#SDGsを知る

SDGs達成度ランキング1位「フィンランド」の取り組み事例と日本との違い

あなたはフィンランドにどのようなイメージを持っていますか?

  • 寒さの厳しい北欧の国
  • サンタクロース
  • トナカイ
  • ムーミン谷
  • サウナ
  • 広大な森林に湖

などでしょうか?

近年フィンランドはSDGs先進国としても有名です。2023年のSDGsランキングでもフィンランドは堂々の1位です。

フィンランドがSDGsランキング1位に輝いたのはなぜでしょうか?フィンランドのSDGsへの取り組みや、フィンランドの国について探っていきましょう!

そもそもSDGsとは?

ずいぶん知っている人も多くなってきた「SDGs」ですが、あなたは正しく理解していますか?まずはSDGsについて確認しておきましょう。

SDGsは2015年に国連サミットで採択された、持続可能な開発のための2030アジェンダです。17のゴール(目標)と169のターゲット(目標をより具体的にした解決すべき課題)があり、地球上の誰一人取り残さない(犠牲にしない・無視しない)ことを誓っています。これらの目標は、2030年までに達成を目指して先進国も開発途上国も含めた世界のすべての人々が取り組むものです。

フィンランドはSDGsランキングで毎年上位

イメージ画像

フィンランドはSDGsランキング※で、2023年も1位になりました(日本は19位でした)。2021年も1位、2020年は3位と、フィンランドは常にSDGsランキングで上位に入っています。*1)

SDGsランキング

(SDG Index ranking and score)各国のSDGs目標の達成度を点数化してランキング形式で発表される。

【2023年SDGsランキング1位から82位まで】

資源の輸入やエネルギーの脱炭素化など、日本はSDGs目標達成を目指して努力していますが、苦戦しているのも事実です。一方のフィンランドは脱炭素への取り組みをはじめ、多くのSDGs目標において高い達成度を実現しています。

この理由を探るために、まずはフィンランドについて知ることから始めます。

SDGs達成度ランキング1位!フィンランドの概要

フィンランドがSDGs達成度ランキング1位になった理由をよく理解できるように、はじめにどのような国なのかを知っておきましょう。基本的な情報から、フィンランドといえば…とよく話題になるものなどに触れていきます。

イメージ画像
Map of Scandinavia. A detail from the World Map.

それではまず、フィンランドがどのような国かを基礎データで確認しましょう。

  • 国名…フィンランド共和国(Republic of Finland)
  • 位置…北ヨーロッパ、スカンジナビア半島(Skandinavian niemimaa)
  • 面積…33.8万平方キロメートル(日本よりやや小さい)
  • 気候…亜寒帯湿潤気候(平均気温:7月約15.4度、1月約−10.8度)
  • 人口…約555万人(2022年データ)
  • 首都…ヘルシンキ(Helsinki)
  • 言語…フィンランド語・スウェーデン語
  • 宗教…キリスト教
  • 大統領…サウニ・ニーニスト(Sauli Väinämö Niinistö、第12代、2012年3月就任)

【フィンランドのサウニ・ニーニスト大統領】

首相…サンナ・マリン(Sanna Mirella Marin、第46代、2019年12月就任)

【フィンランドのサンナ・マリン首相】

フィンランドは、フィンランド語やサウナなどの独自の文化を持ちつつ、隣のスウェーデンやロシアなどの国に歴史的にも大きな影響を受けた国です。フィンランド国内にはスウェーデン語を話す人も居て、道路案内など看板の多くはフィンランド語とスウェーデン語で書かれています。

豊かな自然

フィンランド人は森を愛することでもよく知られています。フィンランドの国土の約73%が森で覆われており、サウナで使う白樺の枝を採りに行ったりもしますし、キノコやベリーを摘んだり、気分転換に散歩したりと日常的に森へ行きます。

イメージ画像
Lingonberry berries on a branch in a forest in a swamp. Daylight

首都ヘルシンキに住んでいる人でもよく森へ出かけるそうです。街から少し歩くと森があり、そこを抜けると白鳥がたくさん水面を泳ぐ湖があったり、開けた草原の向こうでトナカイがゆったりと歩いて行くのが見えたり…とにかく自然と共に過ごすのがフィンランドの暮らしです。

