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ソーシャルグッドとは?意味やSDGsとの関係そして企業の事例や商品も紹介

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近年、SDGsに対する意識の高まりとともに、サステナブルやエシカルなどの関連する言葉の注目度も上昇しています。そのうちのひとつが今回取り上げる「ソーシャルグッド」です。

この記事では、ソーシャルグッドの意味、メリット・デメリット、具体的な事例や商品、SDGsとの関連について解説していきます。ソーシャルグッドについて理解を深められれば、自分にとっても地球にとっても優しい選択ができるようになるはずです。

ソーシャルグッドとは

ソーシャルグッドとは「社会(social)」に対して「良い(good)」影響がある活動や商品の総称です。

もう少し噛み砕くと、人にも環境にも優しい活動や商品がソーシャルグッドということになります。この中には環境、人種差別やLGBT、地域活性化、育児・介護など、現在地球が抱えている様々な課題の解決を目指す取り組みが含まれます。また、一時的に援助するだけではなく、持続可能な仕組み作りも重要とされています。

CSR・CSVとの違い

ソーシャルグッドの説明を見ると、CSRやCSVとの違いがわからない方が多いと思います。CSRは企業の社会的責任という意味です。これは、企業が自身の経済活動による社会への影響に対して責任を持ち、「持続可能な社会」を目指して活動を進めることです。そのため、現状は地域のゴミ拾いや募金活動、植林などのボランティア活動が多い傾向にあります。

対してCSVは共通価値の創造という意味です。これは、企業が本業を通じて社会課題の解決を目指す活動を指します。

つまり、社会課題の解決と同時に経済価値を生み出すことがCSVであるため、

  • ソーシャルグッドな商品を展開することがCSVにつながる
  • 反対にCSVに取り組むためにソーシャルグッドな商品を生み出す

といった関係にあるとも言えます。

ソーシャルグッドが注目される背景

ではなぜ今、ソーシャルグッドが注目されているのでしょうか。背景には、個々人の意識の変化があるようです。

サステナブルへの意識の変化

環境保護に関する運動は以前からも展開されていましたが、ソーシャルグッドは2010年頃から注目され始めたと言われています。特にこの頃から、大雨や干ばつが多発するなど、気候変動・異常気象の影響多くの人が実感するようになりました。これにより、個々人が環境問題を自分ごととして捉え、解決に向けてソーシャルグッドへの意識が高まったと考えられます。

そして2015年にはSDGsが採択され、環境・貧困・不平等などの問題解決に世界全体で取り組もうとする動きが加速したことも追い風となっています。

また近年では、ミレニアル世代やZ世代など若年層の環境意識の高さも理由のひとつとして挙げられます。

  • 生まれた時から環境破壊が問題視されていたこと
  • SNSをよく使って話題のトピックスにすぐアクセスできること
  • ジェンダーや働き方なども多様性の話題が盛んに報じられていること

など、意識せずとも多くの情報が入ってくる環境にいることで、ソーシャルグッドへの関心が高くなっていると見られています。

企業におけるソーシャルグッドの取り組み事例

では、企業における実際に行なわれているソーシャルグッドの取り組み事例を紹介していきましょう。

無印良品

無印良品(良品計画)では、2018年に「ソーシャルグッド事業部」が誕生しました。「そもそも無印良品は、1980年にソーシャルグッドな事業として立ち上がった」(日本経済新聞:無印良品、ソーシャルグッド事業部は何をしているのか)との言葉通り、早くからソーシャルグッドに関する取り組みを進めており、規格から外れた不揃いなりんごを使った商品や、無駄を省いたシンプルな商品がトレードマークとなっています。

ソーシャルグッド事業部が関わったプロジェクトとして、2020年にオープンした「無印良品 直江津」があります。この店舗は、過疎化してしまった中心市街地の大型テナントにあり、レストランでは地元食材・地元飲食店のメニューを使うなど、地域活性化を担う店舗づくりを目指しています。

他にも、高齢化している地区への移動販売(MUJI to GO)、シャッター通りとなってしまった中心市街地の空き店舗への出店など、各地域でプロジェクトを行なっています。移動販売では、地元スーパーと競合しないよう生鮮品は扱わず、車両もコロナ禍で観光が減ってしまった地元バス会社に委託するなど、まさにソーシャルグッドな取り組みとなっています。

