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【農業祭と環境保全】毎年50万人の訪問客が集まるオーストラリアのイベント・EKKAとは?

【農業祭と環境保全】毎年50万人の訪問客が集まるオーストラリアのイベント・EKKAとは?

皆さんは、オーストラリア北東部のクイーンズランド州を代表するイベント・EKKA(エッカ)をご存知ですか?

クイーンズランド州のアイコンをランキング形式で発表した「List of Queensland’s Q150 Icons」の「Events and festivals」部門の第1位を獲得しており、10日間で約50万人の人々が訪れるとされている農業祭です。

自然環境との共存が必須である農業をテーマにしているEKKAは、自然への恵みに感謝すると同時に環境保全にも力を注いでいます。

この記事では、そんなEKKAが取り組むエコ活動についてお話ししていきます。

EKKAってどんなイベント?

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出典:SpaceshipEarth

1876年にはじまったEKKAは、クイーンズランド州ブリスベンにて毎年開催されている農業祭です。

正式名称はRoyal Queensland Showですが、Brisbane Exhibition(ブリスベン展示会)とも呼ばれていたことから、現在はExhibitionの発音をもじったEKKAという愛称で親しまれています。

毎年8月の第3水曜日に設定されている祝日・Royal Queensland Showを中心に10日間にわたって開催されており、毎年50万人前後の人々が訪れる一大イベントです。

農業祭をテーマにしていることから、会場では馬、牛、ヒツジ、鳥といった動物とのふれあい、農作物や動物の品評会、動物の展示などが行われています。

また、移動式の遊園地などもあり、子どもが楽しく遊びながら動物や植物について学べる工夫が凝らされています。

EKKAは、「自然や動物に対して興味を持ってほしい」という目的のもと行われているイベントです。

「自然や動物にとって良い環境とは何か?」「自分に何ができるのか?」に一人ひとりが向き合うことで、人間と自然環境が共生できる未来を作れると考えているのです。

EKKAが抱えていた問題点

毎年50万人前後もの人々が集まるEKKAでは、長期的にわたって廃棄物の量に関する問題に直面していました。

10日間分の飲食物の包装紙、ペットボトル、動物の排泄物、ワラなどを含む有機材料などが発生することから、2018年の廃棄物の量は実に240トン以上です。

アフリカゾウ40頭分に匹敵する重量の廃棄物が出ており、「自然との共存を提唱しているのにEKKA自身が大量のゴミを出すのは問題ではないのか?」「EKKAが自ら環境問題に真摯に向き合うべきではないのか?」といった疑問や悩みを抱えていました。

そこで、新たなイベント運営の方法を模索し、環境に優しい農業祭への改革を行ってきたのです。

EKKAが行っているエコ活動とは?

australiaのekka エコ活動
出典:SpaceshipEarth

EKKAは、自然や動物との共生が必須となる農業をテーマにしているイベントです。

より良い地球環境を生み出すことが大切だと考えていることから、EKKAでは以下のような環境に関する取り組みを行っています。

ゴミの分別対策

australiaのekka ゴミ分別
出典:SpaceshipEarth

EKKAは、計10日間にわたって行われる大規模なイベントです。

毎年大量の廃棄物が発生していたことから、EKKAではリサイクル促進と廃棄物の削減を目指してきました。

廃棄物の量が増えてしまう原因のひとつに、リサイクル製品の汚染が挙げられます。

不適切なリサイクルの方法によって、リサイクル製品に飲食物が付着して汚染されてしまい、廃棄扱いになることがあるのです。

そこでEKKAでは、2023年から新たなゴミ箱を導入しました。

一般ごみ、紙類、ボトルや瓶、コーヒーカップといった細かい種類のゴミ箱を設置し、イラストなどを掲載することでリサイクル製品が汚染されないようにしています。

ショーバッグの紙袋化

australiaのekka 紙袋
出典:SpaceshipEarth

EKKAの目玉のひとつが、通称ショーバッグと呼ばれる福袋のようなグッズです。

お菓子、オモチャ、メイク用品、雑誌といったバリエーション豊富なアイテムが毎年300~400種類も販売されており、袋の中身は事前に販売カウンターで確認できる仕組みになっています。

