日本同様、オーストラリアでも消費率が高いジャム。
いちごジャムやマーマレードといったフルーツをベースにしたジャムは、栄養価の高さからオーストラリアの食卓でも欠かせない存在となっています。
さまざまなジャムメーカーがある中で、環境保全に着目したジャムとして人気を集めているのがビアレンバーグです。
家族経営のジャムメーカーとして知られており、ジャム以外にもソースやドレッシングといったバリエーション豊富な商品展開を行っています。
この記事では、ビアレンバーグの基本情報、歴史、製品ラインナップ、具体的に実践しているエコ活動の詳細について解説していきます。
ビアレンバーグとは?
ビアレンバーグ(BEERENBERG)は、南オーストラリア州の小さな街・ハーンドルフ(Hahndorf)を本拠地とするジャムの製造会社です。
ペーク家によって200年以上続いている家族経営の企業で、オーストラリアの各家庭で楽しまれているのはもちろん、5つ星ホテルのルームサービスでも提供されています。
また、ビアレンバーグは大規模な自社農場を保有しており、11月から4月にはいちご狩りに訪れる利用客も多くなっています。
エリア内にはレストラン、ワイナリー、ショップなどもあり、一般市民が農場体験、食事、買い物を楽しめる点が魅力です。
ビアレンバーグの歴史
ビアレンバーグという響きを聞いて、ドイツ語を連想する方もいるのではないでしょうか?
実はビアレンバーグのルーツはドイツにあり、ビアレンバーグが位置するハーンドルフはアデレード港に到着したプロイセン人によって1839年に設立された街です。
プロイセンから移住したペーク夫妻は、果物や野菜の栽培に最適なハーンドルフの土地にて農業をスタートさせます。
栄養豊富な土壌を持つビアレンバーグでの農業は大成功を収め、企業名はドイツ語で「Berry Hill(ベリーの丘)」を意味する「ビアレンバーグ」と名付けられました。
ビアレンバーグはオーストラリアを代表する企業のひとつとして高い認知度を誇り、2024年時点で6代目の子孫が運営を続けています。
尚、ビアレンバーグがあるハーンドルフは人口3,000人ほどの小さな街ですが、オーストラリアに現存する最古のドイツ人居住地として知られています。
ビアレンバーグの主な商品
ビアレンバーグの主力製品は、自社農場のフルーツや野菜を使ったジャムやソースです。
いちごジャム、プラムジャム、アプリコットジャム、ブルーベリージャム、レモン・ライムのペーストといった甘味が強い製品のほか、ハニーマスタードドレッシング、バーベキューソース、オニオンマスタード、チリソースをはじめとする豊富な料理に使える製品も多くなっています。
また、他国では珍しいユーカリの木から採れるハチミツも販売しており、オーストラリアならではの風味を楽しめるのもポイントです。
ビアレンバーグの製品の特徴として、製品の一部に「Steve」「Karen」「Dean」「Brian」など人の名前が記載されている点が挙げられます。
人名は全てビアレンバーグの家族やスタッフたちから取っており、それぞれの製品とゆかりある人の名前をパッケージに取り入れています。
ビアレンバーグが取り組むエコ活動とは?
