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コンポストとは?作り方・デメリットと初心者におすすめなやり方を解説

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最近、「コンポスト」という言葉をよく耳にするようになりました。

とはいえ「そもそもコンポストって何?」「コンポストは難しそう」と思っている人も多いかもしれません。

実際にやってみると、ポイントさえ分かれば誰でも簡単に続けることができ、さらには、社会・環境面にもさまざまな良い影響があるので、SDGsの達成にもつながるのです。

では早速コンポストとは何か見ていきましょう。

目次

コンポストとは?

コンポスト(compost)とは、枯れ葉や野菜・魚といった有機物を、微生物のパワーで発酵・分解させ堆肥化したものを指します。日本語の「堆肥」と同じ意味です。

似た響きの「コンポスター」は対比を作るための容器やシステムのことを指します。しかし今では、容器やシステムのことも「コンポスト」という場合も増えてきました。

堆肥とは

堆肥とは雑草や落ち葉といった有機物を積み重ね、発酵・熟成した肥料のことです。

原義的には、堆肥化のプロセスを経て出来上がったものを「コンポスト」と呼びます。

コンポストは新しい考え方?

日本では「堆肥」と呼ばれるコンポストは、実は昔から人々の暮らしに密接な存在でした。

特に、化学農薬・肥料のない江戸時代あたりまで、農家にとってコンポストは必須アイテム。家庭の食べかすだけでなく、人や家畜の糞尿も堆肥化していました。

当時はもちろん、現代のようにごみ収集や下水道といったインフラが整っていたわけではありません。

だからこそ人々は、限りある資源をあますことなく活用し、暮らしの中に役立てていたのです。

コンポストは「もったいない」という想いから生まれた、古くから伝わる暮らしの知恵だとも言えますね。

SDGsに関心が高まりコンポストが再注目されている

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近年、コンポストが再注目を浴びているひとつの要因に「SDGs」が挙げられます。

Sutainable Development Goals(持続可能な開発目標)のこと。20215年に国連で採択され、2030年まで目標を達成するべく17の項目が設けられました。

コンポストは昔から農業で利用されていたように、個人宅だけでなく地域全体で取り組んでいました。日本でも江戸時代ごろまでは、農家が自身やまわりの家々から食べかすや排泄物を集め、肥料として活用していた歴史があります。

現代社会では「気候変動」が喫緊の課題となっていますが、生ごみを燃やさず土に還せ、化学肥料や農薬がなくても健康な野菜が育てられることから、再度注目を浴びています。

このため、コンポストは特に社会・環境面での解決の糸口となりえる、有効な手段といえるのです。

SDGsへの関心の高まりとともに、ますます気になるコンポスト。次では、コンポストを取り入れるメリットをご紹介します!

コンポストのメリット

コンポストは、

  • ゴミの削減
  • 二酸化炭素の削減
  • 栄養のある土ができる
  • 地域・社会面での良い循環ができる

など、実にさまざまなメリットがあります。1つずつ見ていきましょう。

自宅へのメリット|ゴミが出ない

先にお伝えしたように、かつては野菜の皮や芯・肉魚は土に還して堆肥化し、「肥料」として役立てていました。

しかし今ではインフラ・法律の整備が整い、残飯や調理くずはすっかり「ごみ」扱いになってしまったのです。

環境省によると、2018年度に日本で出たごみの量は4,272万トンでした。

そのうち、家庭ごみは全体の69%を占めています。全国規模では、生ごみの詳しい割合は資料がないものの、横浜市の調べでは、2019年に出た横浜市の家庭ごみのうち、30%以上が生ごみと、かなりの割合であることがわかります。

これらのゴミは、焼却や埋め立てなどによって処理されることとなりますが、ゴミ事業には2兆円を超える税金が使われています。(2018年度)