元々はビニール袋に入れられていたショーバッグですが、EKKAはマイクロプラスチックの影響を問題視していました。

そこで、子どもから大人まで幅広い層から人気を集めているショーバッグを環境に優しいグッズにするため、現在では包装用のビニール袋を撤廃して紙袋を使っています。

飲食店のプラスチック不使用促進

australiaのekka 脱プラ
出典:SpaceshipEarth

EKKAが開催される10日間にわたって、会場内には数多くの飲食店や屋台が出店します。

各店舗はEKKAが決めるルールに則って営業する決まりになっており、EKKAでは会場内で提供される食品の包装を最小限に抑えるように通告しています。

また、包装に使う素材はプラスチックではなく、紙類などのリサイクル可能な素材のみです。

約50万人分の食事提供を行うEKKAですが、包装の削減やエコを意識した素材の導入により、環境に優しいイベント運営を心掛けています。

水分補給ステーションの設置

australiaのekka 水分補給ステーション
出典:SpaceshipEarth

EKKAが開催される8月は、南半球のオーストラリアでは冬にあたります。

しかし、赤道に近い北側に位置するブリスベンは、冬でも最高気温20度以上に達することも多い亜熱帯地域です。

日中は半袖で過ごす人も多く、EKKAの会場では冷たいドリンクを販売する店舗もたくさんあります。

もし1人が1本のドリンクを現地で購入すると、約50万本分のペットボトルのゴミが出ます。

実にEKKAの会場内にある収容人数2万人のステージを埋め尽くすほどの廃棄物の量に相当することから、EKKAでは敷地内の至る所に水分補給ステーションの冷水機を設置することに決めました。

ドリンクを買う人が減ることで売り上げは減ってしまいますが、EKKAは環境への配慮を優先しています。

子どもの環境プロジェクトの掲示

australiaのekka 環境プロジェクト
出典:SpaceshipEarth

さまざまなイベント、コンテスト、ブースなどがあるEKKAですが、屋内施設のひとつでは地元の小学校に通う子どもたちが作った環境プロジェクトが掲示されています。

学年やグループによって取り扱うテーマや難易度が異なり、主な題材は地球温暖化リサイクル、マイクロプラスチック、食品ロスなどです。

問題提起から解決策の提案まで子どもたち自身が全て行っているプロジェクトで、子どもたちが自発的に環境問題に関して考える機会になると考えられています。

エコ意識の高い国民の育成にも役立つため、未来の地球を守ることにも繋がっています。

動物の排泄物や有機材料の再利用

australiaのekka ゼロウェイスト
出典:SpaceshipEarth

農業祭であるEKKAは、数多くの動物を間近に見られるイベントです。

10日間で参加する動物の数は1万を超えており、犬や猫を含む小動物のほか、馬、牛、ヒツジといった大型動物もイベント会場で過ごします。

多数の動物たちが集まることを受けて、EKKAの終了時には大量の排泄物やワラなどの有機材料が発生していました。

元々は廃棄されていた排泄物や有機材料ですが、現在では全て回収した後に堆肥や造園・庭園製品に作り替えています。

廃棄物の量が減るのはもちろん、植物の育成に役立つ製品として有効活用されている点もポイントです。

ボトル返金制度の導入

廃棄物の削減の一環として、EKKAでは2023年から新たにボトル返金制度を導入しました。

ペットボトルを指定エリアや機械に持って行くことで1本につき10セントが返金される仕組みで、来場者のリサイクル促進への意欲を刺激できると考えられています。

漁業・河川保全協会のブース

australiaのekka 生態系保護
出典:SpaceshipEarth

ビーチのイメージが強いオーストラリアですが、ブリスベンでは海の代わりに川が市内を蛇行するように流れています。

川の街として認知されていることから、EKKAの会場内では漁業・河川保全協会のFFSAQがブースを設置しています。

オーストラリアの在来魚とその状況を人々に知ってもらうことは、オーストラリアの河川の生態系を保護する上で必要不可欠です。

ブース内では魚の生息地の回復や河川の保護に関する啓発活動を行っており、特に釣りを行う一般市民に対して正しい知識を身につけてもらおうと考えています。

まとめ

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出典:SpaceshipEarth

クイーンズランド州ブリスベンの冬の風物詩として知られる農業祭・EKKAは、自然や動物への保護や共存を意識しながらイベント運営を行っています。

オーストラリアと同様に、日本も農業が盛んな国です。

第一次産業に力を入れているという共通点を持つことから、日本がEKKAのエコ活動から学べることも多いのではないでしょうか?

農業を通して自然の豊かさや環境保全の大切さを伝えようとするEKKAについて、ぜひ友人やご家族にもシェアしてみてくださいね。