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スウェーデンが環境のために考える循環経済【ファストファッションからの脱却】

だれもが知っている有名ファストファッションブランド、H&M(ヘンネスアンドマウリッツ)はスウェーデン発祥です。1990年代から世界規模で台頭してきたファストファッションですが、今ファッション業界にはあらたな持続可能な商品の模索や、開発への大きな課題があります

それではスウェーデン人が考える、持続可能なファッションとは一体どういうものなのでしょうか。たとえば物価の高い北欧の国々では、ものをリサイクルする考え方が一般に根付いています。また、リサイクルだけでは補えない、新しいビジネスの展開や考えかたも注目されているのです。

スウェーデンのファッション業界から見る、持続可能な経済と消費活動についてご紹介していきます。

ファストファッション終焉の時代?

低価格帯で若い年代にも手に取りやすく、なおかつ流行の最先端を積極的に取り入れているファストファッション。世界的な規模で生産されることから価格を抑えられる反面、商品の入れ替えが早く、流行に左右されるために商品としてのサイクルが短いのが欠点です。

1990年代から世界中の若者を中心に注目を集めてきたファストファッションですが、現在スウェーデンでは衣類を長持ちさせるための解決策の一環として、新しいビジネスモデルが模索されています。

ファストファッション大国のスウェーデン

2008年にスウェーデン発のファッションブランドH&Mが日本進出を果たし、今や誰もが知るファストファッションブランドとなりました。

ほかにもGina Tricot(ギーナ・トリコット)やKappohl(カッポール)など、スウェーデン発のファッションブランドは実に数多くあります。街なかには必ず店舗を構えているばかりか、どのショッピングモールに行っても敷地面積が広いのはファストファッションブランドです。

ファッションはいつも時代とともに変化し、常に人々の生み出す新しいデザインへの欲求によって定義され、形作られています。しかしながらトレンドによって生み出される環境汚染は見逃すことのできない問題です。

たとえば多くのファストファッションブランドの製品は、賃金の安い発展途上国や貧困国で縫製されています。ノンストップで稼働する工場で働く最低賃金を下回る労働環境や、未成年者の就労は、世界規模で改善していく必要があります。

また、多くのファストファッションの製品はリサイクルされずに破棄されているのが現状です。サイズの極端に小さいものや大きいものは売れ残りやすく、無駄も出ます。ファストファッションの製品は低価格で購入するため、捨てるときの罪悪感も少ないのです。

このような問題点を多く抱えるファストファッションブランドは、たとえば有名なデザイナーとのコラボレーションによる企画や、高品質な素材を積極的に取り入れ、安くても質のよい製品を生み出す方向へとシフトチェンジが始まっています。

実際に有名デザイナーとのコラボ商品が発表されると、スウェーデンではめずらしく、開店前から店舗に行列ができることも多くあります。店内では試着室の順番を待てない人々が、その場で服を脱いで着替え始めるなど、日本ではありえない光景が繰り広げられます。

現代の私たちの消費活動は、ファストファッション的な考えかたに基づいていると感じる部分があります。北欧人はよく、ものを購入するときは「欲しいものではなく必要なものを買う」という基準を大切にしているといいます。

驚くほどに安い商品は多くの場合、その製造における過程や条件があまりよくないことがほとんどです。つまり、あなたの購入する衣類の代価を、代わりに払った人が世界のどこかにいるということです。

長く着ることで不要なゴミを増やさない企業努力は売上にも反映しており、ファストファッション業界全体では年々売上が伸びているのも事実です。

ものを買うときの考え方や購入の仕方を今一度考え直し、マインドセットが必要なのかもしれませんね。 

スウェーデンのスローファッションブランドの取り組み

ファストファッションの対局にあるのが、スローファッションという考えかたです。スウェーデンの多くのファッションブランドは、地球環境や人・生き物・社会福祉などの人間の権利を守るために、ファストファッションに代わる安価な代替品を提供しています。

スウェーデンでは衣類に関しても持続可能であると考える人が増えています。どのような条件下で縫製されたとしても、衣類はしょせん消耗品にほかなりません。しかしながら自分にとって長く着続けられる洋服を選ぶことや、愛着の持てる服を選ぶことは、さほど難しいことでもありません。

