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Uターン・Iターン・Jターンとは?メリット・デメリット、成功事例も

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Uターンという言葉は、その文字の形から元の位置に戻ることを意味し、すでによく使われています。では、Iターン、Jターンはいかがでしょう。

Uターン・Iターン・Jターンは、主に大都市圏から地方へ移住する3つのパターンを意味する言葉です。

人生100年時代を迎え、何を第一の目的にして、どこで暮らすかは、益々大切になってきました。3つのパターンのメリット・デメリットをそれぞれよく知り、見通しを持って人生の本拠地を選びたいものです。成功例から学んだり、支援情報についてもご紹介しますのでご覧いただき、一緒に考えていきましょう。この記事が移住を考える方々の参考になれば幸いです。

Uターンとは

Uターンとは、地方で生まれ育った人が都市部で一度働いた後に、自分の生れ故郷に戻ることを言います。

自分のキャリアより、生まれ育った土地や自然ゆとりのあるライフスタイル両親や家族のことを考えて踏み切る方が多くなっています。

Uターンのメリット

Uターンには、どんなメリットがあるのでしょうか。都会にはない地方の魅力をさぐっていきましょう。

生活費が安い

とりわけ家賃等の住居費を安く抑えられるのは、大きなメリットです。

賃貸の場合、同じ広さや築年数でひと月の経費は1万円以上違います。また、地方では普通アパートに駐車場が付帯していていることも多く、経費がカットできます。

戸建てやマンションを購入する場合も格段に安くなっています。

食品日用品は住居費ほどの差はありませんが、外食費用などを比べると、都会の方が概ね高くなっています。

通勤ラッシュからの解放

毎日満員電車・バスで通勤するのは、仕事そのものより体力を消耗する場合が少なくありません。それが改善されるのは、体力的に大きなメリットです。その分本来の仕事に集中し易くなるのではないでしょうか。

自然が豊か

地方には豊かな自然が身近にあります。空気や水が美味しい四季折々の景色がある、食べ物も新鮮などの条件は、心身の健康を育むことでしょう。

人とのつながり

都会では、アパートの隣の人とさえ挨拶程度、といった関係がほとんどです。

地方では人とのつながりができやすく、都会よりコミュニティ内の関係も密です。助け合いの心が厚いとも言えます。

Uターンのデメリット

地方生活はよいことばかりではありません。後悔のリスクを減らすためにも、デメリットもみていきましょう。

公共交通機関が少ない

地方では、電車やバスなどの公共交通機関の運行数はかなり少ないのが現実です。車を持っていないと不便なことが多く、高齢になっても運転をせざるをえない環境にあります。

情報量が少ない

インターネットの普及に伴い、どこにいても以前に比べてどこにいても必要な情報が手に入りやすくなり、情報交換も簡単になりましたが、まだ都会と地方の差はあります。都会は人が多く、切磋琢磨して高め合う環境が生まれやすい環境です。地方では物足りないと感じてしまう人もいるようです。

仕事の面だけでなく、映画館美術館舞台公演音楽会の数も、都会の方が多く充実しています。

不可欠な社交性

「人とのつながり」をメリットにあげましたが、冠婚葬祭や地域の行事への出席が多くなると、負担に感じることがあるかもしれません。

また特有のしきたりを重んじる地域もあり、そのコミュニティで快適に暮らすには、慣れるまでは都会で暮らす以上の社交性が不可欠です。

Iターンとは

Iターンとは、生まれ育った故郷から、そこ以外の地域に移住することです。主に都会で育った人が地方の企業に就職する場合に多く使われます。

故郷に住み続けることより、さらに魅力的な環境を求めて移住するケースです。Iターンには、子育てや転職・起業など様々な背景があります。

Iターンのメリット

都会から地方へIターンで移住する場合も、Uターンと同様なメリットがあります。Iターンには、さらにUターンのメリットから派生したものがあります。

リセットして心機一転した生活

生まれ故郷は多くの人にとって暮らしやすく、離れていても懐かしいものです。しかし中には、自分の夢や暮らし方にもっとふさわしい土地があるのではないかと感じる方や、すでに「見つけた!」と思っている方もいるでしょう。

Iターン移住は、それまでのしがらみを断ち切って、心機一転人生の新しいスタートを強く望む人にはよい機会と言えます。

子育てがしやすい

豊かな自然は、それ自体が子どもののびのびとした成長を育むにちがいありません。その上生活が安く抑えられるということは、子どもの教育費に回せる予算ができるということです。さらに密な人間関係は、小さな子供を育てる手助けになり、母親の安心感につながるでしょう。