イメージ画像

フィンランドの心「SISU」とは

フィンランドが後で詳しく説明する「世界幸福度ランキング1位」になってから、「SISU(シス)」という言葉が世界中で知られるようになりました。SISUは「フィンランド人の心」や「フィンランド人の魂」と呼ばれることもあり、フィンランドの国民性を象徴する言葉です。

イメージ画像
sisu – Finnish concept of lifestyle and national character, word abstract in vintage letterpress wood type

SISUはフィンランド人の内面の強さと美学を指す言葉ですが、その意味はどの他の言語にも直接同じ意味を表す単語は存在しないと言われています。SISUが表すのは

”The word originates from ‘sisus’, which literally means ‘guts’ or ‘the intestines’ in Finnish”

引用:BBC『Sisu: The Finnish art of inner strength」(2018年5月)

とフィンランド人がBBCの取材に答えているように、「sisus」という言葉が語源と考えられ、元々は「 guts(根性)」や「intestines(腸)」を意味していました。ここで言う「腸」は日本で言う「腹」や「肝」の表す意味と似ていると考えられます。

しかしフィンランド人にとってSISUはそのように一言で表現できるようなものではありません。また、日本人の使う「頑張る」とも違うようです。

「SISUは1917年にフィンランドがロシアから独立した時にも、フィンランド人を団結させる接着剤のようだった」と言う人もいます。一言では表せないSISUの要点をまとめると

  • 困難を乗り越える強い心
  • 不可能を可能にする力
  • 勇気
  • 活力・元気
  • 頑固で粘り強い意志

などから構成されるフィンランド人の魂で、軽い気持ちで普段から使うようなものではなく、内面の奥深い場所に大切に持っていて、本当に必要な時にだけ発揮する奇跡をも起こす力です。これはフィンランド人によっても解釈がさまざまですが、おおよその意見をまとめるとSISUはこのようなものです。外国人である私たちはフィンランド人がSISUに持つ尊厳を大切にしましょう。

サウナの数が多い!

「フィンランド人は一家に1つサウナと湖を持っている」と言われるように、フィンランドには約555万人の人口に対して約300万のサウナがあると推計されています。サウナは2,000年前からすでにヨーロッパ各地にあったとされていますが、考古学的には石器時代に遡るほど歴史の古いものです。

古い時代には焼け石で部屋の温度を上げましたが、現在では電気・ガス式もあり、フィンランドだけでなく世界で疲れを癒す健康法として普及しています。日本でもサウナが好きな人は多く、その効果は体を温めるだけでなく

  • 良い睡眠
  • ストレス解消
  • 肥満対策
  • 疲労回復
  • 高血圧対策

などの健康改善に役立つと言われています。

イメージ画像

筆者がフィンランドを訪れた時も、滞在中に何度もサウナを体験しました。滞在先の友人の家にも、シャワーが3つ設置された浴室の隣にゆったりと5人ほど入れるサウナがあり、友人2人と同時にサウナに入り、一緒に出てシャワーを浴びることができました。

また、一家の所有する湖(!)には古い伝統的なスタイルのサウナがあり、そこにも何度か行きました。暗くなるまで近くの別荘で食事やお茶を楽しみ、その後あらかじめ温めておいたサウナに入ります。

暗くなってから入り始めるのは友人を含め筆者も女性なので、裸で湖に飛び込む時の人目を気にしてのことです。サウナの中には鉄製の大きなストーブがあり、薪を焚いて室温を上げます。大きなバケツに水を汲んでおき、時々そこに緑の葉のついた白樺のブーケを浸してストーブを叩いて蒸気を発生させたり(とても熱い!)、バシバシ体を叩いたりします。

イメージ画像

そしてあつさに耐えられなくなったら「行ってくる!」とサウナを飛び出し、出て数メートルの極寒の湖に頭から飛び込みます(湖への入り方には個人差があります)。体が冷えたらまたサウナに戻る…という繰り返しを気の済むまで続けます。

