#インタビュー

株式会社ビオスタイル|心と体にいいこと、もっと楽しもう 新しいライフスタイル「GOOD NATURE」は社会にも地球にも心地いい

株式会社ビオスタイル

株式会社ビオスタイル 北田萌子さん インタビュー

北田萌子

GOOD NATURE HOTEL KYOTO総支配人 北田萌子

現・京阪ホールディングスに入社後、鉄道事業に約10年従事。その後、宣伝担当や新規事業を経験した後、京阪グループ全体の「BIOSTYLE」(京阪版SDGs・サステナビリティ)を推進する部署を経験。GOOD NATURE STATION及びGOOD NATURE HOTEL KYOTOは、「BIOSTYLE」のフラッグシップ施設であり、2024年9月より総支配人として着任。

introduction

自然を敬い共存する風土を持つ京都のまちに、2019年にオープンしたホテル・ショッピング・レストランなどが楽しめる複合型商業施設「GOOD NATURE STATION(グッドネイチャーステーション)」。京阪グループの株式会社ビオスタイルが運営しています。

GOOD NATURE STATIONは、「人にも、自然にも、いいものを。」という考え方のもと、健康的でいいものを、楽しく、自分らしく生活に取り入れるライフスタイル「GOOD NATURE」を体験できる施設です。

今回は株式会社ビオスタイルの北田萌子さんに、グッドネイチャーステーションで実践されている取り組みや、SDGsへの考え方などについてお伺いしました。

京阪グループの考えるSDGs「BIOSTYLE」と「BIOSTYLE PROJECT」

–はじめに、株式会社ビオスタイルのご紹介をお願いします。

北田さん:

株式会社ビオスタイルは、京阪ホールディングス100%出資の会社で、2017年6月に設立されました。

主にホテルの運営、オリジナルブランドの企画・製造販売などを行い、京都の四条河原町で、ショッピングやグルメが楽しめる施設「GOOD NATURE STATION」を拠点に事業を展開しています。

この「GOOD NATURE STATION」は、私どもの社名にもなっているとおり、京阪グループが考えるSDGs「BIOSTYLE」のフラッグシップ(旗印)としての役割を果たしています。

–まず、京阪グループの考えるSDGs「BIOSTYLE」について教えていただけますか。

北田さん:

京阪グループは鉄道事業をベースに、地域社会のお客様の生活に寄り添って発展してきましたが、既存事業だけでなく新しい事業を育てることも必要だと考えました。そして、「楽しみながら、健康的で良いものを自分らしく取り入れるライフスタイル」を提案すべく2014年に提唱されたのが「BIOSTYLE」という言葉です。「BIOSTYLE」=「京阪版SDGs」と位置付けています。

「BIOSTYLE PROJECT」は、「BIOSTYLE」の推進を京阪グループ内で加速させるためのプロジェクトで、人にも地球にもいいことを、毎日の生活に楽しく、無理なく取り入れる、循環型社会の実現を目指す活動です。
京阪グループ各社が、持続可能な社会に貢献できる商品・サービス・事業を創り上げることを目指しています。

この「BIOSTYLE PROJECT」を「京阪グループにおけるSDGs達成に向けた取り組み」と位置づけています。

また、社会に貢献するだけでなく、企業としてその取り組みを継続していけるよう、事業としてしっかり収益を上げることも意識し、社会的価値と経済的価値を両輪で創造することを目指しています。全グループで実践している「BIOSTYLE PROJECT」には、省エネルギー車両・電気バスの導入、有機野菜や有機加工食品の販売、太陽光発電設備付戸建住宅をはじめとし、様々な取り組み事例が数多くあります。

–御社は「BIOSTYLE PROJECT」の中でどのような役割を担っているのでしょうか。

北田さん:

当社の運営している「GOOD NATURE STATION」は、取り組みそのものが「BIOSTYLE」を率先している「フラッグシップ」の役割を果たしています。「BIOSTYLE」というライフスタイルがどういうものか、認識を共有するのが難しいところがありました。「楽しみながら、健康的で良いものを自分らしく取り入れるライフスタイル」を、お客様に提案し体感頂くための施設として「GOOD NATURE STATION」が建てられました。

健康的で良いものを肩ひじ張らずに自分らしく取り入れる「GOOD NATURE」

–では、続けて「GOOD NATURE STATION」のコンセプトについてお聞かせください。

北田さん:

GOOD NATURE STATIONで提案するのは、健康的で良いものを自分らしく取り入れるライフスタイルです。しかし、今の時代、健康や環境にストイックに向き合うのは、本質的な幸せとは少し違うのではないかと考えています。これからは我慢するのではなく、楽しみながら向き合っていく。この新しい考え方を「GOOD NATURE」と名付けています。

