サーキュラーエコノミーとは?企業の取り組み事例や課題を解説

廃棄物から生まれた100%再生可能なシューズ。

100%再生アルミで作られたパソコン。

これらはいずれも、サーキュラーエコノミーの考え方から生まれた製品です。

サーキュラーエコノミーはここ数年認知度が高まっている言葉のひとつで、持続可能な経済と環境を実現するための方法として、世界各国で注目を集めています。

こう聞くと、国や企業向けの言葉?と思う人も多いかもしれませんが、環境や人、動物の存続に関わる経済の形であるため、私たち個人も理解しておきたいものです。

そこでこの記事では、サーキュラーエコノミーとは何か、実際に取り入れている企業の実例を交えながら、経済がどのように変わっていくのかを見ていきます。

でははじめに、サーキュラーエコノミーの概要について見てきましょう!

目次

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーとは、新しく使う資源を減らして、今あるもので経済・産業を循環させるシステムを指し、日本語では循環型経済と呼ばれています。

この循環を実現するには、最低限の資源で製品を作り、メンテナンスや修理を繰り返しながら使い倒す、廃棄物を極限まで抑える、このようにサークルの中を回り続ける生産サイクルを構築する必要があります。(※1)

リニアエコノミー(直線型経済)からの脱却

これまでの経済は、地球から資源やエネルギーを得て製品を作り、使い終わったら廃棄する一方通行のリニアエコノミー(直線型経済)と呼ばれるものでした。

産業革命以降、リニアエコノミーによって私たちは便利で豊かな生活を手に入れましたが、一方で地球への負担は大きく、環境問題や資源の枯渇など、さまざまな面で問題が発生したのです。(※2)

これらの問題を解決するためにも、サーキュラーエコノミーは、従来の経済システムからの脱却を目指しています。

では、リニアエコノミーから脱却するとは具体的にどういうことなのでしょうか。

ここで、サーキュラーエコノミーに切り替えた家電メーカーの取り組みを例に説明します。

まずはサーキュラーエコノミーの事例を見てみよう

スウェーデンの創業100年の家電メーカー「エレクトロラックス」は、2019年から掃除機のレンタルサービスを開始し、リニアエコノミーからの脱却を目指しています。

これは、レンタルすることで、必要に応じてメンテナンスや修理ができ、利用者は常にベストな状態の掃除機を使い続けることができるサービスです。

従来のリニアエコノミーでは、掃除機を、

買う→使う→壊れた、もしくは必要なくなった→廃棄する→新しく買う

という流れでした。

この一方通行のサイクルは廃棄物を増やし、製品を作るために次々と資源が使われます。

その一方でエレクトロラックスは、掃除機を、

レンタルする→返す→(企業側)メンテナンス、改善する→(利用者)レンタルする→<繰り返す>

と、廃棄物を出さない仕組みとなっています。

エレクトロラックスのような例は世界で増えてきていますが、その背景には、サーキュラーエコノミーの重要性をいち早く世界に向けて発信した団体「エレンマッカーサー財団」による働きかけが影響しています。(後ほど詳しく取り上げます。)

彼らは、サーキュラーエコノミーへ移行するには3つの原則に従う必要があると示しました。

サーキュラーエコノミーの3原則

サーキュラーエコノミーの3原則は以下の通りです。

Design out waste and pollution:廃棄物・汚染などを出さない設計

GHG排出、有害物質、水・大気の汚染や交通渋滞など経済活動による人の 健康や自然環境への負荷を低減する

 Keep products and materials in use:製品や資源を使い続ける

設計によって製品・部品・素材の耐久性、リユース、再製造やリサイクルを進め、 経済の中で循環させる他、バイオ由来素材については経済システムと自然システム間を行き来させる

Regenerate natural systems:自然のシステムを再生する

再生可能エネルギーの活用や土壌への養分還元など、非再生資源の使用を 避け、再生可能資源を活用する

経済産業省 環境省「循環型の事業活動の類型について」

※GHG排出とは、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスのこと

サーキュラーエコノミーのバタフライ・ダイアグラム

この3原則を実現する方法として、エレン・マッカーサー財団では循環の仕方を図式化したバタフライ・ダイアグラム(正式にはサーキュラー・エコノミー・システム・ダイアグラム)を提唱しています。