普段からにこやかなフィンランドの人々ですが、サウナに入る時は格別な笑顔で、本当に幸せな気分になったことも強く心に残っています。(筆者がフィンランドを訪れたのは11月でしたが、特別寒い時だったようで、朝はー20度を下回るほどでした。)

サンタクロース村

イメージ画像

フィンランドにはサンタクロース村があることも有名です。サンタクロースはフィンランドではヨウルプッキ(Joulupukki)と呼ばれ、サンタクロース村からさらに北へ300kmほど離れた山中にお手伝いの妖精トントゥ(tonttu)たちと住んでいると言われています。

世界中から観光客が訪れるサンタクロース村には、

  • サンタクロース・オフィス
  • サンタクロース郵便局
  • クリスマスハウス(サンタクロース博物館)

などがあり、サンタクロース郵便局に申し込むとエアメールでサンタクロースから手紙が届きます。*2)

【フィンランドのサンタクロース村】

フィンランドのサンタクロース村
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

出典:WIKIMEDIA COMMONS『Rovaniemi pajakyla』

フィンランドの国や人々、生活についてイメージできましたか?次はフィンランドが「世界一幸せな国」と呼ばれるところに焦点を当てていきましょう。

「世界一幸せな国」福祉国家フィンランド

イメージ画像
four happy smiling children are sitting on the pier of the lake and holding forest mushrooms in their hands on the background of the forest on a summer day.

フィンランドは国際的な観点からも「世界一幸せな国」と呼ばれることががります。「世界一幸せな国」という響きにはインパクトもありますが、少し夢のような印象も受ける言葉です。

フィンランドはどうして世界一幸せな国と呼ばれるのでしょうか?

国の「幸福度」とは

個人の幸福度であれば、

  • 健康で快適に過ごしているか
  • 金銭的に困っていないか
  • 家族・友人・職場での人間関は良好か
  • 家庭・仕事・趣味などでやりがいや充実感はあるか
  • 社会とのつながりがあるか
  • 将来への希望は持てるか

などが問われますが、国としての幸福度は、

  1. 経済社会状況
  2. 心身の健康
  3. 関係性(社会的つながり)

を3本の柱として、これに

  • 持続可能性

を加えたものと考えられます。

【国の幸福度の三つの主軸】

OECD※の「Better Life Index(より良い暮らし指標)」ではさらに具体的に、

  1. 住宅
  2. 所得と富
  3. 雇用と仕事の質
  4. 社会とのつながり
  5. 知識と技能
  6. 環境の質
  7. 市民参画
  8. 健康状態
  9. 主観的幸福
  10. 安全
  11. 仕事と生活のバランス

という11の項目が指標として挙げられています。

【OECDのより良い暮らし指標】

幸福の感じ方は人それぞれなので、国ごとの幸福度も、

  • その国の特徴
  • 国民性
  • 国の環境

などによって違いがあります。単純に決まった指標を数値化して比較するだけでは真実を見誤るかもしれません。

しかし、世界各国と比較したその国の個性を見たり、課題を特定したりするうえでは参考になります。また、このような指標を何年も記録し、変化を見ることで重要な情報が得られる可能性があります。

フィンランドは世界幸福度ランキング1位

国連機関である持続可能開発ソリューションネットワーク(SDSN)※が毎年発表している「世界幸福度ランキング」で、フィンランドは1位になりました。先ほどのOECDの指標でも、フィンランドは好成績です。

  • 収入(平均可処分所得※:年間33,471ドル※)
  • 雇用(15歳~64歳の就職率:約72%)
  • 教育(25歳~64歳の高校卒業率:約91%)
  • 健康(平均寿命:約82歳)
  • 環境(綺麗な大気・綺麗な水)
  • コミュニティ(頼れる人がいると思う人:96%)
  • 生活への満足度(1から10で評価を求められた回答の平均が7.9)