私たちはごみと一緒にお金を費やしていることを忘れてはなりません。

そこでひとりでも多くの人がコンポストを実践すれば、生ごみの量を大幅に減らすことが可能です。

同時に、生ごみを出す際のビニール袋削減にも繋がりますね。ごみの全体量も、お金も節約できて、まさに一石二鳥なのです。

【関連記事】食品ロス(フードロス)とは?原因と対策、世界や日本の現状、SDGsとの関係も

環境へのメリット|二酸化炭素の削減

コンポストを行うことで、減らせるのはごみだけではありません。焼却の際に出る二酸化炭素の量も、大幅に削減できます。

生ごみの90%は水分であるため、とても燃えにくい状態です。そのため処理場では、生ごみに石油をかけて燃えやすくしているのです。

石油は燃焼する際はもちろん、採掘や輸送時にも、地球温暖化につながる二酸化炭素を大量に放出しています。

つまり、私たちがコンポストを実践して食べかすを自分たちで処理できれば、石油をかけて燃やす必要がなくなり、結果として二酸化炭素の排出量を劇的に減らすことができるのです。

自宅へのメリット|栄養のある土ができる

微生物によって分解され、熟成が完了したコンポストには、豊富な栄養が含まれています。

そのため、出来上がったコンポストをプランターや畑に撒けば、立派な肥料として活用できるのです。さまざまな栄養を含むコンポストが土壌の健康をよくしてくれると、育つ植物も健康になります。

自宅の庭やベランダで、ちょっとした野菜やハーブを栽培する際にコンポストがあれば、化学肥料を使わなくても、栄養たっぷりのおいしい作物が手に入りますよ。

地域・社会面での良い循環ができる

最後は「循環型地域・社会作りに役立つ」という点です。

コンポストを自宅で実践する人の中には、出来上がった堆肥の使い道がない場合や、処理しきれない場合もあるかもしれません。しかし、江戸時代までの日本では、農家がコンポストに使う食べかすや糞尿を、地域ぐるみで集めていました。

現代でも、地域やコミュニティで取り組めば、みんなのコンポストを回収し、農家に分配するシステムが実現するかもしれません。

育てた野菜や作物は、コンポストを提供した家庭に分配もしくは販売という形でリターンを行えば、生産者も消費者もWin-winな関係になれます。

例えば、東京・千駄ヶ谷で行われているプロジェクト「1.2 mile community compost」では、会員が先払いで1年分の野菜代金を支払い、定期的に旬の野菜を受け取れます。

その栽培に使用されるのが、会員の家庭から出たコンポスト。あらかじめ家庭で堆肥化までを行ってから指定場所で回収し、適切に処理をした後の肥料が農家の元へ送られる仕組みです。

