大豆油から人工的に生成されてしまうトランス脂肪酸に代わり、それをほとんど含まないパーム油の使用が進んでいます。しかしパーム油は成分中のほぼ半分が飽和脂肪酸であるため、血中LDLコレステロール値が上がり、循環器疾患の恐れがあるとの指摘があります。
こうした背景から、パーム油を常時摂取することで健康への懸念が示されていることを押さえておきましょう。
パーム油が引き起こす環境問題
パーム油はさまざまな製品に使用できる便利な原料ですが、一方でアブラヤシの栽培・利用によって引き起こされる深刻な環境問題が指摘されています。
ここでは、アブラヤシの栽培に際して起きる「森林伐採」と「絶滅危惧種」、「森林火災」について見ていきましょう。
森林伐採による環境への影響
先述したように、アブラヤシは熱帯気候でしか育ちません。現在、最もさかんな生産地であるマレーシアやインドネシアでは、熱帯雨林を伐採して大規模なアブラヤシ農園をつくる動きが急激に進んでいます。
例として、インドネシアで最もアブラヤシの栽培が盛んなスマトラ島では、急速に進む森林伐採によって緑地が減少しています。
WWFジャパンが示す「インドネシア・スマトラ島の森林地面積の比較」を見ればわかるように、1985年から2015年の30年間で、森林の面積が半分以下にまで減少しています。
その理由は大半がパーム油を採るための大規模なアブラヤシ栽培で、人工的な森林伐採が進んだからです。
またアブラヤシの生産地となっている、インドネシア・スマトラ島やボルネオ島といった本来自然の豊かな場所では、熱帯林に隣接した泥炭地が見られます。地球上にたった3%しかない泥炭地には、腐敗した後も水に浸かったまま分解されない植物などが眠り、世界中の森林を合わせたよりも多くの炭素が貯蔵されています。
しかし、より多くのアブラヤシ農園を作るために、泥炭地の水を抜いて切り拓くことによって、貯蔵されていた炭素が大気中に放出されてしまいます。さらに水を抜いた地表を整えるために燃やすことで、大量の二酸化炭素が出てしまうのです。
このように、本来なら地球温暖化に真剣に向き合わなければならないはずの人間が、さらなる生産のために自然環境を壊し、より環境問題を深刻にしているという現状があります。
【関連記事】森林破壊とは?原因と現状・どんな対策がされているのか?私たちにできること
絶滅危惧種にも影響が
森林を伐採することで直に影響を受けるのが、森に棲むたくさんの生き物たちです。中でも「絶滅危惧種」に指定されているオランウータンやアジアゾウ・スマトラサイといった動物が住処を追われる事態に陥っており、さらなるパーム油の生産が、貴重な生態系を破壊する行為に繋がっています。
特にオランウータンやアジアゾウは、住む場所と食糧を失ったために、アブラヤシ農園に出入りする事態が起きています。農園主からすれば「害獣」とみなされるため、罠や毒餌などによって貴重な野生動物が命を落とすトラブルが後を絶ちません。
本来なら貴重な絶滅危惧種として扱われるはずの生き物たちが、豊かな森林からより多くの利益を追求するアブラヤシ農園へ作り替えられてしまったために「害獣」扱いされ、その命を奪われる事態になってしまっているのです。
【関連記事】絶滅危惧種とは?原因や対策、種類、私たちにできることとSDGsとの関係を解説
森林火災
最後に挙げるのが、森林から農園へのプランテーションによって発生する「森林火災」です。
森林や泥炭地を切り拓く際、土地を燃やす手法がしばしば用いられます。これが燃え広まって森林火災となるケースが後を絶ちません。
さらに乾季と雨季がはっきりと分かれている熱帯地域では、雨季までに完全な消火をすることが難しく、一度放った火が燃え続けることで温室効果ガスの大量発生につながってしまいます。2015年にインドネシアで放出された二酸化炭素の量は17.50億トンといわれ、これは日本の年間排出量14.08億トンを大幅に上回っています。
また、火入れを行う際には大量のヘイズ(煙害)が発生し、周辺地域・国に住む人間と野生生物の健康への影響が懸念されています。
こうした火入れの行為は、法律で禁止されているにも関わらず、より早く安価に整備できるため、現在も違法に行われるケースが報告されています。
このように、パーム油の生産においてさまざまな環境問題が深刻であることが窺えます。では深刻な問題を解決するために、どのような対策が考えられるのでしょうか。
次の章では、その答えを見つけるためのヒントとなり得る「RSPO」についてご紹介します。
RSPOについて
RSPOとは、2004年に立ち上げられた国際NPO団体です。Roundtable on Sustainable Palm Oilの頭文字を採った名称で、日本では「持続可能なパーム油のための円卓会議」と呼ばれています。
RSPOでは、パーム油に関連する問題を解決するには、パーム油のボイコットではなく「持続可能な形でのパーム油生産・利用」だと述べています。
実際、収穫量の多さや汎用性の高さといった観点から、パーム油に代わる植物油はまだないと考えられており、ほかの植物油生産に代えることはかえって環境・人権にマイナスの影響を及ぼす可能性すらあるともいわれるほどです。
そこで2002年、環境保護団体のWWFが複数の企業に呼びかけ、それに応じた企業や組織と共にRSPOを立ち上げました。
RSPOの構成
名称のとおり、RSPOはさまざまな立場の構成員から成り立っており、NPO団体のWWFやマレーシアパームオイル協会、企業のユニリーバといった異なる組織から総会メンバーをつくり上げている点が特徴です。
