オーストラリア南東部のゴールドコーストは、観光地として人気が高い都市です。
年間晴天率70%とも言われる温かい気候が魅力で、マリンスポーツを楽しむ人々で賑わいを見せています。
そんなゴールドコーストで有名な観光スポットが、国内外から多くの人々が訪れるカランビン野生動物公園です。
動物園でありながら、園内には野生動物専門の病院を保持しており、オーストラリアの野生動物保護や環境保全に貢献しています。
この記事では、エコ大国・オーストラリアに位置するカランビン野生動物公園にて実際に行われているエコ活動をご紹介していきます。
SDGsポータルサイト「スペースシップアース」では、環境問題にまつわる記事や、企業の取り組み・私たちにできることを紹介しています!
環境のために何かしたい、何からしていいかわからない…そんな時には
知りたいと思うこと、そして知ることが大切です。
カランビン野生動物公園とは?
オーストラリアのゴールドコーストに位置するカランビン野生動物公園は、1947年に鳥類に特化した動物園として開園しました。
その後、1995年にカランビン野生動物公園と名称を変更し、現在では鳥類以外のさまざま動物も展示しています。
カランビン動物公園では、動物の展示、鳥のショー、動物との記念撮影などを行っており、年間70万人が訪れる観光地として知られています。
東京ドーム約6個分の広さを誇る広大な敷地には、動物園以外に野生動物専門の病院も設置されているのが特徴です。
カランビン野生動物公園で見られる動物たち
カランビン動物公園内では、有袋類や単孔類を含む哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類が展示されています。
具体的な動物は、コアラ、カンガルー、タスマニアデビル、ウォンバット、ハリモグラ、エミューなどのオーストラリアの固有種のほか、ワオキツネザル、レッサーパンダ、カピバラといった外来種です。
バリエーション豊富な動物を飼育しており、園内には放し飼いのカンガルーとのふれあい広場なども設けられています。
カランビン野生動物公園内で展示されている一部の動物は、カランビン野生動物病院での治療を経た動物たちです。
年齢や病気・怪我の状態から野生下で生き延びることは難しいと判断された動物たちは、園内で展示動物として飼育される仕組みになっています。
また、カランビン野生動物公園では、絶滅が危惧されている動物も多く展示されています。
カランビン野生動物公園が実施している取り組み
カランビン野生動物公園は、野生動物や自然を守るために多方面からのアプローチを行っています。
以下では、野生動物との共生、生態系の保護、プラスチックごみ問題、一般市民への啓発など、カランビン野生動物公園が取り組む具体的なエコ活動の詳細を説明していきます。
野生動物専門病院で傷ついた野生動物を救う
カランビン野生動物公園で行われている印象的な環境保全活動が、野生動物を専門に診る病院の設置です。
1989年から運営されている病院で、年間に約12,000頭もの野生動物を診療しています。
怪我や病気に苦しむ動物たちが野生下で発見されると、カランビン野生動物病院に搬送されます。
回復するまで病院内で治療を続けるものの、野生動物の診療は全て無償で行っているため、カランビン野生動物公園の利益を病院の運営費用に充てているのです。
カランビン野生動物病院が診療する野生動物は、哺乳類、鳥類、爬虫類など多岐にわたります。
オーストラリアのエコシステムを守る上で欠かせない存在である野生動物を診察・治療することにより、オーストラリアの未来の生態系も保護しているのです。
ゴミ問題が野生動物に与える悪影響を啓発
プラスチックごみの問題は、日本同様にオーストラリアでも深刻です。
野生動物に与える悪影響も大きいことから、カランビン野生動物公園では鳥の像を使ってプラスチックごみの危険性を訴えています。
オーストラリアでは、鳥が誤ってプラスチックごみで巣作りをするケースが問題視されています。
雛が餌と間違えてプラスチックごみを呑み込むと、十分な栄養を摂れない、プラスチックごみが体内で詰まる可能性が高く、最悪の場合は命を落としかねません。
そこで、カランビン野生動物公園では、園内に巨大な鳥の像とプラスチックごみの塊を設置しています。