このように、コンポストは個人・家庭レベルだけでなく、利用手段や方法を工夫すれば、地域コミュニティ全体の循環型システムを作り出せる可能性を秘めているのです。

こちらに関しては、今後の自治体・企業の取り組みに着目していきたいところですね。

【関連記事】循環型社会とは?世界や日本の具体事例・SDGsとの関わりも

コンポストのデメリット

コンポストはメリットがたくさんあり、ぜひ日常生活に取り入れたいアクションです。とはいえ、デメリットもあるため、しっかりと理解した上でコンポストを始めましょう。

住環境へのデメリット|すっぱい匂いがする

コンポストをする上で、まず気になるのが「匂い」ですよね。

生ごみはとてもにおいやすく、堆肥化中もにおいがするのでは?という声をよく耳にします。

実際、容器に生ごみを入れて密封する「ぼかしコンポスト」の場合、ほかのタイプと違って土や酸素を使わないため、容器のふたを開けるとすっぱいにおいがします。

ただ、このすっぱいにおいは、きちんと発酵している証拠なので、あまり心配する必要はありません。

ほかのタイプの場合は、空気を含んでよく混ぜた後、最後は必ず土で覆うことがポイント。これだけで、においを抑えられます。

また、コンポストは一定量の食べかすをまとめて容器に入れるほうが、入れる手間が省け、コンポストボックス内のスペースを取らなくて済むため便利です。

一度の食事でそこまで食べかすが出ないこともあるため、場合によっては数日かけて生ごみを溜めることも出てくるでしょう。

一度、生ごみを別の容器に溜める段階で、おすすめのポイントが3つあります。

匂いを抑えるポイント

  1. 密封できる蓋付き容器を使用すること
    蓋つきの容器を使用することで、生ごみのにおい漏れを防げます。それでも気になる場合は、いちばん上にコーヒーかすや土をかぶせれば、保管中のにおいをある程度抑えることが可能です。
  2. 生ごみの余分な水分は切っておくこと
    溜めている生ごみの水分量があまり多いと腐敗が進んでしまうので、できるだけ水気を切っておきましょう。もし腐敗が進みそうだなと判断した場合、すみやかにコンポストへ入れて下さい。
  3. においの強いもの、またはにおいが心配な場合、ふたをする前にコーヒーかすか土を薄くかぶせること
    動物性の食材が多すぎると、どうしてもにおいやすくなります。すこし考え方を変えて、そもそもコンポストにあわせた食生活にし、動物性食材をすこし控えめにしてみるのもおすすめです。人間の健康は、土の健康とも深く繋がっているものですよ。

管理面でのデメリット|入れてはいけない食べものもある

コンポストの種類や状態によりますが、分解しやすいもの・しにくいもの・入れてはいけないものは、おおむね以下のように区別できます。

分解しやすいもの

  • 残飯
  • 肉や魚の身・乳製品(固形に限る)
  • 野菜

分解しにくいもの

  • たまねぎやニンニクの皮
  • 固い野菜の皮
  • アボカドのような大きめの種
  • かんきつ類
  • 動物や魚の骨
  • 卵の殻
  • 髪の毛

入れてはいけないもの

  • 化学成分、添加物入りのもの
  • プラスチック
  • 液体(牛乳やみそ汁など)
  • 味が濃いもの、刺激物
  • 貝殻

なお、庭における設置型コンポストのようなタイプであれば、時間はかかりますがスペースがあるため、分解しにくいものを入れてもOKです。

あまり小さなサイズの容器に入れてしまうと、いつまでも分解されないので注意しましょう。

全体的に、コンポストに入れるものは、動物性だけ・植物性だけといった偏りなく、何でも入っている方が分解されやすいようです。

手間に関するデメリット|扱い方によっては虫が湧いてくることも

生ゴミや土を扱う上で心配なのは「虫」です。基本的に、上手に実践していれば、虫が湧いてくることはありません。

天候や季節によっては虫が発生する可能性も

しかし、雨続きの天候や真夏の季節、どうしても温湿度のバランスが悪くなってしまい、コバエやウジが発生する可能性もあります。

特に、段ボールやプランターを使った自作コンポストは、その調整が難しいものです。

虫の予防策

まず予防策としてできることは、3つ。

  • コンポストボックスの下に高さを付け、風通しを良くする
  • 水漏れ措置として、古紙や不要なタオルを敷く
  • コンポストボックスの上にカバーをかける

以上をやっておくだけで、随分と虫は防げるものです。

それでも虫が湧いてしまった場合は、容器内の土をすべて出し、1~数日日光に当てて下さい。土の中の卵や幼虫が死滅し、また元通りに使えるようになりますよ。

管理に関するデメリット|カビが見られる場合もある

ときどき、堆肥化中の食べかすに、カビがが見られる場合もあります。

白カビであれば問題なし

もしそれが白カビなら、慌てなくて大丈夫。ちゃんと発酵が進んでいる証です。

発酵と腐敗は、常に表裏一体です。鼻につく程のいやなにおいがしなければ、すぐに失敗だと判断せず、すこし様子を見てみて下さいね。

コンポストの仕組み・メカニズム|どのように堆肥になるのか

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ここまで、コンポストの概要について見てきました。

では、実際にどのようなプロセスによってコンポストができるのでしょうか?