などが、特に高く評価されています。これだけ見ても、安心して豊かな暮らしが送れる印象を受けます。

SDSN

持続可能な社会を実現するため、学術機関や企業、市民団体が連携するための世界規模のネットワーク。

フィンランドと日本を比較すると…

2018年から連続で世界幸福度ランキング1位のフィンランドと日本の幸福度を比較してみましょう。今回は、2022年の幸福度を構成する指標を基にした世界ランキングで見ていきます。

【2022年世界幸福度ランキング結果】

※社会的寛容さ…寄付額などから算出

ディストピア

ユートピア(理想郷)の対義語で理想とは逆の世界。

2022年世界幸福度ランキングの結果ではフィンランドは1位、日本は54位でした。一番下の「全項目が最低である架空の国(ディストピア)との差」という項目が気になった人もいると思います。

これは、幸福度の指標の各点数を国ごとに合計した数値と、全項目中最低のスコアを合計した架空の国との差を点数にしてランキング化したものです。高得点の項目が多いほどランキングが上がります。

フィンランドは寄付額などから算出される「社会的寛容さ」以外はとても良い成績です。社会的寛容さの指標とされる寄付額は、所得格差・生活水準の格差などが少ないことが理由で点数が伸びていない可能性もあります。

【フィンランドと日本の比較(社会)】

フィンランドは日本と比較しても、とても住みやすそうな印象を受ける結果ですね!若年層のニート率や自殺率が高いのは、フィンランドの寒い気候が原因のうつなど、メンタルヘルスの不調が大きく関わっていると考えられています。*3)

次の章からは、フィンランドが行なっているSDGs目標達成に貢献する取り組みを具体的に紹介します。

フィンランドのSDGs取り組み事例①出産・育児支援「ネウボラ」

【フィンランドの育児パッケージ】

フィンランド語で「ネウボラ(Neuvola)」とは、「助言を受ける場所」という意味です。ここでは妊娠してから子供が小学校に入学するまで一貫して行われる

  • 子育て支援制度
  • 支援を提供する施設

を指します。その内容は

  • 母子のワクチンを含むすべてのサービス※が無料
  • 妊娠中~小学校入学前まで、同じ保健師が各種診察・悩み相談・子育て指導を担当
  • ネウボラのスタッフは保健師や看護師の資格を持ち、必要な時は医療・学校など専門機関との仲介をする

などからなり、同じ保健師が担当することでその家族との信頼関係を築き、生活習慣や養育能力を把握します。ネウボラはこのような定期的な支援から、

  • リスクや問題の早期発見
  • 的確なアドバイス

ができ、安心して子育てができる社会づくりに役立っています。ネウボラの制度はSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の目標達成にも貢献します。*4)

フィンランドのSDGs取り組み事例②福祉・健康「ラヒホイタヤ」

フィンランド語で「ラヒホイタヤ(Lähihoitaja)」とは、「身近な介護者」という意味です。ラヒホイタヤは

  • 准看護師
  • 歯科助手
  • 救急救命士
  • 介護士
  • 保育士

などの資格を統合した資格で、准看護師とは教育訓練の内容や仕事の役割もかなり違います。ラヒホイタヤの教育訓練の内容は場所や教育機関によってさまざまですが、准看護師の教育過程よりも多様な学習をします。

ラヒホイタヤは、現在のフィンランドの福祉・社会保障を支える中心的な存在となっており、介護・保育などの現場で各自の専門分野を活かして活躍しています。

日本の厚生労働省も2015年にラヒホイタヤを参考にした資格の統合を検討していましたが、各団体からの反発もあり見送られました。高い専門性を求める傾向がある日本では、広く多様なサービスをこなせるラヒホイタヤは受け入れが難しかったのかも知れません。

しかし、少人数で幅広い分野の仕事がこなせるラヒホイタヤは、

  • 少人数で柔軟に対応できる
  • 1つの家庭の子供と高齢者の両方を1人で看ることができる
  • 家事の手伝いもできる
  • 社会のニーズが変化しても失業しにくい

などのメリットを活かして、フィンランドでは福祉・健康の分野での人材不足を補う戦力となっています。これは、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」だけでなく、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」の目標達成にも貢献します。*5)

