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環境活動家とは?活動目的や何がしたいのか、世界・日本の有名な活動家を紹介

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日々深刻化する環境の危機や気候変動に対し、国や企業、そして私たち自身に対し、対策と行動を求める動きは世界中で高まっています。その旗印を掲げる存在としてしばしば注目されるのが、環境活動家と呼ばれる人々です。

環境活動家とは

環境活動家とは、環境破壊や気候変動による危機を広く世間に訴え、環境や自然を守るために活動する人々のことです。団体として活動する人々もいれば、主に個人の名前で活動し、賛同する人々と協働するような人もいます。

ひとことで環境活動家と言っても彼らが活動の対象とするものはさまざまで、

など、各々の専門分野やテーマに則って活動を行っています。

活動内容

では環境活動家は実際にはどのような活動を行っているのでしょうか。

環境活動家といっても上記のように定義も対象も幅広く、彼らが行う活動内容も多岐にわたります。

デモ・抗議活動

環境活動家といって多くの人が真っ先に思い浮かべるのが、プラカードを掲げて大勢でデモや座り込みを行うなどの抗議活動だと思います。

デモ(デモンストレーション)は、何らかの不正に対して抗議したり、要求することがある場合に、同じ主張を掲げる仲間や集団で集会や行進を行い、団結と意思表明を行うことです。

時には環境対策に消極的な政府や企業に対し、政府施設や社屋前などで行動する場合もあります。

最も世間の注目を集めやすく、直接大勢に意見を届けやすいため、社会的に議論や政治的論争を引き起こす効果もあります。

【関連記事】デモとは?わかりやすく解説|日本で少ない理由や暴動との違いを解説

研究・執筆活動

環境活動家の中には、大学や研究機関に属する人、または在野の研究者など、専門の研究に従事し、研究成果を発表して環境問題や自然破壊の解決を訴える人もいます。研究や調査活動によって得られた知見をまとめて本として出版し、アカデミズムの世界だけではなく、私たち市民が環境問題に対する知見を広める助けにもなっています。

ライフスタイルの提案

環境や自然に優しい生活様式の提唱や実践、啓蒙なども環境活動家の活動の一つです。

一例として、植樹などによる森林保護活動、有機食品や有機農業を広める活動、グリーンコンシューマーの推進、リサイクル品の使用など、環境に優しいライフスタイルを日々の生活から広めていくといった活動があげられます。

講演・環境教育

環境活動家の重要な仕事の一つが、地域の講演会や、学校での環境教育の講師としての参加です。

環境問題についての現状や自分たちが行っている取り組みから、今後私たちが何をするべきか、といった事例まで、大勢の人々にわかりやすく伝える意義があります。

この他にも、企業や業界に環境に優しい事業を行うよう促したり、国や自治体に法律の改正を求めたりするロビー活動などもあります。また環境NPOやNGOの職員として働くことも、立派な環境活動家と言えるでしょう。

そして、上記の活動はそれぞれが別個に行われるとは限らず、一つのテーマに沿って複数の活動につながるケースもあります。

海外の著名環境活動家と活動事例

海外の環境活動家には、その後の世界の環境政策や世論に大きな影響を与えた人々が何人もいます。

過去から現在まで、ここに名前をあげきれない環境活動家は数多くいますが、中でも影響力の強い活動家とその活動を紹介しましょう。

レイチェル・カーソン(Rachel Carson)

レイチェル・カーソンさんは、アメリカの海洋生物学者で作家です。

生物学者を志して動物発生学の修士号を取得した彼女は、公務員として海洋生物学に携わった経験をもとに「海の3部作」と呼ばれる著作を出版しベストセラーとなりました。

1962年には「沈黙の春」を出版。殺虫剤など合成化学物質の濫用による生物環境の大規模な破壊と、人間の生命への危険性を警告した本書は、世界に大きな衝撃を与えました。

没後の1965年に出版された「センス・オブ・ワンダー」では、自然の驚異と素晴らしさが説かれ、環境教育の代表的な本となっています。

カーソンさんは厳密には環境活動家ではありませんが、これらの著作が後の環境保護活動に大きな影響を与えたという点で、彼女の功績はとても大きいと言えるでしょう。

ワンガリ・マータイ(Wangari Maathai)

