オーストラリアのクイーンズランド州にあるサンコープスタジアムは、国内有数のスタジアムとして知られています。
2023年7月から8月にかけて開催される「FIFA女子ワールドカップ2023」の会場のひとつとなっているほか、2032年に開催されるブリスベンオリンピックでも使用されることが決まっているスタジアムです。
国際規模の試合やコンサートなどが頻繁に開催されるサンコープスタジアムは、イベント運営だけでなくリサイクルや資源の有効利用などにも力を入れています。
そこで今回は、サンコープスタジアムが取り組んでいるさまざまなエコ活動についてご紹介していきます。
サンコープスタジアムの基本情報
サンコープスタジアム(Suncorp Stadium)は、クイーンズランド州の州都・ブリスベンに位置しています。
ブリスベンスタジアムとも呼ばれるサンコープスタジアムは、1914年に開園しました。
1957年にはラグビーの本拠地になっており、ワールドカップなどの国際試合が行われる会場として機能しています。
キャパシティは52,500人で、ラグビー以外にもサッカーの試合やコンサートなども開催されている汎用性の高いスタジアムです。
尚、市街地から電車で1駅、徒歩なら15分程度という利便性の高さも魅力です。
サンコープスタジアムが実際に行うエコ活動
ここでは、サンコープスタジアムが実際に行っている環境保全について解説していきます。
消費電力の節約
さまざまなスポーツイベントやコンサートを開催しているサンコープスタジアムでは、消費電力が大きくなりがちです。
そこで、スタジアム内に消費電力が低いLED電球を導入し、ビル管理システムを使用して施設内に無駄な電力使用がないかを監視しています。
モーションセンサーを使っているのも特徴で、スタジアム内で人がいない場所・時間には照明が点灯しない仕組みになっています。
また、サンコープスタジアムがあるブリスベンは、オーストラリア国内でも特に気温が高い地域です。
夏は40度前後、冬でも日中は25度に達する日があり、太陽放射も非常に強いことから「Sunshine State 」という愛称が付けられています。
室内の気温も上がりやすいため、サンコープスタジアムでは多目的室の窓の色を調節しています。
暗い色にすることで室内の温度上昇を防ぐことに繋がり、エアコンの使用を最小限に抑えることが可能です。
環境に優しい製品の購入
サンコープスタジアムは、エコな素材の備品を使うことで環境への負担を最小限に抑えています。
特に配慮されているのが、食品関連の備品です。
52,500人が来場可能なサンコープスタジアムでは、試合やイベントが開催されるたびに膨大な量の食品が消費されます。
そのため、食品類に使う包装を紙や木に変えたり、堆肥化可能なバイオカップを導入したりというように、エコを意識した食品関連の製品を使用しています。
他にも、サンコープスタジアムではトイレットペーパーとティッシュを再生紙にするといった多方面における製品の見直しを行ってきました。
2023年時点では92%のゴミをリサイクルに回すことに成功しており、大幅なゴミの削減に貢献しています。
持続可能な建物の建設
サンコープスタジアムを有するブリスベンには、市内を蛇行するようにブリスベン川が流れています。
数年おきに深刻な洪水の被害が発生しており、ブリスベン川から約500メートルの位置にあるサンコープスタジアムも浸水被害による復旧作業を繰り返してきました。
しかし、特に被害が大きかった2011年の洪水をきっかけに、スタジアム全体の大規模なリノベーション工事を行いました。
ブロック壁や建設資材に耐水性の高いものを使用し、将来的な修繕の頻度を抑えられるように工夫しています。
修繕の頻度が減ることにより、消費される建設資材や修繕時に発生するゴミ類などが大幅に削減されます。
埋め立てられる廃棄物なども減るため、長期的な環境保全に繋がっているのです。
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ネスプレッソバルクリサイクルプログラム
正しいリサイクルを行うべく導入されているのが、ネスプレッソバルクリサイクルプログラムです。
