最近店頭や商品の広告で「BPAフリー:BPA-Free」の表記を目にする機会が増えました。商品のあとに付く「-Free」とは「〜がない」ということですから、「BPA-Free」とは「BPAがない・含まれない」という意味になります。
健康意識が高まっている近年は、フリーと言うと無害、または心配ないようなイメージを持ちますね。
本記事では、BPAとは何かから始まり、どのように健康に関わっているのか、おすすめのBPAフリー製品などについて分かりやすく解説します。一緒に考えていきましょう。
BPAフリーとは

BPAフリーとは、プラスチックの原料となる化学物質のBPAが含まれていないという意味です。では、そもそもBPAとはどのようなものなのでしょうか。
BPAとは
BPAとは、bisphenol A(ビスフェノール A)のことで、
- bis:2連結の
- phenol:石炭酸
- A:型記号(Zまである)
という意味を持つ化学物質です。下の画像からは、C(炭素)関連の物質が連結していることがイメージできますね。
BPAが含まれる製品例


BPAは主にポリカーボネイトや、エポキシ樹脂と呼ばれるプラスチックの原料として使用されています。利点や主な用途を下の表にまとめてみました。
ポリカーボネイト | エポキシ樹脂 | |
すぐれた点 | ・透明度が高い ・強度が高い(アクリルの約30倍) ・耐火性が強い | ・他の接着剤より強度が高い ・塗料としても評価が高い |
主な使用対象 | ・コロナ禍で活躍したパーテーション ・カメラレンズ ・車のヘッドライト ・OA機器 ・多くの電気製品や機械部品 ・哺乳瓶を含む食器や容器 ・歯科治療の歯の詰め物 など | ・金属の防蝕塗装 ・家具や楽器の接着 ・食器や容器の接着 ・缶詰の内側被覆 ・船舶の補修 など |
このように、多くの製品に使われているBPAですが、どのような危険性があるのでしょうか。次で見ていきましょう。
BPAの危険性
プラスチックの原料として広い範囲で有効利用されてきたBPAですが、洗剤で洗浄した場合や酸・熱によって、その成分が溶け出すという報告がされ始めました。
身近なものに多く利用されている化学物質だけに、特に健康への影響が心配されるところです。
人体への影響


BPAの安全性は、法や基準に則ってはいます。しかし1997年(平成9年)頃から、甲状腺や精巣・卵巣などのホルモンをつくって分泌する内分泌系器官への影響が心配され始めました。
そこで、欧米、そして日本でも動物での検証実験が進められました。その結果、それまで考えられていたよりも低い量でも、その動物の子どもの性周期 ※ に異常が見られたのです。また、長い時間が経過してから影響が現れることなども報告されました。
動物実験の結果がどの程度ヒトに当てはまるのか、他の器官への影響はどうなのかは、まだ研究・議論中です。しかし諸器官がまだ十分発達していない胎児や乳幼児への懸念が指摘されています。
続いては、BPAがどのように体内へ侵入するのかを確認します。
体内への侵入経路


ごくまれに、感熱紙を用いたレシートなどから皮膚を介して吸収される場合も考えられると報告されていますが、1番心配されるのが、食器や容器から飲食物に移ったBPAが、食事を通して口から摂取される経路です。
国内で製造・販売される製品については、食品衛生法 ※ の規格安全基準で規制されおり、
- 他の材質(ガラス製など)への切り替え
- 事業者の自主的な技術改良
といった取り組みが早くからされていて、実際には極めて微量な摂取量に留まっています。健康であれば、代謝によって無毒化されたり尿成分となって排出されます。
出典・参考
食品衛生法(◆昭和22年12月24日法律第233号)
器具・容器包装のポジティブリスト制度(対象:合成樹脂)
食品衛生法の改正について|厚生労働省
BPAの規制について

