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ごみ発電とは?仕組みやメリット・デメリット、日本の現状まで

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読者の皆様の住んでいるところには、それぞれ廃棄物処理施設があると思います。「節電」を呼びかけられることの多いこの頃ですが、近年、廃棄物を燃料として発電するごみ発電がクローズアップされていることをご存じでしょうか。

増え続けるごみを燃料に発電できれば、環境問題やエネルギー問題解決の一助となりそうですが、実際のところはどうなのでしょうか。ごみ発電について、ぜひ一緒に考えていきましょう。もしかしたらお近くの処理施設は、あなたの知らなかった、ごみを燃やすだけではない機能を備えているかもしれません。

ごみ発電とは

ごみ発電とは、ごみを焼却した時に発生する熱を利用して蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すことによって発電を行う方法です。意外に感じる方もいるかもしれませんが、ごみ発電が開始したのは1960年代と歴史ある発電方法となっています。

ごみ発電の歴史

1958年竣工東京都第五清掃工場:余熱利用が始まる

1963年に「生活環境施設整備5か年計画」が策定され、それに基づき各都市でごみ焼却施設の導入・有効な運営が求められてきました。しかし、ごみの分別などの処理は各市町村に任され、増え続けるごみの量に対応することに精一杯の状態が続きました。

わが国で最初のごみ発電施設は、1965年の大阪市西淀工場とされています。しかしまだ発電量も少なく、施設内の消費をまかなうことで精一杯でした。

1970年代には大気汚染問題も顕在化し、ごみの分別やリサイクルが求められるようになりました。何をどのように燃やすべきかという「効率」に目が向けられてきたと言えます。

その後、ごみの排出量が増え続けていく中でごみ処理施設も増えましたが、このままでは近い将来、処理能力の限界を迎えると心配されるようになりました。

2019年の日本のごみ総量は4,274万トンにのぼり、その約7割が焼却されています。ごみ発電から得られたエネルギーは96億kWh、1世帯当たりの年間電力消費量は2,974kWhであるため、約321万世帯分に相当します。有効に使えれば大きなエネルギー源と言えるでしょう。

技術面や運営面で発展途上ではあるものの、ごみ処理、そしてエネルギーの創出の両面から、高いポテンシャルを持つごみ発電です。

廃棄物発電との違い

ごみ発電は廃棄物発電とも言います。廃棄物とごみを広い意味で同じと考えられるように、

ごみ発電=廃棄物発電として説明していきます。

ごみ発電の仕組み

続いて、ごみ発電の仕組みを見ていきましょう。

大きな流れは、

  1. 回収したごみをごみピットに集め、その後焼却炉に移される。
  2. ボイラーによって燃やされ、高熱を出す。
  3. その熱は高圧の蒸気を作り出しタービンを回す。
  4. そしてその回転で発電する。

となっています。

ごみ発電についてつかんでいただいたので、次に「再生可能エネルギー」と「バイオマス」の定義をごみ発電との関連から整理していきたいと思います。

ごみ発電は再生可能エネルギー?

再生可能エネルギーは、文字通り「再生」が「可能」、つまり一度利用しても比較的短期間に資源が補充されて枯渇することのないエネルギーのことです。

具体的には、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどが挙げられます。よく、ごみ発電とバイオマス発電とは違うの?と疑問を持つ方がいます。ここでは両者の関係性を確認しましょう。

バイオマス発電との違いは?関係

バイオマスとは本来バイオ( bio:生物資源)のマス( mass:量)を意味します。

実際はかなり広い意味で使われていて、生物由来の資源のうち石油や石炭などを除いたもの全般をさし、生物燃料とも言われています。

このバイオマス(生物燃料)を、直接燃焼あるいはガス化させて発電タービンを回す発電方法を、バイオマス発電と言います。活用される燃料は、以下のように分類されています。

図からも分かるように、ほとんどが廃棄されるものとなっているため、ごみ発電バイオマス発電の1つと言えます。

ごみ発電量はまだ少ないため、再生可能エネルギーまたは自然エネルギー関連の統計では、バイオマス発電量に含まれて換算されることが多くなっています。

しかしごみ発電は、総発電量も発電効率も徐々に増加しています。ポテンシャルに対して、まだ6割程度に過ぎないと言われており、将来性の期待できる発電方法と言えそうです。

