#SDGsに取り組む

【アルコール×サスティナブル】オーストラリアのDan Murphy’sは環境と人に優しい未来を目指す酒屋

お酒=SDGsとは無縁というイメージが持たれがちですが、オーストラリアを代表する酒屋・Dan Murphy’sでは二酸化炭素の排出量削減や生態系保護に繋がる多彩な取り組みを行っています。

この記事では、Dan Murphy’sが地球の未来のために行っているエコ活動について解説していきます。

Dan Murphy’sはオーストラリアを代表する酒屋

Dan Murphy’s(ダン・マーフィーズ)は、ビクトリア州リッチモンドに本社を構える酒屋です。

オーストラリア国内の2大酒屋のひとつとして知られており、ビール、ワイン、スピリッツ、外資系アルコール類、ノンアルコールといった幅広い製品を取り扱っています。

オーストラリア国内における店舗数は248店舗で、Dan Murphy’sのオンラインショップはオーストラリア国内におけるアルコール販売の50%以上を占めています。

Dan Murphy’sが実践するSDGsへの取り組みとは?

オーストラリア国民から愛されるDan Murphy’sでは、アルコール類の販売だけでなく以下のような環境への取り組みも実施しています。

National GIVIT Dayへの参加

Dan Murphy’sは、非営利の寄付プラットフォーム・GIVITが開催するチャリティーイベントに2021年より参加しています。

GIVITはオーストラリア全土に位置する4,500以上の慈善団体と提携しており、イベントで集められた寄付金はさまざまな団体へ寄付される仕組みです。

オーストラリアでは洪水による生態系の破壊が問題となっていることから、団体の中には洪水への復興支援を目的としているものも多くなっています。

洪水が発生すると、野生動物の生息地消失、野生動物同士の生息地や餌の奪い合い、争いの激化による個体数の減少などが起こり得ます。

実際、2022年にニューサウスウェールズ州で発生した洪水では、生息地を追われた野生動物が数千匹にも及びました。

洪水への復興対策を強化することで野生動物が本来の生息地に戻りやすくなるため、洪水への復興支援に寄付することは生態系の保護に直結します。

Dan Murphy’sは店舗での寄付活動を行い、2023年には12万1,052ドル(約1,200万円)を集めました。

2021年の開始時から計算すると実に180万ドル(約1億8000万円)が集まっており、Dan Murphy’sも別途10万ドル(約1,000万円)を寄付しています。

V-Texテクノロジーの導入

オーストラリアのメジャーな文化のひとつに、アルコールを飲みながらのバーベキューが挙げられます。

しかし、アルコールを冷やすためには長時間にわたって冷蔵庫に入れる必要があり、冷蔵庫を含む冷却産業は世界の二酸化炭素排出量の約10%を占めると言われています。

そんな中、Dan Murphy’sは冷蔵庫の使用率を少しでも削減しながら美味しくアルコールを楽しめるように、V-Texテクノロジーと呼ばれる冷却装置の導入を検討中です。

V-Texテクノロジーは氷水の中で飲料を高速回転させる低エネルギー装置で、わずか3分で缶を5度、ワインボトルを11度に冷却できるシステムです。

尚、冷却プロセスはグリコールや化学成分などを使用しておらず、持続可能性の高さも兼ね備えています。

V-Texテクノロジーの導入によって従来よりも大幅に少ないエネルギーと二酸化炭素量でアルコール及び炭酸飲料を冷却できることから、具体的な製品化と普及を目標にしています。

オーガニックワインの取り扱い

ブドウを主な原材料とするワインですが、実は完全植物由来ではないということはご存知でしょうか?