また、組織の活動方針を決めるため、以下のようなステークホルダーが存在します。
- アブラヤシの生産者(農園など)
- パーム油の生産・買い取り業者
- 日用品の生産者・企業
- 流通企業
- 資金を調達する銀行などの組織
- 環境NGO団体
- 社会問題に取り組むNGO団体
加えて、パーム油との関わり度合いによって3種類の会員制度があります。会員はそれぞれ会費を支払い、会合・会議への参加や情報へのアクセス権を得ることができます。
会員制度が始まって以来、毎年増加傾向にあり、2021年時点では正会員となった企業の数が2,022にまでなりました。
RSPOの認証制度について
持続可能なパーム油の生産・調達を掲げ、RSPOでは2つの認証制度を設けています。
- 生産者向けの認証制度:P&C(Principles &Criteria)認証
- 加工・調達に携わるサプライチェーン企業向けの認証制度:SC(Supply Chain)認証
- 独立した小規模の受け向けの認証:ISH(Independent Smallholder)認証
すべてに共通するのは、持続可能なパーム油の生産または製造・流通のために、環境への配慮や労働環境の改善・透明性の高いビジネス経営といった厳しい条件が設けられていることです。
認証にはRSPOが直接携わることなく、第3者機関に委託することで、厳格かつ公正な審査を経て認証資格が審査されます。
では、3種類ある認証について、ひとつずつ見ていきましょう。
P&C認証
P&C認証の基礎となる要件は、「持続可能な経営」「人権」「環境」の3つの軸から成り立っています。
具体的には、生産地の環境や生態系に配慮した農園開発をはじめ、労働者のジェンダー平等・待遇への取り組みといった項目が設けられ、改善のために5年ごとに見直しが行われています。
なおこのP&C認証は、農園だけでなくパーム油の加工工場までが対象となります。
SC認証
パーム油を使った加工・製造・流通のいずれか、およびすべてに携わる企業が取得するSC認証では、P&C認証を得た生産者のパーム油のみを使用し、適切な環境や設備・労働環境などを証明できる企業にのみ与えられます。
ISH認証
2019年に策定されたISH認証は、独立した小規模アブラヤシ農家を対象とした認証制度です。
P&C認証と同じく、「持続可能な経営」「人権」「環境」の3つの軸からなり、取得の資格が得られてから2年以内に第1段階を通過する必要があります。
その後、1年以内に第2段階の審査を経て、はじめて認証ラベルを受け取ることができます。
以上のように、パーム油を持続可能な形で生産・流通するためには、RSPOのような厳しい条件をクリアしたパーム油を使用する、というのもひとつの手段であることが分かりました。
では、ほかにも取り組みは見られるのでしょうか。次は、世界と日本のパーム油への対策と現状を見ていきましょう。
パーム油問題への対策
まずは世界の取り組みから紹介します。
世界
世界では国や地域を問わず、長らくパーム油の大量消費が続いてきました。
以下は、2020年時点でパーム油を輸入している主要国のグラフです。
1位にインド、2位が中国となっていますが、実は地域で見た際に多くのパーム油を消費しているのがEUです。
EUはエリア全体で、中国に続く消費量を記録しており、日常で使うアイテムに欠かせない原料となっています。
そこでEUは、パーム油を含む原料調達への制限を設ける議論が数年前から続けられてきました。2023年4月、EU議会はパーム油や大豆・ココアなど農園開発の際に森林伐採を伴う可能性のある品目に対し、「2020年以降に森林伐採が行われていないことを証明できるものに限り輸入を認める」とのルールを可決しました。
この決定により、今後EUに輸入されるパーム油およびパーム油を原料とするアイテムを扱う企業は、パーム油の調達元で森林伐採が行われていないことを証明する必要があります。
EUはこうした厳格なルールを設けることで、すこしでも環境への負担をなくし、透明性の高いサプライチェーンを維持しながら経済成長を促すことを目指しています。
「エコな」バイオマス燃料への批判も
一方で、EUがパーム油を多く消費している要因のひとつとして、バイオマス燃料としてのパーム油の活用が挙げられます。
EUでは全体のパーム油輸入量のうち、実に2/3がバイオマス燃料として燃やされています。これに対して、大規模なプランテーションを行う必要があるパーム油を燃やすことが「環境に悪い」「エコではない」との批判も少なくありません。実際に、パーム油を使ったバイオマス燃料は、石油や石炭のような化石燃料を燃やすよりも環境への負担が重い、との報告も見受けられるほどです。
先ほどご紹介したEU議会の決定には、燃料としてのパーム油が対象かどうかまで明記がないことから、まだしばらくはパーム油のバイオマス燃料への利用が続きそうです。しかし早急にパーム油の使用をやめ、太陽光や風力といった再生可能なエネルギーに切り替えることが求められます。
なおアメリカでは、パーム油を使用したバイオマス燃料は「CO2排出の削減効果につながらない」として使用を禁じられています。
日本
日本では、パーム油への認識自体がまだ消費者に広く浸透していないという事実があります。
その要因として挙げられるのが、食品表示法におけるパーム油の表記です。パーム油は通常「植物油」と記すのみでよく、パーム油と記載するのは義務ではありません。
