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ブロックチェーンって何がすごいの?仕組みやメリット・デメリット、仮想通貨以外の企業の活用事例

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近年、日本では働き方改革や、少子高齢化による労働人口の減少に対応すべく、デジタル化、ICT化、DX化を目指しています。その中で、ブロックチェーン技術が注目を集めています。

ビットコインをはじめとする仮想通貨が流行した際、ブロックチェーンという言葉を耳にしたことがある人も多いと思います。

ここではブロックチェーンとはいったい何か、ビットコインとの違いや、私たちの生活にどのような影響を与えるのかを紹介していきます。

目次

ブロックチェーンとは

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ブロックチェーンを一言で言うと、「ブロックの中に情報を格納し、各ブロックをチェーンのようにつないでいく技術」です。

ブロックチェーンの仕組み

ただ単に記録された情報をブロック単位に収納するだけではありません。

ブロックの中には、

  • ユーザーが記録した情報
  • ひとつ前のブロックの情報

が暗号化されて記録されます。これにより、例えば誰かが特定のブロック内の情報を改ざんしようとしたとします。しかし、その後に続くブロック内の暗号も変わってしまうため、すぐに情報の改ざんに気づくことが可能です。

分散型ネットワークが特徴

また、ブロックチェーンの大きな特徴として、分散型ネットワークが挙げられます。

従来、デジタル上で情報を記録するには、一つの容量の大きいサーバーを準備し、ユーザーがそこに書き込んでいく必要がありました。サーバー内にはユーザーが記録したすべての情報が保存されています。そのため、管理者はサーバーがダウンしないように維持しなければいけません。

一方、ブロックチェーンはユーザーが特定のネットワークに参加することで利用できます。そして、ネットワークに参加したユーザーには、ブロックチェーン内の情報がすべて共有されます。

これにより、ネットワーク内のユーザー全員がブロックチェーンの情報を共有しており、そのどれもが同じデータを保有することでネットワークを維持しています。たとえどれか一つが無くなったとしても、ブロックチェーン全体がダウンすることはありません。

こうした特徴によって、ブロックチェーンを活用すると、重要な情報をデジタル上で改ざんの心配がない状態で、管理者なしで保存・共有できるのです。

ブロックチェーンとビットコインの違い

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ビットコインとブロックチェーンは一緒に語られる場合が多いため、混同してしまうこともあると思います。

ブロックチェーンとビットコインの違い 

簡単に言うと、ブロックチェーンはビットコインを支える技術であり、ビットコインはブロックチェーンによって実現された仕組みです。

私たちが使用しているお金は、信頼できる中央銀行が発行し、国が価値を認めているため、お金として機能しています。「お金」が「価値のあるもの」として取引に使用されるには、以下の特徴を満たしている必要があります。

  • 偽物がない
  • 価値が保証されている

これはブロックチェーンを活用することでも実現できます。つまり、「通貨」の情報をブロック内で記録すれば、その情報は改ざんされないため偽物は存在しません。また、ブロックチェーンでやり取りされる「通貨」に、価値を見出す人が多くなったとします。これにより、必然的に価値が保証されていくのです。

このように、ブロックチェーンで実現したお金の仕組みが「ビットコイン」と呼ばれています。

ブロックチェーンの種類

では、ブロックチェーンとはどのような仕組みであり分類がされているのでしょうか。

ブロックチェーンはデジタル上で安全に情報を保存できる技術で、その効果は「ビットコイン」という仕組みを実現できるほどです。そこで、ブロックチェーンの技術に目を付けた企業は、仮想通貨以外の用途で活用する試みが行われています。

ただし、企業がブロックチェーンを活用するにはいくつかの条件をクリアする必要があります。ブロックチェーンはネットワークに参加することで利用できるようになります。これにより、ネットワークに参加したユーザーにはブロックチェーン内のすべての情報が共有されるのです。

一方、企業が保存する記録の中には、企業秘密(部外秘)の情報も多く、誰にでも共有するわけにはいきません。そのため、ブロックチェーンには誰でもネットワークに参加できる「パブリックチェーン」と、許可されたユーザーのみが参加できる「プライベートチェーン」、前者2種類の中間に位置する「コンソーシアムチェーン」の3種類に大別されます。

企業がブロックチェーンの技術を使用する場合、使用用途に沿って「パブリックチェーン」と「プライベートチェーン」、「コンソーシアムチェーン」を使い分ける必要があるでしょう。