しかし、「GOOD NATURE」の考えを、事業運営でどのように具現化するのかがわかりづらいこともあり、社内では具体的な指針として「5GOOD(ファイブグッド)」という選択基準を使っています。

  1. 「体に良いか」GOOD for Health
  2. 「心に良いか」GOOD for Minds
  3. 「地域に良いか」GOOD for Locals
  4. 「社会に良いか」GOOD for Social
  5. 「地球に良いか」GOOD for Earth

お客様に提供する新しいサービス・商品などはすべてこの判断基準に従い導入することで、自然と「GOOD NATURE」のコンセプトに沿ったものを提供できます。

そしてこの「5GOOD」は、今では京阪グループ全体の「BIOSTYLE PROJECT」の認証基準としても採用され、皆が同じ方向を向いて取り組んでいくための指針となっています。

–「5GOOD」は、御社のSDGsの取り組みとどのように繋がっているのでしょうか。

北田さん:

京阪グループでは、国連でSDGsが採択される2015年より前から、「BIOSTYLE」という言葉で、健康や環境課題に取り組むことの大切さを提唱し、新たな事業としての方向性が検討されていました。

その後、SDGsが広く謳われるようになったことを受け、5GOODの各選択基準がSDGsのどの取り組みと繋がっているかを確認しました。そして5GOODのコンセプト通りに推進していけば、SDGsの目標達成にもつながると確信できました。

–では、GOOD NATURE STATIONでの「5GOOD」の取り組みについてお聞かせください。

北田さん:

GOOD NATURE STATIONは、1階から3階まではショップやレストランが入り、4階から9階はホテルが入っている複合型商業施設です。

施設全体としては、「GOOD for Earth」を実践すべく、脱炭素貢献を目指した3つの取り組みをしています。

1つは、徹底した省エネです。

照明、設備等の高効率機器採用、人感センサーの使用などにより、エネルギー使用量を基準より24%削減しています。

2つ目は、創エネ・CO2吸収の取り組みです。

駐車場屋上に太陽光パネルを設置し、発電して館内で使用しています。

また、館内の吹き抜け中庭の壁面全面を緑化し、CO2を吸収をしています。緑化した壁面は、1,000㎡と建物内の壁面緑化では日本最大級です。

最後は、再生可能エネルギーの調達です。

2023年度から、非化石証書の購入により、全館で使用する全ての電力を実質再生可能エネルギー由来電力100%に転換しています。

「GOOD NATURE STATION」は、環境に配慮したグリーンビルディングを評価するプログラム「Leadership in Energy & Environmental Design(LEED 認証 )」をシルバーランクで獲得しています。

–各事業ではどのような取り組みをしているのでしょうか。

北田さん:

1階の「GOOD NATUR MARKET」は、生産者とのつながりを非常に大切にしているマーケットです。地元京都や滋賀で生産された野菜、形が不ぞろいなどの理由で市場に出回らない商品などを扱うほか、産地で出るフードロスを削減するためのサービスなど、生産者の支援と食品ロスを減らす取り組みを実施しています。一般的なスーパーでは扱われない野菜なども、お客様に美味しさや楽しみ方の提案なども含めて提供しています。

テイクアウトの食事も提供していますが、持ち帰り用の容器やカトラリーは、紙や生分解性プラスチック、さとうきびバガスストローなどを使用しています。

–レストランでも取り組みが行われていますか。

北田さん:

はい。地元の農家から有機栽培の野菜を直接仕入れる地産地消、食材の皮まで有効利用するような廃棄の少ない商品開発をはじめ、年間10トン廃棄されると言われている京豆腐「おから」を練りこんだピザ生地のアップサイクルなどをおこなっています。

もう一つ注力しているのが、「お米の循環プロジェクト」です。

施設内のホテルやレストランで提供している食事は、廃棄物がなるべく出ないように工夫したメニューを開発していますが、それでも廃棄せざるを得ない生ごみがどうしても出てしまいます。その生ごみは捨てることなく、施設の中に設置したコンポストで堆肥にしています。つくった堆肥は、滋賀県の減農薬・化学肥料不使用の農家で米作りに利用してもらっているんです。そうしてできた米を仕入れて、当施設のマーケットで販売したり、ホテルの食事で提供したりしています。

農作業の繁忙期には、弊社の社員教育の一環として、スタッフが田植えや草刈りなどの手伝いに行き、一緒に米作りを体験しています。

このプロジェクトは、食品ロスの削減と循環型農業への挑戦という、弊社の象徴的な取り組みの一つです。

環境を守り社会問題の解決にこだわりぬいた自社ブランドとホテル

–自社ブランドも展開していますね。どのようなブランドなのでしょうか。

北田さん:

現在、3つの自社ブランドを展開しています。

先にお話ししたオリジナル食品ブランド「GOOD NATURE MARKET」、オリジナルブランドコスメ「NEMOHAMO(ネモハモ)」とオリジナルスイーツブランド「RAU(ラウ)」です。

まず、「NEMOHAMO」は、植物の根も、葉も、茎も、花も、実もすべてあますところなくエキスとして抽出し、最大限に生かすオーガニックコスメブランドです。

《NEMOHAMOスキンケアシリーズ》

主な原料は植物で、有機JAS認証を取得した自社専用農園と隣接の里山で化学肥料を使用せず有機栽培で育てます。

収穫した植物は、低温真空抽出で水を一滴も使わずに搾り、防腐剤も加えずに濃厚なエキスをつくります。

製造過程においても、排水や排煙を一切出さず、100%クリーンエネルギーを使用して、環境に与える負荷を最低限に抑えています。また、残渣や余った原料なども農園で堆肥として利用しています。

原料から製造工程・販売までのプロセスで可能な限りトレーサビリティを保証し、製品の安全性を確保していることも大きな特徴です。

もちろんパッケージなどにもこだわり、サトウキビを原料としたバイオマスプラスチックを使用するほか、小さな商品にはガラス瓶を使用するなど工夫し、使用済みの容器の回収リサイクルにも取り組んでいます。

–スイーツブランド「RAU」のこだわりもお聞かせいただけますか。

北田さん:

「RAU」は、原材料の選定から、製造、販売までを一貫して自分たちで行う「Farm to Bar」を実践するブランドです。無農薬のコスタリカ産カカオを使用し、スイーツに仕上げます。

カカオは、いまだに児童労働の問題など、生産体制に多くの課題を抱えています。そんな中、「RAU」では、パティシエが現地の生産者と直接会い、厳選したカカオをフェアトレードにこだわり取引しています。継続的に購入することで、生産者の安定した収入源の確保にも努めています。

また、カカオ豆の約30%を占める外皮(ハスク)は、通常廃棄されますが、その栄養価の高さと風味に着目し、アップサイクルの取り組みをしています。

「カカオティー」や「カカオカレー」に使うことで、カカオハスクの廃棄削減につなげています。2023年度の、カカオハスク廃棄削減量は802㎏です。

どのブランドも、見た目は可愛らしくおしゃれで、思わず手に取ってしまうような商品を提供しています。そして、実際に食べたり使ったりしてまた好きになっていただく。ファンになってお買い求めいただくことで、お客様ご自身が気付いたら社会課題の解決に貢献している、そんなブランドとして展開したいと考えています。

–では、ホテル事業ではどのような取り組みをしているのでしょうか。

北田さん:

「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」では2022年4月に施行された「プラスティック資源循環促進法※」に伴い、アメニティを持参いただくか、希望者には有料販売にしているほか、客室のミネラルウォーターをアルミ缶に変えるなど、環境に負荷の低い選択をしています。

※参照:環境省https://plastic-circulation.env.go.jp/about

そのほかにも客室の茶器は、欠けたり割れたりしたものはホテルスタッフ自らが金継をして使うなど、全館で「使い捨てない」取り組みを実践しています。

《金継ぎした器》

また、当ホテルは2020年8月、環境や健康に配慮した建物が認定される「WELL Building Standard™(WELL認証)」をゴールドランクで獲得しました。ホテルとしては世界初です。

「清潔で安心な空間」「美しさと心豊かなデザイン」「緑や自然を感じられる空間」「独自に開発した快眠照明システム」「独自性の高いゲスト向けウェルネスプログラム」などが、特に高い評価を受けました。WELL認証、LEED認証を合わせ持つホテルとしても世界初となりました。

–施設丸ごとが環境などの社会課題に配慮されているのですね。では最後に、今後の展望をお聞かせください。

北田さん:

まずは、ホテルも各オリジナルブランドもしっかり認知され、より多くのお客様から選ばれ愛され続けるようにパワーアップしていくことを目指しています。そして、世の中に健康や環境課題に対する取り組みの輪を広げると同時に、私たちにしかできない新しい取り組みを次々と発信していきたいと考えています。

–これからの展開がとても楽しみです。本日はありがとうございました。

関連サイト

GOOD NATURE STATION公式サイト:https://goodnaturestation.com/

NEMOHAMO公式サイト:https://nemohamo.com/

RAU:RAU公式サイト

GOOD NATURE HOTEL:https://goodnaturehotels.com/ja/home-ja/