1940年、ケニアの農家に生まれたワンガリ・マータイさんは、裕福ではなく教育環境も乏しいなか勉学に励み、ナイロビ大学で生物分析学の博士号を取得します。

やがてマータイさんは環境破壊や貧困に立ち向かうべく、1977年に「グリーンベルト運動」を開始し、植樹活動による農村女性の社会参加や地位向上、貧困撲滅を目指しました。民主化を恐れた政権の弾圧や投獄にも屈せずに運動は続けられ、延べ10万人の参加と5,100万本の植樹が行われました。

やがて国会議員、環境副大臣になった彼女は環境保護と民主化への功績が認められ、アフリカの女性として初のノーベル平和賞を受賞します。

2005年の来日で「もったいない」という言葉を知り、環境保全の共通語として「MOTTAINAIキャンペーン」を提唱。2011年に亡くなるまで、国連の平和大使としても活動を続けました。

デヴィッド・スズキ(David Suzuki)

アカデミズムとジャーナリズムという2つの側面から環境活動を推進したのがデヴィッド・スズキさんです。カナダ生まれのスズキさんは、動物学の博士としてブリティッシュコロンビア大学で教鞭を執るかたわら、1979年から人気テレビ番組「ネイチャー・オブ・シングス」シリーズを担当しています。1990年にはNPO団体デヴィッド・スズキ財団を設立し、人と自然の共生を目指す環境保全活動や、自然エネルギー推進の提唱などを行いました。

2004年にはカナダ放送協会により「現存する最も偉大なカナダ人」に選ばれるなど、環境保護活動のリーダーとして世界から数多くの賞を受賞しています。

ヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva)

ヴァンダナ・シヴァさんは、インドの環境活動家で科学哲学者です。

国内外の大学で物理学・科学哲学の修士号や量子理論の博士号を取得したシヴァさんは、有機農業や種子の保存の必要性を通して、環境問題、社会問題の研究と実践活動に携わっています。

彼女の活動で代表的なものとして

  • NPO団体「ナヴダーニャ」設立
  • シード・フリーダム運動

があります。

ナヴダーニャとは「9つの種」という意味で、この団体の農場では630品種もの米や200品種の麦、60品種の雑穀、豆、野菜、香辛料などを在来の種子で栽培するなど、大規模な有機農業を推進しています。

もう一つの「シード・フリーダム運動」は、農民が在来種子を保存・採種し、まく自由、自分たちが食べているのものを知り、多国籍企業による種子の独占や遺伝子組換えを拒み、種子の自由を守る運動のことです。

グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)

現在、世界の環境活動で最も注目を集めているのがスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんです。

学校の授業で気候変動や地球環境問題の深刻さを知り、食事を摂れなくなるほどショックを受けた彼女は2018年、気候変動へのより強い対策を求めて毎週金曜日に授業をストライキし、スウェーデン議会の外で抗議を始めました。

これが注目され、多くの賛同者を集めた結果、「未来のための金曜日 (Fridays for Future)」の名前で「気候のための学校ストライキ」運動が組織され、世界に波及していきます。

それ以来、トゥーンベリさんは気候変動運動の中心人物になり、国際機関でのスピーチや抗議活動、SNSでの投稿などで行動を呼びかけています。

日本の著名環境活動家と活動事例

日本でも数少ないながら、多くの活動家が環境活動を行っています。彼らの活動事例を見ていきましょう。

辻信一

環境活動家の辻信一さんは、世界各地でフィールドワークを重ねてきた文化人類学者です。

アメリカで人類学博士号を取得した辻さんは、先住民族やマイノリティ研究などをテーマに研究・執筆活動を行いながら、社会運動や環境運動へ関与してきました。

帰国後、大学で教員を務めながら、ナマケモノの生き方に持続可能な社会のヒントを得て立ち上げたのがNGO団体「ナマケモノ倶楽部」です。以来、この「ナマケモノ倶楽部」を中心に環境や文化、エコビジネスを融合させた社会活動を展開しています。