まるで蝶が羽を広げたように見える上の図は、

  • 左に植物、動物の「生物的サイクル」
  • 右に石油や石炭、鉱物といった地球資源の「技術的サイクル」

を表し、内側になればなるほど環境に負担なく循環を進められることを示します。

技術的サイクルを具体的に説明すると、

  1. メンテナンス/修理/シェア
    1つのものを繰り返し使うため、環境への負荷が少ない
  2. リユース/再配分
    回収・配送によってCO2が発生し。その際には燃料も必要となるため、環境への負荷が見られる
  3. 再製造/改修
    工場で製品を分解し、再製造を行う際や輸送にエネルギーが必要となり、環境への負荷がさらに大きくなる
  4. リサイクル
    原材料まで戻す、再び部品や製品を作るなど、多くの面でエネルギーやCO2を排出するため環境への負荷が最も大きくなる

というように、外側に向かうほど、新たなエネルギーや材料が必要となり、環境への負荷が高まります。

したがって、より内側のループを実現できるよう考えていく必要があるのです。

【関連記事】循環型社会とは?世界や日本の具体事例・SDGsとの関わりも

サーキュラーエコノミーとリサイクルの違い

ここまで読むと、1つ疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。

それは資源を循環し続けるという点でいうと、日本がこれまで続けてきたリサイクルを推進する経済体系と変わらないのでは?ということです。

リサイクルを推進する経済体系をリサイクリングエコノミーと呼びますが、サーキュラーエコノミーとは本質が異なります。次で詳しく見ていきましょう。

リサイクルは廃棄物が出ることを前提とした考え方

2つの違いは、廃棄せずに循環し続けるというサーキュラーエコノミーに対し、リサイクリングエコノミーは廃棄物が出ることを前提にしている点です。

上の図は、オランダ政府によって示された、

  • リユース(リサイクリング)エコノミー(真ん中)
  • サーキュラーエコノミー(右)

の明確な違いを表したものです。(左はリニアエコノミー)

リサイクルの考え方の基本は3R

「リサイクル」について語られる場合、よく3Rという言葉が使われます。

3Rとは

・リデュース=資源の使用と廃棄物の排出を減らす

・リユース=再利用

・リサイクル=再利用

の3つのRから成り立つ考え方

3Rの基本は、廃棄物の中でもまだ使えそうなものを資源として再利用し、廃棄物を適切に処理することで環境負荷を極力抑えることが目的です。(※3)

これは、製品の最終地点が廃棄物であることからリニアエコノミーから発展させた考え方と言えます。

一方、サーキュラーエコノミーは繰り返しになりますが、初めから廃棄せずに使いまわすことを前提としているのです。

廃棄物ありきか、無しか。

この違いからサーキュラーエコノミーとは根本的に異なります。

また、サーキュラーエコノミーと従来の経済ではリサイクルに対する考え方も異なります。

サーキュラーエコノミーが目指すのはアップサイクル

サーキュラーエコノミーで目指すリサイクルはアップサイクルと呼ばれるものです。これは、本来であれば廃棄されるものに新しい価値を与える考え方で、例えば、

などが挙げられます。

一方で従来のリサイクルは、ダウンサイクルと言われ、作り直すことで環境負荷がかかったり、低品質になってしまったりすることに加え、その役割を終えると最終的には廃棄されてしまいます。

リサイクル一つ取ってみても、根本となる考え方が違うのです。

【関連記事】日本のリサイクルの現状と先進国ドイツの事例を紹介|生まれ変わって何になる?

サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミーとの違い

もうひとつ、似た言葉にシェアリングエコノミーがあります。

シェアリングエコノミーとは、個人が所有する資産(モノ、場所、スキルなど)を貸し出すシステムです。共有経済とも呼ばれます。

シェアリングエコノミーはサーキュラーエコノミーの中のひとつ

このシェアリングエコノミーは、サーキュラーエコノミーの中のひとつのビジネスモデルに位置付けられます。

上の図は、総合コンサルティング会社のアクセンチュアが提唱する、サーキュラーエコノミーによる5つのビジネスモデルの関係性を表した図です。(※4)

サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル

<5つのビジネスモデル>

1 循環型サプライチェーン

2 サービスとしての製品

3 資源回収とリサイクル

4 製品寿命の延長

5 シェアリングプラットフォーム

それぞれ詳しく見てみましょう。

1 循環型サプライチェーン

原材料に関わるコストを減らし、安定して調達し続けるために、100%再生可能なものや生分解性のあるものを導入します。

check! 生分解性とは

物質が微生物などの生物の作用により分解する性質を指す

コトバンク

2 サービスとしての製品

必要なものを必要な時に使い、利用した分だけのサービス料金を支払うことで、高品質、高機能、耐久性の良いものを使い続けることができます。

3 資源回収とリサイクル

寿命を迎えた製品を回収し、価値ある素材や部品、エネルギーを取り出し、別の用途に活用することができます。

4 製品寿命の延長

廃棄された製品には、修理やメンテナンスをすればまだ使える製品が多くあります。これらを回収し、修理、再製造、アップグレード、再販することで製品の寿命を延長することができます。

5 シェアリングプラットフォーム

頻繁に使用されず眠っている製品や設備を貸し借り、共有、交換することで、資源や資産の無駄をなくします

これら5つを網羅したものがサーキュラーエコノミーの理想的な形となるため、シェアリングエコノミーはそのなかの大事な役割を持つひとつです。

ここまでがサーキュラーエコノミーの大まかな概要になりますが、なぜ近年になって注目されるようになったのでしょうか。

【関連記事】シェアリングエコノミーとは?企業の具体例や利用するメリット

なぜサーキュラーエコノミーが必要なの?

サーキュラーエコノミーが注目されるようになった背景は、従来のリニアエコノミーから脱却することで、様々な問題が改善されることが明らかになってきたためです。

1つずつ見ていきましょう。

人口増加と大量生産・大量消費による資源の枯渇の解消が必要

一つ目の問題は、人口増による資源の枯渇です。

世界の人口は、産業革命が始まった1760年以降、徐々に増加し始め、1950年から2000年にかけて爆発的に増えていることがわかります。また、この時期から大量生産大量消費の経済システムが定着し、多くの資源を使用するようになりました。

国連の推計によると2050年には世界人口が97億人になると予測されています。(※5)

また、このままのペースでモノを作り続けるといずれ資源が不足し、すべての人口を賄い切れなくなり、その結果競争や紛争に発展することも懸念されているのです。

環境問題の解決を目指す

2つ目は環境問題です。

これまでの経済システムは、生産、流通、消費、廃棄のすべての段階において、

  • 大量の二酸化炭素の排出
  • 汚染物質の流出

など、地球に負担をかけてきました。その結果、地球温暖化や生物多様性の喪失などの問題が発生するようになったのです。(※6)

そのなかでも特に、プラスチックゴミによる環境汚染が深刻です。

プラスチックは便利で安価で、私たちの生活に欠かせないものである反面、適切に処理されなかった場合(ポイ捨てなど)、河川を流れ最終的に海にたどり着き、海洋ゴミとなります。

この海洋ゴミは、海の生き物の誤食やサンゴ礁の病気など、海洋生態系に多大な影響をもたらします。

このままのペースで海にゴミが流出し続けた場合、2050年には魚の量を上回るプラスチックゴミが海に蓄積すると予測されているのです。

【関連記事】海洋汚染とは?原因や問題、現状、環境問題への対策、人間に与える影響、私たちにできることも

リサイクルの課題を解消しなければならない

また、プラスチックはリサイクルにも課題を抱えています。

日本のリサイクル率は84%と高い数値を誇りますが、その半数以上は焼却炉で燃やした熱をエネルギーとして回収するサーマルリサイクルという方法が取られています。

この方法は温室効果ガスを発生させ、地球温暖化を招いていると問題視されているのです。(※7)