パン、お菓子、クラッカーに塗るのはもちろん、調理にも使えるジャムやソース。
日常的に消費されていることから、環境保全のためにもエコ意識が高い製品を選ぶことが大切です。
農業から生まれたビアレンバーグにとって、自然との共存は必要不可欠です。
自社と地球にとってより良い未来を作るべく、ビアレンバーグではさまざまなエコ活動に力を入れています。
以下では、実際にビアレンバーグがどのような取り組みを行っているのか見ていきましょう。
雨水の有効活用
ビアレンバーグでは、アデレードヒルズの雨水を採取して有効活用しています。
強い紫外線が降り注ぐオーストラリアは、年間を通して常に乾燥している状態です。
また、オーストラリアはエルニーニョ現象の影響を受けやすく、全域において雨不足に悩まされている国でもあります。
世界の平均年間降水量が810mlとされているのに対してオーストラリアは600ml以下となっており、水は非常に貴重な資源です。
そんな中、ビアレンバーグでは水を無駄にしないように雨水を保存して事業に役立てています。
製品の製造に使用される水の約10%は雨水と言われており、限りある資源を有効的に利用しています。
再生可能エネルギーの導入
ビアレンバーグでは、温室効果ガスの排出量削減を目的に再生可能エネルギーを利用しています。
2023年に発表されたデータによると、オーストラリアの総発電量の65%は化石燃料源です。
化石燃料には低コストというメリットがある一方で、二酸化炭素の排出量が大きなエネルギー資源として知られています。
そこでビアレンバーグでは、自然光を最大限に活用できる農場やオフィスを設計しました。
農場内にはセンサー、日光収穫照明、LEDなどが搭載されており、電力は全て再生可能エネルギーから供給されています。
事業で使用される電力の実に21%が再生可能エネルギー由来となっていますが、ビアレンバーグでは使用率をさらに増やすための模索を続けています。
廃棄物削減
廃棄物の削減を目指して、ビアレンバーグではガラス瓶、蓋、カートンなどをリサイクル可能な素材にしています。
各製品にはオーストラリアリサイクルラベル(Australasian Recycling Label)の基準に則った表記がされており、顧客が使用後にスムーズにリサイクルできる点がメリットです。
また、パッケージにリサイクル素材が採用されているのも特徴で、廃棄物を上手く活用して新たなパッケージとして役立てています。
農場、工場、オフィスでも廃棄物削減は行われており、段ボール、木製パレット、紙、プラスチック、ガラスなどをリサイクルすることで廃棄量を30%減らしてきました。
さらに、有機廃棄物の分別にも力を入れることで、本来ゴミとして処分されるはずだった有機廃棄物を年間53トンも堆肥化することに成功しています。
昆虫や農地への負荷を抑えた農業
農業に付きまといがちな環境問題が、農薬の使用です。
農薬を使うことで作物の保護と収穫量の維持を確保できますが、農薬による土壌汚染なども懸念されます。
そこでビアレンバーグは、農薬の代わりに害虫駆除に有益な昆虫を放すことで農薬の使用量を最小限に抑えています。
昆虫の中には受粉を手助けしてくれる種も多く、結果として農作物の育成に大きく役立っている点が特徴です。
また、ビアレンバーグでは輪作を取り入れることで、土がより良い栄養バランスを維持できるように工夫しています。
2024年時点において4年周期で畑を変えて植えており、農地への負荷を軽減しています。
地元産の原料購入
ビアレンバーグの製品の主成分は、自社で栽培している農作物です。
しかし、中にはほかの原料を仕入れて製造する製品もあり、ビアレンバーグでは原料を仕入れる際に地元のサプライヤーを活用しています。
南オーストラリア州に位置するビアレンバーグは、実に国内5つの州と隣接しています。
コスト削減を求めて遠方のサプライヤーと契約することは可能ですが、輸送に伴って温室効果ガスの排出量が増加する点がデメリットです。
ビアレンバーグは地球に優しい事業を長期的に続けていくために、温室効果ガスの排出量を最小限に抑えられる地元のサプライヤーを優先的に選択しています。
ビアレンバーグは日本でも買える?
残念ながら、2024年時点でビアレンバーグの製品は日本国内の店舗で販売されていません。
ビアレンバーグの公式ホームページでもオーストラリア以外への発送は行っておらず、日本からの注文は受け付けていないのが現状です。
ただし、輸入代理店によるネット販売及びフリマアプリなどで取り扱いがあるので、興味がある場合はぜひチェックしてみましょう。
まとめ
普段何気なく口にしているジャムですが、原材料の調達による温室効果ガス排出量の増加や農薬による環境汚染などのリスクがあります。
環境に優しい生活を心掛けるためにも、エコな製品を選ぶことが必要不可欠です。
ビアレンバーグでは多方面におけるエコ活動を行うことで、長期的な製品づくりと環境負荷低減を目指しています。
私たちも、ジャムやソースを選ぶにあたって環境への影響や各メーカーの取り組みについてチェックすることが大切ですね。