微生物が食べかすを分解してくれる

コンポストにおける大事なキーワードは「微生物」です。

私たちの身の回りには、たくさんの微生物であふれています。空気中はもちろん、人間やほかの生き物の体内にもたくさんの微生物がいて、彼らのおかげで自然界が成り立っていると言っても過言ではありません。

それほど、微生物は生命活動において重要な存在です。

微生物の活動エネルギーはさまざまな種類がありますが、私たちが出した食べ残しや調理くずもそのなかのひとつです。土の中に食べかすなどを入れると、目に見えないたくさんの微生物が食べ、コンポストに変えてくれるのです。この活動工程を「分解」と呼びます。

コンポストは自然界の循環システムそのもの

コンポストの仕組みは、自然界の生態系システムそのものです。

自然界の生態系システムは、落ち葉や動物の死骸が微生物の餌となり、これが植物にとって大きな栄養源を作り出します。そしてこの栄養をもとに植物は丈夫で健康な身体を作りつつ、酸素を放出。

植物が放出した酸素を動物は吸って生活します。やがて動物が死ぬと土に還り再び微生物の餌となるのです。

コンポストもこの循環と同じで、人間が食べきれなかった野菜の芯や魚の皮といったものを、微生物のエネルギー源として土に還し、循環していきます。

コンポストの仕組みを通して、私たちは自然界の循環を実感でき、より食べ物に感謝をしながらいただくことができるようになるはずです。

コンポストの種類

ここまででコンポストがどのようなものなのかわかったところで、次では家庭で扱えるコンポストを、いくつかご紹介します。

自身の環境や生活スタイルにあわせて、ぴったりなコンポストを見つけてみて下さいね。

①設置型コンポスト

まずはじめにご紹介するのは、広めの庭・スペースがある家庭におすすめな、設置型タイプです。

設置型コンポストは、底に穴が開いた大きなバケツのような形をした容器が販売されているので、庭や空き地にこのボックスをセットします。

セットしたボックスの中に、定期的に食べかすや落ち葉を入れ、上から土をかぶせます。

この作業を繰り返し、容器がいっぱいになったら数か月放置するだけ。シンプルな工程で、栄養たっぷりの堆肥が完成するのです。

土に直接穴を掘り、野菜くずを入れて土をかぶせるという方法も、もちろん有効ですが、容器があるとより発酵しやすい環境をつくれるようになります。

設置型コンポストが向いている人

  • 設置型コンポストを置ける程度のスペースがある
  • 食べかすだけでなく、落ち葉や干草も処理したい

②回転式コンポスト

回転式コンポストは、容器にハンドルがついているタイプです。

大きさはさまざまですが、中にはベランダや室内でも使えるものもあるため、ひとり暮らしやマンション・アパート住まいの人にもおすすめします。

定期的に容器に食べかすを入れ、ハンドルを回転させるだけで、簡単にコンポストを作ることができます。

手で直接ごみや土に触れる心配が少ないため、初心者にぴったりのコンポストです。

回転式コンポストが向いている人

  • 混ぜるときに、できるだけ手を汚したくない
  • 手軽にコンポストを始めたい

③ぼかしコンポスト

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ぼかしコンポストは、密閉型の容器に食べかすと促進剤(EM菌や米ぬかなど)を入れ、発酵・堆肥化させるタイプです。発酵後は、容器の下から液が出る仕組みになっています。

コンポスト化した液体は、植物の肥料として利用することができ、ほかのコンポストに比べて分解スピードが速い点がメリット。液肥を出し切った後の中身は土に還せます。

価格もそれほど高くないものが揃っており、さらには持ち運びができる軽量タイプが多いのも特徴です。

実は近年、海外でも「BOKASHI」として注目を集めている、ぼかしコンポスト。

おしゃれな商品が多く、庭はもちろんキッチンに置いても気にならないデザインが揃います。家の中でできるため、気温差の激しい地域でも扱いやすいのが人気の理由です。

においには注意

そんなぼかしコンポストですが、密閉容器なので普段はにおいが気にならないものの、残飯や調理くずを入れる際にふたを開けると、すっぱいにおいが立ちこめる点には注意が必要かもしれません。