そのため、リサイクル率をあげるよりも、製品、部品の修繕、再利用によって廃棄物をなくすことが、環境問題を解決する有効な手段と考えられています。

【関連記事】脱プラスチックとは?メリットやデメリット、企業の取組事例、おすすめ代替品まで

サーキュラーエコノミーに関する世界の取り組み

このような問題を抱える中、2009年に世界一周単独航海を成し遂げたことで有名なエレン・マッカーサーが2010年にエレン・マッカーサー財団を設立し、サーキュラーエコノミーの考え方を浸透させました。

同団体は、循環型社会への移行を加速させることをビジョンに掲げ、サーキュラーエコノミーを発信していく中で、環境問題と経済の関係について次のように言及しています。

「企業の経済活動によって生まれる温室効果ガスは全体の45%にのぼり、サーキュラーエコノミーに移行することで排出を抑えられる」(※8)

この発表から、サーキュラーエコノミーを進めることで資源効率のみならず、気候変動の緩和につながると世界で共通認識となり、循環型社会への移行が求められるようになったのです。

そこでEUでは2015年12月、世界に先駆けてサーキュラーエコノミーを欧州全土で推進する政策「サーキュラーエコノミーパッケージ」を打ち出しました。

EUの政策「サーキュラーエコノミーパッケージ」

この政策は、循環型社会を目指した上で、気候変動や環境問題の対処、雇用創出や経済成長、投資、社会的公正なども同時に促進するというものです。

具体的な内容は、

  • 拡大生産者責任の見直し(製品の透明性確保)
  • エコデザイン(修理、再製造を容易にした設計)
  • 食品ロスの削減(食品残渣の寄付、賞味期限への正しい理解)
  • プラスチックリサイクルの促進
  • 二次原材料の利用促進(市場ニーズに合わせた二次原材料の開発)

さらに廃棄物法令が改正され、

  • 2030年までに加盟国各自治体の廃棄物の65%をリサイクル 
  • 2030年までに包装廃棄物の75%をリサイクル 
  • 2030年までに全種類の埋め立て廃棄量を最大10%削減

などの内容が盛り込まれました。(※9)

またEUは、2020年3月にサーキュラーエコノミーのさらなる加速を目指すため、新たな行動指針「新サーキュラーエコノミーアクションプラン(循環型経済行動計画)」を発表しました。

さらなる普及を目指して「新サーキュラーエコノミーアクションプラン(循環型経済行動計画)」

この計画のポイントは、

  • サステナブル製品をEUの基準にすること
  • 消費者の権利強化
  • 重点分野の加速

です。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

サステナブル製品をEUの基準にすること

これは、EU市場の製品を

  • 長期使用できるもの
  • リユース、リペア、リサイクルが可能な設計にすること
  • リサイクル材の使用比率をあげること

を実現するために、法的規制強化を進めるものです。

消費者の権利強化

消費者の権利として「修理する権利」が施行されました。

修理する権利とは、所有者がメーカーを通さずに製品を修理・交換できる権利で、メーカーは設計段階からそれが可能な製品を作るよう義務付けられます。

これにより、長期間使えるようになり、廃棄物を減らすことができます。

重点分野の加速

サーキュラーエコノミーを加速するためには、資源効率の高い製品分野にリードしてもらう必要があります。そこで、次の7つが重点分野として選ばれました。(※10)

1 電子機器とICT

電子機器のメンテナンス、修理、回収、再利用、リサイクルによって製品寿命を伸ばします。

2 バッテリーと車

電気自動車向けのバッテリーを強化することで、長期間の使用が可能になり廃棄を減らします。

具体的には、

  • 非充電式バッテリーの使用を段階的に廃止
  • 原材料の回収とリサイクル率の向上

を目指すことでサーキュラーエコノミーへの移行を促します。

3 包装

過剰包装と包装廃棄物の抑制、使用可能な素材の制限を行います。また、リサイクルに関する安全ルールを徹底します。

4 プラスチック

2018年に策定された欧州プラスチック戦略に基づき、リサイクルの条件を提案します。プラスチック製造には有害な添加物の使用を制限し、汚染物質排出をなくします。

5 テキスタイル(繊維)