以下のグラフは、平成23年から令和2年までの10年間のごみ処理施設の総発電量と発電効率の推移を示したものです。

2020年(令和2年)には、総発電量は約10GWh、発電効率は約14.05%を示しており、徐々に増加していることが分かります。

発電効率について

ここで、発電効率について確認しておきましょう。

発電効率とは、エネルギー変換効率の1つで、元々持っているエネルギーをどれだけ電気エネルギーに変換できたかという割合を指します。

内在するすべてのエネルギーをすべて電気エネルギーに換えることができれば、発電効率100%と言うことになります。同じコストの設備で発電する場合、発電効率の数値が大きい方が効率がよいと言えます。

発電方法別に比べてみましょう。

先ほど見たように、ごみ発電の発電効率は約14%です。上のグラフと照らし合わせると、太陽光原子力の間に位置しています。化石燃料ほどではないものの、再生可能エネルギーの中では水力発電に次いで2番目に発電効率が良いことが分かります。

では次に、ごみ発電のメリット・デメリットを整理していきましょう。

ごみ発電のメリット

再生可能エネルギーの1つとして将来性のあるごみ発電ですが、発電量にだけ目を向けるのではなく、環境経済・社会の側面からもメリットをしっかりまとめていきたいと思います。

環境面から:廃棄物活用でごみ問題・脱CO2に貢献

廃棄物を燃料とすることは、以下のメリットにつながります。

  1. 廃棄物そのものの量を減少させ、廃棄物最終処分場の残余容量逼迫も緩和させることにつながる。
  2. 化石燃料由来の発電量を補填することでCO2削減につながる。

下のグラフは、廃棄物の焼却から出るCO2の排出量の推移を表すものです。

2009年からの温室効果ガス排出量の総量は横ばいですが、廃棄物エネルギー利用量は増加しています。このエネルギーを化石由来のエネルギーに少しでも多く換えられれば、間接的にCO2削減に貢献することになります。

経済面から:廃棄物は国内調達できる燃料

現在火力発電などに使われている燃料は、そのほとんどを輸入に頼っています。

2018年度の統計では、日本のエネルギー自給率は11.8%と、先進国の中でも低い水準です。

化石燃料の輸入先はサウジアラビアやオーストラリアで、遠国からの輸入で賄っています。中東戦争など長距離の移動の間に起こる様々な紛争、予期せぬ天候不順などは輸送上の大きなリスクです。

ごみを燃料とすることは、日本全体の地産地消となり、リスクの軽減につながります。

社会面から:雇用の創出

地域で出たごみでエネルギーをさらに地域に還元できれば、各地域の地産地消につながります。

生活ごみばかりでなく、畜産業や林業からのごみを燃料として再活用できれば、その地域に雇用を生み出すことも可能になります。

ごみ発電のデメリット・課題

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システム上のポテンシャルは高いごみ発電ですが、現実にはなかなか普及しない現実があります。メリットを考えるとさらなる普及が望まれるのですが、そのために解消しなければならないデメリット・課題があります。

有害物質排出のリスク

もっとも心配されるのが、ダイオキシンの発生です。ダイオキシンの毒性はまだ明らかにされていない部分も大きいものの、特に発がん性等が心配されています。ダイオキシンの発生源は複数考えられますが、その中でも廃棄物の焼却が大きな割合を占めています。

ダイオキシンを分解するための技術も向上していますが、そのための設備投資は高額にのぼります。新しいエネルギー施設に費用がかかる問題は、再生エネルギー全体の課題でもあるため、今後の技術革新が期待されます。

発電出力が安定しない

下のグラフは中規模施設の夏季の1週間の状況です。

発電出力夏季1週間の状況

どの線も不規則に上下してます。

安定した電力が提供できないために、買電量も低く推移し、そのために売電価格 ※ も低く抑えられています。

※ 売電価格

余った電気を売る時の1kWhあたり単価

また、ごみ処理施設は地域に密着した施設であるため、それに付随する発電施設は大きくはありません。

この点については、次の世界と日本のごみ発電の現状を比較するなかで、さらに詳しく見ていきたいと思います。

世界のごみ発電の現状

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再生可能エネルギーの利用は、近年多くの国が取り組んでいます。ごみ発電はその中でどんな位置を占めているのでしょうか。世界の現状を見ていきましょう。

2000年代半ば以降再生エネルギーへの投資は飛躍的に増大し、2020年には化石燃料への投資額の約2.2倍とされています。エネルギー源別に見ると、一貫して太陽エネルギーおよび風力に集中しています。