Iターンのデメリット

Iターンのデメリットは、気候風土利便性や物価人間関係などでなじみのない土地に行くという点です。

それだけに、自らの希望とそれを叶えるにふさわしい移住であるか、移住先の情報を精査する必要があります。

Jターンとは

Jの文字は、Uに少し届かない形です。それも踏まえてJターンとは、地方で生まれ育った人が一度都会で暮らした後、故郷に近い地方に移住することを指します。

仕事とライフスタイル、自然と利便性、仕事の収入と生活費の支出、人付き合いとプイバシー等など、どちらかに偏るのではなくバランスを考えた移住の形です。

Jターンのメリット

Jターンのメリットは、バランスのとれた選択がしやすいということです。

バランスよい選択とは

例えば、

地方で生まれたが東京に進学。その後も東京で就職したが、できれば生まれ故郷に戻りたい。しかし仕事がない・・・。故郷にほど近い別の地方都市なら仕事があり、両親の家からも遠くない。故郷よりそちらの方が利便性もよい。

というような事例があげられます。

仕事に関してばかりでなく、自然環境と利便性、物価と収入・支出、子育て優先か自分たちの余生かなど、一方に偏れない方には魅力的なパターンです。

Jターンのデメリット

Jターンのポイントは「バランスのよさ」ですが、何を天秤にかけ、どのようにバランスをとるかという課題が残ります。

UIターンと共通したリスク

故郷に近いといっても地方に戻る方向になるので、収入・利便性・情報量は減ることになります。

また故郷ではないので、なじみのなさがどの程度なのかも心配なところです。同級生や同窓生、以前の仕事関係者などの知り合いがいると心強い、と話す方も少なくありません。

Jターンは、UターンとJターンのデメリットを全く考えないわけにはいきません。適度な「妥協」や「折衷」感覚が必要になります。

参考:用語 | 東京ハローワーク(厚生労働省)

なぜ今地方移住が注目されているのか

 

今地方では多くの市町村が、より魅力的なUIJターンを演出する努力をしています。努力の理由には都会も地方も抱えた問題が潜んでいます。ここからは、その理由を一緒に考えていきましょう。

少子高齢化社会の人口の大都市集中

日本の総人口は減少を続けています。

2023年8月の確定値では総人口1億2,435万2千人で、前年度に比べおよそ60万人減少(減少率マイナス0.48%)しています。

年代別に見ると、0〜64歳までは各年代とも大きく減少65歳以上はわずかな減少、うち75歳以上は増加を示しています。つまり少子高齢化が顕著で、生産年齢人口がかなり減少しているということになります。

さらに下の人口推移も見てみましょう。

出典:東京都の総人口(推計)の推移(東京都公式ホームページ)

日本の総人口は減っているのに対して、東京の人口が増えていることが上のグラフから分かります。つまり、大都市への集中が顕著です。東京ではキャパシティを越えた住宅やごみ処理問題を抱えています。

深刻な人口減少の地方

総人口は減っているのに、大都市の人口は増えているということは、地方の人口減少はより深刻ということになります。

特に進学や就職を期に都会へ移住した若者が多く、地方から若い世代がいなくなれば、その下の世代も増えにくくなります。

このような背景から、U・I・Jターンの促進は、人口減少に苦しむ地方にとても大きな意味をもち、大都市一極集中を緩和することにもつながるのです。

Uターン・Iターン・Jターンを検討している方に

人口問題を解決し、地方を元気にするため、2014年に政府は「地方創生」政策を打ち出しました。近年のインターネットの普及に伴い在宅ワークをする人も増えてきました。地方公共団体も、U・I・Jターンを見込める魅力的な移住・定住施策を展開するようになってきました。

優良事例を見ながら、自分に合った選択肢をさぐっていきましょう。

成功事例:北海道上士幌町

バルーンフェスティバルで有名になった北海道上士幌町は、令和4年度の「 移住・定住施策 優良事例」になった町です。

Uターンはもちろん、I・Jターンの増加も目指し、地域の特性を生かしつつ、地方が持っている仕事・利便性・情報量・人間関係などにおけるデメリットを少しでも緩和する工夫をしています。

定住者の増加を大きな目標として、次のような取り組みを展開しました。

  • 仕事対策:民共同出資で「上士幌町無料職業紹介所」開設
  • 子育て対策:故郷納税を基金としたこども園の開設と保育料完全無料化及び高校生までの医療費の全額補助
  • 人間関係対策:移住コンシェルジュのサポート

成果は、下の「人口の推移」から見て取れます。

Uターンを希望している方は、改めてリサーチする価値がありそうです。ご自身の故郷も移住推進施策を工夫してるかもしれません。

Iターンを考えている方、Uターンは難しいがJターン先を考え中という方は、優良事例をチェックしてみることも大いに参考になるのではないでしょうか。

【関連記事】【SDGs未来都市】北海道上士幌町役場|自然豊かな町で、若者の力とスマート技術を活用した環境づくりを

支援について

上士幌町のほかにも多くの市町村が、金銭面だけではなく、住宅や就職斡旋などの支援を工夫しています。また国や全国規模の団体も支援の窓口を開いています。一部をご紹介します。