著書『スロー・イズ・ビューティフル 遅さとしての文化』で「スローライフ」という思想を提唱。「100万人のキャンドルナイト」の呼びかけ人代表も務めるなど、さまざまな取り組みを通して自然と環境の保護活動を続けています。

C・W・ニコル

英国・ウェールズに生まれたC・W・ニコルさんは、カナダ水産調査局での海洋哺乳類調査研究や環境保護局の職員として働いた後、1962年に空手の修行のため来日します。

日本で作家として活動を開始した彼は、1980年に長野県に居を構え、荒廃した森の再生活動に取り組み始めました。この時に購入した里山は、後に「アファンの森」と名付けられ、森林整備やトラスト活動、生態調査などの拠点となっています。

1995年には日本国籍を取得。2020年に亡くなるまで、多数の著作や森林保全活動を通して精力的に自然と環境の大切さを広めてきました。音楽やCM出演でも親しまれたニコルさんは、日本で最も知られた環境活動家と言えるでしょう。

露木しいな(露木志奈)

2001年生まれの露木しいなさんは「環境活動家がいない社会を目指す」ために活動を続ける、若手環境活動家の代表的存在です。
中学まで日本の公立校で過ごした彼女は、「世界一エコな学校」と言われるインドネシアの「Green School Bali」に進学します。ちなみに入学時は全く英語が話せなかったそうです。

在学中には肌が弱く、既製品のコスメが使えない妹さんのために口紅を開発しました。これを機に、自然由来の原料を使い、製造から廃棄まで全ての過程で人や動物・地球に配慮したコスメブランド「Shiina Cosmetics」を立ち上げます。

その後、大学に進学した露木さんですが、「大学は待ってくれるけど、気候変動は待ってくれない」と大学を休学。全国の中学生・高校生に向け「大人になるまで待たなくてもいい」と訴え、2020年から気候変動についての講演会を行っており、2023年4月時点で32,000人、220校以上の学校にその声を届けています。

環境活動家に関してよくある疑問

こうしたさまざまな活動にも関わらず、私たちの多くにとっては環境活動家はまだ身近な存在ではなく、その実態についてもよく知られているとは言えません。

資金源はどうしている?

環境活動家はどのようにして活動資金を得ているのでしょうか。

環境活動家は、個人であれ団体であれ、基本的に大勢の賛同者や協力者を動員して活動を行うことがほとんどです。資金源の主なものとしては、

  • 個人や団体などからの寄付
  • 活動を支援する企業や団体・篤志家からの支援
  • 運営・所属する団体の会員からの会費
  • 講演会などの報酬
  • 出版物の売り上げ・印税

などがあります。特に市民の環境への関心が高い国では、寄付や支援も積極的に行われます。

NPO・NGOなどの団体の場合は、公的事業に対する補助金や交付金など、政府・公共セクターからの支援なども大きな資金源です。

また、自然食品や有機野菜、環境配慮製品の製造や販売などの経営を行い、その利益を活動に充てるといった方法もあります。

環境活動家とエコテロリストの違いは?

環境活動家はデモや抗議活動を行うことも多く、抗議活動自体が「エコテロリスト」呼ばわりされることも少なくありません。ですが、実際には両者は同じではなく、その行動内容も違います。

エコテロリストとは、環境や自然、動植物を守るために破壊活動や不法侵入などの非合法な行為や、暴力的な手段によって行動する個人や団体を指す言葉です。

その背後にあるのは、

  • 自然や環境を守るのは「正義」「良心」であり、「法」を超越する
  • 地球の危機は差し迫った問題であり、すぐに行動を起こさないと時間がない
  • 自然を破壊し地球を危機に陥れている本当の「テロリスト」は政府や企業である

などの思想であり、そのためには破壊活動や暴力行為は正当化されるという理屈です。

無論こうした行為は正当化されるものではなく、市民からの支持も得られません。

本来の環境活動家は、前述のような環境問題の現状と自らの活動を世間に知らせ、言論や実践(有機農業や植樹、ライフスタイルの提案)で市民への行動変容を呼びかける人々です。デモや抗議活動もあくまで平和裡に行い、破壊活動や暴力活動などの違法行為を行うこともありません。

絵画を標的にするのはなぜ?