フィンランドのSDGs取り組み事例③脱炭素先進国

フィンランドはカーボンニュートラルへの取り組みも進んでいます。

  • 2035年までにカーボンニュートラル
  • 2030年代末までに発電・発熱において化石燃料の使用ゼロ化

この2つを世界で最初に実現することを目標に掲げています。2020年には石炭発電が廃止され、さらに広い森林を活かしたCO2吸収量増加のための管理強化や植林の推進など、積極的な脱炭素・CO2削減・CO2吸収が進められています。

【フィンランドのエネルギー構成とCO2排出量の推移】

フィンランドのエネルギー構成とCO2排出量の推移

【フィンランドの2019年の電力供給源】

上のグラフからは、着実にフィンランドのCO2排出量が減っていること、電力供給減の円グラフからは2019年時点ですでに再生可能エネルギーの比率が全体の36%を達成、化石燃料の使用は全体のわずか14%しかないことがわかります。また、フィンランドは豊かな森林資源を活かした木質燃料※の利用も推進しています。

木質燃料

薪・炭・ウッドチップ・おがくずなど。木質バイオマス

【CLTとLVLによる木造高層建築 Stora Enso】

木材の豊富なフィンランドでは、木造高層建築も推進されています。生産時にCO2を排出しない材料、再生可能な資源として、建築だけでなくバイオ産業や石油の代わりとなる製品に木を利用する研究開発も行われています。

このような活動は、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」などの目標達成に貢献します。*6)

フィンランドのSDGs取り組み事例④AuroraAI(オーロラAI)

【AuroraAIの名前の由来 フィンランドの美しいオーロラ】

AuroraAIの名前の由来 フィンランドの美しいオーロラ

フィンランドは先端技術の社会実装が進んでいることでも知られています。その中でも2020年に開始された国家プログラム「AuroraAI(オーロラAI)」では、2023年には個人の状況に合わせて必要な情報を提供するAIを利用した行政サービスの開始を目指しています。

AuroraAIは、個人の仮想人格を作成し、

  • 就業
  • 学業
  • 移住

など、ライフステージに合わせた最適なサービスの提供を目指します。また、公共サービスの効率化・コスト削減もあわせて期待できます。

フィンランドは国民のニーズ・心理の理解に軸を据えた新たな公共サービスとして、AuroraAIが人間主体の施策になることを明らかにしています。フィンランドは国民のデジタルリテラシー※も高く、活発にDX※が促進されています。*7)

デジタルリテラシー

デジタル分野の知識を持つとともに、適切に理解し活用できる能力。

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語で、デジタルテクノロジーの利用により、産業の仕組みや生活スタイルを変化させること。デジタル社会への移行。

【個人情報提供システム AuroraAIの概念図】

※この図からはAuroraAIが個人の情報を持った仮想空間のアバターで、個人の「デジタルの双子」として、適切なサービスと個人をつなぐ存在であることがわかります。

フィンランドのSDGs取り組み事例⑤地方自治体の取り組み

【国連のSDGsモデル大学都市、エスポー市】

フィンランドでは、2年連続で「ヨーロッパで最も持続可能な都市」に選ばれたエスポー市をはじめ、地方自治体もSDGsの目標達成に積極的に取り組んでいます。エスポー市は国連のSDGsモデル大学都市にも認定され、2025年までにSDGsを達成する循環経済モデル地域の整備を進めています。

【フィンランドの風力発電】

フィンランドの風力発電

そのほかにも、

ラハティ市2025年カーボンニュートラル達成を目標。

ラッペーンランタ市世界初の再生可能エネルギー利用率100%を達成。

など、多くの地方自治体が環境やクリーンエネルギー利用に関わる賞を受けています。特に取り組みが盛んな分野は

などで、地方自治体だけでなく研究機関・企業・市民が一体となってSDGsの目標達成を目指して精力的に活動しています。これらの取り組みはSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」などさまざまなSDGs目標の達成に貢献します。*8)

まとめ:フィンランドにはもともとSDGsを達成しやすい国民性や文化があった!

