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【2023年10月最新】電気料金の値上げはいつまで続く?電気料金高騰の原因も

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2022年に大きな話題になった電気料金の値上げ。この電気料金の値上げはいつまで続くのでしょうか?

2022年冬の電気料金高騰では、とくに寒い地方の人々に大きな負担となりました。
知らない間に電気料金が値上がりして出費が増えるのは寒い地域でなくても困るもの。

電気料金の仕組み、電気料金はどれくらい値上がりしているのか、電気料金高騰の原因、政府の支援策、私たちにできる対策など、2023年7月最新の電気料金事情を知って、今後に備えましょう!

まずは電気料金の仕組み・内訳を確認

普段当たり前のように支払っている電気料金ですが、実際はどのような仕組みで料金が決定しているのでしょうか?2000年3月にスタートした「電力小売自由化」以前は選択の余地がないものでした。しかし2000年以降、段階的に電力小売自由化の範囲が拡大され、2016年4月に家庭や商店も含め全面的に自由化したことで、電力会社や料金メニューを自由に選べるようになりました。

【電力小売自由化の歴史】

電力小売自由化以降の流れ

2016年に全面的に電力小売自由化となりましたが、それまで法律により定められた料金設定で電気を利用してきた全ての人々が、すぐに新しく電力会社と契約を結ばないといけないわけではありません。小売電気事業者の競争が十分に進展するまで(小売電気市場が安定するまで)は、消費者保護のために電気料金規制経過措置として、これまでの電気料金(経過措置料金)で各地域の電力会社から電力が提供されます。

【電力自由化の前後】

当初、この電力の経過措置料金は2020年4月に撤廃される予定でしたが、現在も経過措置料金は続いています。これは電気料金の急変に対応が難しい需要家(電力購入者)がまだ多くいると考えられるからです。

電気料金設定の仕組み

それでは現在の電気料金の仕組みを確認しましょう。電気料金の設定方法は、

  • 経過措置料金
  • 電力小売り自由化後の料金設定

の2つに大きく分けられます。

①経過措置料金

これまでは「統括原価方式」という国の定める方法で電気料金が設定されていました。電気を安定的に供給するために必要な費用と利益の合計が、電気料金の収入と等しくなるような設定です。

【総括原価方式で定める料金に占める費用内訳】

※1= 発電所や送電線など電力設備運用のための資金調達によって発生する支払利息や配当など

※2= 電気料金以外で得られる収入(他社販売電力料など)

つまり、電力会社が必要なコストを支払うための資金を確保できるように設定されていると言えます。「それの何が問題なの?」と思う人もいるでしょう。

この方式では、電力会社間の競争がなく、必死に経営努力をしなくても事業が継続できることになります。しかし競争がないということは成長もないに等しいのです。

②電力小売自由化後の料金設定

電力小売自由化後の小売業者が設定する電気料金は、事業者が同時の考えで(裁量)で算定する項目と、法令などに従って算定する項目に分かれています。その2つの合計が消費者の払う電気料金となります。

【電力小売自由化後の料金設定】

(※1)託送料金

電力会社が発電した電気を需要先に送る際に、小売電気業者は送配電網の利用料金を配電事業者に支払う。託送料金には送配電部門にかかる人件費・設備修繕費・減価償却費・固定資産税・電源開発促進税・賠償負担税・廃炉円滑化負担金などが含まれている。

月々の電気料金内訳

月々の電気料金は

  1. 基本料金(契約内容に応じた金額)
  2. 電力量料金(電力の使用量に応じた金額)
  3. 再生可能エネルギー発電促進賦課金※

の3つの合計です。燃料費の変動に応じて「燃料費調整額※」を加算したり差し引いたりします。つまり電気料金は燃料費の価格変動に応じて調整されているということです。

再生可能エネルギー発電促進賦課金

電力会社が再生可能エネルギー電気を発電元から買い取る費用をまかなうために、資金を電気の使用者が使用電力の量に応じて負担するもの。電気の使用者は毎月の電気料金と合わせて支払う。