EUは「循環型経済行動計画」において、繊維製品のエコデザイン、再利用・修理サービスへのアクセスを改善し、2025年までに繊維製品の分別回収のガイダンスを作成します。

6 建築

建築資材のリサイクルの検討、耐久性と改修性の改善策、建造物の記録をデジタル化し、循環性を促進します。

7 食

食品廃棄物の削減を目指します。

ほかにも、使い捨て食器、食品包装に関しては再利用可能な素材に変更、農業分野での水の再利用、栄養素管理計画の構築を行います。

このような取り組みはEU以外にも全世界で見られるようになっており、少しずつ循環型経済への移行が進みつつあります。そしてさらに世界を循環型経済に突き進ませるきっかけとなった出来事があります。

それは、EUの最初の政策と同じ2015年に発表されたSDGsの存在です。

【関連記事】サステナブルとは?重要キーワードは「SDGs」と「エシカル」

サーキュラーエコノミーとSDGsの関係

SDGsとは、2015年9月に国連で採択された、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

「誰一人取り残さない」社会の実現を目指し、 経済・社会・環境が抱える課題に対して、17の目標と、それを達成するための169のターゲットを示しています。

SDGsのほとんどの目標で触れられているのがCO2排出による地球温暖化や気候変動などの環境問題であり、達成するために循環型の社会を築く必要があります

中でもサーキュラーエコノミーは、目標12,13,14,15と深く関わってきます。

1つずつみてきましょう。

目標12との関係

つくる責任つかう責任」は、持続可能な消費と生産を実現しようという目標です。モノをできるだけ長く使い続けるという点で、サーキュラーエコノミーと相性の良い目標です。

目標13との関係

気候変動に具体的な対策を」は、気候変動及びその影響を軽減するための対策をしようという目標です。

世界では、干ばつ、集中豪雨、大型台風、熱波による火災などさまざまな自然災害が起こっています。

こうした災害は、温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の影響が大きいとされており、廃棄物を出さないことを目指しているサーキュラーエコノミーは目標達成に貢献します。

目標14との関係

海の豊かさを守ろう」は、海洋汚染の防止や海の資源の管理に関する目標です。

現在、年間800万トンのゴミが海へ流れていることが分かっており、2050年には海の魚の量を超えると予想されているほど深刻化しています。

ゴミが増えることで海洋汚染が進み、さらにその海の生き物に悪影響を与えています。

サーキュラーエコノミーでは、設計段階から廃棄物を出さないこと、そして自然システムを再生することが目指されるため、海洋汚染と海の生態系を保護する点で目標14の課題と深く関わってきます。

目標15との関係

陸の豊かさを守ろう」は、陸の資源を守り、砂漠化を防いで、あらゆる生物が生きられる環境を作ろうという目標です。

これまでの大量生産では、新しい資源を採掘するため大規模な開拓が行われ、生物の住処が奪われてきました。これにより、多くの生き物が絶滅の危機に瀕しています。

既存の資源と資産を循環し使い続けることで、資源の採掘機会を減らせ、生態系を守ることができます。

SDGsは、認知が高まるにつれて企業が事業として取り入れられるようになりました。そしてSDGsと事業を関連させる際には、サーキュラーエコノミーが切っても切り離せない関係であることから、普及が加速しつつあるのです。

サーキュラーエコノミーに関する日本の取り組み

続いては、日本におけるサーキュラーエコノミーの動向を見ていきましょう。

循環経済ビジョン2020

日本では1999年、当時の公害問題や環境問題、資源の枯渇問題の解消を目指して、循環経済の道標となる「循環経済ビジョン」が策定されました。このビジョンのもと、1Rから3Rへの転換、法整備、廃棄物の削減などが進められてきました。

一定の成果を収めた「循環経済ビジョン」でしたが、策定から20年が経ち、社会・環境問題が多様化する中でより循環型経済への移行が重視されるようになったことから、2020年に「循環経済ビジョン2020」をまとめています。