下記では、3種のブロックチェーンについて解説します。

パブリックチェーン

一般的に「ブロックチェーン」と呼ばれるものの大半に該当するものがパブリックチェーンを指します。
「公共」と名がついている通り、誰でも参加できデータの閲覧などが広く開かれているものです。

プライベートチェーン

パブリックチェーンとは対極に位置するブロックチェーンである、プライベートチェーン。

管理者が存在し、情報の編集権限を持ちます。データへのアクセスは限られた人のみが行えます。

コンソーシアムチェーン

前者2種類のブロックチェーンの性質を合わせもつのがコンソーシアムチェーンです。
管理は複数名で実施され、アクセス権は許可された参加者に与えられています。

共同でブロックチェーンを管理・運営する場合に適しており選択されるものとなります。

ブロックチェーンをより便利にするスマートコントラクト

また、企業がブロックチェーンを活用するにあたって、拡張機能であるスマートコントラクトも重要になります。

スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で自動的に動くプログラムを指し、ブロックチェーン内でユーザー同士が取引や、やり取りをする際に重宝されます

一般的な契約の場合、当事者同士がお互いが満足できるまで話し合う必要があります。時には取引相手がしっかりと契約を守ってくれるのかを保障するため、第三者が介入する場合もあるでしょう。これでは取引以外の部分でかかる時間も多く、第三者が介入すれば報酬として余分なコストもかかります。

スマートコントラクトを用いると、事前に取引の条件を設定できます。例えば、Aさんがブロックチェーン上でデジタルの絵画を販売する場合、取引条件を「1万円で入札」と設定したとします。

ここで、ネットワーク上のBさんがその絵画を購入する際には、1万円で入札すると自動的に取引が完了します。Aさんのもとには1万円が、Bさんのもとには絵画が届きます。取引情報もブロックチェーン上で記録されるため、悪意のある誰かに改ざんされる心配もありません。

このように、取引の条件があらかじめ決まっている場合、スマートコントラクトを作成しておくことで、デジタル上でも第三者を挟まず、安全に、素早く取引を実施できるのです。

ブロックチェーンのメリットと注目される背景

ここまででブロックチェーン技術の概要を見てきました。複雑な内容なので、

  • ブロックチェーン上で保存された情報は、悪意をもった第三者に改ざんされない。
  • そのため、ブロックチェーンを活用すれば、デジタル上でも安心してやり取りを行える

の2つの特徴をまずは理解して次に進んでいきましょう。

続いて、従来の仕組みや構造と比較しながら、ブロックチェーンでどのような変化が生まれるのかを紹介していきます。

デジタルデータベースの信頼性向上

先述した通り、これまでデジタル上で情報を保存する場合、一つの大きなサーバーにまとめて記録していく必要があります。

そのため、データを入力する人・閲覧する人が多くなるにつれて、サーバーにかかる負担も大きくなるでしょう。サーバーへの負担が許容量を越えてしまった場合、強制的にシャットダウンしてしまい(「サーバーが落ちる」とも呼ばれる)、ユーザーはアクセスできなくなってしまいます。これでは利便性が優れているとは言えません。

また、情報が保存されている場所が一つだけであるため、悪意のあるプログラマー達によってデータを改ざん、もしくは盗まれる恐れもあります。たとえ、操作された情報が一つだけだったとしても、それだけでデータベースないしはデータベース内全ての情報の信頼性が損なわれてしまう可能性もあります。

ブロックチェーン上で情報を記録していけば、分散型ネットワークのためサーバーが落ちる心配はありません。改ざん耐性も高く、ネットワークに参加するユーザーも絞れるため、高い信頼性を保つことができます。

権利や価値のデジタル化

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これまで企業、役所の重要な書類はアナログな紙媒体でやり取りをされていました。

アナログな書類では複数の責任者に署名をもらう際、非常に手間がかかります。紙媒体のため誰かに届けるには郵送する必要があり、郵送が完了するにも数日間は必要です。

やり取りをするのが2人だけであれば、負担は少ないかもしれません。しかし、複数の企業間でやり取りを行い、それぞれで行政からの認可も必要になるという場合、たった一回のやり取りが完了するまでに膨大な時間が生じるでしょう。