燃料費調整額

市場や為替などの要因により変動する燃料費を、日本全国の平均的な輸入燃料価格の変動に応じて毎月自動的に電気料金の調整を行う仕組み。

【電気料金の内訳】

電気料金の仕組みは電力小売自由化前も後もそれほど複雑ではありません。どちらの場合も常に「燃料価格」に影響を受けて電気料金が変動することがわかります。

電力小売自由化後の料金設定では、

  • 燃料費
  • 減価償却費
  • 修繕費
  • その他の経費
  • 人件費

などは小売電気事業者の裁量に任されています。この部分を経営努力によって安く上げることができれば、競合他社より安く電気後供給できるので市場で有利になる可能性があります。

電気料金について確認したので、次の章ではこれまでの電気料金の推移から、電気料金はどれくらい値上げされているのか見ていきましょう!*1)

電気料金はどのくらい値上げされているのか

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日本国内の電気料金は東日本大震災(2011年)以降、値上がりの傾向が続いています。しかし2014年〜2016年は原油価格の下落の影響から、電気料金も低下しました。

そして2020年~2022年は再び値上がり傾向です。グラフから電気料金の推移を確認しましょう。

電気料金の推移

【電気料金平均単価の推移】

2021年には2010年と比べて、

  • 家庭向けの電気料金が平均して約31%
  • 産業向けの電気料金が平均して約35%

ほど上昇しています。電気料金の変動に強い影響を与える原油価格の推移について、2010年以降の2度の原油価格下落と、2020年以降の近年の原油価格の動きを簡単に把握しておきましょう。

2014年〜2016年の原油価格の下落

2014年〜2016年の原油価格の下落は

  1. 原油の需要と供給のバランスが崩れていた
  2. アメリカが金融政策正常化に向かい、原油市場への投機的な投資※が弱まった

という2つの原因によるものだと考えられています。世界の原油需要は、不景気の影響で先進諸国や中国で落ち込みました。

この時、原油価格の下落に伴い電気料金も引き下げられました。

【2008年〜2014年の原油需要】

【2008年〜2014年の原油需要】
出典:内閣府『原油価格下落の要因』p.9

2018年からの原油価格

2018年〜2020年にかけても原油価格が下落傾向にありました。この時の原油価格下落の原因は

  • イランへの経済制裁発動によるイラン産原油の減少を見越してサウジアラビア・ロシア・アメリカが石油・シェールオイルの増産
  • アメリカ・中国間の貿易摩擦による影響で、世界的に原油消費量が伸びないのではという懸念

などと考えられます。アメリカのトランプ大統領(当時)の「原油価格のさらなる引き下げが必要」という発言もあり、原油価格が下がると予想する投資家が増えたことも影響しています。

2020年ごろから現在の原油価格

【原油価格の推移(2003年〜2022年)】

近年では、

  • 円安
  • ウクライナ情勢
  • 石油原産国の減産(輸出量減少)

などの背景があり、全ての種類の燃料価格が急騰しています。例えば東京電力の経営収支は2022年度5,050億円の赤字が見込まれるなど、電力会社の多くが苦しい経営状況に陥っています。

【燃料価格(貿易統計価格)の推移】

【燃料価格(貿易統計価格)の推移】
出典:資源エネルギー庁『東京電力エナジーパートナー株式会社 規制料金値上げ申請等の概要について』p.3(2023年 1月23日)

こうして見ると、原油価格の動きが激しく、電力会社にとって大変な時期が続いていることがわかります。次の章では、さらに近年の電気料金の値上がりにスポットを当てましょう。*2)

電気料金はなぜ値上がりしているのか

下のグラフは2022年1月~5月の電気料金の推移です。ほとんどの電力会社で1月から比較して電気料金が値上がりしていることがわかります。

【大手電力10社における電気料金】

折れ線グラフ中の赤い△は、燃料調整額が上限に達したことを示しています。2022年10月には大手電力会社10社※が燃料費調整額の上限に達し、2009年以降初めて大手電力会社全てが上限に達しました。

※北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄の各電力会社

この電気料金値上がりの理由を見ていきましょう。

燃料価格の高騰

前の章で確認したように、現在燃料価格が値上がりを続けています。電気料金はこの影響を大きく受けています。

【燃料価格の推移】

上のグラフからもわかるように、火力発電の主な燃料である原油・LNG(天然ガス)・石炭すべての価格が2020年以降高騰の一途をたどっています。1つ前のグラフで見たように、日本の大手電力会社はすでに全てが燃料費調整額の上限に達してしまいました。