いやなにおいではありませんが、どうしても臭気が気になる場合は、室内ではなくベランダや屋外の日陰で使用しましょう。

ぼかしコンポストが向いている人

  • 液体肥料がほしい
  • 食べかすを早く発酵させたい
  • 省スペースでコンポストを実践したい
  • 初期費用を抑えたい

④自作コンポスト

コンポストは、材料さえ揃えば自分でつくることも可能です。

容器として最適なのは、大きめの段ボールやプランター。初期費用が抑えられ、家族の人数や生ごみの量にあわせてカスタムできるのは、嬉しいポイントですね。

容器の中に土を入れたら、設置型コンポストと同じような感覚で、食べかすと土を混ぜあわせ、最後に土をかぶせればOK。

水分量には注意

基本の手順はとても簡単ですが、水分量の調節を間違えると、におい・虫の発生につながりやすいので注意が必要です。

室内でももちろん出来ますが、屋外の方が管理がしやすいでしょう。

正しく実践できれば、最も簡単で扱いやすいタイプといえます。

自作コンポストが向いている人

  • 自分の目で観察しながらコンポストを実践したい
  • 庭はないけど、土を使ってコンポストがしてみたい
  • 低コストでやってみたい

⑤ミミズコンポスト

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コンポストの土に、土壌環境をよくするミミズを入れる「ミミズコンポスト」というのもあります。

コンポストに活躍するのは、シマミミズという小さな種類。私たちが出した残飯や調理くずを食べてくれ、質のよい肥料を生み出してくれるのです。分解が進むと、ぼかしコンポストのように液肥が溜まる仕組みです。

ミミズコンポストは、コンパクトなデザインもあるため、大きなスペースをとらずに済みます。部品のみ・ミミズのみの販売もありますが、初めて挑戦する場合はミミズ付きのセットを買うと安心でしょう。

また、目に見える大きさの生き物がいることで、大人はもちろん子どもも一緒に楽しめるタイプです。

ミミズコンポストが向いている人

  • 生き物が好き
  • 定期的にお世話ができる
  • 親子でコンポストを実践したい

⑥手提げ型コンポスト

近年、都市部の家庭やマンション・アパートに暮らす人に取り入れやすいコンポストとして、手提げ型のコンポストがあります。

LFCが販売する手提げ型コンポストの場合、最大3か月分の食べかすを入れられ、あとは密封して寝かせるだけ。においを気にせず、誰でも簡単にコンポストをつくることができます。

容器はプラスチックをリサイクルした防水素材なので水漏れの心配がなく、スタイリッシュな見た目であるため、室内やベランダに置いても気になりません。

内袋は折り返せばプランターとしても利用できるため、これを機に好きなハーブや野菜を育ててみてはいかがでしょうか。

手提げ型コンポストが向いている人

  • ひとり暮らし、もしくは少人数家庭
  • マンション・アパートに住んでいる
  • 見た目にこだわりたい
  • 簡単にコンポストを作ってみたい

ここまでさまざまなコンポストを紹介してきましたが、こちらの記事の中でおしゃれでおすすめのコンポストを紹介しています!

【おしゃれなコンポスト5選!】コンポストの種類と環境への影響も紹介します!