【フィンランドの古い風車】

フィンランドの古い風車

フィンランドは美しい自然に囲まれた国です。しかし、生き抜くためには厳しい冬を乗り切るための計画性や知識・技術が必要でした。

フィンランドの伝統的な暮らしは、暖かいうちに冬に備え、冬になると長い夜を暖かい家の中で家族とゆっくり過ごしました。現在では都市部は真冬でも外出しますが、伝統的な冬の過ごし方を愛する人も多いので、やはり「計画性」は自然と身についているのかもしれません。

フィンランドの人たちは、気候が穏やかな時も厳しい時も自然と共に暮らしてきたので、環境問題もすぐに「自分ごと」として解決したい、協力したいと思う人が多いでしょう。

自分と人・自分と自然・自分と環境

このつながりが生活の根底にあり、それを深く愛する国民性がフィンランドにはあるのです。また、これまでの生活様式・産業構造・国土の特徴なども、SDGsの目標達成に取り組みやすいものだったことも考えられます。

「日本とはそもそも、スタート地点が違う!」と、うらやましくもなりますね。しかし、日本は日本なりに現状からSDGsの目標達成を目指さなくてはいけないのが現状です。

日本もいつかフィンランドのように「幸せな国」と呼ばれる日が来るでしょうか。SDGsの達成状況ではフィンランドに圧倒的な差を見せられてしまいましたが、私たちも日本、そして日本人の強みを活かしてSDGsの目標達成に取り組んでいきましょう!

〈参考・引用文献〉
*1)そもそもSDGsとは?
外務省『SDGsとは?』
CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS『SUSTINABLE DEVELOPMENT REPORT 2022』p.14(2022年1月)
*2)SDGs達成度ランキング1位!フィンランドの概要
外務省『フィンランド共和国(Republic of Finland)基礎データ』(2019年12月)
WIKIMEDIA COMMONS『Sauli Niinistö』
フィンランド政府HP『Prime Minister Marin to attend EU-Western Balkans summit in Tirana』(2022年1月
BBC『Sisu: The Finnish art of inner strength」(2018年5月)
公益社団法人日本サウナ・スパ協会『サウナ健康法の時代』
フィンランド外務省『SEEKING THE REAL FINNISH SAUNA』
NATIONAL GEOGRAPHIC『さすがフィンランド! 驚きのサウナ10選』(2019年1月)
WIKIMEDIA COMMONS『Rovaniemi pajakyla』
*3)「世界一幸せな国」福祉国家フィンランド
内閣府幸福度に関する研究会(大阪大学教授 山内直人)『幸福度に関する研究会報告 ―幸福度指標試案』
OECD『Better Life Index』
OECD『Better Life Index Finland』
SDSN Japan『SDSNとは』
在フィンランド日本国大使館『フィンランド経済の概要 フィンランド経済の特徴・特色』p.20(2021年9月)
*4)フィンランドのSDGs取り組み事例①出産・育児支援「ネウボラ」
日本フィンランド大使館『フィンランドの子育て支援』
日経BP『フィンランドの切れ目ない家族支援「ネウボラ」』(2014年10月)
十文字学園女子大学人間生活学部 上垣内 伸子『フィンランドのネウボラとネウボラナース』
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」
*5)フィンランドのSDGs取り組み事例②福祉・健康「ラヒホイタヤ」
在フィンランド日本国大使館『トピックス 福祉・健康』
SankeiBiz『フィンランド、看護や保育などが一つの資格 福祉分野で少数・柔軟対応』(2018年8月)
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」
*6)フィンランドのSDGs取り組み事例③脱炭素先進国
在フィンランド日本国大使館『環境・サーキュラーエコノミー』p.31
在フィンランド日本国大使館『.フィンランド経済の特徴・特色』p.14
*7)フィンランドのSDGs取り組み事例④AuroraAI
在フィンランド日本国大使館『トピックス IT・AI』
*8)フィンランドのSDGs取り組み事例⑤地方自治体の取り組み
WIKIMEDIA COMMONS『Espoon Tapiola kesällä』
在フィンランド日本国大使館『環境・サーキュラーエコノミー』p.34