ワイン醸造では、ワインの透明度を高めるためにコラージュと呼ばれる工程を踏みます。

コラージュには液体の濁りを除去する清澄剤が使用されるものの、清澄剤には卵白、タンパク質、魚・肉から抽出されたゼラチンなどの動物由来成分が含まれています。

動物由来の製品には、家畜の飼育に伴うメタンガスの発生が付きものです。

メタンガスは二酸化炭素の次に排出量の多い温室効果ガスと言われていることから、近年はワイン業界においてもオーガニック製品を醸造・販売する流れが強まっています。

Dan Murphy’sでも300以上のオーガニックワインを取り扱っており、特に環境保全を促進している以下の3つのブランドのプロモーションを積極的に行っています。

REWILD

オーストラリア南東部のSouthern Murray Darlingで生産されているREWILDは、2022年に生まれた比較的新しいワインブランドです。

Southern Murray Darlingはオーストラリア国内でも特に干ばつが発生しやすい地域として知られており、2000年から2010年にかけて続いた干ばつでは生態系に大きな影響を与えました。

自然との共存や生態系保護の重要さを強く意識しているREWILDでは、ワイン生産から販売までのプロセスで以下のような取り組みを行っています。

①再生型農業

REWILDでは、ワイン生産オーストラリア (SWA) 認証を取得している農場のみと提携しています。

ワイン生産オーストラリア認証は持続可能なシステムの条件を満たしている場合にのみ認定され、REWILDが契約を結ぶダクストンヴィンヤーズも2020年に認定を受けました。

ダクストンヴィンヤーズのブドウ畑は、Murray RiverとDarling Riverからの水を使っています。

赤外線センサーが搭載されたAIトライアルを導入しており、必要なときのみブドウの木へ潅水できるシステムを構築することで毎年最大で1億5,000万リットルの水を節約しています。

②生物多様性

REWILDは植林活動にも力を入れており、70ヘクタール(東京ドーム約15個分)に渡って20種類以上の木や低木を植えてきました。

また、REWILDはニューサウスウェールズ州政府の種の保存活動にも参加しており、2,000ヘクタール(東京ドーム約427個分)を超える在来植生の維持を実現しています。

それぞれのエリアに応じた種類の木々を管理することによって、在来種であるミツバチ、昆虫、絶滅危惧種のリージェント・オウムなどへの生息地の提供に繋がっています。

③再生型農業

REWILDでは、廃棄されたブドウをリサイクルしています。

廃棄ブドウの種子、皮、茎などを年間8,000トン以上分の堆肥に作り替えており、ブドウの木への栄養素として有効活用しています。

廃棄物の削減はもちろん、堆肥を別途購入することなく不要物を再利用しているエコな取り組みです。

④責任あるエネルギー

REWILDは100% 再生可能エネルギーを目指しており、自社の敷地内にソーラーパネルやハイブリッド水素電池を設置しています。

これまでに750トン以上の二酸化炭素の排出量を削減しているほか、グリーンエネルギー貯蔵技術の試験なども実施することで、より持続可能性の高いエネルギー供給について模索中です。

Tread Softly 

Tread Softlyは、南オーストラリア州生まれのワインブランドです。

環境問題の中でも特にカーボンニュートラルへの関心が高く、西オーストラリア州のヤラヤラ生物多様性エリア(Yarra Yarra Biodiversity Corridor )にて植林活動を行っています。

ボトル6本の販売ごとにオーストラリア原産の木1本を植えており、これまでに13,500ヘクタール(東京ドーム約2,900個分)の地に25万本以上の木を植えてきました。

1ヘクタールあたり200トンの二酸化炭素量の削減に匹敵することから、環境にとって長期的なメリットが大きな活動となっています。

No Evil

南オーストラリア州生まれのNo Evilは、有機栽培されたブドウのみを使っています。

有害な化学物質を一切使用せず、土壌汚染や水質汚染の防止を強化することで持続可能性の高い土地づくりを行っています。

また、より多くの消費者が手軽にエコなワインを楽しめるリーズナブルな製品を幅広く取り揃えており、環境負荷の低いワインを普及させる上で重要な役割を担っているブランドです。

まとめ

Dan Murphy’sでは、生態系保護を目的としたチャリティー活動への参加、二酸化炭素排出量を減らすテクノロジーの導入、環境に優しいオーガニックワインの支援といった幅広い環境保全対策を行っています。

工夫を凝らすことで、お酒を飲みながらでもSDGsへの取り組みは可能です。

まずはオーガニックワインへの切り替えを検討するなど、自分にできる身近なことから始めてみましょう。