スローファッションは、サスティナブルファッションやエシカルファッションとも呼ばれるとおり、今ではファッション界のトレンド感すらあります。

農薬や肥料を使わないオーガニック素材や天然素材を使えば、環境に優しいだけでなくリサイクルが可能です。きちんと縫製された衣類は洗濯にも強く、長く着続けられます。毛皮や革製品など動物性の素材を使わなければ、乱獲も防げます。

自分の暮らす地域に近い原産国でつくられる製品を選んだり、地元の製品を積極的に利用したりすることで輸出入を減らし、物流にともなう二酸化炭素の排出量が減らせますし、自国の経済に貢献できます。

もちろんすべてが理想どおりには行きませんが、二次廃棄物を減らし二酸化炭素の排出量を積極的に削減しようと試みているブランドは、実際に数多くあります。

スウェーデン・ヨーテボリ発の女性ファッションブランドNA-KDは、リサイクル素材やオーガニック素材を使い、オンラインベースで商品販売を展開しています。北欧人に好まれるベーシックな服の多いCOSは、オーガニックやリサイクル素材だけではなく、ヴィーガンやミニマリストのためのブランドとしても知られています。

靴メーカーのVagabond(ヴァガボンド)も、オーガニック素材やリサイクル素材を用いています。廃棄物を減らすためにリサイクル素材から新しい靴を作り、2017年からは古くなった靴を店舗へ持ち込むと、修理したりリサイクルによって新しい靴へと生まれ変わらせたりできるようになりました。

新しい衣類を購入する基準は人それぞれです。長年着ているから、色や形の流行が終わってしまったから、着飽きてしまったから、体型や体格に合わなくなってきたからなど個々の理由があります。どんなにサスティナブルな衣服を購入しても、いずれは買い換えるときがきますが、壊れた服や靴はテイラーに持っていけば直せますし、お財布や環境にも優しい暮らしができます。

たとえばスウェーデンでは高価な皮製のブーツを購入しても、冬の間に路上に撒かれる凍結防止の塩化カルシウム(融雪剤)によって染みができたり、皮が劣化したりして、1シーズンで履けなくなってしまいます。

同じく値段が張ってもゴアテックス製のものを買えば、壊れた靴底やファスナーを直して10年近く履ける場合もあります。ゴアテックスは水を通さないので足が冷えにく、経年による劣化が少ないので、実際にスウェーデンで暮らす場合に革靴よりもずっと合理的です。

サーキュラーファッションという考え方

現在企業は衣類を長持ちさせるためにさまざまな新しい方法を見つけ、積極的に取り組んでいます。解決策をより早く実現させるため、多くのブランドが実際に協力しあい、知識を共有し始めています。

そのひとつがサーキュラーファッション(循環型のファッション)という考え方です。たとえば天然の再利用できる素材の利用・長く使えるデザインや耐久性・汚染や廃棄物を生み出さない生産方法などがサーキュラーファッションの基本概念です。

クレードテーケット(Klädoteket)は図書館で本を借りるように洋服を借りるという、サーキュラーファッションのビジネスモデルのひとつです。衣服を借りるには図書館で図書カードを作るように無料会員になる必要がありますが、洋服を借りる費用はかかりません

プロムや結婚式など特別な日やイベントのために、その日にしか使わない高級な衣類は手を出しにくいものです。女性の場合は毎週末招待される結婚式のドレスの支出がかさんで、困った経験をした方もいるのではないでしょうか。

その日にしか使わない服やアクセサリーを購入せずにレンタルするのは、環境にも家計にも優しいですね。クレードテーケットではデザイナーズを始めとする洋服も揃っています。また、新品のものだけではなくセカンドハンドやヴィンテージなど、消費者に合わせたさまざまな好みの衣類が取り揃えられています。地元のデザイナーの商品や地元で生産された衣類があるのも、スウェーデンの人々に好まれる理由です。

実はスウェーデンでは、このようにレンタルできる実用品がたくさんあります。日本でもカーシェアやリースは当たり前ですが、短期滞在者には便利な家具のリースや、日本では購入が当たり前の楽器なども月払いで借りられます。

サーキュラーファッションは、今までの大量生産や大量消費されたファストファッション型の経済を見直し、持続可能なサイクルを生み出すだけではありません。長期的な視線では天然資源への負担を減らし、より持続可能な生活を目指す方法のひとつとなっています。