こうした不満点がありながらも書類をデジタル化できない理由として、デジタルデータベースの信頼性への懸念が挙げられます。

先ほど触れたように、従来のデジタルデータベースでは信頼面に不安が残ります。企業や役所でやり取りされる書類が重要であるほど、データの改ざんや破損、外部への流失は避けなければいけません。

結果として、重要な書類であるほどデジタル化は不安視される傾向にあり、アナログなやり取りが主流となってしまうのです。

その点、ブロックチェーン上であれば、情報の信頼性を担保したまま重要な書類のデジタル化も実現できるでしょう。

仲介者や管理者なしで金融取引

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従来の取引では、取引の信頼性を担保するために仲介者や管理者が必要となります。

特にデジタルでの取引では、相手がどのような人物なのかを把握することは出来ず、安心して取引を行うのは困難です。そのため、デジタル上であっても安全に取引を行うために、2者間を取りもつ仲介者や管理者が求められます。

例えば、メルカリやヤフオクといったフリマアプリもその一例です。これらのサービスを利用していて、「代金を支払ったのに商品が届かない」「いつまでたっても相手から連絡がこない」などのトラブルに見舞われるケースも発生しています。こうした場合、仲介者となる企業へ連絡をすれば、支払った代金の返金や取引のキャンセルなど、何らかの対応を行ってくれます。

このように二者の間に入ることで、取引の信頼性を担保する仲介者や管理者ですが、取引に関わる人数が多くなるにつれて時間的・資金的コストも大きくなります。「取引の信頼性を担保する」というだけで、関係者達に支払うためのコストが大きくなっていくのです。

ブロックチェーンを活用すれば、スマートコントラクトによって信頼性を保ちながら取引を自動化できます。結果として取引に必要だった仲介者や管理者を排除しながら、コストを抑えて取引ができるようになるでしょう。

ブロックチェーンにる各業界への影響

このようにブロックチェーンを活用することで、様々な分野で抱えていた不便さを解消し、デジタル化やDX化を実現していくでしょう。では、より具体的に業界ごとに起こる変化を見ていきましょう。

【金融×ブロックチェーン】ユーザーの利便性を確保したままデジタル化

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金融業界では基幹システムの管理・維持や窓口の運営など、金融サービスを運営するのに大きなコストが生じています。

特にシステム面に関しては、一つのサーバーに多くの顧客データを格納する状況のため、何か問題が発生した際にユーザーの利便性を損ないます。実際に、大手の銀行などではシステム障害によって、一時的に取引が出来なくなったという事例もあります。

ブロックチェーンでシステムを構築すれば、こういった問題の発生も防ぐことが出来るでしょう。

【サプライチェーン×ブロックチェーン】現場の細かい情報も把握できるように

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現在、地球環境への意識向上や従業員の労働環境、衛生面が注目されるにあたって、製品のサプライチェーンにも消費者の関心が高まっています。とはいえ、サプライチェーンを全て把握・管理することは困難です。

一つの製品が私たちの手に届くまで、

  • 原料となる鉱石を採掘する事業者
  • 原料を加工して部品を製造する企業
  • 部品を組み合わせて製品を組み立てる企業
  • 製品を仕入れて販売する企業

など様々な関係者が存在します。これら全ての現場からデータを収集し、管理するのは多大な労力を必要とします。

ブロックチェーンを活用すれば、各関係者がネットワークに参加し現場の情報を記録していくだけで、サプライチェーンの全体像を誰もが把握できるようになるでしょう。

【医療・福祉×ブロックチェーン】プライベートチェーンで個人情報を保護

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従来の医療・福祉現場では、患者のカルテや診察結果といった情報を病院ごとで管理していました。

これにより、患者が別の病院で審査を受ける際には、前の病院からの紹介状がなければ、医師が正確な症状といった情報を把握するのは困難です。患者自身が口頭で説明することもできるものの、必要な情報を伝えきれるかと言われると、ハードルが上がってしまいます。

ブロックチェーンで患者情報を管理していけば、何らかの事情で病院が変わっても、精度の高い診察を行えます。限られたユーザーだけがアクセスできるプライベートチェーンならば、患者自身の個人情報も保護されるため安心して利用可能です。