ユーグレナ

ユーグレナは、ミドリムシ(ユーグレナ)の栄養素に着目し、ヘルスケア用品・化粧品・バイオ燃料まで手がけている企業です。ユーグレナではソーシャルグッドな取り組みとして2014年から「ユーグレナGENKIプログラム」を行なっています。これは、栄養問題解決に向け、プログラム対象商品の売り上げの一部を利用してバングラデシュの子どもたちへユーグレナ入りクッキーを届けるプロジェクトです。

ユーグレナの創業者は、バングラデシュで栄養失調の子どもたちを目の当たりにし、栄養豊富なユーグレナを活用した事業を行う会社の設立を決意したと言います。クッキー配布は2022年末時点で累計1,500万食を突破し、約1万人の子どもたちが週に5日クッキーを食べることができています。

NIKE

スニーカーなどのスポーツ用品を販売するNIKEでも、ソーシャルグッドな取り組みが見られます。NIKEでは2018年に「Dream Crasy」というキャンペーンが行なわれました。これは、「Just Do It」スローガンの30周年記念のメインビジュアルとなる広告で、有色人種への差別・暴力に抗議するため試合前の国歌斉唱で起立を拒否したコリン・キャパニック選手を起用したものです。NIKEとしてもキャパニック選手の姿勢を支持し、人種差別に反対するスタンスを示しました。

アメリカでは賛否両論あり保守派を中心に炎上し、一時株価も大幅に減少しましたが、結果として売り上げが前年同期比で10%増加。広告誌でも最優秀賞を受賞、支持層を確実に増やしていきました。

ソーシャルグッドな商品例

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ここからはソーシャルグッドな商品を紹介します。

ソーシャルグッドな食品のサブスクサービス

プラントベース月替りBOX【定期便】(初回)
出典:プラントベース月替りBOX【定期便】(初回)

ソーシャルグッド&エシカルな商品を販売するインターネットショップGood Good Martでは、ソーシャルグッドな商品を月替わりで購入できるサブスクリプションサービスがあります。その中にある「プラントベース月替りBOX」では、ショップおすすめのプラントベース食品(植物性食品)が、主食・レトルト・お菓子・調味料などバランスよく楽しめます。月替わりなので知らない商品に出会える楽しさも。毎月6〜10品入って4,500円(税込み、送料別)です。

植物性食品は、動物性食品に比べて環境負荷が低く、低脂肪で健康にも良いなど様々なメリットがあります。自然環境に負荷をかけないオーガニック食材を使用したものや、障がい者就労施設で製造されたものなどもセットに含まれています。

【関連記事】プラントベースで「食のバリアフリー」と「自分にも世界にもGoodな消費」を広げたい|株式会社フレンバシー

コーヒーかすを利用したバス用品

BathCafe コーヒースクラブソープ【石鹸】 – SOCIAL GOODs
出典:BathCafe コーヒースクラブソープ【石鹸】 – SOCIAL GOODs

同じくソーシャルグッド商品を販売するSOCIAL GOODsでは、コーヒーかすや流通の過程で捨てられているものをアップサイクルしています。例えば、コーヒーかすをスクラブとして配合した石鹸や、入浴剤、布製品、お菓子などがあります。写真の石鹸は、コカ・コーラボトリングの工場から出るコーヒーかすを利用したもので、ひとつ1,320円(税込み)です。

ソーシャルグッドのメリット

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ここまで見てきたように近年、ソーシャルグッドな商品も多く販売されるようになっています。では、ソーシャルグッドに取り組むことはどのようなメリットがあるのでしょうか。

企業にとってのメリット

企業にとって、ソーシャルグッドに取り組むことは企業イメージを向上させることに繋がります。そして現在のトレンドでもあるため、認知度の拡大も見込まれ、同業種の中での差別化も期待されます。

また、ソーシャルグッドは従業員の働きやすさにも目を向ける必要があります。働きやすい環境を整えることで従業員のモチベーションが向上すれば、今までになかったアイデアが出ることも考えられ、会社の可能性が広がるかもしれません。