しかし、燃料費調整額上限に達して以降もなお、燃料価格は上昇を続けており、上限を超えた部分は電力会社が負担しています。一方、このような燃料費調整額の上限がない電力小売り自由化後の料金設定の電力は、本来、電力小売り自由化前の規制料金より割安なはずですが、この燃料費の急激な高騰のために規制料金よりも高くなってしまうという逆転現象がおきています。

託送料金

先ほど「電気料金設定の仕組み」で解説した、電力会社が送配電業者に支払う「託送料金」も2023年4月以降に値上がりしています。

【電気料金の流れ(小売電気事業者の場合)】

【各一般送配電事業者の託送料金平均単価の変更一覧】

エリア2023年3月31日まで2023年4月1日以降
北海道9.63円11.02円
東北10.75円11.83円
東京9.46円9.92円
中部9.88円10.46円
北陸8.58円9.88円
関西8.65円9.02円
中国9.11円10.59円
四国9.67円10.69円
九州9.19円10.65円
出典:東京電力『託送料金相当額等について』より筆者作成

託送料金は家庭向けの電気料金の約30%〜40%を占めています。こうして見ると、託送料金の占める割合はかなり大きいことがわかります。

安全で安定した送電のためには、送電網のメンテナンスは欠かせません。しかし、燃料費の高騰による燃料調整額の値上げと合わさると、消費者としては「電気料金が急に高くなった!」と感じても不思議ではありません。

再エネコスト

【再エネ賦課金とは】

再エネコストとは、電力を使った量に応じて支払う「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」のことです。再エネ賦課金の単価は全国一律で、再生可能エネルギー固定買取制度によって電力会社が買い取った再生可能エネルギーへの支払いに充てられるお金です。

つまり、この制度によって買い取られる再生可能エネルギーが多ければ、この賦課金の総額も多くなり、消費者の負担する金額も値上がりすることになります。

【再エネの設備容量の推移(大規模水力は除く)】

上のグラフからわかるように、日本の再生可能エネルギーの設備容量(どれだけ発電できるか)は年々拡大傾向にあります。特に太陽光発電の設備容量の増加が顕著です。

【固定価格買取制度導入後の再エネ賦課金の推移】

再エネ賦課金は2012年度は0.22円/kWhでしたが、2022年度には3.45円/kWhにまで値上がりしています。これは2012年度は平均的な家庭の電気使用量で1ヵ月に57円の負担だったものが、2022年には897円に値上がりしたと試算できます。

再生可能エネルギーでの発電量が増えれば、日本のエネルギー自給率も向上しますし、化石燃料への依存度も下げることができます。さらに火力発電よりもCO2排出量が少ないので、地球温暖化対策としても重要な取り組みです。

しかし、この金額も「高い」と感じる人は少なくないでしょう。

在宅時間が長くなったことも影響

ここまで見てきた

  • 燃料費調整額
  • 託送料金
  • 再エネ賦課金

の値上がりが電気料金の値上がりの大きな原因ですが、さらに新型コロナウイルス感染拡大以降に私たちの生活パターンが変わったことも影響している場合があります。外出を控えて、自宅で過ごす時間が増え、可能であれば在宅勤務という選択肢ができました。

このように、在宅時間が長くなれば、自然と電気の使用量は増えます。電気料金の値上がりの背景にはたくさんの要因が重なっていたのです。

次の章で、今後の電気料金について考察していきましょう。*3)

電気料金高騰はいつまで続く?見通しは?

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このような電気料金の高騰はいつまで続くのでしょうか?