【人材採用×ブロックチェーン】より精度の高い採用が実現

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近年、企業は即戦力を求める傾向にあるものの、転職市場では依然として、求職者の学歴やこれまでの経歴が重要視されます。しかし、学歴や経歴は求職者自身がエントリーシートに記入する、いわば自己申告制です。そのため、求職者側がやろうと思えば学歴や経歴を詐称することも可能です。

採用担当は面接の際に、転職希望者の学歴や経歴が本当のものなのか見抜かなければいけません。時には、情報の真偽を確かめるため、方々に事実確認を行う場合もあるでしょう。

当然、そのような作業を一人一人に実施していては、時間がいくらあっても足りません。結果として、学歴・経歴詐称を見抜けないまま、採用してしまう事例もあります。

学歴やこれまでの経歴をブロックチェーンで管理できるようになれば、人材採用の現場でも精密度が高まっていくでしょう。

【再生可能エネルギー×ブロックチェーン】個人間の売買が実現する可能性も

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地球環境への意識向上から、二酸化炭素を排出する化石燃料を使用した発電方法(火力発電など)から、再生可能エネルギーを利用したものへの移行が望まれています。

特に、太陽光発電は個人の家庭でも実施できるという点から、日本でも家庭用太陽光発電の普及が進んでいます。しかし、現状では家庭で発電した電気は、電気会社しか販売ルートが存在せず、販売価格も固定価格買取制度(FIT制度)によって決められています。

固定価格買取制度の値段も年々減少傾向にあり、利益を得るメリットが無くなれば、家庭用太陽光発電の導入速度も落ちてしまうでしょう。そこで、ブロックチェーンを活用すれば、電力会社が仲介しなくとも、個人間で電気の売買が可能になります。

ブロックチェーンによる個人間の電気売買が普及すれば、日本でも再生可能エネルギーを利用した発電方法がさらに普及していくかもしれません。

日本政府のブロックチェーンに関する取り組み

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このようにブロックチェーンは各業界の課題と問題を解決する革新的な技術です。

そのため、IT業界のみならず多くの有識者たちがブロックチェーンの有用性について着目しています。

しかし、こうした新しい技術の社会的な普及には、企業だけの導入事例だけでなく、政府による積極的な姿勢が必要になります。(※個人情報や機密情報を扱うならば、法による規制や取り決めも重要になってくる。)

では、日本政府によるブロックチェーンに対する動向を見ていきましょう。

【2017年】ブロックチェーン活用検討サブワーキンググループ

日本では、2011年ごろに仮想通貨としてのビットコインの認知が広がり始めました。その後、2017年後半にはビットコインバブルと呼ばれるほど価格が高騰し、盛り上がりを見せていました。

これと同時期の2017年には日本でもブロックチェーン技術が注目されており、IT技術の一つとして様々な分野での活用が検討されています。

日本のIT関連政策について検討する組織の一つ、情報通信審議会では2017年の「ブロックチェーン活用検討SWG 取りまとめ案」にて、ブロックチェーンが言及されました。

そこでは主に、国内外様々なブロックチェーンの利活用の事例を取り上げ、日本でも行政や金融分野での活用を検討していく、と記載があります。

しかし、具体的な導入目標や推進計画などは立てられておらず、積極的な動きは見られませんでした。

ブロックチェーン活用検討SWG 取りまとめ案 概要

【2020年】企業が政府に対して、ブロックチェーンの活用に関する提言を提出

このように、日本ではブロックチェーン技術自体に注目が集まるものの、普及に関する具体的な政策はありませんでした。

その中で、楽天やサイバーエージェントなどのIT系企業が加盟している経済団体・新経済連盟は2020年に日本ブロックチェーン協会(JBA)と共に作成した「ブロックチェーン国家戦略に向けた提言」をIT担当大臣、ならびに経済産業大臣あてに提出しました。

提言の内容は大きく分けて以下の二つです。

  1. ブロックチェーン活用に向けた官民協議会の設置と、社会実装に向けた課題の洗い出し
  2. ブロックチェーンに関する基本戦略の策定や、法規制などのあり方、ビジネス支援、関係省庁を横断する機能の設置などの検討

これは、ブロックチェーン普及に関する政策が不足していたと同時に、多くの業界人がその有効性を感じていたと言えるでしょう。

ブロックチェーン国家戦略に向けた提言(事例分析編)~レガシーシステムの限界と、ブロックチェーンによる課題解決~

【2021年】成長戦略にてブロックチェーンが言及

こうした取り組みもあって、2021年に公表された「成長戦略計画」にて、ブロックチェーン技術の活用検討について明記され、国家戦略として正式に取り組まれるようになっています。