「循環経済ビジョン2020」は、これまで進めてきた3Rなどの活動に加え、従来以上に経済発展と両立していくことが強調されており、国際的な市場の獲得も目指しています。

参考:経済産業省「循環経済ビジョン2020」

サーキュラーエコノミーの市場規模

実際、サーキュラーエコノミーは市場に変化をもたらしています。特に注目したい市場を紹介します。

古着市場の拡大

古着市場の規模は拡大しており、2024年には約640億米ドル(約7兆663億円)に達すると予測されています。(※11)

そのなかでもZARAは、サスティナブル素材を用いたサーキュラー・ファッションが注目されています。

これは、古着回収ボックスを設置し、回収された衣類は生地に戻され、新しい製品に生まれ変わるというものです。

カーシェア市場の拡大

ほかにも、カーシェア市場規模の拡大もみられます。

富士経済によると、国内のカーシェア市場は2030年には4,555億円に達すると予測され、これは2018年度の11.9倍となります。(※12)

また、サーキュラーエコノミーはコロナ禍であっても経済を復興させることが期待されています。

コロナ禍での期待

コロナ禍でのロックダウンや移動制限により二酸化炭素排出量が7%減ったことが分かりました。(※13)

この事実を受け、さまざまな経済学者はこれを機に、このまま環境負荷を減らしながら、コロナ禍によって低迷した経済を復興できるかもしれないと考えられるようになったのです。これを「グリーンリカバリー」と言います。

check! グリーンリカバリーとは

これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済に復興するのではなく、この苦難をバネにして、脱炭素で循環型の社会を目指すための投資を行うことで復興しようという経済刺激策

NHK「グリーンリカバリー」とは? コロナ後の経済復興で注目

環境負荷のない経済復興・グリーンリカバリーは、サーキュラーエコノミーへの移行の後押しとなり、持続可能な未来を創る上で重要なことなのです。

では、環境負荷をなくし、経済を復興・発展させるために、世界ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

世界企業の取り組み事例

ここからは世界で行われているサーキュラーエコノミーの実践例を見ていきましょう。

独自でサーキュラーエコノミー戦略を打ち出した米国の巨人「Google」

Googleでは、環境プロジェクトとして、2018年にエレン マッカーサー財団と協力して、サーキュラーエコノミーの戦略を4つ掲げました。(※14)

  1. 保守
    データセンターのすべての資源の寿命を延ばすことで、サーバーの修理が必要になった際、使用済みのパーツに交換してハードドライブの耐用年数を長くするという取り組みです。
  2. 再生
    再利用することを前提としたサーバーの設計を行ないました。稼働停止後のサーバーは、マザーボード、CPU、ハードドライブなど部品に分解され、再生品として使われます。
  3. 再利用
    販売可能な状態で保管されている部品の在庫を管理し、再利用しています。未使用の部品は中古市場で再販売できるよう手配されます。
  4. リサイクル
    すべてのデータセンターの資源をリサイクルしています。リサイクル不可能と判断されたものは、専門の業者に引き渡され、安全に処理されます。

サーキュラー・グーグルという戦略

グーグルでは2019年、「サーキュラー・グーグル」という戦略を立て、世界14カ国のデータセンターで使い終わったハードドライブを新しいものに再使用する研究を開始。

デバイスはリサイクル素材を優先して利用し、2022年にはすべての製品を再生可能なものにすると計画しています。

また、これまで使い終わって地中に埋められてきた廃棄部品も再利用する方策も検討しています。

照明器具を使って明るさを売ると決めた「フィリップス」

オランダ・アムステルダムを本拠地にする電機メーカーフィリップスは、法人顧客向けに、照明器具を使って明るさを売るサービスを開始しました。

季節ごとの日照時間を計算して明るさの必要性を把握

フィリップスは、企業が管理している駐車場やオフィスビルなどの施設照明を無料でLEDに交換し、10年間のメンテナンス保証を付けるサービスを展開。従来、使い終わった電球は基本的に燃えないゴミとして廃棄されてきました。