しかし欧米の先進国では、気候変動への対応からバイオマスを政策的に推進する国が増えています。

ただ、バイオ燃料の原料を飼料や木材に求めすぎると、食糧難・食料価格高騰や森林伐採などにつながるリスクがあります。そのようなマイナスの影響を抑えるために、近年は廃棄物発電が次世代型バイオ燃料の1つとしてクローズアップされており、取り組みが拡大しつつあります。

【取り組み事例】ドイツ・ヴュルツブルグごみ発電所:ごみの特性に合った設備と使い方で高発電効率

ここでは具体的な事例を見ていきましょう。

ヴュルツブルグ(ドイル)ごみ発電所

ヴュルツブルグ(ドイル)ごみ発電所
出典:高効率ごみ発電施設整備マニュアル (env.go.jp)
ヴュルツブルグ(ドイル)ごみ発電所
出典:高効率ごみ発電施設整備マニュアル (env.go.jp)

ヴュルツブルグごみ発電所の発電効率は2008年実績で約20%です。日本の発電効率14%を大きく上回っています。

このごみ発電所では、約90万人分のごみ処理に乾式スクラバー ※ を使用することで、地域の廃棄物に合った排ガス処理を行い、「乾式」のメリットをできるだけ長続きさせるために、生ごみ類は別に集積したり分別するなどして、ごみの水分を減らす努力をしています。

※ スクラバー(排気ガス処理)とは

乾式スクラバー

燃焼で出た排ガスを活性炭やフィルターを通すことで有害物質を除く方法。

フィルターは業者回収・レンタルなどで処理することができる。排ガス中の水分を減らすことでフィルターを長持ちさせることができる。

湿式スクラバー
水や薬液を通したり接触させたりする方法。湿式で使われた循環水は希釈して廃棄する。

発電所の施設設備の維持に使われるエネルギーを減らして発電効率を上げ、地域に配電したり企業に売電したりできれば、経済効果も大きくなります。

この地域では、生ごみは分別・処理後堆肥の原料に加工されるシステムになっているとのこと。食品ロス問題を抱える日本としては、大いに参考になりそうです。

日本のごみ発電の現状

続いて、日本のごみ発電に焦点をあててみましょう。どんな規模の廃棄物発電施設があるのでしょう。

ごみ発電所数と特徴

発電施設をもつごみ焼却施設は、2020年度で総数383です。下のグラフは、欧州と日本の発電施設数を比べたものです。

日本は中小規模の施設が多くなっています。日本のごみ焼却施設だけ見てみると、下のグラフのように5,000kW未満の施設の割合が多く、全体の66%に当たっています。

残念ながら、各プラント※の規模が小さいということは、安定的に充分な発電量が得られないというデメリットにつながっています。

※ プラント plant

規模の大きな工場施設。ここではごみ発電施設をさす。

また日本と世界の廃棄物発電規模を比べると、プラント数は欧米の方が少ないことが次のグラフから分かります。

2001年度の調査結果からは、日本のプラント数はアメリカの2倍以上になっています。それに比べ発電容量半分以下となっています。

各施設の本来のごみ処理量にもよるので総発電量だけでは評価できませんが、下図にあるように、効率の良いエネルギー回収率を得ている施設もあります。

次では、実際に日本の取り組み事例を紹介します。

【取り組み事例】国崎クリーンセンター:広域化で排ガス低減

国崎クリーンセンターは、猪名川(いながわ)上流の大阪府と兵庫県1市3市町村が共同で管理運営するごみ処理施設で、平成12年に設立されました。

中小規模の施設の多さが発電効率を上げるブレーキになっている日本では、ネットワーク化地域全体で発電力をコントロールしたり、リスクを補填しあったりすることが大事です。広域化されること自体、解決につながる有効な方法です。

同センターでは、燃焼システムを工夫したり排ガスを再循環させたりする技術を導入し、燃焼時に排出されるダイオキシンなどの有毒ガスを低減しつつ発電効率を達成し、環境省からも「国内最高水準の公害保証」と評されています。

参考:参 4−1 参考資料4 国内の先進的事例の紹介 第3章において「発電効率向上に係る技術的要素

地域に対する情報公開も積極的に行っています。下のデータ表は12月16日のものですが、「ダイオキシン:0」など、閲覧者はいつでも成果が数値で確認できます。

また「ゆめほたる」という啓発施設も運営し、リメイク教室や木片工作教室などのワークショップ、食品ロスに関するセミナーを開催する等、環境保全についてのイベントを開いています。