コンポストのやり方を住宅形態別に紹介

では、実際に家庭でコンポストを取り入れたい!という人のために、筆者が特におすすめするコンポスト方法を紹介します。

まずは、神奈川県葉山に住む夫婦が開発・普及活動に努めているコンポスト「キエーロ」の紹介動画をご覧ください。

ここでは庭がある場合を想定した内容となっていますが、キエーロはボックス型にも対応しています。

先ほどの「コンポストの種類」でいえば、庭がある場合は「設置型コンポスト」、庭がない場合は「自作コンポスト」に相当するタイプです。

今回、筆者がこの方法をおすすめする理由は、以下のとおり。

  • とにかく簡単
  • 毎日お世話する必要がない
  • 追加出費がない
  • 土の量がほとんど増えないため、家庭菜園をしていない人にも続けやすい

自然の循環に近い環境を再現しているタイプだからこそ、シンプルな手順で済み、忙しい人でも継続的に行ないやすいのです。

今回は、大きく分けて「庭がある場合」と「庭がない場合」に分けてみました。

庭がある場合とない場合の共通ポイント

それぞれのタイプをご紹介する前に、共通したポイントをチェックしておきましょう。

共通ポイント
  • 食べかすを入れるタイミングは、毎日よりも数日おきのほうがよい
  • コンポスト容器の中で、食べかすを入れる区画を決め、順番に行なう
  • 食べかすと土がまんべんなく絡むまで混ぜる
  • 土が軽く湿るくらいまで水分を足す(ベチャベチャにしてはいけない)
  • 最後は土で完全に覆う

以上を心得ておけば、どちらの場合も失敗なくコンポストを実践できるはずです。

食べかすを入れてから分解されるまでに、夏場なら5日ほど、寒い時期なら2週間ほどかかります。

では、それぞれのシチュエーション別に、詳しいやり方をお伝えします。

庭がある場合におすすめなコンポスト

敷地に土があってスペースをとれる場合、土の上にコンポストを設置すると、堆肥場所の目印になるという意味でも分かりやすくておすすめです。

キエーロではつくり方も公開しているため、端材・古材がある場合は、自作してみるといいでしょう。

風通しを良くするために、ふたの部分に少し隙間をつくり、太陽光がある程度当たるように透明な素材を使用するのがポイントです。

通常の設置型コンポストは、容器いっぱいになったら数か月放置する必要があり、その期間は新たな食べかすを入れることはできません。

対してこのタイプなら、区画を決めてローテーションしながら食べかすを入れることによって、自然と一定期間寝かせることができるのです。

もっとシンプルに実践するなら、穴掘りタイプも

人によっては「何かを設置するのは大変」と思うこともあるかもしれません。

その場合、キエーロのメソッドとは少し異なりますが、よりシンプルな方法として「庭に穴を掘り、食べかすを埋める」のがいいでしょう。

基本的な手順は、ほかのコンポストと一緒です。一か所に深めの穴を掘り、食べかすをいれて少し土と混ぜ合わせ、最後に掘った土をかぶせればOK。

そのまま放置すれば、自然と土に還るため、お世話の必要もなく楽ですね。

特に、出来上がったコンポストを家庭菜園・畑に使用する予定がない場合も、この方法は手軽で取り入れやすいと思います。

庭がない場合におすすめなのが自作コンポスト

都市部に住む人や、マンション・アパートのような集合住宅に住む人にとって、コンポストのハードルは高く感じられるもの。

しかし、ちょっとしたスペースさえあれば誰でも簡単にできるタイプのひとつが、自作コンポストです。

こちらは、筆者が現在自宅で実践中のコンポストボックスです。箱は園芸品店の木箱を購入し、中身の土はオーガニックコンポストを使用していますが、あとはありあわせの材料を組みあわせているだけです。

自作コンポスト
筆者提供

ひとり暮らしのため、とても小さい箱を使っていますが、家族の人数や生活スタイルにあわせて、好きなサイズを選ぶといいでしょう。次では、どのようにコンポストを自作するのかを紹介します。

自作コンポストのやり方

まずは、必要なものから見ていきましょう。

自作コンポストに必要なもの

必要なもの
  • 深さのある容器
  • 土(化学肥料を使用していないものであれば何でもOK)
  • 高さを出すための足場(ここでは、スーパーで購入した際のミニ木箱を再利用)
  • 底にしく紙(万が一の水漏れに備えて。ここでは古紙を再利用)
  • 土を混ぜるスコップ(引越し時すでにあった、壊れた料理用ヘラを再利用)
  • 容器をカバーするもの(布もしくは透明なカバーがベスト。ここでは、梱包材として手に入れた紙を再利用)
  • 残飯・調理くずを溜めておく蓋つきの容器

