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【バードウォッチングによる鳥類保全】世界2位の鳥類固有種を誇るオーストラリアが開催する一般市民参加型イベント・Aussie Bird Countとは?

大自然に囲まれているオーストラリアは、有袋類や単孔類だけでなく鳥類も豊富な国です。

しかし、気候変動、生息地の喪失、森林火災、外来種などの影響により、数多くの鳥類が絶滅の危機に瀕しています。

そんな鳥類の現状を変えるべく、非営利団体のBirdLife AustraliaはAussie Bird Countと呼ばれるプロジェクトをスタートしました。

アプリを使って気軽に参加できるプロジェクトで、身近な場所で鳥の数を数えるだけで鳥類の保護や環境保全に貢献できる画期的なシステムです。

この記事では、そんなAussie Bird Countの詳細について解説していきます。

オーストラリアと鳥類

コアラ、カンガルー、ウォンバットをはじめとする有袋類や、カモノハシなどの単孔類が生息する特殊な生態系を持つオーストラリア。

しかし、実はオーストラリアは鳥類の種類も豊富なことで知られる国のひとつです。

オーストラリアには約850種類の鳥類が生息しており、45%を固有種が占めています。

これほど多くの固有種の鳥類が生息する国は非常に貴重で、世界ではインドネシアに次いでオーストラリアが第2位となっています。

オーストラリアの鳥類が晒されている危機

さまざまな種類の鳥類が生息するオーストラリアですが、長年にわたって鳥類の絶滅が危惧されています。

オーストラリアでは23種類の鳥類が絶滅寸前種、74種類が絶滅危惧種、87種類が絶滅危惧種に分類されており、生態系を維持するためにも積極的な保全活動が必要です。

オーストラリアの鳥類が絶滅の危機に晒されている主な原因は、気候変動、生息地の喪失、森林火災、外来種です。

特に森林伐採や土地開発による生息地の喪失が深刻化しており、固有種間でも生息地や餌の奪い合いが頻発しています。

Aussie Bird Countは鳥類を保護するためのプロジェクト!

Aussie Bird Countは、鳥類の個体数維持を目的に2014年に立ち上げられました。

オーストラリアの鳥類を保護するためにも、まずはオーストラリア全土に生息する鳥類の種類や数を正確に把握することが必要不可欠です。

Aussie Bird Countは鳥類の保全活動を行う非営利団体・BirdLife Australiaがスタートさせたプロジェクトで、一般市民がバードウォッチング気分で手軽に参加できるシステムを構築しています。

Aussie Bird Countのアプリを使って鳥を観察するというプロジェクト内容になっており、鳥類学者や専門機関だけではカバーできない情報を一般市民が補完するという目的があります。

鳥類の多様性を把握することによって適切な鳥類保護戦略を立てられるのはもちろん、治療やリハビリが必要な個体を見つけるきっかけにもなるため、多方面における鳥類の保全に役立つ点が特徴です。

BirdLife Australiaが目指す2つの目標

BirdLife Australiaでは、Aussie Bird Count を使って2032年までに鳥の絶滅を阻止することを目指しています。

長期的な目標としては2050年までに鳥類全体の個体数減少を食い止めることを掲げており、そのためには1人でも多くのオーストラリア国民にAussie Bird Countへ参加してもらうことが重要だと考えています。

また、BirdLife AustraliaがAussie Bird Countを立ち上げたもうひとつの理由が、鳥類の保全に対する一般市民の意識向上です。

Aussie Bird Countで鳥類を観察することにより、一般市民は単に鳥類を数えるだけでなく自然環境にも目を向ける機会を得られます。

自身の生活や意識を見直すこと=鳥類にとってサスティナブルな未来を作ることに繋がるため、BirdLife Australiaは年齢、性別、経歴を問わず全てのオーストラリア国民を参加対象としています。