消費者にとってのメリット

私たち消費者がソーシャルグッドな商品やサービスを利用することは、自分にとって良いということでもあります。例えばオーガニック野菜やオーガニックコットンのTシャツを選べば、体にとっても良い影響があるかもしれません。また、地球が抱える課題の解決につながる行動を起こしたいと考えている場合、日常で行える消費行動がアクションのひとつとなることもあります。

ソーシャルグッドのデメリット・課題

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とはいえ、ソーシャルグッドに取り組むことにはデメリットもあります。

企業にとってのデメリット

ソーシャルグッドに取り組むことは、環境に配慮した素材を使ったり適正な価格を守ったりするため、コストが高くなる傾向があります。価格について消費者の理解を得られなければ商品やサービスを利用してもらえず、ソーシャルグッドに取り組んだとしても損失を抱えることになってしまいます

また、ソーシャルグッドを謳っていても、原料の調達や下請け工場での生産工程で児童労働や従業員の健康被害などがある可能性もあります。企業側が知らなかったとしても、サプライチェーンを管理するのは企業の責任となるため、何か問題が発生した際には消費者からの信用を失いかねません。サプライチェーン全体の管理を徹底する必要があるでしょう。

消費者にとってのデメリット

ソーシャルグッドな選択をしようとする場合、背景にある問題について知っておく必要があります。そしてその問題の解決に繋がる行動が含まれているかどうか、有害な成分が含まれていないかどうか、などにも着目しておかなければなりません。

そして、ひとくちにソーシャルグッドと言っても、様々なジャンルがあります。環境保護や地域活性化貧困対策など、どの問題にフォーカスするか考える必要もあり、情報収集やその情報の取捨選択が大変だと感じるかもしれません。

メリット・デメリットを理解した上で、無理なく利用できたらいいですね。

ソーシャルグッドに関するアワードやイベント

ここまで、様々な角度からソーシャルグッドについて見てきました。近年では、ソーシャルグッドに取り組む企業商品人を表彰するアワードやイベントも開催されるようになっています。ここでは、代表的なアワード・イベントを紹介します。

ソーシャルプロダクツアワード

ソーシャルプロダクツ・アワード
出典:ソーシャルプロダクツ・アワード

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会が行なう、持続可能な社会の実現につながる商品を認定・表彰する活動が「ソーシャルプロダクツ・アワード」です。2012年から始まり、2023年で10回目を迎えました。年度ごとに変わる「年度テーマ」部門と「自由テーマ」部門があります。

ソーシャルプロダクツとは、持続可能な社会の実現に貢献するもので、

  • エコ(環境配慮)
  • オーガニック
  • フェアトレード
  • 寄付(売上の一部を通じた寄付)
  • 地域の活力向上
  • 伝統の継承・保存
  • 障害者支援
  • 復興支援

など、人や地球にやさしい商品・サービスの総称です。

2023年度の大賞には株式会社OUIの「スマートアイカメラ」(年度テーマ・DXソーシャルプロダクツ)、株式会社やましたグリーンの「植木の里親」「もらえる植物園」(自由テーマ)が選ばれました。

スマートアイカメラ」は、スマートフォンに取り付ける医療機器で、目の観察、病気の診断ができ、遠隔診療も可能です。途上国の眼科医療を向上させ、多くの人を失明から救うことができました。

植木の里親」「もらえる植物園」は、遺品や引越しなどで処分せざるを得ない植木を引き取り、新しい里親に譲る活動です。生き物を大切にするコンセプトで、植物や環境に対する意識を高めています。

【関連記事】一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会|ソーシャルプロダクツを通して持続可能な社会の実現へ

ソーシャルグッド・カタパルト

ソーシャルグッド・カタパルトは、 Industry Co-Creation(ICC)サミットにて行なわれる、社会課題の解決を目指す起業家が登壇するプレゼンテーションイベントです。

ICCサミットは、年に2回行なわれている「ともに学び、ともに産業を創る。」をコンセプトとしたカンファレンスで、第一線で活躍するビジネスパーソン400名以上が登壇、参加者は1,000名以上、朝から晩まで真剣に議論し合う場です。その中で、ベンチャー企業や大手企業の新規事業の責任者7分間プレゼンテーションする場がカタパルトと呼ばれています。