地方創生移住支援金<厚生労働省及び都道府県・連携市町村>東京から地方創生事業を行っている地方への移住者就職者起業者に支給される該当する地方はこちら条件・金額について詳しくは移住支援金
中途採用支援助成金(UIJターンコース)<厚生労働省>東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対し、その採用活動に要した経費の一部を助成
地方就職支援コーナー<東京・大阪のハローワーク>専門相談員による、移住先の生活関連情報を用いたきめ細かな職業相談・紹介
ふるさと就職応援ネットワーク(Fネット)人材ビジネスに取り組む企業で結成された任意の全国組織全国レベルの情報やサービスの提供を実施

参考:
中途採用等支援助成金(UIJターンコース)|厚生労働省
人材の地方移動支援|厚生労働省
ふるさと就職応援ネットワーク
移住支援金
表は筆者作成

地方創生移住支援金制度は多くの都道府県・市町村が連携しています。移住希望先の地域名も載っている可能性が大きいです。移住は人生の大きな選択ですから、有効な支援があれば大いに利用してはいかがでしょうか。

Uターン・Iターン・JターンとSDGs

最後にU・I・JターンとSDGsの関連をみていきましょう。

17のSDGs目標のうち1番深く関わるのは、目標11「住み続けられるまちづくりをです。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」との関わり

この目標は10のターゲットからなっています。11.1には住宅基本サービスの充実があげられ、11.2には「女性、子ども、障がい者、高齢者のニーズに配慮した公共交通機関」の整備があげられています。これらは、地方都市がU・I・Jターンを受け入れるために達成すべき課題と一致します。

さらに11.5と11.6には災害対策廃棄物の管理について明記されていて、地方から都市部へのIターン者への配慮につながります。

また11-aにある「都市・都市周辺部・農村部のつながりをサポートする」はまさに、企業のテレワーク推進、国や団体の移住情報提供の姿です。

移住は人生の大きな選択であり、日用品のようにすぐ買い替えるわけにはいきません。移住者も選んだ地域で落ち着いて暮らしたい、受け入れる地域側も次の世代につながる地方創生すなわち「住み続けられるまちづくり」を目指しているのではないでしょうか。

まとめ

まず3つのターンをおさらいしておきましょう。

  • Uターン:地方から都市部へ移住した人が、再び生れ故郷に戻ること
  • Iターン:出身地とは別の地方に移住すること(主に都会から地方へ)
  • Jターン:地方から都市部へ就職・移住した後、故郷のほど近いところに戻ること

この3つのパターンについて、メリット・デメリットを整理してきました。

Uターン、Iターン、Jターンのどの場合も、仕事を優先するのか自然の中での暮らしを望むのかなど、選択を決めるポイントや優先順位の十分な検討が必要です。

実は筆者も最近Jターン移住をしました。高齢者の筆者でも仕事があり、運転をしなくても移動できる交通環境などが、移住地を決めるポイントでした。就職を決めるに当たっては、ハローワークや地域のサポート団体に相談しました。心配は前居住地や故郷より高い物価。安心して住み続けられるよう、家計の見直しを進めているところです。

ご紹介した成功例や支援体制が、移住を検討なさっている方の参考になったのなら幸いです。サポートしてくれそうなシステムや組織を大いに活用しましょう。

【関連記事】地方創生SDGsとは?自治体の取り組み事例、官民連携プラットフォームやSDGs目標との関わりを紹介

<参考資料・文献>
用語 | 東京ハローワーク(厚生労働省)
人口推計(令和5年(2023年)10月(総務省統計局)
東京都の総人口(推計)の推移(東京都公式ホームページ)
東京圏への転入・転出の推移について(国土交通省)
内閣府・創生本部事務局https://www.chisou.go.jp/souse
令和4年度 移住・定住施策 優良事例集(内閣府)
第50回(2023)北海道バルーンフェスティバル(上士幌町)
北海道上士幌町はこれで人口を増やした 第4回ジャパンSDGsアワード官房長官賞・2021年度SDGs未来都市
令和4年度「地方創生移住支援事業」実施都道府県・連携市町村一覧
移住支援金
中途採用等支援助成金(UIJターンコース)|厚生労働省
人材の地方移動支援|厚生労働省
ふるさと就職応援ネットワーク
東京脱出論:藻谷浩介・寺本英仁(ブックマン社)
ふるさと再生:坪田知己(講談社)
幸せのUターン転職:江口勝彦(幻冬舎)
キーワードで読み解く地方創生:みずほ総合研究所(岩波書店)
2050年の世界:英「エコノミスト」編集部(文春文庫)
SDGs:蟹江憲史(中公新書)