欧米など多くの国・地域では、商品ラベルの中にRSPO認証や「パーム油不使用」など、消費者のパーム油への関心の高さがうかがえますが、日本にはこうした背景もあり、まだパーム油がどの程度問題なのかについて、あまり知られていないのが現状です。
またEUで特に問題となっているバイオマス燃料についても、日本ではRSPO認証を得たパーム油に限り、電力の固定価格買取制度(FIT:補助金)の対象となっています。
ただし、世界の持続可能なパーム油の生産といった動きに伴い、パーム油の原料価格は高騰しています。それでもなお日本ではパーム油の燃料への活用の動きはまだ止まる気配が見られません。
代替策としてパーム油の搾りかす(PKS)の活用を求める声もありますが、日本では生産できず輸入に頼らなければならない時点で、とても持続可能な燃料の調達方法とは言えないのも事実です。
今後、さらにパーム油への規制を求め、日本での使用量を減らすなど、思いきった動きも必要となるのではないでしょうか。
パーム油問題に関して私たちができること
これまでパーム油に関するさまざまな問題を取り上げてきましたが、実際にわたしたちが出来ることはあるのでしょうか。
ここでは、消費者の視点から、暮らしの中で実践できる身近な方法をご紹介します。
RSPO認証ラベルの付いた商品を選ぶ
日本では2019年時点で、157社がRSPO認証を取得しています。
パーム油は汎用性が高く、幅広い商品に用いられるからこそ、普段の買い物の中でパーム油が使われていると分かった場合には、認証ラベルの有無を選択肢のひとつに入れることが大切です。
また、買う以前の選択肢として「本当にその商品が必要かどうか」を吟味することもまた大切です。
たとえ少量でもパーム油が使われている以上、わたしたち消費者が購入するということは、パーム油の生産に加担していることを少なからず意味します。そもそもその商品が本当に必要なのかを考え、購入を必要最低限に抑えるのも、パーム油の消費を考える上で出来ることのひとつだと言えます。
パーム油とSDGs
最後に、パーム油がSDGsとどのようなかかわりを持つのかについてご紹介します。
環境や労働環境への配慮といった観点から、さまざまなSDGs目標に当てはまるパーム油ですが、今回は最も関係が深いと思われる目標12について見ていきましょう。
SDGs12「つくる責任つかう責任」と関連
目標12「つくる責任つかう責任」では、持続可能な形での消費~生産~廃棄のあり方を掲げ、環境や人権・倫理的な社会づくりといった幅広い分野に配慮したものづくりを求めています。
パーム油の認証制度を策定したRSPOの目的「持続可能なパーム油の生産・調達」にもあるように、農家や生産者から加工業者・流通業者といった、パーム油に関わるすべての人と企業が環境に配慮し、また当事者自身の健康や経済状況にも気を遣うことが、より長く、人にも地球にも負担の少ない形でのパーム油利用を続けるカギとなります。
まとめ
今回はパーム油について、基礎知識や問題点、そして持続可能な生産・流通をサポートするRSPOまで、幅広くご紹介しました。
原料として使われるため、普段の生活の中では目につきにくい存在ではありますが、わたしたちの暮らしに密接で、さまざまな商品に使われているからこそ、何か問題でどう向き合うのが適切なのか、ひとりひとりが学び行動することが大切です。
<参考リスト>
パーム油の問題とは?私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの |WWFジャパン
Palm Oil – Our World in Data
実はここにも!身の回りのパーム油を調べてみた | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
3分でわかるパーム油|認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン
バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー
酸化防止剤BHA(プチルヒドロキシアニソール)の発がん性問題の始末記|日本農芸化学会誌 Vol. 57 (1983) No. 10 P 1078-1080
・食品添加物としてのブチルヒドロキシアニソール及び臭素酸カリウムの取扱いについて(◆昭和57年05月10日環食化第19号)
脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響:農林水産省
Making sustainable palm oil the norm – Roundtable on Sustainable Palm Oil (RSPO)
RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証について |WWFジャパン
RSPO SCC Standard|RSPO
RSPO ISH Standard 2019|RSPO
RSPO Principles and Criteria for Sustainable Palm Oil Production|RSPO
EU lawmakers adopt ban on goods linked to deforestation – DW – 04/19/2023
食品表示基準の施行に伴う食用植物油脂の日本農林規格等の一部を改正する件 新旧対照表|農水省