大自然と野生動物が魅力の国・オーストラリア。
環境や自然への関心が高いというイメージが強いオーストラリアですが、欧米諸国の中でも自動車CO2の排出量が特に多い国という意外な一面も持っています。
そこで今回は、オーストラリアが自動車CO2排出量を削減するために行っている対策を紹介していきます。
日本でも自転車のシェアリングエコノミーとしてHELLO CYCLING などのサービスがありますが、オーストラリアでは、日本でもなじみ深い乗り物が自動車の代替案として利用されています。
環境問題の解決策となる交通手段を模索している方はぜひ参考にしてくださいね。
オーストラリアは自動車CO2排出量が多い国
オーストラリアは、日本の約20倍という広大な国土を保有しています。
主な移動手段は車で、オーストラリアの自動車普及率は75%と非常に高いです。
そんな車社会のオーストラリアですが、先進国の中でも特に自動車CO2の排出量が多い国であることをご存知でしょうか?
2017年に実施された自動車CO2排出量に関する調査において、オーストラリアは欧州よりも約45%もCO2の排出量が多いことが明らかになりました。
また、自動車普及率86%のアメリカと比較しても、オーストラリアはアメリカのCO2排出量を18%も上回っているという結果が出ています。
CO2の排出量が増えると、温室効果ガスの濃度が上がり大気中に熱がこもります。
地球温暖化をさらに加速させるのはもちろん、大気汚染にも繋がることから、オーストラリアは代替案となる新たな移動手段を打ち出し、環境保全を促進する必要に迫られているのです。
新たな移動手段は電動キックボードや自転車のレンタル!
CO2の排出量削減を目指すオーストラリアで推奨されている新たな交通手段が、レンタルの電動キックボードや自転車です。
車のようにCO2が排出されないことから、環境に優しい新たな交通手段として注目を集めているのです。
特に、労力がいらない電動キックボードの人気が高く、電動キックボードを日常的に使用するユーザーは23万人にも及ぶとされています。
また、オーストラリア国内では実に25万台以上の電動キックボードが稼働しており、あらゆる州で電動キックボードに乗る市民の姿が見られます。
自治体も推奨するエコ活動計画
オーストラリアでレンタル電動キックボードや自転車が普及した背景には、各自治体が実施するエコ活動計画が関係しています。
自治体ごとに「e-mobility strategy」「Shared E-scooter Scheme」「e-scooter shared schemes」といった異なる名称がつけられているものの、主な計画の内容は共通しています。
自動車の代わりの移動手段として電動キックボードや自転車を定着させること、安全な乗り物であるという信頼を市民から獲得すること、効率性アップを目指して技術の向上を目指すこと、エレクトロモビリティ産業の成長を助けることを目的としており、主要な電動キックボード・自転車レンタル業者と連携を取りながら自動車の乗車率軽減を目指しているのです。
また、エコ計画の一環として、オーストラリアの各自治体では、市民が快適に電動キックボードや自転車を利用できるように専用の置き場を設置しています。
郊外はもちろん、大都会の街中にも多くの置き場が確保されているので、ユーザーは自分の都合の良い場所で乗り捨てられるようになっています。
レンタルの仕組み
オーストラリアのレンタル電動キックボードや自転車は、アプリで利用できるものが一般的です。
ここでは、実際に市民がどのようにレンタルしているのかについて説明していきます。
①アプリをインストールしてアカウントを作成する
レンタル電動キックボードや自転車に乗るために、スマホにアプリをインストールします。
エリアによってさまざまな電動キックボード・自転車レンタル業者があるので、自分が乗りたい業者のアプリを選び、アカウントを作成します。
アカウントを作成する際には、レンタル料を控除するためのカード情報入力も必須です。
②地図上で電動スクーターや自転車を探す
アプリを開くと、地図上でレンタル電動キックボードや自転車の位置を確認できます。
置かれている台数や充電の残量なども分かるので、都合の良い立地や状態のものを見つけられるようになっています。
③電動キックボードや自転車の番号・QRコードをアプリで読み取る
レンタル電動キックボードや自転車には、1つずつシリアルナンバーやQRコードが付いています。
乗りたいものが見つかったら、アプリからシリアルナンバーやQRコードを読み取って乗車手続きを行います。
④ロック解除料を払う
路上に置かれている電動キックボードや自転車には、ロック機能が付いています。
アプリから指定の料金を払ったらロックが解除されるので、電動キックボードや自転車に乗って出発です。
⑤乗り終えたら終了ボタンを押す
目的地に到着したら、電動キックボードや自転車から降りてアプリの終了ボタンを押します。
走行した時間に応じて、登録したカードやアプリのチャージ金額から料金が差し引かれる仕組みになっています。
レンタル料は?