日用品リサイクル市場の拡大

スウェーデンではLoppis(ロッピス)と呼ばれる蚤の市や、リサイクルショップが盛んです。リサイクルショップは大手の経営のものありますし、陶器や家具など専門の個人店もたくさんあります。日本で北欧ブームが起こったとき、家具や北欧デザインのヴィンテージも商品を買い集める日本人バイヤーもたくさんいました。

公園や教会などを会場にして、夏の期間や週末だけ執り行われる子供用品のリサイクルショップもあれば、毎週末決まった日時に広場で開催される蚤の市などもあります。

スウェーデンでよく知られている、リサイクルショップやオンラインショップの一部をご紹介していきます。

増え続けるリサイクルショップ

スウェーデンではどの街に行っても必ず、リサイクルショップや古物市場を見つけられます。街の小道に一歩入れば、おじいさんが経営している小さなヴィンテージの日用品を売る店や、若者向けのおしゃれな古着屋さんがあります。大型のショッピングモール内には、おしゃれで洗練されたブティックのような内装のリサイクルショップも見られます。

ReTuna(リトゥーナ)

ReTunaはストックホルム市内から車で約2時間ほど走った、エスキルストゥーナ(Eskilstuna)にあるショッピングモールです。さまざまなメディアでも取り上げられ、一躍有名になった理由はモール内のすべてのショップがリサイクルショップという、今までになかったコンセプト

モール内には誰もが自由に不用品を持ち込める集積所があります。例えば新しいものを買ったので使わなくなった電化製品や、子供の成長で不要になった子供服など、家庭には不用品があふれています。それらを分類して捨てると、各ショップ定員が各自のセンスで売れるものを引き取り、ショップ内で販売するという仕組みです。

モール内の各テナントは集積所に捨てられたものを自由に引き取り、リメイクしたりメンテナンスを施したりしたのちに、販売しています。元は不用品の山ですが、宝探しのようにわくわくする空間です。

Myrorna (ミーロナ)

ミーロナは蚤の市ならず、アリの市という名前のリサイクルショップ。スウェーデン全土で店舗を展開しているので、大きな街には必ずあります。衣類をはじめ靴や鞄・陶磁器やガラス製品・家具・絵画・電気製品など、日常生活のほとんどの不用品を回収販売しています。

おもちゃに限っては、2007年以前に製造されたプラスチック製品は除外されるなど一部の規制はありますが、遺品整理も行っています。回収方法は不用品を店舗にある収集場所に持っていくだけ。ストックホルムやヨーテボリなどの大都市では自宅へのピックアップもしてくれます。

このようにスウェーデンのリサイクルショップは、日本のような買い取り方式ではなく、不用品を無料で回収し販売するシステムが一般的です。

Erikshjälpen(エリクスイェルペン)

エリクスイェルペンは南スウェーデンを中心に展開している非営利のセカンドハンドショップです。ほかのリサイクルショップ同様に、一般の市民が不用品を持ち込み店舗販売がされています。

不用品を回収できる店舗や回収時間は限られていますが、店舗裏には倉庫があり、決められた時間内であればどのような不用品も基本的に寄付という形で持ち込みができます。

エリクスイェルペンは子供の権利団体が運営しています。世界の貧困国の子どもたちの健康や教育のための援助・支援のために活動が主です。店舗の売上金は地域だけでなく、世界の16カ国の子どもたちのために役立っています。

オンライン上のリサイクルショップ

スウェーデンでは日本のメルカリのように、オンライン上のリサイクルショップでの売買も盛んに行われています。スウェーデンでよく知られているオンラインリサイクルショップのそれぞれの特色をご紹介します。

blocket(ブロッケット)

ブロッケットはスウェーデン最大手の古参リサイクルショップです。スウェーデンではもし何かが欲しい場合に、まずチェックするサイトと言ってもよいでしょう。個人でも企業でも出品ができ、金額も自分で自由に決められます

家電から日用品・家具など、どんなものでもほぼ手に入ります。個人間の売買なのでやりとりも手軽です。サイトリニューアルにともない、きちんと個人のIDで認証を取り、アカウントを作らなければサイト自体が利用できなくなっていますので、安心できます。

大きいものでは車や住宅、期間限定の相部屋や引越しサービスなど、ありとあらゆるものが取引されています。また、ペットなど動物の売買も可能※です。

※スウェーデンでは犬猫をはじめとするペットは、ブリーダーからのみ購入が可能です。サイト上に出ているペットもブリーダーの広告がメインとなります。

ブロッケット公式サイト

Tradera (トラディエラ)