人体、特に胎児や乳幼児への影響が心配されるBPAですが、欧米や日本はどのように対応して、または、しようとしているのでしょうか。
世界の対応
まずは世界の対応を見ていきましょう。
EU・フランスのBPA規制
ヨーロッパでは、EFSA(the European Food Safety Authority:欧州食品安全機関)の主導のもと、REACH規則(EU統合化学物質関連規則)を制定し、研究を繰り返してきました。
EUの各国では、その研究結果を受け入れて自国の対応を決定したり、逆に自国の研究成果をEFSAに提案したりしています。
具体的に、フランスでは、
- 2010年:BPAを含む哺乳瓶の製造・輸出入禁止
- 2012年:欧州化学品庁にBPAの危険・有害性を引き上げるよう提案
- 2014年:食品容器以外の玩具や感熱紙についても危険性を指摘、他の物質に代替するようEFSAに提案
といった経緯を経て、その後も規制対象商品を広げたり、基準を厳しくしたりする方向を見せています。
他のEU諸国も、REACH規則を自国の状況に合わせて法令などに取り入れています。
アメリカのBPA規制
アメリカでは、2013年頃からBPAの健康への影響が懸念されて来ました。
2018年にはカリフォルニア州で、包装容器などにBPAが含まれていることがわかるよう、表示を義務付けています。全州および全製品への規制には及んでいませんが、EFSAの調査結果などを受けて検討が進んでいます。
その後、2022年には医師や科学者、消費者、環境団体がBPAの食品使用規制を求める請願をしています。
日本の対応
日本では、海外での調査・研究結果を考慮し、2008年(平成20年)に厚生労働省が「ビスフェノールAについてのQ&A」を作成しました。
その中で「現在では安全基準内」とし「成人への影響ないものと考えられる」としながらも、
- 公衆衛生の見地からはできるだけ体内へ入れるのを防いだ方がよい
- 胎児・乳幼児の食品容器はたの材質のものを使用することも選択肢の1つ
- 国内外の情報を収集し、必要があれば規制の見直しを行う
と述べています。
また国税庁は、厳しくなる欧米の規制を考慮して
酒類を輸出する場合は、輸出先のBPAの規制を確認し、BPAフリーの容器やキャップを使用するといった対応が必要になる。
引用:ビスフェノールA|国税庁
と注意喚起しています。
BPAフリーな生活を送るためには
ここまでお読みいただいて、BPAをできるだけ体に入れない方がよいと感じられた方が多いのではないでしょうか。ここからは、どのようにしたらBPAフリーな生活を送れるか考えていきましょう。
プラスチック製食品包装・容器をできるだけ使わない

方法として最も簡単なのは、プラスチック製品を使わないことです。実際に、食品包装からBPAを除去すれば、成人も子供も影響が大幅に減少したという実験結果が出ています。
また、紙包装やガラス容器を利用する手立てもあります。
しかし、私たちの日常からプラスチック製品を全く除外することはとても難しいことです。できるだけ紙やガラス製品を利用しながらも、プラスチック製品を使用するときは、BPAフリー製品を選ぶことが1番現実的な手段ではないでしょうか。
BPAフリー製品の見分け方
BPAフリー製品には「BPA Free」の標示があり、逆に使用している製品に成分としてBPAが含まれていることを表示しています。
下のようなロゴマークもあるので、購入の際はぜひチェックしてみてください。しかし表示は義務化されているわけではないので、分からないときは販売店の人に尋ねてみてもよいでしょう。

代替成分に注意
BPAの代わりにBPS(ビスフェノールS)やBPF(ビスフェノールF)といった製品もあります。BPA同様に健康や環境への影響が心配されているプラスチック成分の化学物質です。
これらが使われていても、BPAが使われていないという点では「BPAフリー」という表記ができるので、注意が必要です。
参考:食品安全委員会
おすすめのBPAフリー製品20選
ここからは、おすすめのBPAフリー製品をご紹介します。読者の皆様が選ぶ際の参考になれば幸いです。尚この章の表は、標品製造・販売元の内容を筆者が整理したものです。
水筒
まずは水筒2点からご紹介します。