こうした「エコテロリスト」たちの行動で近年問題視されているのが、世界各国の美術館で絵画などの芸術作品を汚す行為です。

そもそも環境や自然とは何の関係もない絵画が、なぜ標的にされなくてはならないのでしょうか。

そこには以下のような理由が考えられます。

  • 理由①注目を集める:気候変動や環境破壊への早急な対策を世に訴えるには、より過激な行動で注目される必要がある。その最適な標的が、市民に身近で公共の財産である美術品
  • 理由②文化機関に政治の責任があるという考え:政治は文化に追随するという考えのもと、気候変動の真実を伝えるには文化機関を巻き込むことが重要だという理論
  • 理由③資本主義の象徴としての名画:同じように美しく大事なものなはずなのに、一方は損なわれ続け、もう一方は莫大な額で取引され厳重に守られるという資本主義的な矛盾への不満

環境活動家とSDGsの関係

環境活動家の目標は、そのままSDGs(持続可能な開発目標)の目指すものと直接つながってきます。SDGsの中でも特に環境活動家との関連が深い目標としては、以下のものがあげられます。

環境活動家はSDGsという概念が提唱される前から、こうした目標を達成するために活動を続けてきました。SDGsは環境活動家の活動を理念として後押しし、環境活動家はSDGsを明確な指標として活動できる。そうした関係が成り立ちます。

まとめ

私たち市民が気候変動や自然環境の問題を知るうえで、環境活動家は非常に大きな役割を果たしてきました。その地道ながら勇気と使命感に満ちた活動は、私たちを動かし、導いています。

メディアでは常軌を逸した過激な集団ばかりが取り沙汰されますが、本当に私たちが応援し支えるべきは、偉大な先達と同じく、信念を持って誠実に活動を行う人々です。

そして、私たち皆が環境に配慮した生活を送ることで、露木しいなさんが言っていた「環境活動家がいない社会」が実現するはずです。

参考資料 
環境活動家:非常に必要とされ、過小評価されている|リッチモンドベールアカデミー (richmondvale.org)
Handbook for climate activists | Activist Handbook
レイチェル・カーソン日本協会 (j-rcc.org)
MOTTAINAIについて | MOTTAINAI もったいない モッタイナイ
デヴィッド・スズキ | イノベーション・ネットワーク | 連携・共同 | 自然エネルギー財団 (renewable-ei.org)
「たねの支配を、許してはならない」―環境活動家ヴァンダナ・シヴァ博士|KOKOCARA(ココカラ)−生協パルシステムの情報メディア (pal-system.co.jp)
Greta Thunberg | Activist Handbook
グレタ・トゥーンベリ – Wikipedia
辻信一 プロフィール | 「ゆっくりweb」辻信一とぶらぶら・坐ベンチャーズ・ゆる自然農 (yukkuri-web.com)
C.W.ニコルオフィス C.W.ニコルについて
アファンの森とは
露木しいな (shiina.co)
グリーンスクールを卒業した環境活動家・露木志奈が大学を休学をして、気候変動を伝える講演をはじめた理由とは | U-29.com
NGOの収入構造の調査例 参考資料4 (env.go.jp)
SDGs時代に知っておくべき環境問題入門:福嶋慶三・加納隆・井上和彦・下司聖作;関西学院大学出版会
エコ・テロリズム 過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ:浜野喬士;洋泉社
暴動とデモの違いは?デモの成功例や日本で少ない理由も解説 |SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』
なぜ環境活動家は一見無関係の名画を標的にするのか? 彼らなりの論理とは|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
「エコ・テロリズム」は是か非か 専門家は報道の問題も指摘 | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)
“自戒”する「エコ・テロリズム」 ~背後にあるものとその末路とは~ (IISIA研究員レポート Vol.102) – IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 – haradatakeo.com
環境専門家になるには:小熊みどり;ぺりかん社