こちらの場合も、水分調節のため風通しはある程度必要です。虫よけカバーを取り付けるか、よりしっかり覆いたい場合は目の細かいガーゼを選ぶのがおすすめです。

自作コンポストの手順

さて、材料を集めたら、容器の中に土を6分目くらいまで入れます。

あとは区画を大まかに決め、順番に食べかすを入れて混ぜ、土をかぶせて一定期間寝かせるだけです。

自宅コンポストを設置する場所

また置き場所ですが、室内でもベランダでも「日当たり」と「風通し」は重要ポイントです。

暗くてジメジメした場所においてしまうと、あっという間に虫が発生する可能性がありますので気を付けて下さいね。

ちなみに筆者の場合、夏の間はベランダに置いていましたが、北欧の秋~春は日中でも10度を下回るほど寒いため、室内の中でも窓が近く、ある程度日当たりと風通しがよい場所で使っています。

現在の環境では1年近く実践していますが、今のところ大きな問題はなく、土の量にもそれほど変化がありません。

もしベランダにスペースがあれば外に置いておくのがベターですが、筆者は室内でも問題なく使えていますので、試してみる価値はあると思います。

注意点

なお、箱型のコンポストでは分解できる量に限りがあるため、容器の大きさにあわせて生ごみの量を調節しましょう。

あまり多すぎると分解までに時間がかかったり、虫が湧く原因になりますので気を付けましょう!

上手に分解出来ている場合、土を掘り返した際にあたたかさを感じられます。微生物たちが頑張っているのだなと思うと、感慨深いものがありますよね。

コンポストでできた堆肥の使い方

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できたコンポストは、栄養たっぷりの元気な土のため、せっかくなら活用したいところです。

そこで、家庭でできる主なコンポスト活用法を紹介します。

家庭菜園・プランター栽培に活用!

もし自宅の庭やベランダで野菜・ハーブといった作物を育てている場合、肥料としてコンポストを使ってみましょう。

十分に寝かせたコンポストは色が濃く、さまざまな栄養が含まれています。少量を与えるだけで、作物は元気に育ってくれますよ。

ぼかしコンポストやミミズコンポストのように、液肥が手に入る場合は、原液のままではなく水で少し薄めてから使ってください。

土壌環境をよくするためにも使える

今のところ作物は育てていないけれど、庭や畑の土をもっと健康にしたい!という場合にも、コンポストは活躍します。

出来上がったコンポストを庭に撒くだけで、健康な土が出来上がるので試してみてくださいね。

まとめ

コンポストは、自然界で当たり前に行われている循環活動を応用したシステムです。

私たちが普段、何気なく口にしている食べものも、土から出来ています。使いきれなかった部分を土に還し、微生物の力によって新たなエネルギーに変えることで、自然は循環するのです。

ひとりでも多くの人がコンポストを実践すれば、ごみの量だけでなく二酸化炭素の排出量も減らせ、社会・地球にやさしい環境づくりの実践から、SDGsの達成にもつながります。

まずは無理のない範囲ではじめ、暮らしの中に取り入れてみてください。自然と習慣になっていき、楽しく続けられるようになりますよ。

参考文献
LFCコンポスト「コンポストとは?やり方、方法、作り方、メリット、デメリット、種類、堆肥、特徴など」
環境省「般廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度)について」
環境省「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成30年度)について 」
環境省「横浜市資源循環局の取り組み
土浦市公式ホームページ「EMぼかしによる生ごみのたい肥化」
Mimizu Compost Japan「キャノワーム
はじめようミミズコンポスト「ミミズコンポストとは?」
バクテリアdeキエーロ

この記事の監修者
阪口 竜也 監修者:フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)