中でも電球型蛍光灯は水銀が使われているため有害ゴミに分類され、正しく処理されないと環境や健康に害を与えるとされてきました。

そこでLED電球に換え、企業側が製品を所有することで、そうした問題を解消することができたのです。

クライアントのメリットは、照明への巨額の初期投資が不要であることや電力が安く済むことに加え、LEDを使用することで排出されるCO2の削減になることから、企業イメージの向上も期待できます。

一方でフィリップス側は、提供するLEDに搭載されるインテリジェントセンサーから送られるデータを拾ってビジネスの提案・改善ができるメリットがあります。

データからは、駐車場であれば季節ごとの点灯時間、オフィスビルであればどの部屋がどのくらいの頻度で使われているかという統計が分かります。

使われていない照明器具を有効活用できるようになる

こうした分析によって、電力消費を抑えられるオフィス利用方法や、使われていない場所の有効活用を提案することが可能となり、照明器具を使ったコンサルティング事業に役立ちます。

日本企業の取り組み事例

続いて日本の事例を見てみましょう。

消費者ニーズと食品ロスを同時に叶えた「ミツカングループ」の戦略

愛知県半田市にある食品メーカー・ミツカングループでは、食材を余すことなく使って食品ロスを削減するブランド「ZENB(ゼンブ)」を立ち上げました。

食品ロス削減だけではなく、消費者を満足させることが目的

ZENBでは、規格外で市場に出回らなかったもの、売れ残ってしまった野菜を積極的に使った野菜スティックバーと、パンに塗るペーストなどを開発しました。

これらの商品は食品ロス削減だけでなく、添加物に頼らず、食材の持つうまみを維持したまま提供する方法の研究を重ねるなど、美味しさにもこだわりました。

生産・加工にかかる「余計なこと」を一切排除して一生ものの寝具を提供する「イワタ」

日本の老舗寝具メーカー「イワタ」は、無漂白、無染色、蛍光増白剤不使用の寝具「アンブリーチド」を販売しています。この寝具は、汚染物質を作り出さないことで注目されています。

一般的に寝具に使われる生地の多くは漂白、染色され販売されます。その際に出る化学物質が河川に流れ出れば、水質汚染の原因となります。

この問題に着目したイワタのアンブリーチドは、設計段階から環境汚染を出さない寝具を作ったのです。

余計なものを排除し、一生使い続けられる寝具

アンブリーチドのもうひとつの特徴は、メンテナンスや仕立てを前提とした設計で作られている点です。

通常、寝具は年月の経過とともに綿がしぼみへたってきます。買い替えの際には粗大ゴミとして扱われ最終的に埋め立てられます。

イワタでは、使って捨てるという従来の寝具のあり方を変え、使い続けられるものづくりを目指しているのです。

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まとめ

この記事では、サーキュラーエコノミーについて詳しく見てきました。

従来の「取って、作って、捨てる」という一方通行の経済モデルは、環境だけでなく私たち人間にもダメージを与えます。

今後、地球を持続可能なものにするためにも、サーキュラーエコノミーへの理解を深め、循環型経済の実現に向けて、みんなで協力していきましょう。

<参考文献>
※1:経済産業省・環境省 循環型事業活動の事例
※2:資源循環・廃棄物研究センター オンラインマガジン サーキュラーエコノミー:モノが円を描く経済
※3:経済産業省 3R政策
※4:アクセンチュア
※5:国際連合広報センター 人口と開発
※6:環境省 平成14年版 環境白書
※7:東京二十三区清掃一部事務組合 廃プラスチックのサーマルリサイクル実施による効果と影響について 
※8:Ellen MacArthur Foundation
※9:経済産業省 欧州のサーキュラー・エコノミー政策について
※10:Circular Economy Action Plan
※11:野村アセットマネジメント
※12:株式会社 富士経済
※13:日本経済新聞 2020年世界CO2排出 コロナで7%減も温暖化止まらず 
※14:Google 環境プロジェクト一度きりでは終わらない2018 年 3 月

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)