Aussie Bird Countの参加方法

子どもから高齢者までさまざまな層を対象としているAussie Bird Countは、非常にシンプルな手順で参加できる仕組みになっています。

以下は、Aussie Bird Countを行う際の4つの手順です。

①観察場所を選ぶ

Aussie Bird Countに参加するにあたって、鳥を観察するための場所を選ぶ必要があります。

屋外であればどこでもOKとされており、自宅の裏庭、公園、森の中、市街地、オフィスから見える窓の外といった幅広い場所を選択可能です。

②20分間の観察

観察場所を決めたら、20分間にわたってその場所で見た鳥の情報を収集します。

鳥の種類はもちろん、それぞれの鳥の数についてもまとめます。

③バードファインダーを活用する

観察場所によっては、普段目にすることのない貴重な鳥を見かけることもあります。

②の最中に種類の分からない鳥を見つけたら、アプリ内に搭載されているバードファインダーツールを使って鳥の識別を行います。

④収集データの共有

20分間が経過したら、Aussie Bird Countのアプリ、もしくは公式ホームページのフォームを使って収集データを送信します。

尚、Aussie Bird Countは期間内であれば無制限に参加可能となっていますが、1度の観察時間は20分間とされています。

例え同じ場所で観察する場合でも、20分間が経過したらその都度データを収集しなければなりません。

Aussie Bird Countはいつでも参加できるの?

Aussie Bird Countは年間を通して行われているわけではなく、毎年10月の中旬から下旬にかけて約1週間のみ実施されています。

南半球に位置するオーストラリアは10月頃に春を迎えるため、最も野生動物の活動が活発になる時期にAussie Bird Countを開催しています。

尚、実際にAussie Bird Countに参加した一般市民からは、「日常的に鳥を観察してデータをシェアしたい」「自分の集めたデータをもっと研究や保全に役立ててほしい」といった意見も寄せられてきました。

そこでBirdLife Australiaは「Birds in Backyards」や「BIRDATA」などのプラットフォームを構築し、Aussie Bird Countの期間外でも一般市民が常に鳥類に関するデータを共有・閲覧できるようにしています。

1人でも多くの国民にAussie Bird Countへ関心を持ってもらうための工夫とは?

2014年にスタートしたAussie Bird Countですが、鳥類は哺乳類と比べると一般市民が興味を持ちにくいという問題点がありました。

Aussie Bird Countではより多くの人々が参加への意欲を持てるように、イベント参加者に対して景品のプレゼントを行っています。

景品にはカメラ、双眼鏡、鳥類の本、鳥のオーナメント、鳥の柄のタオルなどが含まれており、全ての景品がバードウォッチングや鳥に関連するものです。

「景品目的だったけど今ではバードウォッチングにハマっている」「景品の鳥の本を読んでますます鳥類に興味が湧いてきた」という一般市民も多く、イベントの開始10年目を記念する2023年には370万羽以上の鳥類に関するデータが集められました。

また、小さな子どもでも楽しく取り組めるように、ビンゴカードもオンライン上で配布されています。

ビンゴカードには「電線の上の鳥を数える」「餌を食べている鳥を数える」「同じ種類の鳥を10羽以上探す」といったミッションが記載されており、ビンゴをクリアするために複数回にわたってAussie Bird Countに参加する子どもも多くなっています。

まとめ

BirdLife Australiaは、鳥類の保全を目的にAussie Bird Countをスタートさせました。

一般市民に協力を仰ぐことでオーストラリア全域の鳥類のデータを集められるというメリットがあり、より具体的な鳥類保護戦略について考えやすくなります。

また、鳥類を守るためにはオーストラリア国民の協力や理解が不可欠であることから、Aussie Bird Countは一般市民が鳥類に興味を持つきっかけとしても大きな意義を持つプログラムです。

まだ始まって10年ほどの新しい取り組み・Aussie Bird Count。

しかし、これから先も継続していくことによって、きっと未来の自然や生態系の保全に繋がっていくでしょう。