カタパルトの中にも以下の7つのジャンルがあり、そのうちのひとつがソーシャルグッド・カタパルトです。

  • スタートアップ・カタパルト(スタートアップ事業、一般公募あり)
  • SaaSカタパルト(Software as a Serviceの略、インターネットを通じて利用できるソフトウェア事業)
  • カタパルト・グランプリ(過去のカタパルトから高評価を得た登壇者による)
  • リアルテック・カタパルト(地球と人類の課題解決に資する研究開発型の革新的テクノロジー事業)
  • クラフテッド・カタパルト(農業やものづくり事業)
  • ソーシャルグッド・カタパルト(ソーシャルグッドな事業)
  • ガーディアン・カタパルト(ICCに出展した企業による)

2023年のソーシャルグッド・カタパルトでは、子どもたちの国際交流を支援するHelloWorld株式会社が優勝しました。HelloWorldは沖縄に拠点を置き、日本国内に住む外国人の家でホームステイを体験できる「まちなか留学」や、オンライン学習・国際交流プラットフォーム「WorldClassroom」の提供、経済状況に関わらずすべての子どもたちに留学体験をとの思いから「まちなか留学基金」の設立などを行なっています。

この他にも、障がい者雇用・寝具のリサイクル・児童養護施設の職員不足解消などの事業のプレゼンテーションが行なわれました。ICCサミットでは参加者同士の交流も盛んで、協業や資金提供などの連携も生まれています。

ソーシャルグッドとSDGs

sdgsロゴ

最後にソーシャルグッドとSDGsの関連性を確認しておきましょう。

すべての目標と関連し合っている

SDGsでは、地球環境と人間活動を持続可能なものにするため、2030年までに達成すべき17の目標を定めています。ソーシャルグッドも社会や環境の問題に対して良い影響をもたらす活動のことを指しており、SDGsのすべての目標と関連性があると言えます。

紹介した無印良品の地域活性化の活動は目標11「住み続けられるまちづくりをに、ユーグレナの栄養問題に対する活動は目標2「飢餓をゼロに、NIKEの人種差別に対する抗議広告は目標10「人や国の不平等をなくそうと、それぞれ関連し合っています。誰一人取り残さない社会を実現するため、多くの企業や人が力を合わせてソーシャルグッドに取り組む必要があるでしょう。

まとめ

ソーシャルグッドについて、 具体的な事例を交えながら紹介しました。

ソーシャルグッドとは、地球環境や社会に対して良い影響を与える活動や商品のことを指し、サステナブル意識の高まりとともに注目されてきました。実際に一部の大手企業はソーシャルグッドに取り組む活動を行なっており、手軽に利用できる商品もあります。ソーシャルグッドな活動に対する表彰制度も設置され話題性も高まっています。

しかしソーシャルグッドは企業にとってSDGsに取り組んでいるとイメージ付けできる一方で、コストが高くなることなどのデメリットもあります。私たち消費者にとっても、環境や人の役に立っていると実感できる一方で、高価なため日常的に購入しにくいと思われるかもしれません。すべてをソーシャルグッドな商品に切り替えるのではなく、少しずつ上手に生活の中に取り入れられたらいいですね。

参考資料
ソーシャルグッド | SDGs用語集 | 一般社団法人 日本ノハム協会
「ソーシャルグッド」とは?意味や背景、日本や世界の事例を解説 | サステナブルタイムズ by ユーグレナ | 
日本経済新聞:無印良品、ソーシャルグッド事業部は何をしているのか
MUJI BUSINESS CAMP WEEK- ソーシャルグッドな取り組み | 良品計画
株式会社ユーグレナ|ユーグレナGENKIプログラム
ナイキのコリン・キャパニックを起用した“炎上”広告が、広告誌の最優秀賞を受賞 – WWDJAPAN
ソーシャルプロダクツ・アワード
ICCサミット KYOTO 2023
すべての子どもに届く英語教育で、多様性のある社会の実現を目指す「HelloWorld」(ICC FUKUOKA 2023)