タッパー(Tupper:密封容器)
密封容器はおなじみのメーカーと20周年を迎えるメーカーから、収納性をポイントに選びました。

密封バッグ
広いシェアを誇る密封バッグ2点です。すでにお使いの方が多いと思いますが、改めてBPAフリー商品としてご紹介いたします。これからも安心して使えますね。


缶詰
BPAフリー缶詰は、内容物の酸味や塩分、添加物などとの相性が心配です。代表的なものを3種あげました。



食器
日本の伝統技術である漆塗り技法に、近代技術を取り入れた製品を生み出している会社があります。それが石川県の漆器産地にある株式会社竹中です。
漆塗りは本来木を芯材とし、漆を塗って製品を作ります。竹中は、芯材にも塗装にもBPAフリーの素材を使った近代漆器のフードウェアブランド:Tak を起ち上げた会社です。
ここでは、豊富なラインナップからキッズ用と大人用を1点ずつご紹介します。


おすすめポイントは、どちらも
- デザインがシンプルでどんな食材・料理にも合いそう
- 伝統漆器技術を使っていて滑らかな手触り
- プレートは電子レンジ・食器洗い乾燥機使用可
- 数種類のカラーパターンがある
- 重ねられて収納に便利
という点です。
両製品の価格やサイズは次の通りです。
商品名 | キッズディッシュ | モーニングプレート |
価格 | 1,980円 | 1,760円 |
サイズ | プレート:100×170mm スプーン:20×164mm | 220×164mm |
重さ | プレート:63g スプーン:7g | 250g |
商品の詳細はこちら
コップ
前述の「食器」ではプレートに重きを置いたので、改めてBPAフリーのコップもご紹介します。
下の2点は、どちらも「割れないコップ」として知られている製品です。日本で生産されていて、耐熱・耐冷性にも優れている人気商品です。特にタンブラーは「売り切れ」になることもあるほど。素材・加工樹脂いずれもBPAフリーのものを使用しています。



コップ製品紹介の最後に、哺乳瓶とシッピーカップ(卒乳用ベビーカップ)がセットになった「ステップアップマグパック240ml」をご紹介します。お母さんになったばかりの方や間もなくなる方の参考になりますように。

おすすめポイント
4つの飲み口で
- まずは哺乳瓶として使用
- シリコン製のやわらかい飲み口で卒乳練習開始
- ストローを使う練習
- 窓付きのコップで飲む練習
と段階的にトレーニングすることができます。
価格はセットで 4,950円、他の色・キャラクターのもの(全5種類)もあります。
商品の詳細はこちらから。
ラップ:食品保存用
食品に直接触れる点では、ラップ商品も外せませんね。読者の皆様がすでに使用されている商品はBPAフリーでしょうか。


上の2つは、2大食品保存用ラップ商品です。使い心地もすでにご存じのことでしょう。
BPAについては、旭化成(サランラップ)・クレハ(クレラップ)両社とも、消費者の「BPAフリーか?」の質問に対して、明確に「BPAは使っていません」と答えています。
参考
よくあるご質問 – – – サランラップ
NEWクレラップにビスフェノールA(BPA)は使われていませんか?
| クレライフ | クレハの家庭用品サイト
上記2点以外にも、近年話題になったり人気が出てきてたりしたラップ商品が次にあげる2点です。

弁当箱
タッパーのところでお話ししたように、最近は性能もデザインも優れた密封容器が多く展開され、弁当箱として活躍しています。
そこで、たくさんの商品を見ていただいた最後に、ここでは楽しいアイデア弁当箱をご紹介します。おにぎりやサンドイッチをBPAフリーの容器に入れて楽しんでください。