サンコープスタジアムでは、来場者やスタッフ向けにネスプレッソコーヒーが使われています。
使用済みのネスプレッソコーヒーポッドは全てスタジアム内のリサイクルボックスに入れられ、後日ネスプレッソが回収します。
コーヒーポッド内に残ったコーヒーは、分離されて産業用堆肥化施設に送られる仕組みです。
一方でアルミニウムはリサイクルされ、新しい製品の製造に使用されます。
自社製品を知り尽くしたネスプレッソにリサイクル作業を依頼することで、サンコープスタジアムは適切かつ無駄のないリサイクルを実現しています。
公共交通機関の利用率向上
サンコープスタジアムは、来場者に公共交通機関を利用するよう促しています。
道路の混雑を防ぐことが目的ではなく、自動車から排出される二酸化炭素量を懸念しての呼びかけです。
しかし、公共交通機関の利便性の悪さを指摘する声もあったことから、サンコープスタジアムでは入場チケットを持つ来場者は無料で市内の公共交通機関を利用できるシステムを構築しました。
また、イベントの時間に合わせて電車やバスを増便し、より多くの来場者が公共交通機関で来やすい工夫を凝らしています。
来場者にとって経済的なメリットも大きいことから、車での来場者数と二酸化炭素排出量の削減に成功しています。
雨水の有効活用
サンコープスタジアムが行うエコ活動のひとつが、雨水貯留の活用による水の節約です。
屋根などに雨水貯留タンクを設置し、スタジアム内全体で110万リットルの雨水を貯めています。
雨水はフィールドの水やりやイベント後のスタジアム清掃に使用しており、限りある資源・水のリサイクル化を進めています。
アースアワーへの参加
世界的な環境保全イベント・EARTH HOUR(アースアワー)をご存知でしょうか?
WWFが2007年から始めたアースアワーは、1年に1度、世界中で同じ日時に1時間消灯するという内容のエコ活動です。
電気を使わない時間を作ることで物理的な電力消費量削減に貢献すると共に、人々が環境保全に対する一体感を持てるというメリットも兼ね備えています。
サンコープスタジアムもアースアワーに参加しており、施設内の電光掲示板や照明を消しています。
また、近隣の通りの電灯や木々の電飾なども全て消灯することにより、地域住民がアースアワーについて知る機会づくりにも役立っているのです。
スタッフへの教育
サンコープスタジアムでは、全てのフルタイムとパートタイムのスタッフに対して環境に関する研修を実施しています。
研修のタイミングは雇用時及び年に1度となっており、消費エネルギーの削減とリサイクル率の向上などがメインテーマです。
スタッフ全体が高い環境保全意識を持つことで、より効率的にエコ活動を進められます。
また、「グリーンチーム」と呼ばれる各部門の代表者で構成したスタッフが在籍しており、1年に4回ほど各部門における環境への対策や実績を共有しています。
問題提起や解決案などをチーム内で出し合うことにより、常にスタジアム内の環境保全の向上を目指しているのです。
観客に対する啓発
サンコープスタジアムはクイーンズランド州政府と提携し、一般市民を啓発するためのリサイクルキャンペーンを行っています。
アスリートを使ったリサイクル関連のCMをスタジアム内で流したり、ゲストを招いて環境啓発イベントを開催したり、一般市民が環境保全の必要性を考える機会を提供しています。
一度のイベントで最大52,500人に効率良く啓発できるのはもちろん、子どもに対するエコ教育という意味合いもあり、オーストラリアの環境を将来的に守ることにも繋がる活動です。
まとめ
サンコープスタジアムは、リサイクル、消費電力、二酸化炭素の排出量、資源の有効活用などに取り組んでいます。
多くの来場者が訪れることから、人々への啓発を通してオーストラリア全体のエコ意識を高めることにも貢献しています。
2032年に開催されるブリスベンオリンピックでもメイン会場のひとつとなっているサンコープスタジアムは、今後も環境保全を意識した取り組みを進めていく予定です。
サンコープスタジアムをテレビで見る機会があったら、ぜひ試合だけでなくスタジアム自体が行うエコ活動についても考えてみましょう。