プラスチックごみの塊は、園から程近い場所に位置するカランビンビーチで実際に捨てられていたプラスチックごみを使っています。
鳥がプラスチックごみで巣作りをするというショッキングな現実を来園者により深く理解してもらい、プラスチック製品を含むごみのポイ捨てをやめるように促しているのです。
子ども向けのエコツアーを開催
カランビン野生動物公園では、子どもを対象としたエコツアーを実施しています。
実際に動物たちとふれあいながら、環境保全について幅広く学べるプログラムです。
子どもたちに野生動物種保護の意識を持ってもらうことにより、オーストラリアの自然を長期的に守ることに貢献しています。
レインボーロリキートへの餌付け
カランビン野生動物公園では、毎日朝夕の2回にわたって一般客がレインボーロリキート(ゴシキセイガイインコ)に餌付けできるイベントを行っています。
餌付けイベントは、レインボーロリキートが園内の花や植物を過度に食べてしまうというトラブルが続いたことがきっかけで始まりました。
餌付けを行えば植物とレインボーロリキートの両方を守れるのではないかと考えたことから、カランビン野生動物公園では周辺に住むレインボーロリキートのために餌付けイベントを続けています。
尚、レインボーロリキートの餌付け広場がある場所は、入場ゲートの外側です。
来園者以外も気軽に餌付けに参加できる仕組みになっており、募金箱に小銭を入れるとミルクが入ったお皿を受け取れます。
単にレインボーロリキートを排除するのではなく、エコシステムを守りながらレインボーロリキートと共生する道を見つけたカランビン野生動物公園では、毎日多くの人々が餌付けイベントに参加しています。
コアラの保護を来園者に促す
コアラは、オーストラリアの森のエコシステムを守る上で必要不可欠です。
コアラの糞が木々の肥料になることから、コアラがいなくなると森のエコシステムが変わってしまう可能性が高いのです。
カランビン野生動物病院では、年間500頭近いコアラが怪我や病気で治療を受けています。
病気、生息地減少、ロードキル、犬・猫からの攻撃などで多くのコアラが傷ついていることから、カランビン野生動物公園ではコアラの保護に関する看板を設置しています。
人間がコアラを守るために出来る取り組みについても記載されており、主な内容は「運転時はスピードを出し過ぎないこと」「病気や怪我をしているコアラを見つけたらカランビン野生動物病院に連絡すること」「ペットを夜間は家の中に入れること」などです。
一般市民がすぐに実践できるものが多く、一人ひとりが意識することでコアラとオーストラリアのエコシステムを守ることに繋がると考えられています。
エコフレンドリーなお土産
カランビン野生動物公園内のお土産ショップでは、環境に配慮した製品を販売しています。
タンブラーやエコバッグなどのリサイクルに特化したアイテムのほか、バンブー素材の食器やカトラリーなども取り扱っているのが特徴です。
バンブー素材の製品はコンポスト化できるので、不要になった場合は堆肥として再利用することができます。
絶滅危惧種の動物について解説
カランビン野生動物公園の中には、絶滅危惧種の動物に関する案内板が設置されています。
一度絶滅した動物は、二度と戻ってくることはありません。
個体数減少が危ぶまれる野生動物とオーストラリアの生態系を守るためにも、絶滅危惧種の動物の現在の個体数、生息地、個体数が減っている原因などを来園者に解説しています。
ボランティアスタッフの受け入れ
カランビン野生動物公園では、数多くのボランティアスタッフを受け入れています。
動物の世話、施設内の管理、来園者への対応といった多種多様な業務があり、一般市民が野生動物・環境保全に気軽に参加できる枠組みを作っています。
尚、カランビン野生動物公園のボランティア業務は非常に人気が高く、順番待ちになるケースもあるほどです。
まとめ
オーストラリアのカランビン野生動物公園は、野生動物保護と環境保全のためにさまざまな取り組みを行っています。
野生動物の消失は、オーストラリアの森林やエコシステムに大きな影響を与えかねません。
未来のオーストラリアの自然を守るために、プラスチックごみ問題や野生動物との共生など、一般市民への啓発を含めたエコ活動を続けているのです。