【取り組み事例】岡山県真庭市:発電プラントで雇用の拡大

真庭市は、平成17年に9町村が合併してできました。828㎢という東京23区の1.3倍の面積に、約4万5千人の人口を有する山間市です。林野率79%という実に豊かな山林資源を持っていますが、他の多くの地方都市が抱える「人口減」「高齢化」が進んでいる地域でもあります。

真庭市は、林業に立脚した木質バイオマス発電に取り組みました。

実際には、下の画像に見られるような放置された未使用木材や製材所等から出る樹皮・廃材を燃料とする発電施設の稼働です。

平成30年には、灯油価格に換算して推計約38億円に相当する経済効果を発揮しています。

そしてこのプロジェクトは大きな雇用効果も生み出しました。

  • 発電所と関連事業→32人
  • バイオマス集積基地→17人
  • バイオマスツアーガイド→3人+α

などで、50人以上になったと言います。

ツアーガイド等、発電プラントが軌道に乗ったために生まれた新規雇用も見られ、経済面ばかりでなく社会効果も大きかったことが伺われます。

【関連記事】【SDGs未来都市】岡山県真庭市|再生可能エネルギー・木質バイオマスとは?SDGsとの繋がりも

ごみ発電とSDGs

最後に、ごみ発電とSDGsの関係も確認していきましょう。

SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」との関係

ごみ発電は、SDGsの目標のうちいくつもに関連しています。その中でも特に関連が深いのは目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」です。

この目標は「すべての人々が手軽な価格で信頼性の高い持続可能で現代的なエネルギーを利用できるようにする」というテーマのもと、5つのターゲットを掲げています。

ごみはとても身近で現代的な燃料です。ごみ発電の利用で、化石燃料由来の発電に依存することを少しでも減らすことができれば、クリーンな環境に大きく近づくこともできます。

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」との関係

化石燃料由来のエネルギーから再生可能エネルギーへの移行は、気候変動に対する具体的な対策の1つです。その中でもごみ発電は、廃棄物の有効利用でもありCO2排出削減対策でもあるのです。

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」との関係

目標8のテーマは「全ての人々にとって、持続的でだれも排除しない持続可能な経済成長、完全かつ生産的な雇用、働きがいのある人間らしい仕事を促進する」です。

真庭市のように雇用を生み出した事例では、この目標8「働きがいも経済成長も」に関連していると言えるでしょう。

地方創生を目指す多くの地域にとって、この目標8は地域活性化への道しるべになるのではないでしょうか。

まとめ

ごみ発電について、その仕組み、メリット・デメリット、国内内外の現状や取り組み事例をご紹介してきました。

ごみ発電は、廃棄物の減少とCO2の削減という2つの大きな問題に、一石二鳥の可能性を持つ発電技術です。

私たちが生活に必要なエネルギーを選ぶ際には、今まで

  • 経済効率がよいか
  • 安定して供給されるか

を考えてきました。しかしSDGsを視野に入れて再考してみると、

  • 環境に適合しているか

が大きな視点として加わるはずです。さらに「安全性」も大前提になります。

現状ではまだ効率的な発電技術とはいえないごみ発電ですが、注視していく価値は大いにありそうです。ごみの分別などをきちんと行うことで応援することもできそうです。

<参考資料>
経済産業省資源エネルギー庁ホームページ
日本の廃棄物処理の 歴史と現状 
エネルギー白書
令和 2 年度エネルギー消費統計結果概要
水力発電の概要 役割・特徴
今後のごみ発電のあり方について
バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー (meti.go.jp)
再エネのコストを考える|広報特集|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
知っておきたいエネルギーの基礎用語~地域のさまざまなモノが資源になる「バイオマス・エネルギー」|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
廃棄物発電 – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア (nies.go.jp)
第33回 ごみ発電のメリット・デメリット 「燃えるごみ」で発電しよう! | 電気工学を知る | パワーアカデミー
安定供給 | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
「ダイオキシン」ってどんな物質? – 埼玉県環境科学国際センター
欧州など廃棄物発電・ 熱利用との比較 – 3-1
日 本 の 廃 棄 物 処 理
脱炭素社会に向けた真庭の取組林業・バイオマス産業課 – 真庭市公式ホームページ
高効率ごみ発電施設整備マニュアル (env.go.jp)
クリーン発電:山本良一(東京書籍)
木質バイオマスエネルギー<発電>:熊崎実(日刊工業新聞社)
清掃工場・最終処分場:大角修・松藤敏彦(小峰書店)
再生可能エネルギータウン:いわき市(いわき市環境企画課)
「ごみ発電は得か損か」(研究ノート):もりやすふみ(国立」研究所ニュース15巻1号)