燃料価格の見通しと「電気・ガス価格激変緩和対策」

2022年の燃料価格は、上半期は高騰、下半期は下落と大きく価格が動きました。2023年も引き続き先行き不透明な状態が続きますが、現在の価格を維持するか、さらに値上がりする可能性があると予測されています。

しかし、日本政府は燃料価格の高騰により、厳しい状況にある家庭や企業のために、電気・都市ガスの小売事業者などを通じて値引きを行う「電気・ガス価格激変緩和対策」を2023年1月から行っています。約3.1兆円の予算が措置され、2023年1月の使用分から使用量に応じた値引きが行われています。

この値引きは、

  • 2023年1月使用分(2月検針分)~2023年8月使用分(9月検針分)→料金単価から一般家庭用(低圧)電力は7.0円、事業用(高圧)電力は3.5円、都市ガスは30円
  • 2023年9月使用分(10月検針分)→一般家庭用(低圧)電力3.5円、事業用(高圧)電力1.8円、都市ガス15円

という内容です。

【電気・ガス価格激変緩和対策の値引きの内容】

2023年の再エネ賦課金単価

2023年度の再エネ賦課金は、ウクライナ危機による市場価格の高騰から、再生可能エネルギーの買取収入が増加すると見込まれ、

  • 2022年→再エネ賦課金単価3.45円/kWh(平均的な家庭で月額1,380円)
  • 2023年→再エネ賦課金単価1.40円/kWh(平均的な家庭で月額560円)

と大幅に安くなります。(2023年5月の検針から2024年4月の検針分まで)

再生可能エネルギーの日本の発電量に占める割合は2020年で19.8%、2023年では約22%と予想されています。

【主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較(2020年度)】

燃料費の高騰で火力発電が高くつきますが、再生可能エネルギー比率の増加により、火力発電での発電量を抑えることができるのです。

これを「回避可能費用」と呼び、再生可能エネルギーの買取費用全体から回避可能費用を差し引いた額(サーチャージ)から再エネ賦課金単価が算定されます。回避可能費用が増えればサーチャージが減るという仕組みです。

回避可能費用

電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることにより、本来予定していた発電を取りやめ、その分発電にかかるはずだった支出を免れることができた費用。

【回避可能費用とサーチャージ】

【日本の左右せい可能エネルギーの増加率予測】

すぐ上のグラフは日本の過去の発電容量の増加と、IEA※が予想する今後の発電比率の増加を表しています。これによると日本の発電容量は2022年〜2027年で少なくとも5%、多い場合は10%に迫る発電量の増加が見込まれています。

政府の支援は期間限定

つまりは、

  • 電気・ガス価格激変緩和対策
  • 再エネ賦課金単価の引き下げ

この2つにより、2023年10月検針分までは電気料金の消費者への負担は軽減されます。しかし、それ以降の措置は2023年4月時点では決まっていません。

電気・ガス価格激変緩和対策の期限が切れる10月以降(11月検針分)に備え、私たちも個人でできる節電対策を行いましょう。次の章では電気料金の値上げ対策をいくつか紹介します。*4)

私たちにできる電気料金の値上げ対策

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ひとまず2023年10月検針分の電気料金までは安心できそうですが、やはりその後の電気料金はウクライナ情勢の先行き・燃料価格の動きを考えても不確実です。すぐにでもできることから対策に取り組んで、電気料金急騰に備えましょう。

節電

まず取り組むべきは「節電」です。ついつい面倒で無駄な電力を使っていませんか?

  • 冷蔵庫→冷やしすぎを避け、扉の開閉を少なく短時間にする。詰め込みすぎない。
  • エアコン→衣服の調節で冷やしすぎ・暖めすぎを避ける。断熱カーテンを利用する。フィルターを掃除する。
  • 照明→不要な照明は消灯。不必要に明るすぎる照明は明るさを下げる。
  • トイレ→便座のタイマー機能を利用する。使用後は便座のふたを閉じる。
  • テレビ→省エネモードを利用する。見ていないときは消す。

などに気を付けて、無駄な電気を使わない生活習慣を身につけましょう。

省エネ

省エネ家電や省エネ設備の導入も効果的です。

  • エアコン
  • その他の暖房器具
  • 照明
  • テレビ
  • 冷蔵庫
  • 電気ポット

などの、古いモデルで電力消費の大きいものを省エネモデルに変えてみましょう。

電力会社・電気料金を見直す

2016年から電力小売り全面自由化になり、消費者が電力会社や電力プランを選べるようになりました。自分のライフスタイルに合ったプランを見つけることで、電気料金の負担を軽減できる可能性があります。