トラディエラは大手のオークションサイトです。売り手は商品の開始価格を設定し、最高入札者へ販売します。また、「今すぐ購入」の機能もあり、固定価格を設定すると入札せずに直接購入できます。

売り手の出品商品が売れた場合に限り、商品の10%を手数料としてトラディエラ側に支払います。商品が売れずに残った場合には課金されませんが、オプションのアドオン機能を使ったり、1ヶ月に100件以上出品したりすると課金の対象になります。

トラディエラ公サイト

Sellpy (セルピー)

セルピーはオンラインのセカンドハンドショップです。個人で不要なものを専用の袋に入れて送ると、会社側が上記で紹介したブロッケットやトラディエラなどのサイトに出品してくれるという、時間のない現代人の需要に合致した取引方法となっています。

まずはサイトに登録をして専用の袋を購入する必要がありますが、袋に入る大きさのものであればどんなものでも送れます(ただし50クローナ以下の商品の取引はできません)。不用品を詰めた袋は、自分で最寄りの郵便局へ持ち込んでもいいですし、数が多い場合は自宅まで引き取りにきれくれるサービスもあります。

家に不用品があっても、ひとつずつの商品の写真を撮ってアプリに上げるのは、結構な手間です。セルピーを使えば時間の短縮になり、面倒な作業から開放されます。

消費者意識の改革と循環経済

「ゆりかごから墓場まで」は、第二次世界大戦後にイギリスの労働党が掲げた、おもに医療保険サービスに関するスローガンです。

スウェーデンでは今、エネルギーだけでなく衣類など工業製品を生産するために、自然の素材を積極的に利用しています。そして100%リサイクル可能なバイオエコノミーを提唱することで、まさに循環経済における「ゆりかごから墓場まで」を実現しようとしています

捨てるものはなにもないという考え方

不用品ばかりを集めたショッピングモールに人気が集まるように、スウェーデンでは基本的に「捨てるものはなにもない」という考え方が一般に強く根付いています

たとえばスウェーデン人の友人に引越しの手伝いを頼むと、処分しようと考えていた衣類や日用品を持ち帰ってくれることがよくあります。後日たまたま街で友人のお母さんと行きあった際に、そのお母さんが私が捨てようとしていた洋服を着ていて驚くということもありました。

一般のアパートに必ずあるゴミ集積所でも、元の持ち主が「うちでは不要だけどまだ使えるから誰かもらってくれないかな」と感じるものは、コンテナ内に破棄せずに別に置いてあります。新品の靴やまだ使える家具、植木鉢や食器類などの雑貨がほとんどですが、しばらくするとなくなっていることもあるので、誰か持ち帰る人がいるのでしょう。

必要なのは消費者の意識改革

スウェーデンでは、どんなものでもリサイクルできることは知られていますが、リサイクルをするかどうかは消費者の行動にゆだねられます。不必要なものは廃棄する必要がありますし、決定するのは消費者の行動の問題です。

スウェーデンでのリサイクル活動に見られるサーキュラーエコノミーは、ものごとをより環境に優しくするだけではありません。持続可能な経済や消費活動は、まさに私たち消費者にゆだねられていることを誰もが知る必要があります。

消費活動を循環型の経済に移行するためには、まず消費者意識の改革が必要です。たとえばリサイクルではなく”アップサイクル”の活動が盛んに提唱されるように、持続可能な経済活動を循環させるためには、消費者のニーズや多様性を満たしながらも、新たな消費モデルを見直したり、提案したりする必要が出てくるのです。

まとめ

サスティナブルなファッションはこれまで以上に求められていて、持続可能な消費のために私たちが考えられることはたくさんあります。

たとえば、洋服一枚を買うにも、その洋服の原材料は何なのか?誰が作っているのか?どの国や地域で生産されているのか?を常に考えるのは大切です。ひとりひとりが少しずつ自分の消費活動に意識を向けるだけでも、多くの持続可能性のポイントを見つけられます。

スウェーデンが求める新しい生活と新たな消費活動の時代は、個人の考えかたひとつで大きく変化する可能性があるのです。

今までは使い捨てが一般的だった日常の消費の分野においても、今後はただ「消費」するだけではなく、全く新しい「循環モデル」が生まれてくるのではないでしょうか。