サプライチェーンの効率化や官民の様々なサービス間でのID(本人確認)連携など、ブロックチェーン等の新しいデジタル技術の活用方策の検討を行う。

引用:成長戦略実行計画

本計画の最後には、成長戦略の推進に当たって適切かつ具体的な行動指標を立て、その進捗状況を把握・分析していくと綴られています。

行政や金融など、私たちと距離の近い場所でブロックチェーン技術が使用される日も遠くないかもしれません。

ブロックチェーンに関する日本企業の取り組み事例

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では、次にブロックチェーンに関する事業を行う日本企業の事例を見ていきましょう。

【SDGsの進捗状況が視覚化】株式会社bajji

株式会社bajjiは、SDGsの進捗を見える化するメディアプラットフォーム「mySDGs」をブロックチェーンを活用して実現し、サービスの提供を始めました。

mySDGsでは企業および個人が、自身の活動をSDGsの目標とセットで情報発信をすることができます。

プロジェクト単位で継続的に情報を登録することができるため、ステークホルダーやお客様に継続的な活動を効率良くアピールすることができるでしょう。

そもそもSDGsとは、2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。達成すべき17の目標を定め、より具体的な数値目標として169個のターゲットが策定されています。

進捗と成果が改ざん不可能な形で見える化出来るようになったため、企業にとっても信憑性のあるアピールポイントとして活用できます。これにより、個人や企業のSDGsへの取り組みが積極的になれば、目標達成に大きく貢献するでしょう。

【寄付金の使用用途が把握できる】株式会社UPDATER

株式会社UPDATERでは、カカオ生産における児童労働や生産者が正当な対価を受けられない問題を解決すべく、販売価格のうち100円相当がカカオ生産国の課題解決に使用されるチョコレートを販売しています。

そして、ブロックチェーンを活用した独自のP2P取引システムによって、集めたお金が課題解決に使われているのかを追跡できるようにし、応援金が指定の団体に支払われたことを証明しています。

これまでも途上国に対する寄付金を募る取り組みは日本でも行われていました。

しかし、その寄付金が本当に現地で、目的通りに使用されているのかどうかは明らかになっていませんでした。

ブロックチェーンによる寄付では、自分の寄付金が何に使用されたのか、誰を助けたのかが改ざん不可能な状態で参照できるようになります。そのため、寄付金の透明性が上昇し、寄付に対して信頼性が増していくでしょう。

【関連記事】みんな電力 | 「顔の見えるライフスタイル」を掲げた再生可能エネルギーの取り組み

【二酸化炭素排出量が見える化】株式会社ウェザーニューズ・株式会社chaintope

株式会社ウェザーニューズと株式会社chaintopeは、海運業界が実施している気候変動への取り組みを支援するため、海運業界のCO2排出削減量をブロックチェーン上に記録する新サービス「マリンカーボンブロッキング」の提供に向けた共同研究を開始しました。

現在、運送業界は環境保全や人材不足への対応のため、トラック輸送から海運や貨物輸送への移行が望まれています。こうした動きは「モーダルシフト」と呼ばれており、政府も普及に取り組んでいます。

モーダルシフトは、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量を大幅に削減できるため注目されています。より具体的な数値で、二酸化炭素の排出量削減をアピールすることができるようになれば、船舶での貨物輸送が普及する足掛かりになるかもしれません。

※モーダルシフトはこちらもご覧ください

ブロックチェーンに関する世界の企業の取り組み事例

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続いて、世界のブロックチェーンに関する事業を行う企業について見ていきましょう。

医薬品会社「GlaxoSmithKline」とブロックチェーン開発企業「Viant」が協力

商品を抱える事業の場合、それぞれのサプライチェーンを管理することは、必要経費を最適化するため非常に重要です。また、商品を購入し、実際に使用するユーザー(顧客)の利便性を保つことにも関わってくるでしょう。

アメリカの医薬品部門では、サプライチェーン管理に対する規制や組織的な管理体制において不十分な点があります。これは将来的に医薬品の在庫不足、逆に過剰な在庫を抱える恐れがあると指摘されています。