また、中には「再生可能エネルギーの普及を応援したい」「環境に優しい電力を使いたい」と思う人向けに、再生可能エネルギーのみの電力プランなどもあります。

自家発電【省エネルギー推進事業費補助金の利用】

自家発電と言えば「太陽光発電」が真っ先に思い浮かびますが、それ以外にも「家庭用燃料電池(エネファーム)」で自家発電が可能です。どちらにしても自家発電設備の導入にはコストがかかりますが、政府の補助金が出る時期があります。

資源エネルギー庁(経済産業省)では、「省エネルギー推進事業費補助金」として、高効率給湯器や家庭用燃料電池の導入に補助金を設けています。対象となるのは、

  • 家庭用燃料電池(エネファーム)
  • ハイブリッド給湯機(エコジョーズ)
  • ヒートポンプ給湯器(エコキュート)

などで、太陽熱でお湯を沸かす「おひさまエコキュート」も含まれます。省エネルギー推進事業費補助金の申請受付は2023年3月下旬予定です。

【省エネルギー推進事業費補助金の内容】

都市ガスやLPガス等から水素を作り、その水素と空気中の酸素の化学反応により発電するもの。エネルギーを燃やさずに直接利⽤するので⾼い発電効率が得られる。また、発電の際に発生する排熱を回収し、お湯をつくるため給湯に利⽤が可能。

ハイブリッド給湯器(エコジョーズ)

「エコジョーズ」などの、ヒートポンプ給湯機とガス温水機器を組み合わせたもの。ふたつの熱源を効率的に⽤いることで、⾼効率な給湯が可能。

ヒートポンプ給湯器(エコキュート)

ヒートポンプの原理(気体は圧縮すると温度が上昇し、膨張(開放)させると温度が下がる)を⽤い、冷媒の圧縮と膨張のサイクルにより、お湯を作り、お湯を貯湯タンクに蓄えて使⽤するもの。

政府の努力も必要ですが、私たちが省エネ・節電に取り組み、全体的な電力使用量を減らすことも大切です。次の章で、電力に関するもう1つのリスク、毎年の夏・冬に警戒される大規模停電について確認しておきましょう。*5)

電気料金節約だけでなく停電対策も!

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これまで見てきたように、世界の燃料価格の先行きは不透明な上に、ウクライナ情勢などの影響から、燃料調達のリスクが大きくなっています。2022年はロシアのウクライナ侵攻により世界のエネルギー情勢が一変しました。

十分な燃料を確保できない場合、火力発電の稼働が制限され、電力の供給不足に陥る可能性があります。前の章で紹介したことは、このような電力の供給不足による「大規模停電(ブラックアウト)」の対策にもなります。

【実績が猛暑・厳寒時想定を上回ったエリア数、エリア最大需要合計の推移】

特に猛暑・厳寒が到来した時は注意が必要です。しかし、ここまで学んできたことからわかるように、特別な時だけではなく、普段の生活からエネルギーを大切に扱い、節約を心掛けることが大切です。

電力供給不足が想定される際の対策のひとつとして、「デマンド・リスポンス」という取り組みがあります。これは、電力会社が電力供給不足が予測された際に、タイムリーな節電要請を発信し、電力利用者はそれに応じて節電を行う仕組みです。

利用者は達成度合いに応じて電気料金支払いにも利用できるポイントなどが獲得できます。また、利用中の電力会社のアプリなどを利用して、電力の供給情報や自宅やオフィスの電力使用状況を確認するのも具体的な対策を見つけるために有効です。

【デマンド・リスポンスの仕組み】

次の章では電気料金高騰とSDGsの関係に迫ります。一見全く関係なさそうに見えますが、どのような関係があるのでしょうか?*6)

電気料金高騰とSDGs

日本ではSDGsの知識は今や社会常識となっています。SDGsは世界中の全ての人が「より良い世界と持続可能な地球」のために目指すべき目標を明確にしたものです。

その17の目標のうち、

が今回のテーマに深く関わる目標です。この目標は、

  • 設備の行き届いていない地域や不安定な情勢の地域の人々にエネルギーが届き、より便利で快適な生活を送れるようにする
  • 発電などによる温室効果ガスの排出削減

などを目指すものですが、人々の生活を「エネルギー価格の高騰による負担」「停電のリスク」などから守り、安心して暮らせるようにすることもSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の目標達成のために目指すべきものです。電気料金の高騰は世界のどこで起こっても人々の生活に負担をかけるからです。

社会全体でデジタル化が進む今後、電気料金の安定や停電対策はますます重要な課題となります。これまで化石燃料に大きく依存してきた日本にとって、「脱炭素」「カーボンニュートラル」などは簡単でない挑戦ですが、将来のエネルギー事情を考えると、やはり必要不可欠な取り組みです。

カーボンニュートラルとは?