オーストラリアのレンタル電動キックボードや自転車には、解除料と走行料がかかります。
具体的な金額は自治体や業者によって変動するものの、解除料は1ドル(90~100円)、走行料は1分60セント程度が一般的です。
そのため、もし電動キックボードや自転車に20分間乗って移動する場合、解除料を含めて13ドル(約1,200円)かかる計算となります。
雨風や暑さを凌げない、車よりも移動時間がかかる、重い物を運びにくいといったデメリットを考えると、レンタル電動キックボードや自転車は決して安価な移動手段とは言えません。
それでも、オーストラリアの各都市では、電動キックボードや自転車に乗る人々が至る所で見られます。
コスパが良いと言えない移動手段でありながら、なぜそれほどまでにレンタル電動キックボードや自転車が普及しているのか。
その理由については、次で詳しくお話ししていきます。
最安値の移動手段じゃなくても人々に普及する理由
オーストラリアにおけるレンタル電動キックボードや自転車の普及は、「安くなくても環境に良いことをしたい」「自分ができる環境保護を行いたい」という市民の考え方に起因しています。
持続可能な世界を作る上で欠かせないSDGsは、日本でも近年耳にする機会が増えた言葉です。
しかし、大自然が身近にあるオーストラリアでは、環境保護が自分たちの未来を守ることに繋がるというSDGsの意識が日本よりも深く根付いています。
「コスパが悪くても、結果として環境保全に繋がるなら自分や子どもたちのために実行したい」と考える市民が多いことから、割高な電動キックボードや自転車をレンタルする層が後を絶たないのです。
経済面を考慮して購入する層も
電動キックボードと自転車は、自動車CO2排出量の削減に貢献する新たな移動手段として普及率を高めている乗り物です。
環境保全やエコ活動は、長期的に続けることに意味があります。
しかし、一般的な公共交通機関よりも高額なことから、「継続的に乗るならレンタルだと高すぎる」「家計に優しい方法で電動キックボードや自転車に乗りたい」と考える市民ももちろんいます。
長期的にエコ活動を行う場合、自分の経済面に無理のない範囲で行うことはとても重要です。
家計への負担が大きすぎるやり方では、一時的なエコ活動で終わってしまいます。
そこで、長いスパンで電動キックボードや自転車に乗るために、購入を検討する層も増えています。
初期費用はかかるものの、積み重なっていくロック解除料やレンタル料を考えると、自分の電動キックボードや自転車を手に入れる方が経済的です。
また、電動キックボードや自転車に似た電動二輪車・セグウェイを交通手段にする市民も多く、それぞれが自分に合う新たな移動方法を模索しているのです。
まとめ
電動スクーターと自転車は、自動車CO2排出量が多いオーストラリアにおける新たな交通手段として活躍しています。
決してコスパが良いとは言えない乗り物ですが、地球温暖化や大気汚染を食い止めたいと考える市民から高い支持を得ています。
日本でも、近年利用者が増加傾向にある電動キックボード。
単なる移動手段として一時的に乗るのではなく、環境を守るための長期的な乗り物として検討してみてはいかがでしょうか?