BPAフリーとSDGs

最後にBPAフリーとSDGsとの関連をみていきましょう。
BPAフリーについて理解を深めることは、いくつものSDGsの目標達成に関わる大切なことです。それは、気候変動の大きな原因の1つであるプラスチックに目を向けることになるからです。
その中でもBPAフリーと特に関連の深い目標は、
- SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を
- SDGs目標12:つくる責任つかう責任
- SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を
- SDGs目標14:海の豊かさを守ろう
- SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう
- SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
の6つです。
すでに健康との関連については本文でお話ししたので、他の目標との関連を確認していきます。
SDGs目標12「つくる責任つかう責任」とBPAフリー
商品を紹介する中で、多くの製造者がより健康的な製品を作る努力をしていることがお分かりいただけたと思います。消費者側も健康や環境に考慮した製品を選ぶよう心がけることで、製造者側はさらに健康・環境に配慮した製品づくりを目指してくれるのではないでしょうか。
BPAフリーの製品は、そうでないものよりやや高価なものがあります。それでも、良い物を大事に長く使っていければ、プラスチック製品の廃棄量全体を減らすことにも貢献できます。
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」とBPAフリー
ご紹介したBPAフリー商品の詳細を見ていただくと、プラスチック問題に深く関心を寄せていることがわかるホームページに出会います。BPAフリーの商品について正しく理解し、それを周囲に知らせることも、私たちができる具体的な対策といえます。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」・目標15「陸の豊かさも守ろう」とBPAフリー
プラスチックは実に様々なところで使われています。海に行くにしても山に行くにしても、自分たちだけでなくそこに生活する様々な生物へのプラスチックの影響について考えを巡らせることが、さらにSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に、同じく目標15「陸の豊かさも守ろう」にもつながります。
SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」とBPAフリー
目標17には開発途上国とのパートナーシップを促すターゲットが多くあります。
しかし、BPAの規制に関しては、例に挙げた数か国の間でさえ足並みが揃っているとは言えません。
科学に関する技術や研究成果は、多くの国の間でできるだけ速やかに共通理解を図っていくことが大切ではないでしょうか。日本の厚生労働省の「国内外の情報を収集」(「ビスフェノール AについてのQ&A」より)する力に期待します。
>>各目標に関する詳しい記事はこちらから
まとめ

今回は、BPAについてその危険性や規制、BPAフリーな生活を送るためのポイント、おすすめ製品を紹介してきました。すでにご存じで使っているものや新たに発見した製品もあったかもしれませんね。BPAフリーという観点で商品を選択するアクションにつながれば幸いです。
BPAフリー製品について知ったり考えたりすることが、多くのSDGs目標の達成につながることもお話ししてきました。
大量のプラスチック消費とそれに伴う廃棄は、地球や人間を含む生物に大きな問題となって跳ね返ってきてしまいまいした。
これからは、プラスチックについてさらに真剣に考え、量の削減を目指しつつも、その質にもこだわっていくことが求められています。BPAフリーについて情報を収集し、よく考え正しく製品を選択していくことが、私たちの健康にさらには環境改善につながるのではないでしょうか。
<参考資料・文献>
ビスフェノールA|国税庁
ビスフェノールAについてのQ&A|厚生労働省
厚生労働省:ビスフェノールAがヒトの健康に与える影響について
職場のあんぜんサイト:化学物質:ビスフェノールA(厚生労働省)
[15]ビスフェノールA – 1.物質に関する基本的事項(環境省)
ビスフェノール A の有害性評価 [Bisphenol A, CAS No. 80-05-7](経済産業省)
ビスフェノールA( chemi COCO;環境省)
化学物質データベース Webkis-Plus – ビスフェノールA(国立環境研究所)
CRM-化学物質リスク管理研究センター 詳細リスク評価書シリーズ6 ビスフェノールA 概要(化学物質リスク管理研究センター)
ビスフェノールA問題についてのQ&A(日本生活協働組合連合会)
ビスフェノールAとは(ビスフェノールA安全性研究会)
http://www.jetro.go.jp(ジェトロ;日本貿易振興機構)・https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04010280314(内閣府食品安全委員会)
https://www.fsc.go.jp/sonota/bisphenol/qa1_bisphenola.pdf(食品安全委員会)
BPAフリーとは?意味や危険性を解説!リスク回避のおすすめ品も
ビスフェノールA(ビスフェノールエー)とは? 意味や使い方 – コトバンク
ビスフェノールA:中西準子・宮本健一・川崎一(丸善株式会社)