排出される温室効果ガスの量と、植物による吸収量を等しくし、実質的にプラスマイナスゼロにすること

まとめ:今後の電気料金値上がりリスクに備えよう!

燃料価格高騰の影響を受けた電気料金の値上がりは、2023年10月検針分までは政府の支援で負担は軽減されるものの、今後も燃料価格と同様に先行きが不透明なことは事実です。このことからも、ほとんど輸入に頼っている化石燃料への依存から脱却し、日本のエネルギー自給率を上げることが大切なのがわかります。

エネルギー自給率を上げるためには、再生可能エネルギーや原子力発電の導入など、さまざまな方法があります。そのなかで、私たちひとりひとりが省エネ・節電の努力をして、国全体のエネルギー消費量を抑えることもエネルギー自給率の増加につながります。

スマートフォンのアプリなどを利用して、自宅の電力消費量・電気料金を知り、普段の生活から効率よく電力を使うことを心掛けましょう。省エネ・節電はあなたの出費を抑えることができるだけでなく、地球温暖化抑制にも貢献します。

効率的でスマートな生活を続けるためには、常に新しい情報に目を向けることや、自分なりの工夫も必要です。2022年に私たちが経験した電気料金の値上がりを教訓にして、今後のリスクに備えましょう!

<参考文献>
*1)まずは電気料金の仕組み・内訳を確認
資源エネルギー庁『電力の全面自由化って何?』
資源エネルギー庁『電力自由化で料金設定はどうなったの?』
資源エネルギー庁『電気料金の在り方について』(2022年5月)
資源エネルギー庁『料金設定の仕組みとは?』
資源エネルギー庁『月々の電気料金の内訳』
*2)電気料金はどのくらい値上げされているのか
資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』
資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』
内閣府『原油価格下落の要因』p.9
JETRO『原油価格(WTI)が25%以上の暴落、サウジアラビアの増産方針が引き金』(2020年3月)
日本経済新聞『NY原油50ドル台 急落なぜ 供給過剰に警戒感(Q&A)』(2018年11月)
JOGEC『2022年原油市場の波乱と2023年の展望』(2022年12月)
資源エネルギー庁『東京電力エナジーパートナー株式会社 規制料金値上げ申請等の概要について』p.3(2023年 1月23日)
*3)電気料金はなぜ値上がりしているのか
資源エネルギー庁『今後の小売政策について (燃料価格の情勢を踏まえた対応)』p.5(2022年4月)
産経新聞『大手電力10社、規制料金の上限到達 自由料金との逆転現象で顧客移動も』(2022年8月)
資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』
資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』
内閣府『電気料金の構造』
東京電力『託送料金相当額等について』
資源エネルギー庁『各一般送配電事業者の託送料金平均単価等』(2021年10月)
資源エネルギー庁『FIT・FIP制度 制度の概要』
*4)電気料金高騰はいつまで続く?見通しは?
経済産業省『電気・ガス価格激変緩和対策の実施のため、電気・ガス料金の値引きを行うことができる特例認可を行いました』(2022年12月)
資源エネルギー庁『回避可能費用について』
資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』
IEA『Renewables 2022 Analysis and forecast to 2027』(2022年12月)
*5)私たちにできる電気料金の値上げ対策
資源エネルギー庁『節電プログラム』
資源エネルギー庁『省エネポータルサイト』
「なっとく!再生可能エネルギー 新着情報」
資源エネルギー庁『令和4年度補正「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」について』
資源エネルギー庁『⾼効率給湯器導⼊促進による家庭部⾨の省エネルギー推進事業費補助⾦の概要』(2023年2月)
エネファームとは?設置費用と寿命、メリット・デメリット、仕組み、SDGsとの関係を解説
*6)電気料金節約だけでなく停電対策も!
経済産業省『2022年度の電力需給に関する総合対策』(2022年6月)
資源エネルギー庁『節電プログラム』