また、こうした医薬品在庫管理で不手際がおこってしまうと、実際に医薬品を欲している患者のもとに行き渡らない可能性があります。患者の病気や状態によっては大きな問題へとつながるかもしれません。

さらに、2017年の研究では医薬品のサプライチェーン管理が不適切なため、医療関係者は2億3,000万ドルの不要なコストを支払っているとの報告もあります。

そこで、製薬会社のGlaxoSmithKlineとブロックチェーンを活用したプラットフォームを開発する会社Viantは協力して、医薬品のサプライチェーンを管理するブロックチェーンの開発に取り組んでいます。

医薬品のサプライチェーンが適切に管理されるようになれば、病院や患者をはじめとする関係者全てが恩恵を受け取れるようになるでしょう。

※参考:https://www.supplychaindive.com/news/Viant-GSK-blockchain-pharma-supply-chain-track-trace/513902/

ブロックチェーンで人材採用を効率化「Work Wolf」

アメリカの転職サイトCareer Builderの調査によると、採用担当者の75%が受け取った履歴書に嘘が含まれていたと報告しました。嘘を見抜いたというだけでもこれだけの割合であることから、より多くの虚偽がある恐れがあります。

そのため、アメリカの人材採用の現場では、履歴書に記載された内容を額面通りに受け取るのが難しくなっていました。そこでWork wolfでは各種教育機関などと連携して、学歴や職歴、資格、犯罪歴などを把握し、ブロックチェーン上のプラットフォームに記録するサービスを提供しています。

応募者は自身で経歴を申請し、Work wolfがそれらの真偽を調査、確認が取れ次第プラットフォーム上に記載されます。そして、Work wolfのアカウントを持っている採用担当者は、ブロックチェーン上で検索し、確認することが可能です。

候補者側からすれば、Work wolfのサービスに自信の経歴を登録すれば、信憑性のある情報として面接官にアピールできるようになります。一方、採用担当からしても第三者が裏どりを行った情報を把握できるようになるため、労力削減につながります。

こうしたサービスが広がっていくことで、人材採用の現場で不要な労力が減り、本当に欲しい人材だけを採用できるため、社会全体の生産性向上につながるでしょう。

SDGsとブロックチェーンの関係

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先ほども言及しましたが、SDGsは持続可能な経済成長を目指して策定された国際目標です。

ブロックチェーンにより、情報開示の真偽が保証される

SDGsの目標達成には企業の積極的な取り組みが必要です。そのため、政府も企業に対して優先的に融資の対象とする、減税対象とする、などのSDGsに取り組むメリットを提示しています。

しかし、企業のSDGsへの取り組みやその効果などは、自己申告な部分も多く、信憑性が持てないこともあるでしょう。こうしたことから、SDGsに関する取り組みの真偽を保証する意味でも、公的機関や各種団体の認証制度の需要が伸びてきました。

ブロックチェーンが普及していくことで、一般の顧客や関係者が、企業のより具体的な数値、取引を参照できるようになります。SDGsへの取り組みも可視化され、目標の達成に近づいていくと考えられます。

まとめ:ブロックチェーンはこれまでにないデジタルサービスを実現する!

ブロックチェーンを活用すると、デジタル上で重要な情報を改ざんされない状態で、管理者なしに保存・共有できるようになります。

これにより各分野で抱える課題や不満点を解消できるようになり、現時点でも様々な企業がブロックチェーンを活用したサービス提供を始めています。

ブロックチェーンの特徴は、信頼性が求められるSDGsとも親和性があります。そのため、今後ブロックチェーンが普及していくことで、SDGsの目標達成に貢献していくでしょう。

<参考文献>
※参考:ブロックチェーン活用検討SWG 取りまとめ案 概要
※参考:ブロックチェーン国家戦略に向けた提言(事例分析編)~レガシーシステムの限界と、ブロックチェーンによる課題解決~
成長戦略実行計画
※参考:株式会社bajji 公式サイト
※参考:mySDGs 公式サイト
※参考:株式会社UPDATER 公式サイト
※参考:株式会社ウェザーニュース 公式サイト
※参考:株式会社chaintope 公式サイト
※参考:https://www.supplychaindive.com/news/Viant-GSK-blockchain-pharma-supply-chain-track-trace/513902/
※参考:Work Wolf 公式サイト
※参考:未来のIT図鑑これからのブロックチェーンビジネス
※参考:図解即戦力 ブロックチェーンのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書